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鉄並み強度のアルミ鍛造で1/3の軽量化 – 高強度アルミ鍛造技術

鉄並み強度のアルミ鍛造で1/3の軽量化 – 高強度アルミ鍛造技術

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2022/01/23 ) 著者: 甲斐 智
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プレス加工塑性加工
     

世界的なカーボンニュートラルの流れのなか、EV(電気自動車)や航空機などの輸送機器業界では、燃費向上のための「車体の軽量化」ニーズが増加しています。
そんななか今あらためて注目されているのが、軽金属を代表するアルミ合金です。

この記事では「非鉄鍛造のエキスパート」として多くのものづくり企業の課題を解決している株式会社戸畑ターレット工作所(福岡県北九州市)に、アルミによる部品の軽量化ニーズと同社の「高強度アルミ鍛造」についてお聞きしました。

高強度アルミ鍛造技術について|工具の長寿命化を実現するコーティング技術は、エコロジーや環境配慮への観点からあらためて注目されています!
EVへの急速なシフトによって、新素材の開発だけでなくアルミ製造技術の開発も進んでいます!
機械部品の軽量化、鉄からアルミへの置き換えをご検討の方へ
機械部品の軽量化、鉄からアルミへの置き換えをご検討の方へ

従来のアルミ部品のお悩み

高強度アルミ鍛造技術について|従来のアルミ部品のお悩み

鉄の1/3の軽さを誇るアルミ。加工しやすくリサイクル性が高いアルミ合金は、さまざまな産業分野で広く利用されていますが、一方で鉄に比べ強度が低いため「自動車ステアリング部品」など耐久性がもとめられる部品には不向きでした。

またアルミは鉄より材料費が高く生産工程も多いため、コスト面でもその置き換えは進んでいません。
一部の高級車や航空機では「恒温鍛造」による強度の高い特殊アルミ部品が採用されていますが、加工スピードが遅くコストも2倍以上と高いため量産がむずかしいのが現状です。

高強度アルミ鍛造技術について|自動車で使われている鉄製部品
自動車で使われている鉄製部品

カーボンニュートラルが叫ばれるなか、EV(電機自動車)では「車体の軽量化」による燃費・電費向上が大きな開発テーマに。高強度・低コストのアルミ量産技術の確立が急務となっていたのです。

高強度アルミ鍛造技術について|発現場のニーズ:アルミの「軽さ」を活かした製品開発を実現したい!
開発現場のニーズ:
アルミの「軽さ」を活かした製品開発を実現したい!
〈従来のアルミ部品(冷間鍛造)の課題〉
強度が低い 強度が鉄の半分程度
コストが高い 鉄にくらべ材料費が高く、生産工程も多い

豆知識:アルミ合金の特徴は?
高強度アルミ鍛造技術について|アルミ合金の特徴は?
鉱物アルミニウム
アルミニウムは、鉄の約1/3の比重の非鉄金属です。
産業分野では、マグネシウム(Mg)やシリコン(Si)を添加した「アルミ合金」が広く利用されています。
軟らかく加工しやすいためさまざまな部品に使われていますが、鉄などの鋼材にくらべコストが高く、引っ張り強度が低いのが弱点です。
アルミ合金は少ないエネルギーで加工できリサイクル性も高いため、環境に優しい金属材料としてあらためて注目されています。

高強度アルミ鍛造で「強度」の課題を解決

高強度アルミ鍛造技術について|自動車ステアリング部品を中心に、産業部品の軽量化・強度向上に貢献

戸畑ターレット工作所では、アルミ部品の強度向上がもとめられるなか「高強度アルミ鍛造」技術を開発。
従来の冷間鍛造によるアルミ部品にくらべ、鉄並み強度・低コストのアルミ鍛造を実現しました。
現在では自動車ステアリング部品を中心に、産業部品の軽量化・強度向上に貢献しています。

〈高強度アルミ鍛造の特徴〉
強度が高い 鉄に対して、約81%まで強度が向上
軽量化 鉄からの置き換えで、約1/3の軽量化を実現
コスト削減 鉄の鍛造品と遜色のないコストで、量産ができる

これまでの鍛造技術との比較

重さの比較
高強度アルミ鍛造技術について|重さの比較

鉄にくらべ比重が約1/3と軽量

強度の比較
高強度アルミ鍛造技術について|強度の比較

アルミ冷間鍛造とくらべ、強度が1.6倍に向上

高強度化の理由 ~高速恒温鍛造とは~

高強度アルミ鍛造技術について|高強度化の理由 ~高速恒温鍛造とは~

戸畑ターレット工作所高強度アルミ鍛造は、「アルミ」と「金型」を一定の温度に加熱しながら鍛造する独自の高速恒温鍛造です。
熱処理と鍛造を同時に行う加工熱処理で、金属の結晶構造を硬度化しています。

〈高強度化のポイント〉

高強度アルミ鍛造技術について|高強度化のポイント
加工熱処理による結晶粒微細化強化
塑性変形による加工硬化
熱処理による時効硬化

金属組織の比較

TEM(透過電子顕微鏡)観察による、一般的なアルミ鍛造との比較

一般的なアルミ鍛造(冷間鍛造+T6処理)
高強度アルミ鍛造技術について|一般的なアルミ鍛造(冷間鍛造+T6処理)

出物である針状のマグネシウムシリケイト(Mg2Si)がみられます。

高強度アルミ鍛造(高速恒温鍛造)
高強度アルミ鍛造技術について|高強度アルミ鍛造(高速恒温鍛造)

微細再結晶粒・転位・析出物の集積した複合組織。金属組織にひずみが残り、強度が得られます。

ここがPoint!鍛造シミュレーションによる工数削減
高強度アルミ鍛造技術について|ここがPoint!鍛造シミュレーションによる工数削減
引用元:歪みを可視化し解析|株式会社戸畑ターレット工作所
強度の高いアルミ鍛造には、最適な形状設計が不可欠です。
戸畑ターレット工作所では、高強度のポイントである最適な歪み・加圧速度・加工温度を設定できるデータベースを確立。データベースから条件を選択しシミュレーションを行うことで、強化したい箇所に歪みを残すことができます。

高強度アルミ鍛造の採用事例〈自動車メーカー〉

高強度アルミ鍛造技術について|車両の操作安定を担う「タイロットエンド」
車両の操作安定を担うタイロットエンド

従来、車両の操作安定を担う「タイロットエンド」は、ハンドルの操作力をタイヤに伝えるため強度の高い鉄が使われることが多く、軽量化の課題となっていました。

高強度アルミ鍛造技術について|車両の操作安定を担う「タイロットエンド」

そこで採用されているのが、強度を鉄並みに高めた高強度アルミ鍛造によるタイロットエンドです。
世界初の量産車向けアルミタイロットエンドとして、EVの燃費・航続距離に貢献しています。

一般的なタイロットエンド
高強度アルミ鍛造技術について|一般的なタイロットエンド

強度を確保するため鉄が使われている

高強度アルミ鍛造によるタイロットエンド
高強度アルミ鍛造技術について|高強度アルミ鍛造によるタイロットエンド

量産車向けとして世界初の量産化に成功

産学官による共同開発で、ものづくり日本大賞を受賞

高強度アルミ鍛造技術について|産学官による共同開発で、ものづくり日本大賞を受賞

高強度アルミ鍛造は、北九州の産学官がタッグを組み開発に取り組んだ、業界初のアルミ高強度化鍛造技術です。

九州工業大学との共同研究により高強度化に関するメカニズムを解明し特許を取得。2018年には優れたものづくり企業に送られる、経済産業省「ものづくり日本大賞 優秀賞」(製品・技術開発部門)を受賞し、公的機関からも高い評価を受けています。

鉄並み強度の高強度アルミ鍛造とは?まとめ

この記事では株式会社戸畑ターレット工作所(福岡県北九州市)に、アルミによる部品の軽量化ニーズと同社の「高強度アルミ鍛造」についてお聞きしました。

ガソリン車にくらべ部品点数の少ないEV。部品メーカーの開発競争がますます激しくなるなか、高強度アルミ鍛造による従来部品の軽量化は「アルミの可能性が広がる新技術」として期待されています。

鉄からアルミへの置き換えでお困りの方は、ぜひ一度「戸畑ターレット」までお問い合わせください。

 

機械部品の軽量化、鉄からアルミへの置き換えをご検討の方へ
機械部品の軽量化、鉄からアルミへの置き換えをご検討の方へ

戸畑ターレット工作所ではアルミ鍛造をはじめ、二次加工からアッセンブリまで、確かなVE提案でお客さまのトータルコスト削減をお手伝いしています。

ダイカストイからの切り替えや切削品の鍛造化など、経験豊かなエンジニアが直接ご相談に応じます。

お気軽にお問い合わせください。

\試作から量産まで!/

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株式会社戸畑ターレット工作所について

会社名 株式会社戸畑ターレット工作所
所在地 北九州市小倉南区新曽根11-31
事業内容 非鉄鍛造・アルミダイカスト・精密切削加工のエキスパート企業
公式サイト https://www.t-turret.co.jp/

プレス加工 塑性加工

この記事の監修者

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