
生産ラインをコストダウン|穴あけを効率化するドリルユニット
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2022/06/08 ) 著者: 甲斐 智
量産加工の6割を占めているといわれる穴あけ。「穴あけ」の効率化は生産性に与える影響が大きく、生産ラインでは常に穴あけの最適化が追求されています。
鋳造やプレス加工、マシニングの後工程で行われることが多い穴あけですが、ものづくりのトレンドが「大量生産」から「多品種少量生産」に変わるなか、生産現場では“多様化する穴あけ”をいかに効率化・最適化するかが課題になっています。
穴あけに使われる工作機械はマシニングセンタが主流ですが、マシニングセンタだけの生産ラインでは、コストダウンに限界も…
この記事では、「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解す」の6つのコア技術で、世界のものづくりを支える株式会社スギノマシンに、マシニングセンタに縛られない生産ラインのコストダウンと、穴あけを効率化する同社の専用機搭載用ドリルユニット〈SELFEEDER DUO〉についてお聞きしました。

生産ラインのイニシャルコストとランニングコストを少しでも落としたい… とお考えの生産技術エンジニアの方、必見です!
生産ラインでの「穴あけの効率化」の課題

近年、自動車・IT・家電などさまざまな業界で製品ライフサイクルが短くなるなか、量産部品も多品種少量生産のニーズが急増。そこで課題となっているのが「穴あけの効率化」です。

特に自動車業界では、CASE※やEV化の波によってモデルチェンジが早くなるなど、短い生産期間でも利益を確保できる生産ラインの構築が急務となっています。
最近では、コロナ禍で落ち込んだ経済の活発化による建機の需要回復や、少子高齢化によるスマート農業で農機のニーズが増えるなど、エンジン、トランスミッション、油圧部品の穴あけ需要も増加しています。
製造業が抱える課題:引用元:令和2年版 情報通信白書|総務省
近年では、年齢や性別、地域、季節などの顧客ニーズの多様化に伴い、多彩な商品が市場に流通し、商品のライフサイクルが早まっている。こうしたニーズに合わせて類似性(機能・デザイン)の低い商品を、様々な仕様で少量ずつ生産する多品種少量生産に係る取組が増えている。そのため、早いサイクルに対応できる柔軟性の高い製造ラインや工程を実現するための効率化が求められている。
量産部品の穴あけには、マシニングセンタなどの高効率のCNC工作機械が使われますが、生産現場では「多様化する量産部品」に対応した、穴あけのさらなる効率化・コストダウンが求められています。
〈生産現場の外部環境の変化〉
- 製品ライフサイクルの短縮(自動車/IT/家電など)
- 量産部品の多様化(建機/農機/建材/アウトドア向けなどの需要拡大)
- 量産部品の精密化(5G/半導体/電子部品関連などの高度化)
穴あけにおける、マシニングセンタと専用機の使い分け

量産部品の穴あけで使われる代表的な工作機械には、1台の機械でさまざまな加工に対応できる「マシニングセンタ」と、大規模な量産加工で使われる「専用機」があります。
工作機械は高機能化・複合化によって年々進化していますが、それぞれのメリットと課題を把握し、加工ワークや生産数によって使い分けることが重要です。
汎用的なマシニングセンタ

マシニングセンタは、ATC(自動工具交換装置)を備えた代表的なCNC工作機械です。汎用性が高く、生産品目の変更にも柔軟に対応できるため、多品種少量生産に最適です。
近年では加工ワークの多様化にともない、5軸加工機や複合加工機など、さらなる生産性向上を追求した機種の開発が進んでいます。
立形マシニングセンタ | 一品物から量産まで、高い柔軟性が特徴 |
---|---|
横形マシニングセンタ | パレットチェンジャーとの組み合わせで自動化に最適 |
小型マシニングセンタ | 高速加工やドリリング・タッピングに最適 |
5軸加工機 | 多面加工・曲面加工に適したマシニングセンタ |
複合加工機 | 旋削からフライスまで複数工程を集約 |
ガンドリルマシン | 深穴加工に特化 |
マシニングセンタによる穴あけのメリット
- ○ 多様なワークに対応できる
- ○ 多品種少量生産で高い効率を発揮
- ○ 穴あけからフライス加工まで、多彩な加工ができる
- ○ 精度の高い穴あけができる
マシニングセンタによる穴あけの課題
- × 大量生産ではサイクルタイムが長くなる
- × イニシャルコストが高い
- × 自動化ラインを構築するにはより広い設置面積が必要
ドリルユニットを搭載した専用機

専用機(専用工作機械)は、特定の部品加工のために専用設計された工作機械です。さまざまな加工ユニット・搬送ユニットを組み合わせて生産ラインを構築し、穴あけには1軸の穴あけに特化した「ドリルユニット」が使われます。
機械自体が各工程に最適化されているため高効率で、自動車部品などに代表される大量生産のラインで多く導入されています。
専用機による穴あけのメリット
- ○ 大量生産のサイクルタイムが短縮できる
- ○ イニシャルコストが低い
- ○ 自動化ラインの設置面積を省スペース化
- ○ 複数方向からの多面同時加工ができる
専用機による穴あけの課題
- × 加工部品が変わると転用ができない
- × 多品種少量生産では効率が低い
- × 加工条件の設定がむずかしい



マシニングセンタと専用機をくらべてみると?

汎用性 | 多品種少量の部品に対応 |
特定の部品に対応 |
---|---|---|
効 率 | 部品ごとに段取りが必要 |
高効率で一気に加工 |
コスト | 一台当たりの導入コストが高い |
設備ごとの導入コストが低い |
生産数の多い量産部品の穴あけを効率化・コストダウンするには専用機の導入が必須です。 しかし専用機は、自動車などのモデルチェンジによって部品生産が終了すると、遊休機として工場の隅に寝かされることがほとんど… 流用や転用がきかず廃棄になることも少なくありません。
そのため業界では、「マシニングセンタの汎用性」と「専用機の生産性」を併せ持つあたらしい工作機械が待望されています。


実は生産ラインに「汎用性の高いドリルユニット」を組み合わせることで、専用機の高い生産性を生かしながら、加工ワークにあわせた柔軟な生産ラインが構築できます!
専用機による穴あけに汎用性を!

これまで多くの部品メーカーでは、「多品種少量生産はマシニングセンタ」「大量生産は専用機」といった使い分けがされてきました。
しかし目まぐるしく変わる経済環境のなか、生産品目の変更に柔軟に対応するため、大量生産であっても新規設備にはどうしてもマシニングセンタが選ばれがち… そのため「生産ラインの構築は、いつもマシニングセンタが中心」といった工場も少なくありません。

現場では、高機能化・複合化するマシニングセンタに注目が集まる一方、専用機についてはノウハウが少なく、加工ユニット自体もあまり知られていません。「専用機」といえば、古い技術だと思われることもめずらしくありませんでした。
しかし今、専用機の汎用性を高めるドリルユニットがあらためて注目されてます。多品種少量生産の現場で活躍しているのが、専用機搭載用ドリルユニット〈SELFEEDER DUO〉です。
専用機搭載用ドリルユニット〈SELFEEDER DUO〉

セルフィーダ DUOは「専用機に汎用性を!」をコンセプトに開発された、専用機搭載用ドリルユニットです。
これまでの一般的なドリルユニットは、ひとつの加工条件を設定するとその後の変更がむずかしく、生産品目の変更に対応することができませんでした。

セルフィーダ DUOは加工プログラムをかんたんに変更することができ、生産品目の変更や加工ワークの設計変更に柔軟に対応。部品生産の終了(モデルチェンジ)後も再利用しやすく、長く使いつづけることができます。
大量生産はもちろん、多品種少量生産にも最適なドリルユニットです。
〈一般的なドリルユニットとの違い〉

プログラム | 加工条件や加工方法の変更に手間がかかる |
---|---|
サイズ | 大きくて使いにくく、専用機自体も大型化してしまう |
構築・改造 | 専用機に精通した技術者がいないと構築・改造がむずかしい |
汎用性 | 特定ワークの生産終了後、再利用ができず廃棄につながる |
プログラム | 加工条件や加工方法の設定をかんたんに変更できる |
---|---|
サイズ | コンパクトサイズで、省スペースな専用機が構築できる |
構築・改造 | 専用機に精通した技術者がいなくても、構築・改造ができる |
汎用性 | 特定ワークの生産終了後も再利用ができ、長く使いつづけられる |

担当者の技術レベルによって、扱える機械が限られてしまう… こんなお困りはありませんか?
セルフィーダ DUOなら、穴あけやねじ立てに必要な加工パターンもあらかじめ準備されており、タッチパネルで切削条件を入力するだけ。現場でもかんたんに加工プログラムの作成ができます。
専用機搭載用ドリルユニットのメリット
通常マシニングセンタは加工軸が1つ、そのため複数の穴あけでは複数工程が必要となり、サイクルタイムが短縮できません。一方専用機搭載用ドリルユニットの場合、複数方向から同時に加工ができるため、サイクルタイムを大幅に短縮することができます。
またマシニングセンタにくらべ低価格で、イニシャルコスト・ランニングコストを大幅に削減。思い通りの生産ラインを低コストで構築することができます。
効 率 | サイクルタイムを短縮 |
---|---|
汎用性 | 加工条件や加工方法の変更・改造がかんたん マシニングセンタが苦手とする深穴加工や長尺ワークにも対応 |
コスト | イニシャルコスト(初期投資)を削減 ランニングコスト(消費電力・メンテナンスコスト)を削減 |


(例:12カ所の穴あけ(12秒)の場合、12軸ヘッドでサイクルタイムが1秒に)
セルフィーダ DUOによる、穴あけの効率化事例

専用機搭載用ドリルユニット〈SELFEEDER DUO〉による、穴あけの効率化事例をご紹介します。
マシニングセンタのボトルネック解消

マシニングセンタで構築された生産ラインのうち、ボトルネックとなる「深穴加工」をセルフィーダ DUOに置き換え、生産ラインを効率化。搬送ロボットやガントリーローダで工程間をつなぐことで、自動化を実現します。
インデックス専用機による自動化

セルフィーダ DUOとインデックステーブルを組み合わせ、インデックス専用機を構築。マシニングセンタにくらべ、高効率・省スペースの生産ラインを実現します。
ボール盤への応用

セルフィーダ DUOを応用し、タッピング機能付きの自動ボール盤(スタンドリル)を構築。属人化しがちな作業者による穴あけ・ねじ立てを標準化することができます。
熟練作業者の退職やボール盤の廃番でお困りの、汎用加工の現場に最適です。
生産ラインの省スペース化

大型のマシニングセンタが必要となる「大きなワーク」の穴あけをセルフィーダ DUOに置き換え、生産ラインを省スペース化。ワーク搬送がむずかしく、マシニングセンタでは設備が大型化してしまう場合に最適です。
セルフィーダ DUOが選ばれる3つのポイント
穴あけとねじ立てを1台で
主軸・送り軸の両方にサーボモーターを搭載。穴あけとねじ立ての2つの加工に対応します。
選べるサーボモーター

主軸用サーボモーター :2.0kW、0.75kW
複数メーカのサーボモーターを搭載可能。海外電圧仕様のサーボモーターも搭載可能です。
カーボンニュートラルを実現

動力に高効率のサーボモーターを採用。圧縮エアが不要で、従来機とくらべ約40%の消費電力を削減し省エネです。
生産ラインの穴あけを担う、セルフィーダシリーズの実績
スギノマシンの「セルフィーダ」、「シンクロタッパ」は、専用機のドリリング・タッピングユニットととして、これまで多くの穴あけ・ねじ立て工程を担い、累計60万台のベストセラーを誇ります。
最新機種のセルフィーダ DUOでは、専用機として納入されたセルフィーダが、量産部品の生産終了後も再利用できるよう汎用性を極限まで高めました。

2021年には、多様化する量産部品の加工ニーズに応える画期的な新製品として、“超”モノづくり部品大賞「機械・ロボット部品賞」を受賞しました。(主催:モノづくり日本会議主催)
マシニングセンタを手がけるスギノマシンの強み

スギノマシンでは専用機搭載用ドリルユニットだけでなく、マシニングユニットをベースとした、主軸30番の小型マシニングセンタ「セルフセンタ」シリーズを開発・製造しています。
「小物部品には小型マシンを」をコンセプトに、立形・横形など多彩なバリエーションで、自動車部品や電子部品の高速・高精度加工のニーズに応えています。
機械加工から搬送・洗浄まで、これまで培った技術とノウハウを生かした、一貫ラインのトータルソリューションが強みです。
穴あけを効率化する専用機搭載用ドリルユニットとは?まとめ
この記事では、株式会社スギノマシン(富山県魚津市)に、生産ラインのコストダウンと、穴あけを効率化する同社の専用機搭載用ドリルユニット〈SELFEEDER DUO〉についてお聞きしました。
EVや5Gなどの技術革新によって設備更新のサイクルが短くなるなか、工作機械市場も多様化。これまでの加工の常識が通じなくなる今、マシニングセンタ以外の選択肢として、新たな専用機の活用が、今後の生産性向上のカギとなっています。
汎用性の高い専用機による生産ラインの構築は、ぜひ一度スギノマシンまでお問い合わせください。
株式会社スギノマシンについて

会社名 | 株式会社スギノマシン |
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本社 | 富山県魚津市本江2410番地 |
公式サイト | https://www.sugino.com |
企業情報 | 株式会社スギノマシンの企業情報はこちら |