進化する光造形・DLP – マイクロナノを実現するPμSL光造形
- 更新日:
- 2022/09/04 (公開日: 2021/11/26 ) 著者: 甲斐 智
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- 付加加工| 超精密3Dプリンター|
製造業の現場で使われている「業務用3Dプリンタ」。
業務用3Dプリンタにはさまざまな種類がありますが、そのなかでも主流なのが「光造形」とよばれる造形方式です。
いま試作開発の現場では、ミクロンオーダーを実現する精度の高い光造形技術の登場によって、金型などの高額な初期投資からの転換がはじまっています。
この記事では、ミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMF社(BMF, Boston Micro Fabrication)に、光造形のメリットと同社独自の光造形アプローチ「PμSL技術」についてお聞きしました。
光造形の特徴とメリット
3Dプリンタのなかでももっとも歴史が古い「光造形」、その誕生は1980年代にまでさかのぼります。
タンク(液槽)に張られた液体状の「光硬化樹脂」にUV(紫外線)をあて、樹脂を一層ずつ硬化させながら積み重ねるため、液槽光重合(えきそうひかりじゅうごう) ともよばれます。
製造業で3Dプリンタといえばこの「光造形」を指すことが多く、3Dプリントを代表する定番の造形方式として多くの現場で使われています。
光造形のメリット
- ◯ 表面(積層面)が滑らかで、微細な造形ができる
- ◯ シャープなエッジで、複雑な造形ができる
- ◯ 発熱が少ないため、造形中の熱膨張・収縮が起こらない
- ◯ 透明材質の造形ができるため、機能モデルなどの試作にも最適
光造形のデメリット
- × 造形時間がかかり、量産には不向き
- × 造形できる材質が限られる
光造形「DLP方式」と「SLA方式」の違い
光造形は、光のあてかた(露光)によって、DLP方式とSLA方式の2つに分類されます。
それぞれに得意・不得意があるため、導入時には造形ワークのサイズや製作数を事前に把握しておくことがポイントです。
光造形:DLP方式
DLP(Digital Light Processing)は、面露光方式ともよばれる造形方式です。
プロジェクタを使い面照射で一括露光するため、SLA方式とくらべ造形スピードが速いのが特徴です。
照射面積が広くなるほどプロジェクタの解像度が落ちるため、大型の造形には向いていません。
光造形:SLA方式
SLA(Stereo Lithography Apparatus)は、レーザー方式ともよばれる造形方式です。
レーザーを使い線状に露光するため、DLP方式とくらべ大型の造形ができますが、造形には時間を要します。
BMF独自のマイクロナノ光造形「PμSL」とは
現在、製造業で使われている「業務用3Dプリンタ」は、光造形のDLP方式が主流です。
より高い造形精度がもとめられるなか、BMFではDLP方式をもとに、PµSL(Projection Micro-Stereolithography)とよばれる独自の光造形技術を開発しました。
超高解像度の面露光で、マイクロレベル(髪の毛の100分の1以上)の精密な造形ニーズに応えています。
【A】従来のDLP:不均一な光量→ 解像度がダウン
【B】BMFのDLP:均一な光量→ 解像度がアップ
PμSL技術(DLP)による光造形の流れ
PμSLでは、一般的な光造形(DLP)とおなじように、UVによる樹脂硬化を重ねることで造形します。
投影レンズの精密な制御により、数マイクロメートルから数百ナノメートルの解像度を実現します。
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〈Step.1 液体樹脂の投入〉
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樹脂タンク・スクレーパ・台座をセットし、液体樹脂を樹脂タンクに注ぎます。
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〈Step.2 一層目の積層〉
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膜システムを設置し、装置に各種パラメータを入力。
台座が上昇し、第一層のUV投光→樹脂硬化がはじまります。
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〈Step.3 次工程の準備〉
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第一層が硬化。台座が下降し、造形物が液体樹脂で覆われます。
その後スクレーパにより、膜システムの気泡などを除去します。
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〈Step.4 二層目の積層〉
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台座がふたたび上昇し、第二層のUV投光→樹脂硬化がはじまります。
Step.2〜4の作業を繰り返し行い、造形を行います
造形時間の短縮と、精密造形を実現しています。
PμSL技術(DLP)と一般的な3D造形との比較
方式 | 解像度 | 造形スピード | 造形サイズ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
光造形(PμSL) | 精密な造形に最適 | |||
光造形(SLA) | 大型の造形に最適 | |||
熱溶解積層(FDM) | コストパフォーマンスが高い | |||
インクジェット | 大型・高速造形に最適 |
方式 | 解像度 | 造形スピード | 造形サイズ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
光造形(PμSL) | 高精度で高速、精密な造形に最適 | |||
光造形(SLA) | 中精度で低速、大型の造形に最適 | |||
熱溶解積層(FDM) | 低精度で低速、コストパフォーマンスが高い | |||
インクジェット | 大型・高速造形に最適 |
これらの方式は優劣ではなく、造形ワークや用途に合わせた使い分けがポイントです。
各方式の違いは、下記ページもご参照ください。
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〈BMFの光造形(DLP)〉
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表面が滑らかで、シャープなエッジを実現。
(公差25ミクロン)
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〈一般的な光造形(DLP)〉
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表面が粗く、エッジが曖昧。
(200ミクロン以下の微細構造はむずかしい)
PμSL技術(DLP)による光造形の例
BMFのPμSL技術(DLP)は、高度な光エンジン・光学機器・モーションコントロール・ソフトウェアによる複合技術で、解像度・造形サイズ・造形スピードのバランスに優れています。
PμSL技術(DLP)の造形例:200ミクロンの小穴
200ミクロンの小穴を、50ミクロン間隔で造形
PμSL技術(DLP)の造形例:65ミクロンの薄壁
パイプラインの壁厚を65ミクロン(全高4mm)で造形
PμSL技術によりアクリル樹脂に劣らない造形精度で、3Dプリントが可能です。
マイクロナノ造形におけるTPP技術との違い
現在、マイクロナノ造形を実現する光造形には「PμSL」と、超高速パルスレーザーを利用して、感光性材料を固化させる「TPP(二光子重合技術)」の2つの技術があります。
TPPの造形精度は100ナノメートルに到達しており、ドイツやリトアニアなどで製品化が進んでいますが、「コスト・スピード・サイズ・材料」の点から、実用化にはまだ課題があるのが現状です。
そのため工業用途では、「PμSL」が多く選ばれています。
微細構造を実現するマイクロナノ光造形(DLP)まとめ
この記事ではミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMFに、光造形のメリットと同社独自の光造形アプローチ「PμSL技術」についてお聞きしました。
現在、光造形による3Dプリント技術は2つの方向に進化しています。
ひとつは大型造形を実現する「マクロ造形」、そしてもうひとつが精密造形を実現する「ミクロ造形」です。
これらの技術は優劣ではなく、造形ワークや用途に合わせた使い分けが重要です。
ミクロンオーダーの高精度・高解像度3Dプリントにご興味がある方は、BMFまでお気軽にお問い合わせください。
BMF Japan株式会社について
会社名 | BMF Japan株式会社 |
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所在地 | 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-4-3 喜助日本橋ビル5F Nano Park |
設立 | 2019年10月01日 |
事業内容 | 3Dプリンターの製造、販売 3Dプリンターによる造形モデルの製作(試作)、販売 |
公式サイト | https://www.bmf3d.co.jp |