
フライス加工とは|フライス加工と、フライス・エンドミルの違いについて解説
- 更新日:
- 2020/12/21(2020/05/19 公開) 編集者:甲斐 智
フライス加工は、固定した加工ワークに〈回転する刃物〉をあてて削る「除去加工」のひとつ。
エンジン部品の切削から金型の削り出しまで、 さまざまな業界で広く使われている、金属加工を代表する加工方法 です。
この記事では、フライス加工で使われるNC工作機械や、意外とわかりにくい「フライス」と「エンドミル」の違いなど、フライスにまつわる用語を解説しています。

フライス加工ってどんな加工?
フライス加工は、固定した加工ワークに〈回転する刃物〉をあてて削る加工方法です。
「フライス」や「エンドミル」とよばれる工具を使い、加工ワークの平面・側面・溝を削り出します。
角もの(かくもの)とよばれる、四角い部品の切削加工に適しています。
フライス加工で使われるNC工作機械

フライス加工には、さまざまなNC工作機械が使われます。
なかでも「マシニングセンタ」を使った加工が多いため、現場では[フライス加工≒マシニング加工]ともよばれます。
フライス盤:引用元: 海上技術安全研究所「フライス盤の概要」
フライス盤とは,回転している工具に,バイス(万力)に固定した材料を当てて加工する工作機械である。
フライス加工の種類について
フライス加工の種類は、おおきく5つに分けられます。
工作機械の主軸の向きや加工する面積によって、さまざまなフライス工具を使い分けます。
平面加工

加工ワークの平面を削るフライス加工です。
フライス工具の使い方によって、加工方法がことなります。
- 「正面フライス」による平面加工
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広い面積を効率的に削ります。
もっとも一般的な加工方法です。
- 「エンドミル」による平面加工
-
削れる面積は少ないですが、エンドミル一本でさまざまな加工ができるため、刃物の交換が少なく済みます。
- 「平フライス」による平面加工
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NC横フライス盤を使い、加工ワークの上面を削ります。
荒加工や中仕上げに適しています。
側面加工

加工ワークの側面を削るフライス加工です。
フライス工具の使い方によって、加工方法がことなります。
- 「正面フライス」による側面加工
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横型マシニングセンタを使い、加工ワークの側面を削ります。
広い面積を効率的に削ることができます。
- 「エンドミル」による側面加工
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エンドミルの外周の刃で、加工ワークの側面を削ります。
もっとも一般的な加工方法です。
- 「側フライス(がわふらいす」による平面加工
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NC横フライス盤を使い、加工ワークの側面を削ります。
荒加工や中仕上げに適しています。
段差加工

平面と側面を同時に削りながら、段差をつくります。
フライス工具の使い方によって、加工方法がことなります。
- 「正面フライス」による段差加工
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正面フライスの底と外周の刃で、加工ワークの段差を削ります。
広い面や、低い段差の加工に適しています。
- 「エンドミル」による段差加工
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エンドミルの底と外周の刃で、加工ワークの段差を削ります。
狭い面や、高い段差の加工に適しています。
- 「側フライス(がわふらいす)」による段差加工
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NC横フライス盤を使い、加工ワークの段差を削ります。
平面加工や、側面加工のながれで使われることが多いです。
溝加工

加工ワークに溝をつくるフライス加工です。
フライス工具の使い方によって、加工方法がことなります。
- 「エンドミル」による溝加工
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もっとも一般的な加工方法です。
- 「エンドミル」によるポケット加工
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凹状の加工に適しています。
- 「エンドミル」によるヘリカル加工
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ドリルではむずかしい、おおきな穴の加工に適しています。
マシニングセンタの〈ヘリカル補間機能〉を使い、エンドミルをらせん状に動かします。
- 「側フライス」「溝フライス」による溝加工
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NC横フライス盤を使い、加工ワークの溝を削ります。
深い溝を削るときに使われます。
そのほかの溝加工
- T溝加工
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加工ワークに〈T形の溝〉をつくるための溝加工です。
T溝はマシニングセンタのテーブルなど、固定ボルトを通す溝として使われます。
加工には「T溝フライス」を使います。
- アリ溝加工
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加工ワークに〈アリ溝〉をつくるための溝加工です。
アリ溝は、シリンダーや位置決めステージの案内機構として使われます。
加工には「アリ溝フライス」を使います。
- キー溝加工
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加工ワークに〈キー溝〉をつくるための溝加工です。
キー溝は、機械部品をはめ込むための溝として使われます。
加工には「エンドミル」や「溝フライス」を使います。
- スリット加工
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加工ワークに浅いスリットや、深い切り込みを入れるための溝加工です。
加工には「メタルソー」や「スリワリフライス」を使います。
さまざまな加工

- C面取り加工
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加工ワークの角を〈45°〉に削り、面取りをする加工です。
さわると危険な「鋭い角」を落とし、切削のバリも同時に除去します。C面取りには専用の面取りツールや、エンドミルが使われます。
- 総形加工
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あらかじめ「所定のカタチ」に成形された工具を使って削るフライス加工です。
複雑なカタチを、効率よく加工することができます。加工ワークのカタチによって、「総形フライス」「総形エンドミル」などの工具が使い分けされます。
フライス工具の種類について

フライス加工で使われる「フライス工具」には、用途にあわせてさまざまな種類があります。
ここでは、基本的なフライス工具をご紹介します。
エンドミル

工具の外周と底面に切れ刃をもった、代表的なフライス工具です。
ドリルと似ていますが、外周の刃でも加工ができます。
正面フライス

工具の円周上に複数の切れ刃をもった、フライス工具です。
「フェイスカッター」ともよばれ、加工ワークの平面を効率的に削ります。

使い捨ての切れ刃(スローアウェイチップ)をねじで固定した、交換式の「植付けフライス」が主流です。
平フライス(ひらふらいす)

工具の外周に切れ刃をもった、筒状のフライス工具です。
「プレーンカッター」ともよばれ、NC横フライス盤による平面加工で使われます。
荒加工用の荒刃と、仕上げ用の普通刃があります。
側フライス(がわふらいす)

外周と側面に切れ刃をもった、円盤状のフライス工具です。
「サイドカッター」ともよばれ、NC横フライス盤の側面加工や溝加工で使われます。
メタルソー/スリワリフライス

スリット加工で使われる、側フライスを薄くしたフライス工具です。
メタルソーは浅いスリットの加工、スリワリフライスは深い切り込みや、加工ワークの切断に使われます。
溝フライス

外周に切れ刃をもった、円盤状のフライス工具です。
「スロットカッター」ともよばれ、NC横フライス盤の溝加工で使われます。
T溝加工で使われる「Tスロットカッター」や、アリ溝加工で使われる「アリ溝カッター」などもあります。
フライスとエンドミルの違い

エンドミルは工具の外周と先端に切れ刃をもった、フライス工具のひとつです。
見た目はドリルと似ていますが、外周の刃を使い加工ワークの側面を削ることができます。
さまざまなフライス加工が1本でできるため、万能工具として使われています。
(エンドミルだけを使った加工は「エンドミル加工」ともよばれます)
エンドミルの構造
エンドミルの切れ刃の構造によって、3つに分けられます。
スローアウェイエンドミル

使い捨てのチップ(切れ刃)をねじで固定した、刃先交換式のエンドミルです。
マシニングセンタなどの量産ラインで使われます。
チップには、高速度工具鋼(ハイス)や超硬合金、ダイヤモンドなどが使われます。
ソリッドエンドミル
高速度工具鋼(ハイス)や超硬合金から削り出された、一体成型のエンドミルです。
摩耗したエンドミルは、NC工具研削盤で再研磨して使うことができます。
ロウ付けエンドミル
工具の本体に切れ刃をロウ付けしたエンドミルです。
ソリッドタイプよりコストが低いため、直径のおおきなエンドミルに使われます。
エンドミルの種類
エンドミルの刃先のカタチによって、5つに分けられます。
フラットエンドミル

刃先の先端が「平坦」になっているエンドミルです。
汎用性が高く、平面・側面・段差・溝加工に広く使われます。
刃先の角が鋭利なため、カケに注意が必要です。
ラジアスエンドミル

刃先の先端に、R(丸み)がついたエンドミルです。
スクエアエンドミルにくらべ、カケにくく強度が高いのが特徴です。
加工ワークの隅の曲面加工ができるため、金型加工にも適しています。
ボールエンドミル

刃先の先端が「球状」になったエンドミルです。
切削抵抗が少なく切れ味が高いため、金型加工をはじめ、仕上げ加工や3次元曲面などの5軸加工に適しています。
テーパエンドミル

刃先の先端に向かって、細く勾配のついたエンドミルです。
加工ワークの側面に角度をつけたい時に使われます。
ラフィングエンドミル

フラットエンドミルの側面に、波状の凹凸がついたエンドミルです。
切粉の排出性がよく、クーラントによる冷却効果が高いのが特徴です。
荒加工でおおきく切り込むときに適しています。
フライス回転方向による、アップカットとダウンカットの違い
平フライスや側フライスなど、工具の外周に切れ刃をもったフライスには、回転方向によってふたつの加工方法があります。
アップカット(上向き削り)

フライスの回転方向と、加工ワークの送り方向が「反対」の加工方法です。
特殊な加工条件で使われます。
アップカットのメリットとデメリット
ダウンカット(下向き削り)

フライスの回転方向と、加工ワークの送り方向が「おなじ」加工方法です。
一般的なNC工作機械では、このダウンカットが使われます。
ダウンカットのメリットとデメリット
フライス工具の「ツーリング」と「工具材質」について

フライス工具を知るうえでかかせない、「ツーリング」と「工具材質」についてかんたんにご紹介します。
フライス工具のツーリングについて
ツーリングは、NC工作機械の「切削工具」を取り付け、保持するための接続機器(インターフェイス)です。
工作機械の主軸と工具をつなぐアダプターの役目をし、ツーリングを使うことでによって、サイズのことなるさまざまな工具を、スムーズに交換できます。
フライス工具の工具材質について
工具に使われる材質は、「硬さ」と「ねばり強さ」によって、加工用途や切削能力が変わります。
また高温での温度特性や耐摩耗性も、材質によっておおきく変わります。
加工ワークや、加工内容によって使い分けることがたいせつです。
フライス加工とは?まとめ
この記事では、フライス加工で使われるさまざまな工作機械や、意外とわかりにくい「フライス」と「エンドミル」の違いを通して、フライス加工の基本について解説しました。
フライス加工は旋削加工と合わせて、切削加工の基本のひとつです。
フライスを知ることで、工作機械の世界を知るきっかけとなればうれしいです。