工作機械とは?金属加工の現場で活躍する工作機械の種類まとめ
- 更新日:
- 2024/10/29 (公開日: 2020/05/28 ) 著者: 甲斐 智
NC工作機械は、金属の不要な部分を削り落とし、目的のカタチに仕上げる金属加工機械です。
自動車や航空機の部品をはじめ、金型から半導体・電子部品まで、あらゆるものづくり産業の基盤となっています。
この記事では、工作機械のメリットをはじめ、生産現場・金属加工の現場で活躍しているNC工作機械の種類や、意外と知らない「NC工作機械」と「CNC工作機械」の違いなど、NC工作機械の基本を紹介しています。
NC工作機械ってどんな機械?
NC工作機械は、金属の不要な部分を削り落とし目的のカタチに仕上げる金属加工機械です。
自動車や航空機の部品をはじめ、金型や電子機器・スマホなど、さまざまな精密部品がNC工作機械から生まれています。
工作機械は、広義ではプレス機械などの鍛圧機械や、プラスチック・木材の加工機も含まれますが、日本工業規格(JIS)では、「金属の加工物を切削、研削などによって、または電気、その他のエネルギーを利用して不要部を取り除き、所要の形状に作り上げる機械」と定められています。
工作機械:引用元:wikipedia
工作機械(こうさくきかい、英: machine tool)は、金属、木材、石材、樹脂等に切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ等の加工を施すための機械である。
一般に加工対象物または工具の運動(回転または直線移動)によって、加工対象物を削り取り目的の形状に加工する。
「機械をつくるための機械」として、マザーマシン(母なる機械)ともよばれ、NC工作機械自身の部品も工作機械を使いつくられています。
英語では〔CNC Machine Tool〕と表記されます。
本サイトでは、金属加工で使われる工作機械をメインに紹介しています。
NC工作機械を使うメリット
NC工作機械は、NC(数値制御)によってコントロールされた、自動加工機械です。
あらかじめ入力されたプログラムをもとに加工をするため、おなじモノを精度よくつくることができます。
NC工作機械導入のメリット・デメリット:引用元: 独立行政法人中小企業基盤整備機構「NC工作機械導入のメリット・デメリット」
複雑な形状のものを多量に生産することで、コストダウンが図れるメリットがあります。
しかし、設備投資や独特の段取りが発生することにより、新たな費用も発生します。
企業の生産特性に合った導入を行うことで、NC工作機械の特徴を最大限に発揮することが期待できます。
また自動工具交換システムや、加工ワークの自動搬送システムと組み合わせることで、24時間無人で稼働することもできます。
現在、日本の工作機械生産額の約90%以上は、NC工作機械が占めています。
多品種・大量生産の現場には欠かせない機械です。
NC工作機械 7つのメリット
汎用工作機械では、熟練作業者によるハンドル操作で金属を加工。
大量生産には向いていませんが、試作や少量多品種の加工現場で活躍しています。
「NC工作機械」と「CNC工作機械」の違い
NC工作機械を検索すると、「CNC工作機械」と表記されていることがあります。
NCとCNCは、制御装置の違いによって区別されています。
〈NC工作機械とは〉
NC:数値制御〔Numerically Controlled〕の略
制御の演算にトランジスタや演算回路を使った装置で、1950年ごろに登場。
古いNCではプログラムの入力に、穴の空いた紙テープ(パンチシート)を使っていました。
〈CNC工作機械とは〉
CNC:コンピュータ数値制御〔Computerized Numerically Controlled〕の略
NCの演算部をコンピュータに置き換えた装置で、1980年ごろに登場。
加工現場でよくみかける「制御コントローラ」や「タッチパネル」を備えています。
現在ではコンピュータを搭載している〔NC〕も数多くあり、〔CNC〕と 厳密に区別はされていません。
「NCフライス盤」などのむかしながらの工作機械は〔NC工作機械〕、「マシニングセンタ」などの最新機種は〔CNC工作機械〕とよばれることが多いです。
工作機械の「母性原理」とは
工作機械でつくられる部品の加工精度は、工作機械本体の精度を超えることができません。
これを「工作機械の母性原理」とよびます。
母性原理:引用元: 鹿児島工業技術センター「実際の超精密切削加工」
超精密切削加工にも,機械加工の基本である加工の母性原理は存在します。
これは,被削材の精度は工作機械の精度が限度であり,それ以上の精度は得られないという原理です。
つまり,超精密切削加工では0.01ミクロン以上の加工精度を求められるので,工作機械には,それと同等か,もしくはそれ以上の精度がなければ超精密切削加工は実現しないことになります。
工作機械の部品自体も「工作機械」でつくられるため、精度の高い工作機械は生まれないようにも思われます。
しかし実際には熟練職人による「きさげ加工(平面出しなどの超精密加工)」や、選別された精密部品、NC補正技術によって、高い精度の工作機械がつくられています。
マシニングセンタやNC旋盤など、メイドインジャパンの精度の高いNC工作機械は、アジアをはじめ世界各国で活躍しています。
工作機械の市場動向(2022-2023年版)
(一社)日本工作機械工業会がまとめる「工作機械受注統計」は、景気の先行指標としても広く知られています。
引用元:工作機械 | 長野経済研究所
近年の受注統計は、2020年からのコロナ禍(COVID19)の影響で、工場稼働の低下や部品供給の滞り、設備投資のストップもあり、1兆円を割り込みましたが、2021年からは3年ぶりに回復。
2022年に入ってからは、上半期に過去最高を更新するなど、北米・欧州・中国などの外需に支えられながら大きく伸長しています。
金属加工の現場で活躍しているNC工作機械
NC工作機械にはマシニングセンタをはじめ、NC旋盤やNCフライス盤など、さまざまな機種があります。
ここでは、金属加工の現場で活躍している「NC工作機械」を紹介します。
切削加工で活躍するNC工作機械
切削工具を使って金属を削る「切削加工」で活躍しているNC工作機械です。
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研削加工で活躍するNC工作機械
砥石を使って金属を削る「研削加工」で活躍しているNC工作機械です。
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研磨加工で活躍するNC工作機械
砥石や研磨剤を使って金属を磨く「研磨加工」で活躍しているNC工作機械です。
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特殊加工で活躍するNC工作機械
光・電気・水を使って金属を削る「特殊加工」で活躍しているNC工作機械です。
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専用加工で活躍するNC工作機械
特定の部品の加工に特化した「専用加工」で活躍しているNC工作機械です。
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NC工作機械を使いこなす
NC工作機械は、さまざまに進化しています。
かんたんなタッチパネル操作(対話式NC)や、AIを搭載したCNC工作機械も登場しています。
しかしプログラムさえできれば、「だれでも」すぐに精度の高い加工ができるわけではありません。
最新のF1カーでもドライバーの技量が必要なように、NC工作機械を使いこなすためには、「熱変位」などの機械特性や加工知識、さまざまな周辺機器の知識が必要になります。
熱変位の原因は、主軸・サーボモータなどの自己発熱から、加工熱・切削油などの外部環境までさまざま。長時間悪環境下で金属を削るCNC工作機械では、熱変位の防止だけでなく、いかに熱変位量を補正しながら加工精度を保っていくかが重要となります。
工作機械は加工誤差の7割以上が熱の影響であることが知られている。引用元:切削液の影響を考慮した工作機械の熱変位補償に関する研究 抄録|2021年度精密工学会春季大会
工作機械のトレンド 1 ~AIの活用~
AI(人工知能:アーティフィシャル・インテリジェンス)は、機械学習やディープラーニングを活用し、コンピュータや機械自らが考えて判断する技術です。大量のデータからパターンを学び、自らのパフォーマンスを向上させる特徴を持っています。
AIは自動運転車や音声認識など、日常生活から産業分野まで多くの業界で革新をもたらしており、工作機械業界も例外ではありません。
AIは、工場ではどのように活用できますか?引用元:AIは、工場ではどのように活用できますか?
AIの活用が進むと、技術の水準や生産性などを飛躍的に向上させます。産業用ロボット、設備保守、官能検査など、中小企業にとっても、広い活用範囲があります。一方、学習モデルの準備や費用面においては、事前に留意が必要です。
工作機械では、加工プロセスの効率化や機械メンテナンスの最適化など、さまざまな場面でAIの活用が急速に進んでいます。また生産現場の迅速な意思決定や、生産データの活用を支える技術としても期待されています。
工作機械におけるAIの活用トレンドをご紹介します。
加工プロセスの最適化
加工中のビビり振動をモニタリングし、AIで異常診断することで、不良品の発生を防ぎつつ、加工精度を向上させることができます。また、AIを使い最適な加工条件を見つけ出すことで、工具の寿命を延ばし、交換頻度を下げることも可能です。
AIの導入は、生産性向上において大きなインパクトがあります。
ライン停止の防止
工作機械をリアルタイムでモニタリングし、AIで異常を検知することで、故障の発生前にメンテナンスを行うことができ、ライン停止を最小限に抑えることができます。例えば、主軸やポンプの異音、機械の電圧変化をもとにAIが故障を予兆し、重大なトラブルを回避することが可能です。
ライン停止による大規模な損失を減らすことが期待されています。
検査工程の省略
加工中のデータから製品の品質を予測することで、検査工程を省略しつつ品質を担保することが可能です。検査レスにより、従来の抜き取り検査や全数検査にかかる時間とコストを削減し、生産性の向上に貢献します。
AIの導入が、生産プロセスの合理化に大きな影響を与えようとしています。
切粉除去の効率化
機内の状態をAIで解析し、ピンポイントで切粉を除去したり、ワーク交換時に画像AIで切粉の有無を検出し、ロボットで洗浄を行うなど、AIを使った切粉除去の取り組みも進んでいます。
切粉によるトラブルを減らすことで、長時間の無人運転が可能になり、大型ワークの休日や夜間の無人加工が実現します。
プログラムの生成
生成AIによる加工プログラムの自動生成は、オペレータ不足の現場に変革をもたらす技術として期待されています。
CADデータから加工プログラムや指示書などを自動生成することで、試作や生産ラインの立ち上げ期間を短縮することができます。
工作機械のトレンド 2 ~EV向け部品加工~
工作機械市場の約30%を占める自動車産業ですが、EVの登場でこれまで日本の強みとされてきた内燃機関向けの精密加工が大幅に減少しています。一方で、モータ・バッテリー関連の部品や、金型、電子部品に使われる半導体、さらにその製造装置部品など、新たな加工ニーズも生まれています。その市場は大きく変化しています。
工作機械におけるEV向け部品加工のトレンドをご紹介します。
EV用モータケース
モータケースや、主要部品をパッケージしたeアクスルには、軽量化のためアルミが使われており、さらに薄肉化・複雑化が進むなど、加工難度が上がっています。加工精度はモータ性能や静粛性に大きく影響するため、大径や深穴加工に特化した加工機が増えています。
eアクスルには大きなものが多いですが、サイズさえ合えば、軽切削に適した小型機械が有利です。30番の機械に回転テーブルを組み合わせた割り出し5軸機や、切粉を直下に落とすセンタートラフ構造を採用した、省スペース機も注目されています。
EV用モータコア
EV用モータの心臓部にあたるコア材のプレス加工に欠かせないのが、モータコア用金型です。モータコアは、ケイ素鋼板を金型で打ち抜き、積層して製造されます。そのため高性能なモータコアの量産には、ピッチ精度の高い精密金型が欠かせません。
モータコア用金型の加工には、放電加工機が使われますが、中には100時間以上に及ぶ加工もあり、工作機械メーカーでは、自動結線機能やロボットレールが不要なAMR(自律走行搬送ロボット)、協働ロボットとの連動、加工後ワークの機内計測など、長時間の無人運転に対応した自動化がトレンドになっています。
EV用バッテリー
リチウムイオン電池などのバッテリーやバッテリーケースの製造は、モータコアと同様にプレス加工が主流です。工作機械においては、切削加工のトレンドが、従来のトランスファーラインによる量産から金型加工へシフトしており、超精密加工ニーズに応えるハイエンドのマシニングセンタが改めて注目されています。
長時間に及ぶ金型加工では作業者の負担が大きいため、放電加工機と同じく、ロボットを活用した自動化システムや省人化のニーズが高まっています。
軽量素材
EVは大容量のバッテリーを積むためガソリン車と比べが重く、航続距離の短さが課題です。
電費(ガソリン車でいう燃費)向上がEV普及のカギとなるなか「部品の軽量化」が大きな開発テーマとなっており、アルミやCFRPなどの軽量素材へのシフトが進んでいます。
アルミ
アルミは鉄に比べ比重が約1/3と軽く、車体に全面的に採用することで重量を25~30%軽減できるといわれています。
アルミはリサイクルのしやすさから、動力系や各種ケースなどに多く使用されていますが、難削材としても知られ、量産加工においていかに効率よく・精度よく削るかが重要となっています。
CFRP
外装には、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の活用が進んでいます。CFRPは軽量でありながら高い強度と機能性を合わせ持つ素材です。
サーボプレスによる成形後のカットや穴あけでは、バリ(繊維残り)や層剥離(デラミネーション)が発生しやすく、工具の選定や最適なパス設定がより重要となっています。
電子部品
自動運転に必要なセンサや車載カメラ、デジタルコックピットなどの電子部品の増加にともない、半導体業界向けの加工や、電子部品向け金型などの加工が増加しています。
例えば半導体においては、よりエネルギー効率が高いパワーデバイスのニーズが増加しており、SiC(炭化ケイ素)の加工が増加。また半導体製造装置部品の加工では、石英や高機能セラミックスなどの脆性材の加工も増えており、これまでの自動車部品加工とは異なるノウハウが求められています。
環境への配慮
EVでは、その製造工程にも環境配慮が求められます。加工メーカーにおいても、加工ロスの削減や切削工具の廃棄削減、クーラント量の最適化、機械のアイドリングストップなど、工場全体で脱炭素化に取り組まなければなりません。
工作機械メーカー各社では、作動油を使わずCO2排出を削減する機種や、熱エネルギーを電力として再利用する機種など、省エネ提案も多くなっています。また環境への取り組みは、補助金や投資優遇にもつながります。
取引先によっては、サプライチェーン全体で省エネに取り組まなければならないケースもあり、環境配慮は必須になっています。
古い工作機械が、最新のNC工作機械に生まれ変る「レトロフィット」とは?
レトロフィットとは、古くなった工作機械を改修して、最新の機械にリニューアルする技術です。
主軸やサーボモータを最新のモノに換装したり、ATC(工具自動交換システム)やNCを後付けすることで、最新鋭の工作機械にも負けない機械に生まれ変わります。
古い機械をそのまま活かせるため、設備の更新に追われる工場でも活用されています。
生産ラインを大幅に変更する必要もありません。
NC工作機械のレトロフィットには、高い技術力と経験が必要になるため、対応できるエンジニアリング会社は限られています。
工作機械業界ではたらく
工作機械業界の求人は非公開案件(就職エージェントを通しての求人)が多いのが特徴です。
そのため工作機械業界に精通していないと「どこにメーカーがあり、どんな仕事があるのか…」なかなか情報が手に入りづらいのが現状です。
そこで工作機械業界ではたらくためのお役立ち情報をまとめました。
就職活動や転職活動のお供にお役立てください。
NC工作機械とは?まとめ
この記事では、NC工作機械のメリットをはじめ、金属加工の現場で活躍しているNC工作機械や、「NC」と「CNC」の違いを通して、NC工作機械について解説しました。
現場でみるNC工作機械の名前や役割がわかるようになると、ものづくりはますます楽しくなります。
本記事が、ものづくりの世界にさらに踏み込むきっかけとなればうれしいです。