
3Dプリンタの常識を覆す – 高精度・高解像度の光造形技術
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2021/09/24 ) 著者: 甲斐 智
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- 付加加工| 超精密3Dプリンター|
ものづくりの現場に革新をもたらす3Dプリンター。
3Dプリンターは今や家庭用や趣味の世界にも広がり身近な機械となりつつありますが、
一方で日本の製造業では導入が遅れている
のも実情です。
3Dプリンターは切削加工や射出成形とはちがい「量産」に向かないため、まだまだ実用には程遠いと思われがち…
しかし3Dプリンターの真価は、試作開発のリードタイム短縮とコストダウンにあります。
業務用3Dプリンターを設計開発で活用するためには、3Dプリントの造形方式や特性をあらためて理解することが重要です。
この記事では、ミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMF社(BMF, Boston Micro Fabrication)に、同社の超精密3Dプリンターと現場のアプリケーションについてお聞きしました。
ものづくりを支える業務用3Dプリンター

業務用3Dプリンターは、3Dデータをもとに樹脂を重ねながら立体モデルを造形する機械です。
製造業や教育・研究機関など、ものづくりに携さわる工場やラボで使われています。
業務用3Dプリンターにはさまざまな造形方式がありますが、基本的には薄い層を少しづつ積み重ねながら出力する積層造形が基本形。
家庭用の小型・低価格のタイプも、基本コンセプトは変わりません。

造形方式によって「精度」「スピード」「サイズ」「材料」に特徴があり、それぞれに得意・不得意があります。
3Dプリンターによる造形技術は、AM技術ともよばれています。

切削による除去加工とは反対に、素材を付加することで造形する加工技術です。
ものづくりの現場では樹脂にとどまらず、金属をレーザで焼き固めて造形する「金属3Dプリンタ」などの工作機械も実用化され、切削やレーザー加工では再現できない3D構造の複雑加工に応用されています。
業務用3Dプリンターの造形方式(光造形など)
業務用3Dプリンタで使われている造形方式の一部を解説します。
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光造形方式(SLA/DLP)
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液体状の光硬化樹脂に紫外線などを照射し、一層ずつ光硬化させる積層方式。
レーザー光線で露光する「SLA」や、面照射で一括露光する「DLP」などの方式があります。
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熱溶解積層方式(FDM)
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溶けた樹脂をノズルから押し出しながら、一層ずつ重ねていく積層方式。
構造がシンプルなためコストパフォーマンスが高く、家庭用としても多く採用されています。
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インクジェット方式
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光硬化樹脂をインクジェットプリンタのように吹き付けながら、一層ずつ光硬化させる積層方式。
FDMとくらべ積層ピッチが細かく、材料の混合ができるのが特徴です。
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バインダージェット方式
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敷き詰めた粉末材料に結合材(バインダー)を吹き付け、一層ずつ重ねる積層方式。
フルカラー造形ができるため、デザイン性の高い3D造形に最適です。
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シート積層方式
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断面状に切り取られた薄いシートを、一層ずつ貼りあわせながら重ねる積層方式。
紙や金属など樹脂以外の3Dプリントにも対応し、材料の混合にも対応しています。
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粉末燃結方式(SLS)
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金属粉をレーザーなどで一層ずつ焼結させながら固めていく積層方式。
金属3Dプリンターの基本技術として活用されています。
製造業における業務用3Dプリンターのメリット

量産には向いていない業務用3Dプリンターですが、試作開発の現場では「ラピッドプロトタイピング」に活用することで大きな効果を発揮します。
ラピッドプロトタイピング:引用元:ラピッドプロトタイピング|wikipedia
ラピッドプロトタイピング(英: rapid prototyping)とは、製品開発で用いられる試作手法である。文字通り、高速(rapid)に試作(prototyping)することを目的としている。
〈業務用3Dプリンターのメリット〉
試作開発のリードタイム短縮と大幅コストダウン
試作段階で3Dモデルを出力し、内部構造や機能を検証。
CAE解析だけではわからない不具合を初期段階で見つけることができるため、試作開発のリードタイム短縮につながります。

また試作にあたり金型や切削加工が不要になるので、これまで〈見積もり〉→〈外注加工〉で数週間かかっていた試作が数時間まで短縮され大幅なコストダウンが実現します。
最終製品のイメージ共有で品質アップ
試作段階で3Dモデルを出力し、最終製品のモックアップとして活用。
従来の3DCADや仕様書・図面だけの製品開発と異なり、設計・製造・営業・ユーザーなどさまざまなメンバーで最終製品のイメージを共有できるため、現場との意思疎通や品質アップが図れます。
量産に向けた検証で不良品を削減
試作段階で3Dモデルを出力し、実際の組み立てや動作を検証。
モックアップをもとにラインによる組み立てや最終製品の動作を検証することで、試作段階では気がつかなかった設計ミスや不良品の早期発見につながります。
想定外の金型再製作や再設計がなくなるため、コストダウンが図れます。

射出成形や切削加工にはかないませんが、航空機部品の精密部品や試作モデルの数個取りなどの一部の量産現場では使われはじめています。
業務用3Dプリンターが直面する製造業での課題

試作開発で業務用3Dプリンターの活用がすすむなか、製造業では大きな課題に直面しています。
3Dプリンターの周辺技術には、精度・スピード・サイズ・材料など多くの要素がありますが、製造現場では実用にたえる造形精度の機械が少なく、導入の障壁となっているのです。
切削加工ならミクロンオーダーで仕上げることができる精密部品も、3Dプリンターではその10倍程度が一般的。
精密部品・微細加工の分野では、まだまだ試作開発で使える業務用3Dプリンターはありませんでした。
BMFの超精密3Dプリンターが解決

そこで開発されたのが、BMFの3Dプリンター〈microArch®〉です。
BMFが手がける業務用3Dプリンターは、ミクロンオーダーの精密造形にこたえることができる超精密3Dプリンター。
独自の光造形(DLP)による高解像度マイクロスケールプリント技術で、これまで実験レベルでしか実現できなかった一桁ミクロンの3Dプリントを可能にしました。
高精度・高解像度を実現するBMFの超精密3Dプリンター
BMFの超精密3Dプリンターは光造形(DLP)の一種です。
光エンジン・精密光学系・モーションコントロール・高度なソフトウェアを組み込んだ『PμSL(Projection Micro-Stereolithography)』とよばれる独自技術を採用しています。
ミクロンオーダーのPμSL技術

光造形(DLP)は感光性の樹脂に光をあてることで固化・積層させる方式で、その高い生産性から製造業でも多く採用されています。
BMFのPμSLでは、紫外線(UV)を照射し樹脂の層全体をすばやく光重合。
連続露光に対応しており、従来の光造形(DLP)にくらべ「解像度・造形サイズ・スピード」のバランスにすぐれているのが特徴※です。
※高精度タイプ(130シリーズ)は、解像度2μm/公差±10μmの造形精度を発揮します
超精密3Dプリンターのアプリケーション(光造形)

製造業の常識を打ち破る業務用3Dプリンターの登場で、従来の切削加工や射出成形ではむずかしかった複雑形状の3Dプリントが実用化しています。
ここではBMFの超精密3Dプリンターによるアプリケーションをいくつかご紹介します。
(アプリケーションの詳細は、次号から詳しくご紹介いたします)
研究機関 × 3Dプリンター × 高精度・高解像度

大学や研究機関などでは、マイクロスケールの積層造形技術を使ったマイクロメカニクスの研究や新素材の開発など、新技術開発の一役を担っています。
生体工学(バイオニクス)・マイクロ流体デバイス・マイクロロボット・マイクロシステムなど、さまざまな産業の基礎研究で活用されています。
医療業界 × 3Dプリンター × 高精度・高解像度

医療業界では、体に埋め込むステントなどの医療チューブや内視鏡ハウジング・遺伝子シーケンサーバルブプレートなど、超精密3Dプリンターを使った医療部品の開発が進んでいます。
生体適合性材料を使った製品開発も進んでおり、無限の可能性を秘めています。
産業部品 × 3Dプリンター × 高精度・高解像度

産業部品では、プロダクトライフサイクル(PLC)が早い設計開発や、金型レスの試作開発での活用が進んでいます。
大手電機部品メーカーでは、コネクタやソケットの精密部品の試作開発で採用されています。
BMFについて

BMFは、解像度(Resolution)・正確度(Accuracy)・精度(Precision)の3つの分野で、製造業の常識を打ち破る超精密3Dプリンターメーカーとして、2016年に設立されました。
BMFの3D造形技術は、マサチューセッツ工科大学が刊行するMIT Technology Review 誌(1899年創刊)にて『世界の10大画期的技術』としても認められています。
また、3Dプリントの大手メディア「DEVELOP3D」では、『2020年の製品開発を飛躍させる世界の新技術30』にも選出され、世界トップクラスの評価と期待を集めています。
BMFでは、世界29カ国にグローバル展開。すでに800社以上が、BMFのマイクロスケール3Dプリント技術を選択しています。(2021年9月までの実績)
本社・工場 | 中国 深圳 |
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オフィス | 日本 東京(BMF Japan) アメリカ ボストン(BMF USA) |
各種認定 | ISO9001 CEマーク High-tech Enterprise Certificate(ハイテク企業証明書) 特許65件、国際特許18件(2019年時点) |
賞歴 | Red Dot Award 2019 優れたプロダクトデザインを表彰する国際デザイン賞 Prism Awards 2021(製造業部門) 優れた光学・フォトニクス製品を表彰する国際コンペティション |
超精密3Dプリンターの採用実績

BMFの超精密3Dプリンターは、世界中の研究機関や企業で採用されています。
採用ユーザーの一部をご紹介します。
※掲載開示許可顧客のみ
※造形サービス利用も含む(敬称略)
日本での実績 | ヒロセ電機株式会社 |
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三菱重工業株式会社 | |
SEMITEC株式会社 | |
キヤノン株式会社 | |
株式会社AK電子 など | |
海外での実績 | GEヘルスケア(アメリカ) |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(アメリカ) | |
アンフェノール(アメリカ) | |
3M(アメリカ) | |
メルク(ドイツ) | |
タイコ(スイス) | |
ファーウェイ(中国) など |
日本での実績 | 東京大学 生産技術研究所 |
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東京大学 国際工学教育推進機構ものづくり部門 | |
早稲田大学 | |
慶應大学 | |
関西大学 など | |
海外での実績 | マサチューセッツ工科大学(アメリカ) |
ノッティンガム大学(イギリス) | |
ドレスデン工科大学(ドイツ) | |
清華大学(中国) | |
北京大学(中国) など |
常識を覆す!高精度・高解像度の3Dプリンターまとめ
この記事ではミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMFに、ものづくりの現場に革新をもたらす超精密3Dプリンターについてお聞きしました。
業務用3Dプリンターによる試作開発のリードタイム短縮やコストダウンを実現するためには、その特性やアプリケーションを知ることが重要。
ミクロンオーダーの高精度・高解像度3Dプリントにご興味がある方は、BMFまでお気軽にお問い合わせください。
BMF Japan株式会社について

会社名 | BMF Japan株式会社 |
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所在地 | 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-4-3 喜助日本橋ビル5F Nano Park |
設立 | 2019年10月01日 |
事業内容 | 3Dプリンターの製造、販売 3Dプリンターによる造形モデルの製作(試作)、販売 |
公式サイト | https://www.bmf3d.co.jp |