〈JIMTOF2022〉切削におけるバリ取りの効率化・自動化提案|vol.4
- 更新日:
- 2024/01/10 (公開日: 2022/11/14 ) 著者: 甲斐 智
多様化する工作機械。工作機械のコアとなる機械技術は「切削」「研削」「研磨」といった加工技術だけでなく、切削工具やツーリング・切削油・CAD/CAM・センサなどからなる総合技術です。
この記事では、2022年11月8~13日まで6日間に渡り開催されたJIMTOF2022[第31回日本国際工作機械見本市]の会場レポートを、5つのテーマに分けてお届けします。
Vol.4ではJIMTOFの会場で取材した、バリ取りに役立つ最新技術をご紹介します。
〈JIMTOF2022 レポート一覧〉
切削における自動車部品加工のトレンド
工作機械市場の大きなシェアを占める自動車部品加工。自動車業界では、EV(電気自動車)の普及によって転換点を迎えており、切削に求められる精度や効率もより高くなっています。
各国の電気自動車の新車販売比率:引用元:資源エネルギー庁|自動車の“脱炭素化”のいま(前編)
電気自動車(EV)に限ってみると、グローバル、特に欧州と中国では、販売台数が着々と伸びています。新型コロナウィルスの影響を受けた優遇策の強化も、急速な販売台数増加の一因となっています。一方で日本をみると、EVの販売比率は伸び悩んでいる状況です。こうした現状も踏まえ、あらゆる支援策が総動員されて、電動車の普及が推し進められています。
自動車のEV化によって、部品点数は40%以上減少するといわれていますが、モーターや半導体関連の加工において、切削の需要が増加しています。
近年ではEVの電費向上のため、車体軽量化がひとつの大きなテーマととなっており、アルミやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の切削が増加。それにあわせ、バリ取りの需要も増えています。
JIMTOF(ジムトフ)は、2年に一度開催される、工作機の国際展示会です。世界四大工作機械見本市に数えられ、最新の工作機械技術が世界中から集結。第31回を迎える2022年は、過去最高の1000社以上もの企業が出展し、6日間の総来場者数は 114,158名 にのぼりました。
→JIMTOFについて詳しく解説
バリ取り工程の効率化・自動化提案
少子高齢化が続く金属加工業界では、バリ取り工程の人手不足でラインが停滞してしまうことも多く、バリ取りの効率化・自動化が急務となっています。
そのため、これまでにないバリ取りのソリューションに注目が集まっています。
多品種少量ワークのバリ取り
株式会社ベッセルでは「現場の生産性向上」に焦点をあて、金属加工の仕上げに欠かせない研削・研磨ツールを展示。
近年NCやロボットによるバリ取りの自動化が増えるなか、課題となっているのが多品種少量ワークのバリ取りだ。ベッセルでは、コンパクトな手持ち動力工具を工作機械の横に設置し、加工後すぐにバリ取りを行なうことで、作業効率アップを提案する。高い切削力で高品位な仕上げが可能だ。タービンブレードなどの難削材やアルミのEV部品など、手作業によるバリ取りの効率化に貢献している。
同社では、2022年9月に製造業エンジニアのための「課題解決サイト」を立ち上げた。バリ取りをはじめ、樹脂ゲートカットや生産ラインの静電気除去など、現場エンジニアの課題に応える。
- 株式会社ベッセル
バリ取りのトータルソリューション
株式会社スギノマシンでは、2023年春、静岡県掛川市に開設予定の「バリ取り研究所(愛称:デバラボ)」をコンセプト展示。バリ取りの相談カウンターを設け、バリの種類や課題・予算に応じたトータルソリューションを提案する。
スギノマシンでは、マシニングセンタによる切削技術・超高圧水によるウォータジェット技術・独自のフローティング機構を持ったバリ取りツールのコア技術を持っている。これらの技術を一堂に集めたのが「バリ取り研究所」だ。
近年切削加工では、加工精度やスピードが優先された結果、後工程でのバリ検査やバリ取りの手間が増えている。材質ごとに切削条件を見直しバリを均一化したり、図面から変えていくことが重要だという。
バリ取り研究所では、これらバリ取りに関する情報発信やユーザーのテスト加工を通じ、オープンイノベーションを目指す。
- 株式会社スギノマシン
工作機械機内でのバリ取りを自動化
株式会社ジーベックテクノロジーでは、「バリ取りのスマート化」コーナーを設置。2024年に発売予定の「XEBEC CPSホルダ」を初公開し、工作機械機内でのバリ取りの自動化を提案する。
これまで機内で使うバリ取りブラシは、摩耗し短くなった場合、作業者が突き出し量を手動で調整する必要があった。同社のXEBEC CPSホルダでは、加工負荷をセンサで検知し、電子制御によってブラシの突き出し量を自動で調整する。これによりバリ取りの完全自動化が実現するという。
加工データをワイヤレスで収集し、最適な条件をホルダにフィードバックすることで、効果的なバリ取り・研磨が可能だ。
- 株式会社ジーベックテクノロジー
バリ取り加工機で工程集約
株式会社クロイツでは、CNC5軸バリ取り加工機「BARISTA(バリスタ)」を出展。少量多品種ワークのバリ取りの自動化を提案する。
同社のBARISTAはクイックチェンジャー搭載で、バリ取りツールだけでなく、エア振動工具やタッチプローブ、仕上げ用のサンダーなど、用途の違う多数の工具を搭載することができる。これによりバリ取りの工程集約が可能だ。
3DCAD/CAMに対応しプログラム作成も容易で、現場の多品種少量生産のニーズに応える。
- 株式会社クロイツ
JIMTOF2022 バリ取り工程の効率化・自動化まとめ
ここでは、JIMTOF2022にて取材をしたバリ取りに役立つ最新技術をご紹介しました。
避けて通ることのできないバリ取り。バリ取りの効率化・自動化は、一品一様から量産まで、多様化するニーズにいかに対応していくかがポイントです。今後のバリ取りの進化に注目です。
(製品の最新情報については、必ず各メーカーの公式サイトよりご確認ください)