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切削加工とは?切削加工の特徴と切削加工で発生する加工不良

切削加工とは?切削加工の特徴と切削加工で発生する加工不良

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
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まとめ記事切削専用加工特殊加工研削研磨除去加工
     

切削加工は除去加工の一種で、その名の通り金属を「切ったり」「削ったり」することで、目的の形に仕上げる金属加工技術です。
金属加工には、切削加工以外にも「プレス加工」や「金属3Dプリンタ」など、さまざまな手法がありますが、高い精度が求められる自動車部品や、量産で使われる金型の製造には、高度な切削加工技術が欠かせません。

この記事では、切削加工の種類や材質ごとのポイント、切削加工のトレンドについて解説します。

切削加工について|切削加工は工作機械を使って行われますが、CNCを搭載した高性能の工作機械であっても、精度の高い加工が全自動でできるわけではありません。
切削加工は工作機械を使って行われますが、CNCを搭載した高性能の工作機械であっても、精度の高い加工が全自動でできるわけではありません。
加工技術の経験や、金属材料の幅広い知識があってはじめて、精度の高いものづくりが実現します。

切削加工の種類

切削加工は、工具とワークどちらが回転するかによって、大きく「転削」と「旋削」に分けられます。

〈切削加工の分類〉
転削(てんさく)加工 工具が回転
旋削(せんさく)加工 ワークが回転
機械加工との違いは?
切削加工について|機械加工との違いは?

機械加工も、工作機械を使って金属を加工する金属加工法です。 ほぼおなじ意味合いで使われますが、機械加工の場合、「切削」だけでなく「研削」「研磨」なども含まれます。

転削加工

切削加工について|転削加工

転削加工は、回転する工具にワークを当てる加工方法です。
マシニングセンタを使ったフライス加工が代表的で、主に複雑形状のワークの切削や、穴あけで使われます。

フライス加工
工具を回転させて削る除去加工法
「フライス加工」について解説
5軸加工
3次元形状の除去加工法
「5軸加工」について解説
穴あけ加工
穴あけやネジ切りをする除去加工法
「穴あけ加工」について解説
中ぐり加工
穴を大きく広げる除去加工法
「中ぐり加工」について解説

旋削加工

切削加工について|旋削加工

旋削加工は、回転するワークに工具を当てる加工方法です。
旋盤を使った加工が代表的で、丸もの(円筒状のワーク)の切削や、穴あけで使われます。

旋削加工
加工ワークを回転させて削る除去加工法
「旋削加工」について解説

その他の種類

切削加工では、工具(もしくはワーク)の回転による切削以外にも、直進運動による加工があります。
その一部を紹介します。

ブローチ加工
専用工具で一気に仕上げる除去加工法
「ブローチ加工」について解説
削り加工
表面を薄く削りとる除去加工法
「削り加工」について解説

切削加工の特徴

切削加工について|切削加工の特徴

切削加工は、複雑かつ精密な部品を精度よく削れることが特徴です。一方で、コストや生産性については、プレス加工などの塑性加工にはおよびません。

製造現場では、要求精度や生産ロットに応じて、加工方法の検討がされています。

切削加工とプレス加工:
機械加工の代表的なものとして,切削加工とプレス加工(あるいは塑性加工)がある。切削加工とは,刃もので材料を削る加工であり,切り屑が出るのが特徴である。その代表的な工作機械として旋盤やフライス盤があり,これらは一つの工作機械で様々な形状の部品を製作できるという特徴がある。
引用元:機械加工の大まかな流れ|海上技術安全研究所

〈切削加工の特徴〉

切削加工は精度の高い加工ができる

切削加工は、ミクロンオーダー(微細加工ではサブミクロン代)の加工ができます。
もちろん最適なツーリングの選択や、研削による仕上げなど、前工程・後工程にもさまざまなノウハウが必要です。
高い精度が求められる自動車部品や、半導体製造装置部品の加工に欠かせない加工法です。

切削加工は複雑な形状が加工できる

切削加工は、ダイカストや鍛造では実現できない複雑な部品の加工も得意です。(切削工具が届かない箇所は加工できません)
航空機のインペラ部品や、自動車のエンジン部品・EVモータ部品など、5軸加工機や複合加工機を使うことで、少ない工程で複雑かつ精密な加工が実現します。

切削加工は多品種少量生産に最適

近年、消費者ニーズの多様化によって、多品種少量生産が増加しています。
切削加工は、金型製作にかかる時間や費用が削減でき、生産数によっては納期・コストともに、ダイカストや鍛造に勝ります。
現場での一品モノの試作や特注にも最適です。

切削加工はさまざまな材料に対応できる

鋳造や鍛造は、加工できる材料が限られていますが、切削加工では「削れるもの」であれば、プラスチックから高機能材料まで、材料に制約はありません。
特に近年では、チタンやインコネルなどの難削材の切削ニーズも増えています。

切削加工で知っておくこと

切削加工について|切削加工で知っておくこと

メリットの多い切削加工ですが、一方で材料のムダが多く、コストアップや生産性低下につながることもあります。
コスト・納期に応じて、ダイカストや鍛造との比較検討が必要です。

切削加工は材料のムダが多い

切削加工は、大量の切粉を排出しながら加工を進めます。そのため削り取る体積が大きいほど、材料のムダが多く、結果的に加工コストのアップにつながります。

切削加工はオペーレータの熟練が必要

切削加工は、おなじ加工条件であっても、毎回おなじものが削れるとは限りません。例えば工具の摩耗やチッピング(欠け)、機械の熱変位などでもその精度は大きく変わってしまいます。
精密な加工には、ワークの段取りや切削工具・ツーリングの知識など、熟練オペレータの高い技術と経験が求められます。

材質ごとの切削加工のポイント

切削加工について|材質ごとの切削加工のポイント

切削加工は、金属材料の材質によっても加工のポイントが大きく異なります。切削加工のミスを防ぐためにも、材料の特性について十分に把握することが重要です。
製造現場でよく使われる、材質ごとの加工ポイントを紹介します。

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切削加工でよく発生する、加工不良のお悩み

切削加工について|切削加工でよく発生する、加工不良のお悩み

切削加工は、切削工具を送り(移動させ)ながら加工を進める、シンプルな加工方法です。
切削条件は、工具の回転数・送り量・切り込み量などの組み合わせで決められますが、実際には加工速度や工具種類によって、加工硬化やびびりが発生するなど、精度の高い加工はかんたんではありません。
切削加工の現場でよく発生する、加工不良のお悩みを紹介します。

〈加工不良の主な原因〉

切削加工とバリ

切削加工について|切削加工とバリ

バリは切削加工の工程で発生する、金属の「かえり」です。バリは放置すると、次工程でのトラブルや怪我の原因となるため、バリの発生を抑えた加工や確実なバリ取りが欠かせません。
バリの発生原因はワークの材質や形状によってさまざまですが、バリそのものが発生しにくい加工工程にすることが重要です。

切削加工と加工硬化

切削加工について|切削加工と加工硬化

加工硬化は、塑性加工が繰り返されることで金属材料が「硬く」そして「もろく」なる現象です。
加工硬化は工具の摩耗やチッピング、仕上げ面の加工精度の悪化など、さまざまなトラブルを引き起こすため、そのメカニズムを理解し対策していくことが重要です。

切削加工とチッピング

切削加工について|切削加工とチッピング

チッピングは、切削工具の刃先に発生する小さな欠けです。切削加工では必ずといっていいほど発生しますが、たとえ小さなチッピングでも思わぬ機械ストップにつながるため、早期発見が重要です。
CNC工作機械による省人化ラインでは、チッピングをいかに検出するかが課題となっています。

切削加工とビビり

切削加工について|切削加工とビビり

ビビりは切削加工中に発生する、断続的な振動です。 ビビりは加工不良だけでなく機械の破損にもつながるため早急な対策が求められます。
ビビりの発生は、工作機械の状態や外部環境にも大きく左右されるため、工場全体での対策が必要となる場合もあります。

切削加工と構成刃先

切削加工について|切削加工と構成刃先

構成刃先は、切削加工の高い圧力と摩擦熱によって刃先の先端に切粉が溶着してしまう現象です。溶着した構成刃先は加工硬化しているため非常に硬く、刃先にかわってワークを切削してしまうため、仕上げ面の劣化や刃先のチッピングを引き起こします。
加工硬化しやすい延性材料(軟鋼・黄銅・ステンレス・アルミニウムなど)では、構成刃先が発生しやすくなります。

切削加工のトレンドは自動化

切削加工について|切削加工のトレンドは自動化

切削加工の現場では自動化が急務となっています。その背景と自動化トレンドをご紹介します。

切削加工で自動化が急がれる背景

切削加工について|切削加工で自動化が急がれる背景

切削加工において自動化が急がれる背景には、三つの要因があげられます。一つめは、少子高齢化による働き手の減少です。今、製造業全体で若手が急速に減少しています。現場では深刻な人手不足で、生産ラインの維持すら難しいケースも見られます。
二つめは、働き方改革です。人手不足が進むなか、従業員の定着がますます重要になっていますが、現場では、育児休暇や有給の取得が推進され、これまでのように長時間労働に依存することが難しくなっています。限られた人員で効率を高めるには、自動化が欠かせません。

製造業の働き方改革について:
2018(平成30)年に成立した、いわゆる「働き方改革関連法」に基づき、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずるもので、2019(平成31)年4月1日から順次施行されている。
引用元: 経済産業省 ものづくり白書|ものづくり労働者の雇用・労働の現状

そして三つめが、多品種少量生産の増加です。消費者ニーズの多様化によって、従来の量産体制では生産が難しくなっているのです。
これらのニーズに対応するには、自動化によって多品種の製品を効率的に生産する必要があります。

切削加工の注目トレンドをご紹介

切削加工では、加工品目の変更に対応できるフレキシブルラインや、ワンチャッキングで加工ができる5軸加工機に、無人稼働に対応した治工具・センサを組み合わせソリューションが増加しています。
また近年特に注目されているのが、協働ロボットと工作機械の連携です。

工作機械と協働ロボットとの連携

切削加工について|工作機械と協働ロボットとの連携

協働ロボットと工作機械の連携が広がっています。例えば、移動式の協働ロボットでワークのローディングや重量ワークの搬送を自動化し、「昼間は人、夜間はロボット」というように、状況に合わせた柔軟な生産体制を構築することが可能になっています。
またロボットが、加工・洗浄・測定の工程を担うことも増えています。
ロボット導入のポイントは、現物合わせのティーチングで簡単にセットできること。加工品目の変更に柔軟に対応できる、扱いやすい協働ロボットが注目されています。

ワークのバラ積みピックアップ

切削加工について|ワークのバラ積みピックアップ

ビジョンセンサの進化により、バラ積みされたワークのピックアップも簡単に行えるようなっています。3Dビジョンで、まるでロボットに視覚があるかのように、複雑なワークもスムーズにつかむことが可能です。
例えば鋳物を扱う現場では、これまで作業者が行っていた不定形なワークの搬入出を完全に自動化できた事例もあります。ビジョンセンサは位置補正にも使われ、ロボットのセット時間短縮にも貢献します。

工作機械と自動化機器の組み合わせ

切削加工について|工作機械と自動化機器の組み合わせ

5軸加工機にワークストッカーやパレットチェンジャー、大容量のツールマガジンを組み合わせた提案が増えています。自動化機器を組み合わせることで、長時間の無人運転や、夜間・休日の多品種少量生産に対応したソリューションが実現します。
また、ひとつのパレットで多数個取りができる、少量変種生産を見据えたソリューションにも注目です。

機内計測による自動化

切削加工について|機内計測による自動化

ロボットとセンサを組み合わせた、検査工程の省人化が急速に進んでいます。
例えばワークの取り出しと同時にロボットで計測を行うことで、測定ステーションへの移動が不要になります。さらに機内にセンサを載せることで、ワークをその場で測定し、不良品の選別や追加工を行うことも可能です。
人による検査が不要になり、高い生産性と安定した品質が実現します。

バリ取りの自動化

切削加工について|バリ取りの自動化

人手に頼ることの多かったバリ取り工程でも、自動化が急務となっています。
近年では、熟練工のバリ取り技術をロボットで再現する取り組みも進んでおり、ロボットセルによる自動化ラインや、多数のバリ取り工具を使い工程集約をする加工機など、人手不足に応えるソリューションが登場しています。

切削加工とは?まとめ

この記事では、切削加工の種類や切削加工でよく発生する、加工不良のお悩み、材質ごとの切削加工のポイントについて解説しました。
日々進化する工作機械ですが、単に最新の機械を導入するだけでは、精度の高い切削加工は実現しません。半導体設備需要や、自動車のEV化による多品種少量生産への移行がトレンドとなるなか、切削工具やツーリング・金属材料など、加工技術の基本に立ち返ってみることが重要です。

まとめ記事 切削 専用加工 特殊加工 研削 研磨 除去加工

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