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アルミ合金とは?アルミ合金の種類とアルマイト処理について

アルミ合金とは?アルミ合金の種類とアルマイト処理について

更新日:
2023/02/22 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
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塑性加工金属材料除去加工
     

純粋なアルミニウムは、金属のなかでもやわらかいことから、製品に使うには強度が不足します。そこでアルミニウムの欠点を補うため、さまざまな材料を添加したものがアルミ合金です。
アルミ合金は工業製品から日用品まで、幅広い分野で使われています。

この記事では、アルミ合金の種類別の特徴や用途、アルマイト処理やアルミ合金の切削加工のポイントについて解説します。

アルミ合金(アルミニウム合金)とは

アルミ合金(アルミニウム合金)は、アルミニウムを主な成分として、銅やマンガン、亜鉛、ニッケルなどの材料を添加することで、強度や耐久性などを向上させています。

アルミの名前の付け方は?
アルミ合金について|アルミの名前の付け方は?

アルミニウムは主に「展伸用合金」と「鋳造法合金」に分けられており、それぞれに名前のルールが決まっています。たとえば展伸用合金はアルミを表す「A」の後に4桁の数字が付けられており、A2011やA5052、A7075などがあります。
一方で鋳造用合金の場合は、アルファベットと数字が組み合わされた名前が付けられます。鋳造用合金は「AC」、ダイカスト用合金は「ADC」が付けられているため、名前から用途を判別することができます。

アルミ合金のメリットとデメリット

アルミ合金について|アルミ合金のメリットとデメリット

アルミ合金には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

アルミ合金のメリット

アルミ合金は、比強度(ひきょうど)に優れています。軽い割に強度が高いため、軽量化が必要な製品に最適です。
低温環境下における強度やじん性の低下、さらに脆性破壊が起きにくく、非磁性のため磁気の影響を受ける環境下でも使用可能です。

アルミ合金のデメリット

アルミ合金は融点が低いため、耐熱性が必要とされる用途では強度が低下しやすく、コストが高い点がデメリットとなります。
強度や硬度の絶対値はそれほど高くないため、鉄鋼系の材料よりも変形しやすい材料といえます。

アルミとマグネシウム・チタンとの比較

アルミ合金について|アルミとマグネシウム・チタンとの比較

アルミと比較される材料に、軽量の金属である「マグネシウム」や「チタン」があります。

マグネシウムとの比較

マグネシウムは、実用化されている金属のなかでもっとも軽量で、マグネシウム合金として使われます。軽量で「強度」「振動吸収性」に優れています。
アルミニウムよりも切削性に優れますが、塑性加工がむずかしく圧延や押出加工は困難です。発火しやすいリスクがあり、切削時には切粉からの発火に注意が必要です。

アルミニウム合金に代わる次世代「マグネシウム合金」:
現在、強度と軽さを兼ね備えた「アルミニウム合金」が新幹線をはじめとした鉄道のほか、自動車や航空機などの輸送機器の構造材料として多用されている。しかし、さらなる軽量化が実現すれば、輸送機器の燃費が向上し、二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に削減できる。そこで、期待されているのが、アルミニウム合金の比重の3分の2と、実用金属の中で最も軽い「マグネシウム合金」の実用化だ。
引用元:強くて軽く安価な「マグネシウム合金」|国立研究開発法人 科学技術振興機構

チタンとの比較

チタンは軽量かつ高強度で、「耐食性」や「耐熱性」に優れている金属です。チタンの溶融温度は鉄よりも高く、さらに金属アレルギーを起こしにくいため、生体親和性の高い材料として注目されています。
また酸化チタンはさびにくく、その耐食性は海水中において白金と同程度といわれています。

一方で、強度が高く熱伝導率も高いことから、切削加工では「難削材」として知られており、工具の摩耗や切粉の発火には注意が必要です。

アルミ合金の種類

アルミ合金について|アルミ合金の種類

展伸用のアルミ合金は、1000系~7000系に分類されます。それぞれの特徴や用途について解説します。

〈アルミ合金の種類〉

純アルミニウム(1000系)

1000系は、99.0%以上の純度の純アルミニウムです。
純アルミニウムは、アルミ箔やアルミ缶などの身近な素材に使われており、1円硬貨の材料も1000系です。加工性・溶接性・耐食性に優れており、代表的な材料には、A1100やA1200があげられます。

Al-Cu系アルミ合金(2000系)

2000系は「銅」を添加したアルミ合金で、鋼材に匹敵する高い強度を持ちます。
2000系の代表的な材料であるA2017(ジュラルミン)は、航空機の材料として知られています。
純アルミと同様に切削性に優れていますが、溶接性や溶融性は低く、さらに耐食性も高くないため、使用環境には注意が必要です。

Al-Mn系アルミ合金(3000系)

3000系は「マンガン」を添加したアルミ合金で、加工性や耐食性を維持しつつ、強度を高めています。
純アルミの置き換えとして使われることもあり、アルミ缶の材料としても使われています。
代表的な材料には、A3004やA3104があげられ、カラーアルミや屋根板にも採用されています。

Al-Si系アルミ合金(4000系)

4000系は「ケイ素」を添加したアルミ合金です。
他のアルミ合金とくらべ溶融温度が低いため、溶接ワイヤーに使われています。また耐熱性や耐摩耗性が改善しており熱膨張率も小さいため、ピストンやシリンダーヘッドにも採用されています。
代表的な材料には、A4032やA4043があり、耐熱性の向上が期待されます。

Al-Mg系アルミ合金(5000系)

5000系は「マグネシウム」を添加したアルミ合金です。
耐食性や加工性をそのままに、強度・溶接性を向上させています。
マグネシウムの添加量が少ないA5N01やA5005は装飾用や建材用、中程度のA5052はアルミ船舶や車両、さらに添加量の多い材料はプラントの構造用材などで使われています。

Al-Mg-Si系アルミ合金(6000系)

6000系は「マグネシウム」や「ケイ素」を添加したアルミ合金で、強度や耐食性が優れています。
代表的な材料にはA6061やA6063があげられ、鉄よりもやわらかく、建築用サッシなどの押出加工に適しています。

Al-Zn-Mg系アルミ合金(7000系)

7000系は「亜鉛」や「マグネシウム」を添加した合金がです。
アルミ合金のなかでももっとも強度が高く、航空機の材料などに採用されるA7075(超々ジュラルミン)も7000系に含まれます。
応力腐食割れ(経年損傷)が起きやすいため、適切な熱処理が必要で、耐食性や成形性が良くないことがデメリットです。

その他(8000系)

1000系~7000系に含まれないアルミ合金を、総称して8000系とよびます。
たとえばアルミにリチウムを加えたアルミ合金は、低密度でありながら高い剛性で知られています。他にも、鉄を添加して強度や圧延加工性を付与したものなど、さまざまな8000系アルミ合金があります。

アルミ合金のアルマイト処理

アルミ合金について|アルミ合金のアルマイト処理

アルミニウムは、空気中の酸素と結合すると薄い酸化被膜を形成し、さびにくくなります。
この酸化被膜を人工的につくりだし、耐久性を向上させる処理を「アルマイト処理」といいます。アルマイト処理を行うことで、アルミの弱点である「耐摩耗性」や「耐食性」の向上が可能です。また表面の傷や摩耗に対しても強くなる点も、アルマイト処理のメリットです。

アルマイト処理は、主に「白アルマイト」「硬質アルマイト」「カラーアルマイト」に分類できます。

すべてのアルミにアルマイトできる?
アルミ合金について|すべてのアルミにアルマイトできる?

アルミ合金は、そのほとんどがアルマイト処理をすることができますが、A2021・A2017・A2024などは、アルマイトの効果が十分に出ない場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。

〈アルマイト処理の種類〉

白アルマイト

通常のアルマイト処理は、製品の表面が白っぽく見えることから「白アルマイト」とよばれます。
汎用性が高いため、家庭用品や工業製品など、幅広く使われています。

硬質アルマイト

硬質アルマイトは、さらに表面の硬度を強化したアルマイト処理です。
自動車や航空機など、高い耐摩耗性や強度が求められる製品に適用されています。

カラーアルマイト

アルマイト処理は、染料を吸着させることで着色が可能です。これを「カラーアルマイト」とよびます。
染料の種類や濃度、被膜の厚さを調整することで、色の種類や濃さを調整することができます。デザインが重視されるインテリア製品や、化粧品の容器などに採用されています。

アルミ合金の切削加工のポイント

アルミ合金について|アルミ合金の切削加工のポイント

アルミ合金はやわらかい材料であり、切削加工において被削性(削りやすさ)のよい材料として知られています。一方で、材料の融点が低く延性が大きいため、切削加工時にワークや工具に溶着しやすく、仕上げ面の悪化やバリの発生などの課題が発生します。

アルミ合金について|ここで紹介しているポイントは、アルミ合金の特性を踏まえた一般的な事例です
ここで紹介しているポイントは、アルミ合金の特性を踏まえた一般的な事例です。
実際の加工では、アルミ合金の種類・工作機械・切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。

アルミ切削時の工具選定ポイント

アルミ合金を切削する際は、溶着による「構成刃先」の発生を防ぐために、切削温度を低くおさえる必要があります。ポジティブ形状のすくい角で、切粉の排出空間が広い工具を選定するのがポイントです。
溶着を防ぐには、工具の表面摩擦係数が低いダイヤモンドコーティングや、DLCコーティングを施した工具の採用も効果的です。

アルミ切削時の加工ポイント

アルミ合金を切削する際は、切削速度を高速にし、クーラントで刃先を冷却しながら加工を進めるのが効果的です。切削温度を低く保つことで、溶着の発生を防ぎます。
クーラントのなかにはアルミ合金と化学反応を起こしてしまうものがあるため、材料にあわせたクーラントの選定が重要です。

〈 アルミ合金 の関連キーワード〉

塑性加工 金属材料 除去加工

この記事の監修者

甲斐 智(KAI Satoshi)
甲斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
15年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる
文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」参加企業

2020年に「はじめの工作機械」を立ち上げ(はじめの工作機械とは

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