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小型化する電子部品 – 試作における3Dプリンターの優位性

小型化する電子部品 – 試作における3Dプリンターの優位性

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2022/05/31 ) 著者: 甲斐 智
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付加加工超精密3Dプリンター
     

5G・IoTの普及にともない、ますます小型化している電子デバイス。半導体パッケージや実装技術の開発現場では、加速する半導体素子の微細化によって、よりスピーディな試作がもとめられています。
これらの電子部品は、機械加工が苦手とする複雑に入り組んだ精密部品も多く「業務用3Dプリンタ」による新たな造形アプローチが期待されています。

この記事では、ミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMF社(BMF, Boston Micro Fabrication)に、電子部品の試作における3Dプリンタの優位性と、同社の3Dプリンタによる電子部品の試作アプリケーションについてお聞きしました。

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|本記事は連載でお送りしています!すべての記事はこちら
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電子部品の開発エンジニア・試作に携わる方へ
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電子部品の試作における3Dプリンターの優位性

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|電子部品の試作における3Dプリンターの優位性

これまで電子デバイスに使われる電子部品の試作は、「射出成形」と「機械加工」が一般的でした。しかし電子デバイスの小型化・高密度化が進むなか、複雑な電子部品をこれまでの方法で試作することがむずかしくなっています。
電子部品を試作する新たな手法として活用がすすむ「3Dプリンター」の優位性について解説します。

射出成形とくらべてみると〈電子部品の試作〉

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|射出成形とくらべてみると〈電子部品の試作〉

電子部品を射出成形で試作する場合、2つの大きな課題があります。
ひとつは「金型が必要」な点、もうひとつは「複雑な成形がむずかしい」点です。

電子部品の金型が不要になる

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|電子部品の金型が不要になる

射出成形には、樹脂材料を充填する「金型」が必須。少数の試作しかつくらない場合でも、金型の製作には多大な費用と期間がかかります。
また試作部品の形状を変更するには、再度金型を製作・修正する必要があるため、タイムリーな電子部品のブラッシュアップには不向きで、開発にかかる費用を抑えることができません。

一方3Dプリンターであれば金型が不要。金型に関連する費用がかからないため、少数の試作であっても、ひとつあたりの単価を大きく削減することができます。
また試作部品の形状を変更する際も、金型を新たに起こす必要がありません。短期間で形状を変えながらプロトタイピングができ、開発サイクルの短縮が実現します。

複雑な電子部品が成形できる

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|複雑な電子部品が成形できる
マイクロプロセッサチップのピン

電子デバイスに用いられる電子部品には、小さな穴がならんだ「チップソケット」や、階段構造の「cLGAコネクター」など、複雑な形状のものが多数あります。
そのため射出成形では、成形後の離型がむずかしく、複数の成形品を組み立てなければいけない場合があります。

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|3Dプリンターによるマイクロモデル
3Dプリンターによるマイクロモデル

一方3Dプリンターであれば、射出成形ではむずかしい複雑形状の成形も実現。ミクロン間隔の穴や中空構造も、組み立てをせずに一体成形することができます。

機械加工とくらべてみると〈電子部品の試作〉

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|機械加工とくらべてみると〈電子部品の試作〉

機械加工は金型を製作する必要がないため、少数の試作品の加工に向いていまが、電子部品の試作では、高い切削加工技術がもとめられます。

ツールパスや切削条件の検討が不要になる

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|ツールパスや切削条件の検討が不要になる

機械加工で狙いどおりの形状を実現するためには、工具のツールパスや、樹脂表面に悪化が生じないような切削条件の検討が必要です。
加工には非常に高い切削加工技術がもとめられますが、3Dプリンターであれば、3Dモデルをもとに精度の高い試作が可能です。

複雑な電子部品が成形できる

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|複雑な電子部品が成形できる

機械加工では、コネクタなどのミクロン間隔の穴あけや、チップソケットのような薄い形状の成形は困難です。また光電コンバータのように曲面加工が必要な場合、機械加工ではワークが破損してしまうこともあります。

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|3Dプリンターによるマイクロモデル
3Dプリンターによるマイクロモデル

一方3Dプリンターであれば、厚さ数ミクロンといった薄い形状や複雑な成形を実現できます。
機械加工であれば複数の部品を組み立てなければ実現しない形状でも、3Dプリンターで一体成形することができます。

BMFの電子部品試作アプリケーション

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|BMFの電子部品試作アプリケーション

BMFの超精密3Dプリンタは、超高解像度・高精度を実現するマイクロナノ光造形(PµSL)技術。コネクタ部品をはじめ半導体実装部品など、電子部品の試作開発に実績があります。

電子部品試作の樹脂材料
電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|電子部品試作の樹脂材料
耐熱性樹脂
BMFでは、組み立て用の硬質樹脂から耐高温樹脂まで、電子部品の試作に最適化されたさまざまな樹脂材料を用意しています。
また長期保存可能な耐候性樹脂や生体適合性の高い樹脂もあり、さまざまな業界にも対応が可能です。詳しくは「高精度造形材料」でご紹介しています。

コネクタ部品の試作(コネクタベース)

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|コネクタ部品の試作(コネクタベース)

電子機器に欠かせないコネクタベースです。
リードタイム1日以下で、最小穴径0.1mm・最小壁厚0.1mmの精密な部品の一体成形ができ、短時間の少量生産も可能です。

コネクタ部品.1

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®S140
サイズ 22mm×4mm×6mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm

コネクタ部品.2

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®S140
サイズ 41mm×7.7mm×4.65mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm

コネクタ部品.3

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®P140
サイズ 7.1mm×17.8mm×3.7mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm

半導体ソケット部品の試作(チップアレイソケット)

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|半導体ソケット部品の試作(チップアレイソケット)

チップアレイソケットは、マイクロプロセッサと回路基板を機械的・電気的に接続するために使われるソケット部品です。
機械加工ではむずかしい1500個ものマイクロホールを、成形することができます。

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®S140
サイズ 32mm×28mm×4mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm

半導体パッケージ部品の試作(LGA ランドグリッドアレイ)

電子部品の試作における3Dプリンターの優位性について|半導体パッケージ部品の試作(LGA ランドグリッドアレイ)

ランドグリッドアレイは、半導体実装で使われるパッケージ部品です。電子機器の小型化にともない、ランドグリッドアレイもより精密化がもとめられています。
階段構造が含まれた2500個もの台形穴を、一体成形することができます。

〈製品スペック〉
シリーズ microArch®S140
サイズ 75mm×30mm×1.5mm
解像度 10µm
公差 ±0.025mm

電子部品試作での3Dプリンターの優位性とアプリケーションまとめ

この記事ではミクロンオーダーの光造形で業界をリードするBMFに、電子部品の試作における3Dプリンタの優位性と、同社の3Dプリンタによる電子部品の試作アプリケーションについてお聞きしました。
5GやIoTなど、目まぐるしく進化する電子部品の試作では今、高額な初期投資を必要と開発期間を必要とする「射出成形」からの転換が急務となっています。 

ミクロンオーダーの高精度・高解像度3Dプリントにご興味がある方は、BMFまでお気軽にお問い合わせください。

 

電子部品の開発エンジニア・試作に携わる方へ
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ミクロンオーダーの3Dプリントにご興味がある電子部品の開発エンジニア・試作に携わる方へ。
超精密3Dプリンターの実機見学やサンプルモデルについて、お気軽にお問い合わせください。

東京オフィスでは、解像度10μm/公差±25μmの造形精度を実現する「超精密3Dプリンター〈microArch® S140〉」を設置して、みなさまのお越しをお待ちしております。

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BMF Japan株式会社について

会社名 BMF Japan株式会社
所在地 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-4-3 喜助日本橋ビル5F Nano Park
設立 2019年10月01日
事業内容 3Dプリンターの製造、販売
3Dプリンターによる造形モデルの製作(試作)、販売
公式サイト https://www.bmf3d.co.jp

付加加工 超精密3Dプリンター

この記事の著者・監修者

甲斐 智
甲斐 智(Satoshi Kai)

1979年 神戸生まれ、多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーに入社。
2020年に株式会社モノトを設立。長年に渡り工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる。
researchmap ID:R000028669
J-GLOBAL ID 202101006017437323

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