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マイクロ流体とは?マイクロ流路の特徴と3Dプリンタの活用事例

マイクロ流体とは?マイクロ流路の特徴と3Dプリンタの活用事例

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2022/07/04 ) 著者: 甲斐 智
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付加加工超精密3Dプリンター
     

マイクロ流体デバイスとは、微細加工によって形成された「マイクロ流路構造」をもつガラス基板などのチップです。マイクロ流体デバイスは、実験室での混合・反応・分離・検出を、チップ上のマイクロ流路で行う「Lab-on-Chip」など、バイオや化学分野をはじめ、さまざまな業界で応用されてます。

この記事では、ミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMF社(BMF, Boston Micro Fabrication)に、はじめてでもよくわかるマイクロ流体と、同社の3Dプリンタによるマイクロ流路のアプリケーションについてお聞きしました。

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|本記事は連載でお送りしています!すべての記事はこちら
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マイクロ流体デバイスとは

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|電子部品の試作における3Dプリンターの優位性

マイクロ流体デバイスは、ガラス・樹脂・シリコンなどの透明度の高い材料でできたチップ(基板)に、ナノメートル~ミクロン単位の流路を生成した装置です。近年、特に研究開発領域で盛んに活用されています。
ここでは「マイクロ流体デバイス」の基本的な特徴や適用分野、市場動向などについて解説します。

マイクロ流体デバイスの特徴

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|射出成形とくらべてみると〈電子部品の試作〉

マイクロ流体デバイス上に生成される微小流路は、一般的な流路とくらべ「慣性力」よりも「粘性力」が支配的になります。例えばY字のマイクロ流路では、枝状に分かれた流路に2種類の液体を適切なタイミング・量で別々に流すと、合流地点で液体が混ざらずに層流になる特徴があります。
この特徴を活用することで、効率的に化学反応を起こすことが可能となります。

また通常の流体デバイスにくらべ、実験に必要な試薬が少なくすむため、希少性が高く入手がむずかしい試薬や高価な試薬が必要な場合でも、コストを抑えながら効率的に実験を行うことができます。

マイクロ流体デバイス上に生成される流路の例

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|機械加工とくらべてみると〈電子部品の試作〉

マイクロ流体デバイス上に生成される流路は、試験の目的に応じてさまざまです。
もっとも代表的なものは「直線流路」で、移動する液中の細胞や微粒子の様子を観察することができます。また「チャンバー流路」は、チャンバーとよばれる部屋をうまく活用することで、化学反応の制御を高精度に行うことが可能です。

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|枝分かれ流路における流路切替の実証実験
引用元:枝分かれ流路における流路切替の実証実験|理化学研究所

複数の試薬を流路内で混合させる場合には、「Y字ミキサー」などが効果的です。試薬を流す場所や流路の長さを調整することで、反応の順番や反応時間を調整することができます。
他にも遠心力を用いて微粒子や細胞を分離する「スパイラルセルソーター」なども、マイクロ流体デバイスの一種です。
さまざまな流路形状が開発され、試験内容に応じて適切な流路が選択されています。

マイクロ流体デバイスが適応される分野

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|機械加工とくらべてみると〈電子部品の試作〉

マイクロ流体デバイスは、さまざまな分野に適応されています。特に多く用いられているのは、ライフサイエンスやバイオテクノロジーの領域です。
例えば化学反応の実験を行う場合、マイクロ流路の構造を工夫することで、反応を起こす順番や材料どうしの反応時間を細かく制御することが可能です。 従来はむずかしかった化学反応を、マイクロ流体デバイスを用いることで試せるようになり、狙いの化合物の収率向上を実現することができます。

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|ツールパスや切削条件の検討が不要になる

またマイクロ流路を用いることで、複雑な部品を組み合わせることなく、ひとつのチップでウイルス抗原の陽性判定や抗原検査を行うこともできます。
流路構造の工夫や外部からの物理的な刺激をシミュレーションすることで、チップ上に人間の臓器に近い環境を再現する研究も進められています。

マイクロ流体デバイスの市場動向

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|機械加工とくらべてみると〈電子部品の試作〉

マイクロ流体デバイスの市場は、2030年までの今後数年間で、急速に拡大していくといわれています。
特にCOVID19のパンデミックが拡大したことで、創薬やウイルス検査にマイクロ流体デバイスの技術を活用する機会が増えています。またPoC(Point-of-Care)診断市場の拡大も注目されています。

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|ツールパスや切削条件の検討が不要になる

PoC診断機器とは、特定の病気の診断や検査結果を速やかに得るための医療機器です。
在宅医療への関心が高まっていることに加え、糖尿病などの生活習慣病や感染症が拡大していることで、マイクロ流体デバイスの活用が注目を集めています。

BMFのマイクロ流体アプリケーション

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|BMFの電子部品試作アプリケーション

BMFの超精密3Dプリンタは、超高解像度・高精度を実現するマイクロナノ光造形(PµSL)技術。微細な流路構造を持つ「マイクロ流体デバイス」の造形に実績があります。

遺伝子配列解析装置用バルブ

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|半導体ソケット部品の試作(チップアレイソケット)

遺伝子配列解析装置用バルブは、医学や生物学の研究において、DNA塩基の並びを解析するために使われています。

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®S140
サイズ 24.5mm×28.3mm×22mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm
最小内径チューブ 0.2mm

血液冷却レギュレーター

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用例について|半導体パッケージ部品の試作(LGA ランドグリッドアレイ)

血液冷却レギュレーターは、体温を下げるために使われる医療機器です。多くの医療機器と同様に小型化が進んでおり、3Dプリンタが活躍する分野です。

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®S140
サイズ 30mm×20mm×22mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm

マイクロ流体デバイスの特徴と3Dプリンタ活用事例まとめ

この記事ではミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMFに、じめてでもよくわかるマイクロ流体と、同社の3Dプリンタによるマイクロ流路のアプリケーションについてお聞きしました。
マイクロ流体デバイスはその特徴を利用してさまざまな用途に用いられており、その用途は3Dプリンタの普及とともに、今後も拡大していくと考えられます。

ミクロンオーダーの高精度・高解像度3Dプリントにご興味がある方は、BMFまでお気軽にお問い合わせください。

 

マイクロ流体に携わる研究者・研究機関の方へ
マイクロ流体に携わる研究者・研究機関の方へ|超精密3Dプリンターのお問い合わせはこちら

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東京オフィスでは、解像度10μm/公差±25μmの造形精度を実現する「超精密3Dプリンター〈microArch® S140〉」を設置して、みなさまのお越しをお待ちしております。

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BMF Japan株式会社について

会社名 BMF Japan株式会社
所在地 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-4-3 喜助日本橋ビル5F Nano Park
設立 2019年10月01日
事業内容 3Dプリンターの製造、販売
3Dプリンターによる造形モデルの製作(試作)、販売
公式サイト https://www.bmf3d.co.jp

付加加工 超精密3Dプリンター

この記事の著者・監修者

甲斐 智
甲斐 智(Satoshi Kai)

1979年 神戸生まれ、多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーに入社。
2020年に株式会社モノトを設立。長年に渡り工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる。
researchmap ID:R000028669
J-GLOBAL ID 202101006017437323

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