
EVの多品種少量生産に対応する – 量産型立形マシニングセンタ
- 更新日:
- 2022/09/04 (公開日: 2021/10/25 ) 著者: 甲斐 智
自動車のEV化(電気自動車)の波によって、大きな局面を迎える自動車部品業界。
EVの登場によってピストン・シリンダーなどエンジン部品の加工が大幅に減少する一方、EVモータや半導体などの加工需要が急増しています。
この記事では、自動車部品・工作機械メーカーとして高い世界シェアを誇る株式会社ジェイテクト(愛知県刈谷市)に、EV部品の加工ニーズとその課題を解決する量産型マシニングセンタについてお聞きしました。

EV化(電気自動車)の波

カー ボンニュートラルへの対応が急速にすすむなか、自動車部品業界も大きな局面を迎えています。
自動車にはおよそ2万点の部品が使われていますが、動力源が「エンジン」から「モータ」へEV化することでその部品点数は40%以上減少。
一方で、EV部品の加工やEVで使われる半導体向けの加工需要が急増しています。
EV部品の加工ニーズ

技術革新やモデルチェンジが早いEVの加工需要を取り込むためには、これまでの専用機による量産ラインでは対応することができません。
そのため自動車部品加工の現場では、多品種少量の小ロット生産から量産まで、生産性を維持しながらもフレキシブルに対応できるセルラインの構築が急務となっています。

またEVの心臓でもあるモータ加工では、eAxle(イーアクスル:EV駆動ユニット)構成部品の加工も課題となっています。
〈EV部品加工のユーザーニーズ〉
- 拡張性の高い工作機械を使って、生産量・種類変動に柔軟に対応したい…
- 加工工程を集約し、多品種少量生産に対応したい…
- 増産時には、ロボットによる自動化で量産に対応したい…
- 省スペースの機械で、eAxleの大型モータケースを加工したい…

eAxleの品質がモータの静粛性や効率性などの性能を大きく左右するため、その加工にも高い精度がもとめられます。
EV部品の加工に最適な、量産型立形マシニングセンタ〈FV7000Z〉
これらニーズに応えるため開発されたのが、ジェイテクトの立形マシニングセンタ〈FV7000Z〉です。
FV7000Zは、多品種少量生産に対応できる「量産型立形マシニングセンタ」。
同クラス(#40 主軸)の従来機とくらべ大幅な小型化を実現し、5軸加工による工程集約と高い拡張性が特徴です。

〈量産型立形マシニングセンタ 3つのポイント〉
広い加工領域で、eAxleの大型モータケースに対応

コンパクトな本体サイズながらクラス最大級※の広い加工エリアを確保。
EV部品をはじめとした、さまざまな加工ワークに対応します。
eAxle(イーアクスル)の構成部品を内包する「モータケース」の大径・深穴の中ぐり加工にも、高い効果を発揮します。
各軸ストローク:X700 × Y700 × Z550(mm)
高い加工精度で、EVモータの品質向上が実現

5軸加工ならではのワンチャック加工で、加工精度が安定。
独自の低熱変位設計で熱変位を低減し、温度センサ・解析ロジックにより熱変位を補正します。
長時間の自動化運転でも加工精度が安定し、振動・騒音を抑えたEVモータの品質向上が実現します。
少量多品種から量産まで、フレキシブルなセルラインを構築

省スペースかつ高い拡張性で、生産量・種類変動にあわせたフレキシブルなセルライン構築が可能。
ジェイテクトの強みである自動化ノウハウをもとに、ロボット自動搬送システムやワーク識別システムを組みあわせることで、省人化・無人化に対応した「量産セルライン」が実現します。
〈モータケース以外の加工ワークの一例〉

チューブハウジング | 材質:ADC12 アルミダイカスト |
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ラックハウジング | 材質:ADC12 アルミダイカスト |
モータブラケット | 材質:FC300 鋳鉄 |
立形マシニングセンタにおける、切粉処理の課題を解決
――製品開発にあたり、どのような課題がありましたか?

立形マシニングセンタの課題のひとつに、切粉処理があります。
従来「立形」は「横形」にくらべテーブルに切粉が堆積しやすく、長時間の自動運転には向いていません。
そこで今回開発した立形マシニングセンタでは、テーブルを固定型にして X・Y軸を機械上方に移動。
これにより、加工点の直下に切粉をふるい落とすことができるようになりました。

――量産ラインでも切粉の心配なく、長時間の自動運転ができるのですね

はい。テーブルを固定型にしたことで、機械のさらなる小型化が実現しました。
軸を機械上方に配置したことで起こるバランスや剛性の問題も、構造解析で解決しています。
EV部品加工の量産ラインに最適な「コンパクトマシン」としてお使いいただけます。

編集部:
量産ラインの機械設計では、作業者の導線・歩数やワーク搬送を効率化するため「いかに設置面積を少なくするか」がポイントです。
今回の量産型立形マシニングセンタ〈FV7000Z〉は、まさにセルラインにフィットした省スペース設計。
生産量や種類変動にあわせたライン構築・工場レイアウトが可能になります。
EV部品の加工ニーズを反映した製品開発に、ますます期待しています!
量産型立形マシニングセンタ(EV部品加工)まとめ
この記事では、株式会社ジェイテクト(愛知県刈谷市)に、EV部品の加工ニーズとその課題を解決する量産型マシニングセンタについてお聞きしました。
EVの登場によって、これまでにない加工ニーズが急増。今後のEVの普及には、高い生産性と加工精度を兼ね備えた工作機械の活躍がカギとなりそうです。
株式会社ジェイテクトについて

会社名 | 株式会社ジェイテクト |
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本社 | 愛知県刈谷市朝日町一丁目1番地 |
事業内容 | ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器などの製造・販売 |
企業情報 | 株式会社ジェイテクトの企業情報はこちら |