
金属3Dプリンタとは?金属3Dプリント方式と工作機械のAM技術
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/05/15 ) 著者: 甲斐 智
付加加工は、AM技術(Additive Manufacturing)とよばれる金属加工技術のひとつ。代表的な技術に「金属3Dプリンター」を使った、積層造形があります。
金属3Dプリンターは、 金属粉をレーザで焼き固めて造形 する工作機械として、
破損した金属部品の修理や、切削では再現できない3D構造の複雑加工にも応用されています。
この記事では、金属3Dプリンターの代表的な方式を通して、付加加工について紹介します。

付加加工に欠かせない「金属3Dプリンター」
金属3Dプリンターは、金属粉をレーザで焼き固めながら重ねることで金属部品を造形する工作機械です。
3Dプリンター:引用元:wikipedia「3Dプリンター」
3Dプリンター(スリーディープリンター、英語: 3D printer)とは、3次元的なデジタル・モデルをもとにして、(現実の)物体をつくりだすことができる機械のこと。日本語では(あまり一般的ではないものの)「立体印刷機(りったいいんさつき)」と、漢字表現で呼ぶこともある。

これまで鋳造や切削加工では再現できなかった複雑な部品形状も、 CADデータをもとにかんたんに造形 することができ、軽量化や機能アップに役立てられています。

加工精度や加工時間にまだまだ課題はありますが、すでにボーイングのエンジン部品やオーダーメイドの医療器具の生産でも実用化。技術開発の進歩がめざましく、追加工なしで最終製品の造形ができるまでに進化しています。
金属3Dプリンターの造形方法と方式

金属3Dプリンターで金属部品を直接製造するDMP(ダイレクト・メタル・プリンティング)には、金属粉末(パウダー)の供給方法によって大きく3つの方式があります。
金属3Dプリンターの方式分類
パウダーベッド方式(PBF方式)

パウダーベッド方式(PBF方式)は、敷きつめた金属粉末(パウダー)に、熱エネルギーを照射して重ねていく造形方法です。
熱源の種類によって、さらに細かく分けることができます。

レーザー焼結法(SLS)

レーザー焼結法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にレーザーを照射し、焼き固める造形方法。もっともよく知られている方法で、SLS(Selective Laser Sintering)ともよばれます。
高出力のレーザーで一層ずつ焼き固め、造形後は余分の粉末を除去して造形ワークを取り出します。造形後の肌の表面はパウダー感が残るため粗く、研磨加工で仕上げます。
直接金属レーザー焼結法(DMLS)

直接金属レーザー焼結法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にイッテルビウムレーザーを照射し、焼き固める造形方法。SLSとはレーザーの原理が異なり、DMLS(Direct Metal Laser Sintering)とよばれます。
高出力で安定性に優れるため、より精密な造形が可能です。
レーザー溶融法(SLM)
レーザー溶融法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にレーザーを照射し、溶かしながら層を重ねていく造形方法。SLM(Selective Laser Melting)ともよばれます。
金属粉末(パウダー)をかけながら一層ずつ溶かし、造形後は余分の粉末を除去して造形ワークを取り出します。レーザー焼結法と似ていますが、焼結の工程がないため、熱収縮が起こりにくのが特徴です。
電子ビーム溶解法(EBM)
電子ビーム溶解法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にビームを照射し、溶かしながら層を重ねていく造形方法。 EBM(Electron Beam Melting)ともよばれます。
真空中でビームを照射するため、レーザーにくらべ高出力(加工温度は1000度)で、高速造形ができます。
メタルデポジッション方式(BMD方式)

メタルデポジッション方式は、金属粉末(パウダー)を指定の箇所に供給し、重ねていく造形方法です。
粉塵対策や不活性化ガスの排出対策などが必要なパウダーベッド方式とくらべ導入コストも低く、 パウダーベッドに替わる新技術として注目されています。

レーザー直接積層法

レーザー直接積層法は、金属粉末(パウダー)をノズルで射出し、レーザーを照射しながら層を重ねていく造形方法です。
・LMD(Laser Metal Deposition)
・DMD(Direct Metal Deposition)
・DED(Direct Energy Deposition)
・LENS(Laser Engineered Net Shaping)
など、さまざまな名称や方式があります。
パウダーベッド方式とくらべ加工速度がはやく、ピンポイントで金属粉末(パウダー)を供給できるため材料のムダがありません。
造形途中でも異なる金属粉末(パウダー)に切り替えることもできるため、小型部品の造形や既存製品の修理などにも利用されます。
溶融金属積層法
溶融金属積層法は、ワイヤー状の金属をノズルで供給し、ビームを照射しながら層を重ねていく造形方法です。1秒間に数万回の火花(アーク放電)をとばすことでワイヤーを溶かし、重ねていきます。
低コストで高速造形ができますが、造形精度が低いため、加工ワークへの肉盛り(金属の補修)などで使われます。
熱溶解積層方式(FDM方式)

熱溶解積層方式(FDM方式)は、従来の樹脂3Dプリンターとおなじ積層による造形方法です。(FDMは熱溶解積層〈Fused Deposition Modeling〉の略)
金属とバインダー(樹脂)を混ぜて固めた粉末をノズルから押し出し、樹脂3Dプリンタとおなじ要領で積層していきます。余分なバインダーは積層時に熱で溶け、脱脂工程で除去されます。その後焼結工程で金属を焼き固め、金属製品となります。
焼結時に約20%ほど収縮するため、精密部品には仕上げ加工が必要となります。
量産には向きませんが導入コストが低いため、研究所や試作用途として注目されています。
3D金属プリンタによる製品の造形例

3D金属プリンタによる製品化の一例を紹介します。
金属3Dプリンタによるタービン部品

通常5軸加工で行う自由曲面や、複数の段取りを必要とする複雑形状の造形が可能です。
金属3Dプリンタによる遊星ギア

複雑な構造の遊星ギアを一体造形し、加工時間や組み立て工程を短縮します。
金属3Dプリンタによる複雑部品

通常のマシニングセンタや複合加工機では実現できない、複雑形状の一体造形が可能になります。
金属3Dプリンタによる金属部品の修理

金属部品の焼結により、切削部品の修理や追加工が実現します。
インプラント用金属3Dモデル

チタン合金によるインプラント用の人工下顎モデルの造形で、患者ひとりひとりに適した処置が実現します。
金属加工におけるAM技術の活用トレンド

これまで試作のイメージが強かった金属3Dプリンタですが、AM技術の高度化によって、量産にも適用されるようになっています。また近年では、スペアパーツの少量生産や修理にも活用されるなど、アフターサービス用途としても期待されています。
金属3Dプリンタのトレンドをご紹介します。
金属3Dプリンタを使った受託加工サービスが増加
導入コストを抑えたいユーザ向けに、金属3Dプリンタによる受託加工サービスを展開する工作機械メーカが増えており、AM技術を手軽に評価できるようになっています。
造形と切削を融合した金属3Dプリンタ
造形と切削を融合したハイブリッド型の金属3Dプリンタを活用することで、高品位な仕上げが可能になります。
例えば、造形中に切削を繰り返し後処理の負担を軽減したり、最終製品にほぼ近いニアネットシェイプを造形し切削で仕上げることで、ムダな切りくずの発生を抑え、生産性向上とコスト削減が実現します。
大型造形に対応した金属3Dプリンタ
シールドガスの抑制により造形中の酸化を防ぎ、安定した長時間造形を可能にした、大型部品の造形や補修に対応した金属3Dプリンタが登場しています。
航空宇宙向けなど、大型かつ高精度が求められる部品製造においても、信頼性の高い造形が実現しています。
複数材料を切り替える金属3Dプリンタ
粉末材料をカートリッジ単位で交換できる金属3Dプリンタが登場しています。ステンレスやチタンといった異なる材料を迅速に切り替えられるため、造形時間を大幅に短縮することができます。
例えば、多品種少量生産の現場では、ワークに応じて材料を切り替えることで、造形の効率化を図ることができます。
より環境に優しい金属3Dプリンタ
金属ワイヤで造形する金属3Dプリンタは、従来の粉末材料を使用する方式に比べ、管理やメンテナンスが容易で、より環境に優しい点が評価されています。
また、高速かつ高品質な造形が実現するため、補修用途や溶接の代替としても高い効果を発揮します。
3D金属プリンタを搭載した工作機械とメーカー

大手工作機械メーカーでは、金属3Dプリンターを搭載したCNC工作機械を次々と開発。除去加工に金属積層技術を取り入れることで、素材の造形から切削・焼入れまで、さまざまな工程を一台に集約することができます。
金属造形技術と切削加工を融合した工作機械は、「フォトンマシニングセンタ」ともよばれています。
メーカー | 金属3Dプリンターの種類 |
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オークマ(株) | 超複合加工機 |
キタムラ機械(株) | 次世代型3D金属加工用プリンタ |
(株)ソディック | 高速造形金属3Dプリンタ |
DMG森精機(株) | レーザ金属積層造型機 |
(株)松浦機械製作所 | ハイブリッド金属3Dプリンタ |
ヤマザキマザック(株) | ハイブリッド複合加工機 |
◎あいう順・敬称略
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付加加工と金属3Dプリンタとは?まとめ
この記事では、金属3Dプリンターの造形方法と方式を通して、付加加工について紹介しました。
金属3Dプリンターを使った加工は「金属部品」だけでなく、金型の分野にまで拡大。日本の工作機械メーカー各社も、「マシニングセンタ」や「5軸加工機」に3D金属プリンターの機能を搭載した複合加工機を続々と発表しています。
本記事が、金属3Dプリンター導入のきっかけとなればうれしいです。