
〈日本ものづくりワールド2023〉工作機械の省人化・省力化提案
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2023/07/06 ) 著者: 甲斐 智
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製造業を支える生産財。その分野は、ねじ・ばね・センサ・ベアリング・油空圧機器などの機械要素部品から、工場向け省エネ製品・物流機器、IoT/AIソリューションまで、多岐に渡ります。その技術が一堂に会する展示会が、日本ものづくりワールドです。
この記事では、2023年6月19日~21日にかけて東京ビッグサイトで開催された「第36回 日本ものづくりワールド」のなかから、会場で取材した、金属加工に関連した省人化・省力化ソリューションをご紹介します。
金属加工の省人化・省力化トレンド

少子高齢化によって人手不足が深刻化する加工業界。労働人口が減少するなか、多くの企業が「人材確保」の課題に直面しています。
今日、我が国製造業は2つの大きな環境変化に直面している。その第一が「人材不足の深刻化」である。経済産業省が昨年12月に実施したアンケートによると、94%の企業が人材確保に課題があり、さらに3割強の企業においてはビジネス影響が出ていると回答している。引用元:ものづくり基盤技術の現状と課題|経済産業省
金属加工に関わる就業者の割合は年々低下しており、賃上げや外国人材の受け入れだけでは、人材確保が難しくなっているのです。


日本ものづくりワールドは、10の専門展で構成される日本最大級の製造業の展示会です。
機械要素部品・センサ・設備・IoT/AIソリューションなど、工場の稼働に欠かせない生産財が世界中から集結し、設計・開発・製造・生産技術・購買に携わる多数のエンジニアが来場します。
→「日本ものづくりワールド」公式サイトはこちら
工作機械における各工程の省人化・省力化提案

金属加工では、工作機械による加工前・加工中・加工後の各工程を見直し、効率化を図ることが、「省人化」「省力化」のカギとなります。
日本ものづくりワールドにて取材をした、CAD/CAM、省力化機器、IoT/AIソリューション、センサによる各工程の省人化・省力化提案をご紹介します。
加工前CAM操作の効率化で5軸加工をサポート

株式会社松浦機械製作所では、5軸加工機に最適なCAD/CAMソリューション「GibbsCAM(ギブスキャム)」を展示。CAM操作の効率化で、現場の省人化に貢献する。
切削加工の現場では、加工ワークの複雑化や高精度化に伴い、5軸加工機のニーズが増加している。5軸加工は、従来の3軸加工に比べ、ワンチャッキングでより精度の高い加工ができるが、CAM操作も複雑になり、その難易度は上がっていた。
GibbsCAMでは、シンプルインターフェースによる直感的な操作性で、初心者でも短期間で機能習得ができるという。操作性の向上は、人手不足が深刻化する現場オペレータの負担軽減にもつながる。同社の5軸マシニングセンタと組み合わせることで、さらなる効率化も可能だ。
複数の主軸を持つ複合加工機や、横形マシニングセンタのイケールによる多数個加工にも対応するなど、現場の工程集約を支援する機能も充実している。
- 株式会社松浦機械製作所
加工前重量ワークのハンドリング作業を省力化

ユニパルス株式会社では、電動バランサ「Moon Lifter」を展示。重量ワークのハンドリングアシストで、現場の省力化に貢献する。
人手不足が深刻化する金属加工の現場では、重いワークの着脱が現場オペレータの大きな負担となっている。また厳しい採用環境のなか人材を確保するためには、現場の安全性の向上と作業の効率化が欠かせない。
Moon Lifterでは、鋳物や鉄などの重いワークのハンドリングを、荷重センサとサーボモータでアシスト。10㎏~2tのワークも、軽い力で思いのまま操ることが可能だ。精密な位置決めができるので、工作機械のワーク取り付けや、砥石などの大型工具の着脱も安全に行うことができるという。
また協働ロボットと組み合わせることで、従来のロボットでは難しかった重量ワークのハンドリングも可能となり、現場のさらなる効率化が実現する。
- ユニパルス株式会社
加工中工場全体の予知保全でライン停止を防ぐ

鍋屋バイテック会社では、クラウド型遠隔監視システム「ezeio(イージー・アイ・オー)」を展示。工場全体のモニタリングで、現場の省人化に貢献する。
人手不足が深刻化する金属加工の現場では、急速な自動化が進んでいる。工作機械の自動化ラインには、搬送装置やローダーなど、さまざまな周辺機器が使われているが、これらの稼働状況をまとめてモニタリングできるのが「ezeio」だ。
ezeioでは、機器に取りつけられたセンサ(温度・湿度・電流・電圧・振動・照度など)の情報を監視することで、工場全体をひと目で把握できるという。設備故障の前触れを検知し、ライン停止を未然に防ぐだけでなく、遠隔制御で工程全体を最適化することも可能だ。必要なシステムはすべてパッケージ化されており、すぐに導入でるのも嬉しい。
- 鍋屋バイテック会社
加工中直動部品の予兆検知でメンテナンスを省人化

THK株式会社では、直動部品のIoTソリューション「OMNIedge」を展示。機械要素部品の故障の予兆検知で、メンテナンスの手間を削減し、現場の省人化に貢献する。
工作機械は、リニアガイドやベアリング・ボールねじなど、たくさんの機械要素部品で構成されている。そのため、一旦部品が故障してしまうと、一日がかりの大きなラインストップにつながることが多い。
OMNIedgeは、既存の工作機械に後付けができるIoTパッケージで、リニアガイドやボールねじなどの故障の前触れをリアルタイムで検知することができる。これにより人手不足の現場でも、効率的なメンテナンスが実現するという。
- THK株式会社
加工中切削工具の状態監視で現場の負担を軽減

株式会社MAZINでは、「工具監視AIソリューション」を展示。切削工具の状態監視で、工作機械の稼働率を上げ、現場の省人化に貢献する。
近年、工作機械の自動化が進むなか課題となっているのが、工具折損や摩耗による不良品の連続排出だ。
量産加工では、一度不良品を出してしまうと、全数検査の実施やロットごと破棄することも多く、人手不足が深刻化する現場では大きな負担となっていた。
工具監視AIソリューションでは、切削工具の摩耗や欠損・チッピングのモニタリングによって不良品を未然に防ぐことができる。また工具寿命の最適化で、工具費の削減にも役立つという。
- 株式会社MAZIN
加工後ロボットによるワーク測定で検査工程を省人化

株式会社メトロールでは、加工後のワーク測定に最適な「小型タッチプローブ」と「エアマイクロセンサ」を展示。協働ロボットとの組み合わせで、検査工程の省人化を提案する。
金属加工の現場では人手不足に伴い、協働ロボットを使ったワーク着脱の自動化が進んでいる。しかし加工後に測定が必要な場合、別途測定ステーションまで移動する必要があり、自動化の妨げとなっていた。
小型タッチプローブは、ロボットに搭載し、工作機械の取り出しと同時に外形測定を行うことで、省人化が実現する。またエアマイクロセンサとの組み合わせで、精度の高い内径測定も可能だ。
- 株式会社メトロール
日本ものづくりワールド2023 省人化・省力化提案まとめ
このコラムでは、日本ものづくりワールド2023にて取材をした金属加工に役立つ省人化・省力化ソリューションをご紹介しました。
人手不足が進む金属加工業界ですが、海外企業の躍進によって、その事業環境はますます厳しくなっています。今後はAIの活用も視野に、常に最新技術の動向にアンテナを張っておく必要があるでしょう。関西・九州で開催されるものづくりワールドにも注目です。
(製品の最新情報については、必ず各メーカーの公式サイトよりご確認ください)