切削工具とは?切削・工作機械で使われる切削工具の種類まとめ
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2022/03/12 ) 著者: 甲斐 智
切削工具は、工作機械に取り付けて使われる刃物の総称です。
DIYでもおなじみのドリルをはじめ、フライス・エンドミル・バイトなど、金属加工の現場では、用途にあわせてさまざな切削工具が使い分けられています。
金属加工とは一見関係のないプラスチック製品でさえ、樹脂を成形するための金型の生産には、切削工具が欠かせません。
切削工具は私たちのくらしを支えるスマホや自動車をはじめ、あらゆる工業製品のものづくりになくてはならない重要な工具です。
この記事では切削工具の種類や材質について、幅広く紹介いたします。
切削工具の種類
切削工具には、ドリル・フライス・エンドミル・バイトなど用途に応じたさまざまな種類があります。
代表的な切削工具の種類について紹介します。
フライス
フライスは、マシニングセンタやフライス盤などで多く使われる切削工具です。
万能工具とよばれるエンドミルもフライスの一種で、加工ワークの平面・側面・溝・スリットを効率よく削ることができます。
〈フライスの種類〉
ドリル
ドリルは、マシニングセンタやボール盤などで多く使われる、穴あけ加工に欠かせない切削工具です。
切粉の排出を促す油穴付きドリルや深穴用の長いガンドリルなど、穴の径や深さに応じてさまざまなドリルが使い分けされます。
〈ドリルの種類〉
タップ
タップは、ねじ山(めねじ)を削るための切削工具です。
特にタップでねじ穴をあけることを「タップを切る」と言い、ねじ部品の多い機械部品の加工に欠かせない切削工具です。
〈タップの種類〉
リーマ
リーマは、ドリルであけた穴の内径や表面粗さを仕上げるための切削工具です。
高い精度が求められる自動車エンジン部品や、航空機部品などの穴加工に欠かせない切削工具です。
バイト
バイトは、旋盤やターニングセンタなどで多く使われる、旋削加工に欠かせない切削工具です。
バイトの先端には「チップ」や「インサート」とよばれる刃先が付いており、回転するワークに切り込むことで金属の表面を削ります。
溝を加工する突切りバイトや内面を加工する中ぐりバイトなど、加工工程にあわせてさまざまなバイトを交換しながら加工を行います。
〈バイトの種類〉
その他の切削工具
一般的に切削工具といえば、汎用性の高い刃物のことを指しますが、その他にも専用工具として使われるさまざまな切削工具があります。
研削砥石
研削砥石は「砥粒」を「結合剤」で固めた専用工具で、研削盤で使われています。
正確には切削工具の定義からは外れますが、精密部品の仕上げに欠かせない工具です。
ホブ
ホブは、ホブ盤や歯切り盤などの歯車加工機で使われる専用工具です。
歯車の種類や加工方法によって、さまざまなホブがあります。
ブローチ
ブローチは、ブローチ盤で使われる専用工具です。
自動車部品のキー溝やエンジン部品のスプラインなど、特殊なブローチ加工で使われます。
切削工具の材質
切削工具の材質には、工具鋼・ハイス・超硬・ダイヤモンドなどの材質が使われます。
工具材質によって「硬さ」と「じん性(ねばり強さ)」もさまざま。切削加工の過酷な環境下で高い精度を発揮するためには、加工ワークや切削条件によって使い分けることが重要です。
〈切削工具の材質の種類〉
切削工具の関連用語
切削条件 | 切削条件は「切削速度」「切込み量」「送り量」「切削時間」の組み合わせです 切削条件は加工効率や工具摩耗などに直接影響するため、加工内容やワーク材質に応じて最適な条件を設定する必要があります。 |
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切削抵抗 | 切削抵抗は、切削工具をワークに押し付けた時にかかる負荷のことです 一度に切削する面が広い場合、切削抵抗も大きくなりビビりや加工面の悪化が発生します。 |
切削熱 | 切削熱は、切削工具とワークの摩擦による発熱のことです 切削熱が上がると構成刃先や刃先のチッピング(欠け)の原因となるため、クーラントによる冷却や切削条件の見直しなどが必要となります。 |
工具寿命 | 工具寿命は、切削工具を精度よく使うことができる期間のことです 現場では、加工精度の低下や摩耗による切粉の変化を基準に判定されることもあります。 |
切りくず処理性能 | 切りくず処理性能は、切削加工で発生する切粉の処理性能のことです 一般的に切削工具の送り速度が速くなるにつれ切削効率は上がりますが、短時間に多くの切粉が発生するため、高い切りくず処理性能が求められます。 |
切削工具のツーリング
ツーリングには、切削工具を保持するための「ツールホルダー」と、切削工具を工作機械に接続するための「シャンク」があります。
機械によってさまざまな規格や種類があり、加工内容に合わせてツーリングを使い分けることが、精度向上や加工不良防止のカギとなります。
〈ツールホルダーの種類〉
〈シャンクの種類〉
切削工具のコーティング
コーティングは、切削工具に欠かせない表面処理技術です。
切削工具の表面を薄い膜でコーティングすることで、もとの工具材質の特性(弱い部分)をカバー。加工ワークの材質や切削条件にあわせて最適なコーティング工具を選択することで、工具寿命を向上させることができます。
〈コーティング工具の種類〉
切削工具の工具長測定
切削工具の工具長(ツールの長さ)測定には、ツールセッタとよばれる専用の機器が使われます。
工具の長さを計測し工作機械のNCにフィードバックすることで、工具交換時の原点出しだけでなく、加工中の切削工具の摩耗やチッピング(欠け)の検出も可能になります。
CNC工作機械の無人稼働に欠かせない重要な機器です。
〈ツールセッターの種類〉
切削工具の再研磨
エンドミルやドリルなどのソリッド工具(刃先一体型の工具)は、再研磨し再利用するのが一般的です。
摩耗しきる前に再研磨をかけることで、工具寿命を最大化しコスト削減につなげることができます。
航空機部品の加工で使われるような専用工具には、数十万円以上の高価なものも多く、複数回再研磨して使えるように設計されてます。再研磨後は再コーティング処理が必要となります。
再研磨には、工具研削盤とよばれる専用の工作機械が使われます。
切削工具研削技能士:引用元:厚生労働省|技のとびら
切削とは、金属などに切削用の工具を押し付け、表面を削る加工方法です。切削工具は、工作機械の刃物台などに取り付けられ、その加工には高い精度が求められます。「切削工具研削職種」は、切削工具の研削の仕事を対象としています。
切削工具とは?まとめ
この記事では、工作機械で使われる切削工具とその関連技術について解説しました。
高い精度を保ちながら効率よく切削加工をするためには、ワークや切削条件にあわせて、最適な「工具材質」「ツーリング」「コーティング」を組み合わせていくことが重要です。
この記事が、切削工具の理解のためのヒントとなればうれしいです。