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旋削加工とは?旋削加工の種類と旋削で使われるバイトを解説

旋削加工とは?旋削加工の種類と旋削で使われるバイトを解説

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2020/05/22 ) 著者: 甲斐 智
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工具旋削除去加工
     

旋削加工(せんさく)は、回転する加工ワークに〈固定した刃物〉をあてて削る「除去加工」のひとつ。

自動車シャフトの切削からスマホ用精密部品の削り出しまで、 さまざまな業界で広く使われている、金属加工を代表する加工方法 です。

この記事では、旋削加工で使われる工作機械やバイトの種類、「構成刃先」による加工不良の原因などを解説しています。

旋削加工について|旋削加工は、丸ものとよばれる「円筒部品」の加工に適しています!
旋削加工は、丸ものとよばれる「円筒部品」の加工に適しています!

旋削加工ってどんな加工?

旋削加工(せんさく)は、回転する加工ワークに〈固定した刃物〉をあてて削る加工方法です。
「バイト」とよばれる刃物を使い、加工ワークの外周や端面などを削り出します。

丸ものとよばれる、円筒部品の加工に適しています。

旋削加工で使われる工作機械

旋削加工について|旋削加工で使われる工作機械

旋削加工には、さまざまなNC工作機械が使われます。
なかでも「NC旋盤」を使った加工が多いため、現場では[旋削加工≒旋盤加工]ともよばれます。

旋盤加工:
「丸型の金属加工部品のほとんどは旋盤加工されています。私が手がけるのは直径0・3㎜~500㎜まで、材質は各種あり形状も多様で、普段目にする車のホイールやねじなども旋盤によるものです。一般的なものは大量生産で加工しますが、一品物で精度を求められるものは、目と手と耳で確認しながら手作りします」
引用元:目と手で確認しながら高い精度を実現|厚生労働省

旋削加工の種類について

旋削加工について|旋削加工の種類について

旋削加工の種類は、大きく5つに分けられます。
加工方法によって、さまざまなバイトを使い分けます。

外周加工

旋削加工について|外周加工

加工ワークの外周を削る旋削加工です。
加工には、片刃バイトや剣バイトを使います。

外丸削り
旋削加工について|外丸削り

加工ワークの外周を削り、外径を小さくします。
もっとも基本的な加工方法です。

段削り
旋削加工について|段削り

加工ワークの外周を削り、段差を付けます。
削られた加工ワークは、階段状になります。

テーパ削り
旋削加工について|テーパ削り

加工ワークの外周を斜めに削り、勾配を付けます。
削られた加工ワークは、円すい形になります。

曲面削り
旋削加工について|曲面削り

加工ワークの外周を曲面状に削ります。
削られた加工ワークは、曲面・球面状になります。

溝入れ
旋削加工について|溝入れ

加工ワークの外周に溝をつくります。
加工には、突っ切りバイトを使います。

突切り
旋削加工について|突切り

加工後のワークを切り落とします。
溝入れとおなじ要領で、加工ワークの中心まで切り込みを入れます。

ローレット切り
旋削加工について|ローレット切り

加工ワークの外周に、ギザギザの模様を付けます。
ローレットは、つまみや部品の滑り止めとして使われます。

端面加工

加工ワークの端面を削る旋削加工です。
加工には、片刃バイトや剣バイトを使います。

端面削り
旋削加工について|端面削り

加工ワークの端面を削り、平面に整えます。
反対側の端面を削る場合は、加工ワークを持ち替える必要があります。

正面削り
旋削加工について|正面削り

加工ワークの端面を削り、段や溝をつくります。

面取り
旋削加工について|面取り

加工ワークの角にできたバリを削り落とします。

穴あけ加工

加工ワークに穴をあける旋削加工です。
加工には、ドリルや中ぐりバイトを使います。

穴あけ
旋削加工について|穴あけ

加工ワークの中心に穴をあけます。
タレット(旋回式の刃物台)や、心押台にドリルを装着して加工します。

中ぐり(なかぐり)
旋削加工について|中ぐり

加工ワークにあけた穴をくり広げます。
直径の大きな穴の加工や、内面の仕上げで使われます。
(中ぐり加工については、こちらでもご紹介しています)

ねじ加工

加工ワークの外周や内面に「ねじ山」をつくる旋削加工です。

おねじ切り
旋削加工について|おねじ切り

加工ワークの外周に、おねじを削り出します。
加工には、おねじ切りバイトを使います。

めねじ切り
旋削加工について|めねじ切り

加工ワークの内面に、めねじを削り出します。
加工には、めねじ切りバイトを使います。

総形加工

あらかじめ「所定のカタチ」に成形された工具を使って削る旋削加工です。
複雑なカタチを、効率よく削ることができます。

加工には、総形バイトが使われます。

ポリゴン加工

加工ワークと工具を同期回転させながら、多角形に削る旋削加工です。
工具の刃先の数によって、さまざまな多面体の加工ができます。

バイトの種類について

旋削加工について|バイトの種類について

バイトは、棒状の金属の先に切れ刃をもった、旋削加工用の工具です。
NC旋盤以外にも、「ターニングセンタ」や「削り盤」など、さまざまな工作機械で活用されます。

ここでは、代表的なバイトの一部を紹介します。

片刃バイト

旋削加工について|片刃バイト

もっとも基本的なバイトです。
外周加工や端面加工など、さまざまな旋削加工で広く使われます。

剣バイト

旋削加工について|剣バイト

刃先が剣のようにとがったバイトです。
曲面削りやテーパ削りなど、複雑なカタチの旋削加工で使われます。
剣先によって、真剣バイト・平剣バイト・斜剣バイトなど、さまざまな種類があります。

突切りバイト

旋削加工について|突切りバイト

薄い形状のバイトです。
溝入れや突切りなどに使われます。

中ぐりバイト

旋削加工について|中ぐりバイト

中ぐり加工で使われる丸棒のバイトです。
「ボーリングバー」ともよばれ、NC中ぐり盤でも利用されます。

ねじ切りバイト

旋削加工について|ねじ切りバイト

ねじ切りで使われる専用のバイトです。
先端は、一般的なねじ山とおなじ〈60°〉になっていて、数回に分けてなぞるように切り込みます。
おねじ用とめねじ用があります。

ローレット工具

旋削加工について|ローレットホルダー

ローレット切りで使われる専用のバイトです。
加工ワークの外周に、つまみや部品の滑り止めとして使われる「ローレット」を刻みます。

ロータリーバイト

交換式の回転チップを搭載したバイトです。
旋削中にチップが回転するため、チップの刃先全周をムダなく使うことができます。

バイトの構造について

旋削加工について|バイトの構造について

バイトは、「シャンク」とよばれる本体と「チップ」とよばれる切れ刃で構成されています。
構造によって、3つに分けられます。

スローアウェイバイト

旋削加工について|スローアウェイバイト

使い捨てのチップをねじで固定した、刃先交換式のバイトです。
ほとんどのNC旋盤で採用されています。
チップには、超硬合金サーメットダイヤモンドなどが使われます。

チップに模様?チップポケットとチップブレーカー
旋削加工について|チップに模様?チップブレーカーとは
チップには「チップポケット」とよばれる溝や、「チップブレーカー」とよばれる模様がついたものがあります。
これらの模様には切粉をカール・切断する機能があり、チップポケットに切粉を一旦溜めてから、チップブレーカーで細かく処理することで、切粉のからまりや付着による加工不良を防ぎます。

無人化が進む「NC旋盤」や「タレット旋盤」に欠かせない機能です。

ロウ付けバイト(ろう付け)

旋削加工について|ロウ付けバイト

シャンクにチップをロウ付けしたバイトです。
「付け刃バイト」ともよばれます。

ロウ付け(ろう付け)とは?
旋削加工について|ろう付け作業
引用元:ろう付け作業|都立職業能力開発センター
ロウ付け(ろう付け)は金属の接合技術のひとつです。
母材よりも融点の低い金属(銀ロウ・はんだなどのロウ材)を溶解させ、異種金属同士を接合します。
強い接合強度で、超硬・タングステン・サーメットなどの刃先を工具に接合することができます。

ソリッドバイト

高速度工具鋼(ハイス)超硬合金から削り出された、シャンクとチップの一体成型のバイトです。
摩耗した刃先は、NC工具研削盤で再研磨して使うことができます。
「ムクバイト」や「完成バイト」ともよばれます。

旋削加工による切粉の種類

旋削加工について|旋削加工による切粉の種類

旋削加工(主に旋盤)で発生する切粉のカタチは、金属材料の種類や加工の良し悪しによってさまざまに変わります。

切粉はワークの密着不良など加工不良の原因となるため、切削油(クーラント)による確実な洗浄がかかせません。

旋削加工について|旋削加工による切粉の種類
引用元:切屑の種類|独立行政法人 産業技術総合研究所

流れ形(切粉の種類)

流れ形の切粉は、バイトのすくい面から流れるようにして排出される切粉です。
理想的な切粉で、切削抵抗のバラツキが少ない良好な仕上げ面になります。
(柔らかいワークで現れやすい切粉です)

切粉がつながったまま排出されるため、チップブレーカなどによる切断が必要です。

せん断形(切粉の種類)

せん断の切粉は、せん断面から短くバラバラ(粉状)に排出される切粉です。
切削抵抗が不安定なため、仕上げ面はやや劣ります。
(硬くてもろいワークで現れやすい切粉です)

むしれ形(切粉の種類)

むしれ形の切粉は、ワーク表面からむしられるように排出される切粉です。
切削抵抗が大きくキズあとも残るため、仕上げ面は劣ります。

切削速度を上げ切り込み量を浅くすることで、改善できる場合があります。

き裂形(切粉の種類)

き裂形の切粉は、ワーク表面に食い込みながらボロボロと排出される切粉です。
ワーク表面にき裂が生じるため、仕上げ面は最も劣ります。
鋳鉄などのもろいワークで現れやすい切粉です)

切削速度を上げることで、改善できる場合があります。

構成刃先とは?発生の仕組みと対策

旋削加工について|構成刃先とは?発生の仕組みと対策

旋削加工で注意しなければいけないのが、「構成刃物」の発生です。
構成刃先とは、加工ワークの切粉がバイトに溶着し、刃先(切れ刃)の一部になってしまう現象です。

旋削加工について|構成刃先

構成刃先は、発生・蓄積・脱落を繰り返します。
そのためバイトの切り込み量が不規則に変わってしまい、加工精度が低下。

構成刃物が発生すると、切粉で加工ワークの表面を引っかく状態になるため、加工面が粗くなってしまいます。

ステンレス鋼アルミニウムなどの、やわらかい加工ワークで発生しやすくなります。

構成刃物を防ぐには

構成刃先を防ぐには、さまざまな方法がとられます。

1. 加工温度を上げる

加工の表面温度を600℃以上にあげることで、切粉の硬化を防ぎ、構成刃先の付着を防ぎます。
温度は加工ワークの回転数を速くしたり、深く切り込むことで上げることができます。

2. 刃先の角度を大きくする

刃先の角度を大きくすることで、構成刃先の付着を防ぎます。
高温に弱い、高速度工具鋼(ハイス)のバイトに有効です。

3. 刃先の材質を変える

バイトの材質を加工ワークと親和性の低いもに変えることで、構成刃先の発生を防ぎます。

これら以外にも、振動やクーラントを利用し、構成刃物の付着を防ぐ方法もあります。

旋削加工とは?まとめ

この記事では、旋削加工で使われるさまざまな工作機械やバイトの種類を通して、旋削加工の基本について解説しました。

旋削加工はフライス加工とあわせて、切削加工の基本のひとつです。
旋削を知ることで、工作機械の世界を知るきっかけとなればうれしいです。

工具 旋削 除去加工

この記事の監修者

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