
〈JIMTOF2024〉人手不足を解決する工作機械の自動化特集
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2024/11/11 ) 著者: 甲斐 智
多機能化が一段と進む工作機械。近年では、高度な加工技術だけでなく、工具やツーリング、CAD/CAM、センシング技術、ロボットやAIによる加工最適化など、多彩な技術を組み合わせた自動化が、競争力強化のカギとなっています。
この記事では、人手不足を解決する自動化をテーマに、2024年11月5日から6日間に渡り開催された、JIMTOF2024[第32回日本国際工作機械見本市]の会場レポートをお届けします。
切削加工における人手不足の現状〈自動化が急がれる背景〉

切削加工において自動化が急がれる背景には、三つの要因があげられます。
一つめは、少子高齢化による働き手の減少です。製造業全体で若手が急速に減少しています。経済産業省「2022年版ものづくり白書」によると、若年層の働き手の割合は、過去20年で30.6%から24.4%にまで落ち込んでおり、現場では深刻な人手不足で、生産ラインの維持すら難しいケースも見られます。
二つめは、働き方改革です。人手不足が進むなか、従業員の定着がますます重要になっています。現場では、育児休暇や有給休暇の取得が推進され、これまでのように、長時間労働に依存することが難しくなっています。限られた人員で効率を高めるには、自動化が欠かせません。
ものづくり現場で人が抱える課題:引用元:ものづくり白書|経済産業省
具体的な先進ツール利活用という観点からは、中小企業を中心に今後人手不足対策として強化したい取組として多いのがロボットなどの導入による自動化である。単純作業や重労働、危険な作業など、24時間休みなく作業を行えることなどの利点を活かし、作業効率を大幅に向上できる可能性がある。
そして三つめが、多品種少量生産の増加です。消費者ニーズの多様化によって、従来の量産体制では生産が難しくなっているのです。これらのニーズに対応するには、自動化によって多品種の製品を効率的に生産する必要があります。
このように切削加工の現場では、人手不足と多品種少量生産に対応するため、自動化が急務となっているのです。

JIMTOF(ジムトフ)は、2年ごとに開催される世界最大級の工作機械見本市です。世界四大展示会のひとつにも数えられ、最先端技術が世界中から集まります。
第32回を迎える2024年のテーマは「技術のタスキで未来へつなぐ」。過去最大規模の1,262社が出展し、東京ビッグサイト全館を使用した過去最大規模で開催されました。
今回は、JIMTOF2022に引き続き、南棟での「Additive Manufacturing Area」の併催や、YouTubeサイト「JIMTOF INSIGHTS」を通じた新たな情報発信が注目です。また南4ホールには、「アカデミックエリア」を新設し、工作機械業界の次代を担う学生へのアプローチも強化しています。
→JIMTOFについて詳しく解説
人手不足を解決する工作機械の自動化ソリューション

切削加工では、ワークの準備や加工ラインの変更に多くの時間を要します。人手不足の現場では、これらの作業が増えることで生産性が低下し、リードタイム延長やコスト増大など、さまざまな問題が発生しています。そのため、加工ラインを柔軟に変更できるFMSの構築や、ワンチャッキングで加工が完了する「5軸加工機」「複合加工機」の導入、さらには多品種少量生産に対応する治工具の導入が急務となっています。
また近年、特に注目されているのが、協働ロボットと工作機械の連携です。協働ロボットによってワークのローディングや重いワークの搬送を自動化し、「日中は人、夜はロボット」というように、人手に合わせた柔軟な生産体制を構築することが可能になります。

協働ロボットを使ったソリューション自体は以前からありましたが、今回は、ティーチングレスやNCとの連動、ロボットSIerを介さないパッケージ製品など、各社とも「手軽に導入できる」「現場のオペレーターでも簡単に使いこなせる」ことを強調した提案が数多くみられました。
JIMTOF2024にて取材をした自動化に役立つ最新の工作機械と周辺機器をご紹介します。
DMG森精機 × 自動化

DMG森精機では、MX(マシニング・トランスフォーメーション)をテーマに、工作機械を中心とした工程集約・自動化・GXを提案。持続可能な社会の実現に向けて力をいれている。
同社は、パレットにワークを設置したまま待機させることができるパレットプールシステムや、ロボットによるワークハンドリングなど、高度な自動化ソリューションを取り揃えているが、なかでも今回編集部が注目したのが、日本初公開のパレットハンドリングシステム「PH Cell 500」だ。

パレットハンドングシステムは、ワークをパレットごと搬送・交換するシステム。5軸加工機による工程集約と組み合わせることで、多品種少量ワークの自動化が実現する。「PH Cell 500」は、最大可搬重量500kgまで対応。航空機向けのインコネルやタービンなどの大型ワークでも、夜間の無人運転が可能となり、さらなる生産性向上が期待できるという。
- DMG森精機株式会社
オークマ × 自動化

オークマでは「ともに創る明日へのステップ」をテーマに、人手不足や環境負荷低減などの課題解決に向け、5軸制御マシニングセンタや複合加工機を中心とした生産性向上を提案する。
同社は、自社開発によるトータルソリューションを強みとするが、なかでも今回編集部が注目したのが、省人化・自動化を追求した、小型横形マシニングセンタ「MS-320H」だ。

MS-320H は、単体の加工セルから複数台の加工ラインまで、さまざまな生産形態を最小スペースで自動化する、40番の横形マシニングセンタだ。設置スペースを約56%(従来機比)縮小でき、スペースの限られた工場でも、フレキシブルな自動化が実現する。EV向けや半導体製造装置部品をはじめ、建設機械や油空圧機器部品など、幅広い業界の小物加工(250mm以下)の多品種少量生産ニーズに応えるという。
- オークマ株式会社
ヤマザキマザック × 自動化

ヤマザキマザックでは「マザトロールで創るモノづくり革新」をテーマに、モノづくりを革新する複合ソリューションを提案する。
同社では、複合加工機の「INTEGREX」や、対話型CNC「マザトロール」など、独創的な製品開発を強みとするが、なかでも今回編集部が注目したのが、複合加工機に自動化セル「Ez LOADER 125i」を組み合わせた、大型ワークの搬送デモだ。

Ez LOADER 125i は、シリーズ最大の可搬重量を実現したロボットシステムだ。これまで好評だったアプリによる操作性や対話式のプログラミングはそのままに、産業用ロボットを使うことで、可搬重量を約3倍(従来の協働ロボットとの比較)と大幅に向上させた。複合加工機「INTEGREX i-450H」との組み合わせで、45㎏のワークも高速で搬入出が可能になり、大型加工の自動化が実現する。
- ヤマザキマザック株式会社
牧野フライス製作所 × 自動化

牧野フライス製作所では「FIND YOUR WAY TOGETHER」をテーマに、ユーザーの課題解決に寄り添う、自動化ソリューションを提案する。なかでも今回編集部が注目したのが、多品種少量生産から中品種中量生産まで対応する、パレット搬送システム運用ソフトウェア「MAS-NX」だ。

MAS-NXは、機械加工における生産性の最大化を支援するパレット搬送システムの運用ソフトウェアだ。展示では、横形マシニングセンタ「a51nx」とパレット搬送システム「PZ1」を組み合わせた自動化ソリューションを提案。さらにMAS-NXによって、何を段取りして、何の工具を用意すれば良いか、オペレータが事前に把握することができる。これにより、多品種少量生産から中品種中量生産まで、さまざまな状況に対応できるようになるという。

iAssistは、安全柵や走行レールなどの設備を導入することなく自動化ができる、自律走行型の搬送ロボット。展示では、細穴放電加工機「EDBV3」との連携デモを実施。マシニングセンタ、放電加工機、測定機、ツールプリセッタなどの既存の設備間をiAssistでつなぐことで、狭い工場内でも、最小限の設備変更で工程を自動化することができるという。
- 株式会社牧野フライス製作所
安田工業 × 自動化

安田工業では、「Beyond the Future with YASDA : YASDAで未来を超える」をテーマに、誰でも簡単に高精度加工を再現できるソリューションを提唱。なかでも今回編集部が注目したのが、ハイエンド5軸マシニングセンタ「YBM Vi50」とオートワークチェンジャーの組み合わせによる、大型加工の自動化提案だ。

YBM Vi50 は、ワーク最大径650mm、最大重量500kgまで対応した、同社のフラッグシップモデル。今回の展示では、エロワ社製のAWC(オートワークチェンジャー)との連携で、冷間鍛造金型やアルミダイキャスト金型、航空機部品などの大型加工の自動化が実現するという。
- 安田工業株式会社
中村留精密工業 × 自動化

中村留精密工業では「現場の負担を削る」をテーマに、工作機械・自動化システム・ソフトウェアを出展。なかでも今回編集部が注目したのが、2スピンドル2タレットの新製品、CNC複合精密旋盤「NT-Flex」による、工程集約提案だ。

NT-Flexは「100種類の製品をわずかなスペースで」をテーマにした複合加工機。コンパクトな省スペース機ながら、補助ホルダーを使うことで最大96本の工具(2タレット)をセットすることができ、段取り回数の削減で、多品種少量生産の生産性向上に応える。
また加工中のアイドルタイムを短縮する「クロノカット」も搭載しており、さらなる生産性向上が実現するという。
- 中村留精密工業株式会社
松浦機械製作所 × 自動化

松浦機械製作所では、「Let’s Start with Matsuura」をテーマに、自動化に踏み出すユーザーの不安や課題を解消するソリューションを提案する。なかでも今回編集部が注目したのが、5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72-42V」と協働ロボットによる、変種変量生産の自動化だ。

MAM72は、大容量工具マガジンと 32面のマルチパレットシステムで変種変量生産を実現する同社の5軸フラグシップ機だ。展示では、パレットマガジンの横に協働ロボットを設置し、量産品のさらなる連続加工を提案。今まで以上の長時間無人運転が実現するという。また土日も無人で稼働することを踏まえ、クーラント管理システムも備える。クーラントの温度と濃度を管理し、自動供給ができるという。

MX-420は「はじめてでも安心・簡単5軸」をコンセプトにした、同社のエントリー機だ。フロアパレットシステムと90本の工具マガジンで、設置場所の限られた工場でも、省スペースな自動化システムを構築することができるという。
- 株式会社松浦機械製作所
JIMTOF2024 – 工作機械の自動化提案まとめ
この記事では、JIMTOF2024にて取材をした工作機械の自動化提案をご紹介しました。
自動化は、人手不足への対応だけでなく、受注機会の増大や新たな市場開拓にもつながります。自動化を取り入れ他社との差別化を図ることが、事業継続のカギとなってくるでしょう。
さらなる工作機械の自動化に向けて、今後の技術の進展から目が離せません。
(製品の最新情報については、必ず各メーカーの公式サイトよりご確認ください)