
なるほど金属3Dプリンター|付加加工と金属3Dプリンターの方式・種類をかんたん紹介
- 更新日:
- 2020/12/21(2020/05/15 公開) 編集者:甲斐 智
付加加工は、AM技術(Additive Manufacturing)とよばれる金属加工技術のひとつです。
代表的な技術に「金属3Dプリンター」を使った、積層造形があります。
金属3Dプリンターは、金属粉をレーザで焼き固めて造形する工作機械です。
破損した金属部品の修理や、切削では再現できない3D構造の複雑加工にも応用されています。
この記事では、金属3Dプリンターの代表的な方式を通して、付加加工について紹介します。

付加加工にかかせない「金属3Dプリンター」
金属3Dプリンターは、金属粉をレーザで焼き固めながら重ねていき、金属部品を造形する工作機械です。
3Dプリンター:引用元:wikipedia「3Dプリンター」
3Dプリンター(スリーディープリンター、英語: 3D printer)とは、3次元的なデジタル・モデルをもとにして、(現実の)物体をつくりだすことができる機械のこと。
日本語では(あまり一般的ではないものの)「立体印刷機(りったいいんさつき)」と、漢字表現で呼ぶこともある。

いままでの鋳造や切削加工では再現できなかった複雑な部品も、 CADデータをもとにかんたんに造形 することができ、軽量化や機能アップに役立てられています。

加工精度や加工時間にまだまだ課題はありますが、すでにボーイングのエンジン部品やオーダーメイドの医療器具の生産でも実用化。
技術開発の進歩がめざましく、追加工なしで最終製品の造形ができるまでに進化しています。
金属3Dプリンターの造形方法と方式

金属用3Dプリンターは、金属粉末(パウダー)の供給方法によっておおきく3つの方式があります。
金属3Dプリンターの方式分類
パウダーベッド方式(金属3Dプリンタ)

パウダーベッド方式は、敷きつめた金属粉末(パウダー)に、熱エネルギーを照射して重ねていく造形方法です。
熱源の種類によって、さらに細かく分けることができます。

レーザー焼結法(SLS)

レーザー焼結法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にレーザーを照射し、焼き固める造形方法。
もっともよく知られている方法で、SLS(Selective Laser Sintering)ともよばれます。
高出力のレーザーで一層ずつ焼き固め、造形後は余分の粉末を除去して造形ワークを取り出し。
造形後の肌の表面はパウダー感が残るため粗く、研磨加工で仕上げます。
直接金属レーザー焼結法(DMLS)

直接金属レーザー焼結法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にイッテルビウムレーザーを照射し、焼き固める造形方法。
SLSとはレーザーの原理が異なり、DMLS(Direct metal laser sintering)とよばれます。
高出力で安定性に優れるため、より精密な造形が可能です。
レーザー溶融法(SLM)
レーザー溶融法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にレーザーを照射し、溶かしながら層を重ねていく造形方法。
SLM(Selective Laser Melting)ともよばれます。
金属粉末(パウダー)をかけながら一層ずつ溶かし、造形後は余分の粉末を除去して造形ワークを取り出します。
レーザー焼結法と似ていますが、焼結の工程がないため、熱収縮が起こりにくのが特徴です。
電子ビーム溶解法(EBM)
電子ビーム溶解法は、敷きつめた金属粉末(パウダー)にビームを照射し、溶かしながら層を重ねていく造形方法です。
EBM(Electron Beam Melting)ともよばれます。
真空中でビームを照射するため、レーザーにくらべ高出力(加工温度は1000度)で、高速造形ができます。
メタルデポジッション方式(金属3Dプリンタ)

メタルデポジッション方式は、金属粉末(パウダー)を指定の箇所に供給し、重ねていく造形方法です。
パウダーベッドに替わる新技術として注目されています。

レーザー直接積層法

レーザー直接積層法は、金属粉末(パウダー)をノズルで射出し、レーザーを照射しながら層を重ねていく造形方法です。
・LMD(Laser metal deposition)
・DMD(Direct metal deposition)
・DED(Direct energy deposition)
・LENS(Laser Engineered Net Shaping)
など、さまざまな名称や方式があります。
パウダーベッド方式とくらべ加工速度がはやく、ピンポイントで金属粉末(パウダー)を供給できるため材料のムダがありません。
造形途中でも異なる金属粉末(パウダー)に切り替えることもできるため、小型部品の造形や既存製品の修理などにも利用されます。
溶融金属積層法
溶融金属積層法は、ワイヤー状の金属をノズルで供給し、ビームを照射しながら層を重ねていく造形方法です。
1秒間に数万回の火花(アーク放電)をとばすことでワイヤーを溶かし、重ねていきます。
低コストで高速造形ができますが、造形精度が低いため、加工ワークへの肉盛り(金属の補修)などで使われます。
FDM方式(金属3Dプリンタ)

FDM方式は、従来の樹脂3Dプリンターとおなじ、積層による造形方法です。
FDMは、熱溶解積層(Fused Deposition Modeling)の略。
金属とバインダー(樹脂)を混ぜて固めた粉末をノズルから押し出し、樹脂3Dプリンタとおなじ要領で積層していきます。
余分なバインダーは積層時に熱で溶け、脱脂工程で除去されます。
その後焼結工程で金属を焼き固め、金属製品となります。
焼結時に約20%ほど収縮するため、精密部品には仕上げ加工が必要となります。
量産には向きませんが導入コストが低いため、研究所や試作用途として注目されています。
3D金属プリンタを搭載した工作機械とメーカー

大手工作機械メーカーでは、金属3Dプリンターを搭載したCNC工作機械を次々と開発。
CNC工作機械に金属積層技術を取り入れることで、素材の造形から切削・焼入れまで、さまざまな工程を一台に集約することができます。
〈工作機械メーカーのリスト〉※
オークマ(株) | 超複合加工機 など |
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キタムラ機械(株) | 次世代型3D金属加工用プリンタ など |
(株)ソディック | 高速造形金属3Dプリンタ など |
DMG森精機(株) | レーザ金属積層造型機 など |
(株)松浦機械製作所 | ハイブリッド金属3Dプリンタ など |
ヤマザキマザック(株) | ハイブリッド複合加工機 など |
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付加加工と金属3Dプリンタとは?まとめ
この記事では、金属3Dプリンターの造形方法と方式を通して、付加加工について紹介しました。
金属3Dプリンターを使った加工は「金属部品」だけでなく、金型の分野にまで拡大。
日本の工作機械メーカー各社も、「マシニングセンタ」や「5軸加工機」に3D金属プリンターの機能を搭載した複合加工機を続々と発表しています。
本記事が、金属3Dプリンター導入のきっかけとなればうれしいです。