A2017とは?アルミ合金A2017(ジュラルミン)の特徴と用途
- 更新日:
- 2023/02/22 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
アルミ合金はやわらかく、強度では他の金属にくらべて劣ります。そこで銅を添加し強度を上げたのがA2017(ジュラルミン)です。自動車や航空機など、さまざまな業界で機械部品のさらなる軽量化が求められており、強度が高いジュラルミンの採用が広がっています。
この記事では、アルミ合金A2017の特徴や用途、超ジュラルミン・超々ジュラルミンや、A2017の切削加工のポイントについて解説します。
A2017(ジュラルミン)とは
A2017は、アルミに「銅(3.5%~4.5%)」と「マグネシウム(0.4%~0.8%)」を添加したアルミ合金で、ジュラルミンともよばれます。
金属のなかでも軽量でありながら、高い強度を持つため、自動車部品や産業用機械部品など、強度が必要とされる部品の軽量化に使われています。
ジュラルミン:引用元:昭和日常博物館|北名古屋市役所
ジュラルミンは、アルミニウムと銅、マグネシウムなどとの合金で、軽さを特性とするアルミに銅などを加えることにより強度と軽量化を両立した。その特性から航空機やケースの材料に使われる。
精密機器の輸送に欠かせない「ジュラルミンケース」にも、一部にジュラルミンケースが使われています。(ジュラルミンケースであっても、実際には、A5052やA6061などのアルミ合金でできているものがほとんどです)
引用元:アルミ合金鋳物を熱処理するとなぜ硬くなるの?|公益社団法人 日本鋳造工学会
金属のなかには「時効硬化」という特性を持ったものがあり、最初に発見されたのがジュラルミンといわれています。時効硬化は、材料に対し「加熱」や「冷却」を繰り返した後、時間の経過とともに材料の硬度が増していく現象です。
ジュラルミンは常温下でも時効硬化します。夏場は2~3日、冬場は1週間ほどで硬化していきます。
A2017(ジュラルミン)の特徴
A2017のメリットやデメリットを紹介します。
A2017(ジュラルミン)のメリット
A2017は、アルミが本来持っている「軽量」のメリットを持ちながらも、使う環境によっては、ステンレスや鉄に相当する強度を発揮します。
またA2017は、切削性(削りやすさ)に優れており、切削加工によってさまざまな形の製品を削り出すことができます。
降伏点 | 250~275Nm/mm2 |
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引張り強度 | 390~425Nm/mm2 |
A2017(ジュラルミン)のデメリット
A2017は「銅」を添加することで強度を増している一方、酸化しやすく、アルミ本来の特性よりも耐食性が低下します。そのため腐食が心配される環境下では、「アルマイト処理」などの対策が必要不可欠です。また他の金属と比較して、溶接性が低いことでも知られています。(これはA2017だけではなく、アルミ合金全体の特性です)
アルミの酸化被膜の融点は2000℃程度と高温ですが、酸化被膜に保護されたアルミ合金の融点は600℃程度とそれほど高くありません。そのため、酸化被膜とアルミ合金の融点の差により、材料の溶け落ちや歪みが発生します。
熱伝導率が高いことから、母材の溶融状態が変化しやすいため、溶接時に発生するビードが安定しません。
A2017(ジュラルミン)の主な用途
A2017はアルミ合金のなかでも、特に強度が高い一方、耐食性や溶接性に劣ります。
そのため、腐食の進行しやすい環境下では「アルマイト処理」によって耐食性を向上させつつ、強度が必要となる航空機や船舶、金型やネジ、リベットといった要素部品の材料として使われています。
また軽量で持ち運びしやすいため、スーツケースやテント、椅子などのアウトドア用品のフレームにも採用されています。
さまざまな業界で軽量化が広がっており、今後もA2017のニーズは拡大することが予想されます。
A2024・A7075との違い
ジュラルミンにはA2017以外にも、A2024やA7075があります。
A2017(ジュラルミン)とそれらの材料の違いについて解説します。
〈ジュラルミンの種類〉
A2024(超ジュラルミン)とは
A2024は「超ジュラルミン」とよばれ、A2017(ジュラルミン)にくらべ、銅とマグネシウムの含有率が高く、銅(3.8%~4.9%)・マグネシウム(1.2%~1.8%)が含まれています。
強度と切削性がA2017(ジュラルミン)よりも向上する一方、耐食性は低くなっています。
A2024も耐食性が必要とされる場合には、アルマイト処理が必要になります。
A7075(超々ジュラルミン)とは
A7075は「超々ジュラルミン」とよばれ、銅(1.2%~2.0%)とマグネシウム(2.1%~2.9%)に、亜鉛(5.1%~6.1%)を加えたアルミ合金です。
アルミの優れた軽さを維持しつつも、A2017(ジュラルミン)やA2024(超ジュラルミン)よりも高い強度を持つアルミ合金として知られています。
一方で、切削加工がむずかしい難削材としても知られており、応力腐食割れを起こす恐れがあります。
A2017(ジュラルミン)の切削加工のポイント
A2017は切削性に優れており、実際の加工現場でもマシニングセンタや5軸加工機による切削加工が多く行われています。
A2017を切削加工する際のポイントについて紹介します。
実際の加工では、ジュラルミンの種類・工作機械・切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。
A2017の切削時の温度上昇を防ぐ
A2017の融点は約660℃と金属のなかでは低く、注意せずに切削加工を行うと、切削抵抗による切削点の温度で、アルミが刃具に付着する「溶着」が発生します。
溶着は、加工精度の低下など、さまざまな悪影響を引き起こすため、溶着が発生しないように切削抵抗を抑える必要があります。
すくい角がポジティブな切れ刃の採用や、クーラントによる切削温度の冷却がポイントとなります。
A2017の腐食・変色の対策を行う
A2017を切削する際は、温度上昇をおさえるクーラントの使用が効果的です。しかし、クーラントのなかにはアルミ合金と化学反応を起こし、腐食や変色の原因となるものがあります。
そのためクーラントを選定する際は、アルミ合金の変色に配慮されたクーラントを選定することがポイントです。
またクーラントを使用せず、エアーブロー(圧縮空気)によって冷却をする加工法も効果的です。