A6061とは?アルミ合金A6061の特徴と用途、T6処理について
- 更新日:
- 2023/02/22 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
アルミ合金には、添加される材料の違いによってさまざまな種類があります。なかでも強度と入手性が高く、幅広い業界で採用されているのがA6061です。
この記事では、アルミ合金A6061の特徴や用途、A6061に施されることが多いT6処理と、A6061の加工性について解説します。
A6061とは
A6061は、アルミにマグネシウム(0.80%~1.20%)と、ケイ素(0.40%~0.80%)を含んだ合金です。
A6061はそのままの状態では強度が低く使用範囲が限定されてしまうため、ほとんどの場合「T6処理」とよばれる熱処理をして使われます。
Al-Mg-Si系合金(6000系アルミニウム合金):引用元:アルミニウム合金のいろいろ|一般社団法人 日本アルミニウム協会
この合金系は、強度、耐食性とも良好で構造用材として多用されています。アルミサッシに多量に使用されている6063合金および鉄道車両、自動車部材、陸上構造、船舶などに使用されている6N01合金は、押出し加工性にすぐれ複雑な断面形状の形材が得られます。また、少量のCuを添加して構造用鋼材に相当する耐力を有する6061合金など多くの種類があります。
A6061の特徴
A6061は、一般的なアルミ合金の性質に加えて、「耐食性」「強度」「溶接性」に特徴があります。
A6061の耐食性
アルミ合金は、アルミと酸素が結合することで酸化被膜が形成されるため、耐食性に優れています。
特にA6061は、添加剤であるマグネシウムとケイ素以外の不純物元素が最小限に抑えられているため、酸化被膜が形成されやすく、アルミ合金のなかでも優れた耐食性を発揮します。
A6061の強度
A6061はもともと強度が低いアルミ合金です。しかしT6処理とよばれる熱処理を施すことで、A2017やA7075などのジュラルミンに次ぐ強度を得ることができます。
ジュラルミンには、応力腐食割れ(経年損傷の一種)しやすいデメリットがあます。A6061は、ジュラルミンのデメリットをカバーする材質として採用されることが多くなっています。
A6061の溶接性
アルミ合金は、その熱伝導率の高さから溶接には不向きですが、A6061はそのなかでも溶接が可能な材料として知られています。
引用元:アルミ合金鋳物を熱処理するとなぜ硬くなるの?|公益社団法人 日本鋳造工学会
溶接時に熱影響を受けた箇所は、時間が経過すると強度が低下してしまうため、加工ワークは限定されます。
溶接後に「溶体化処理」と「時効処理」をすることで、強度を高めることも可能ですが、材料に歪みが生じてしまうため、精度の高いワークには向いていません。
A6061の表面処理
A6061は、アルミ合金のなかでも酸化被膜を形成しやすいため、表面処理をせずに使われることもありますが、高い耐食性や着色が必要な場合には、アルマイト処理がされます。
アルミ合金のアルマイト処理には、通常アルマイトである「白アルマイト処理」に加え、「硬質アルマイト」や「カラーアルマイト」があります。A6061はいずれのアルマイト処理にも対応可能です。
A6061のT6処理について
A6061の強度を高める際に行われる「T6処理」は、熱処理のなかでも強度が高い処理として知られています。
鍛造した鋳物を溶体化処理(アルミ合金中の成分を固体の中に溶かし込む)した後、焼き入れを行い、時効処理(より安定的な組織へと変化)したものをT6材といいます。
アルミ中に固溶させた銅やマグネシウムを、時効処理によって表面に析出させることで、強度や硬さが向上します。
A6061とA6063の違い
A6061の類似の材料に「A6063」があります。A6063も「6000系」に分類されるアルミ合金で、マグネシウム(0.45%~0.90%)とケイ素(0.20%~0.60%)の含有率が、A6061にくらべ低くなっています。
A6063は押出加工性に優れているため、押出成形の部品に多く使われています。強度はA6061の方が優れていますが、T6処理を行った後は強度に大きな差はありません。
A6061の代表的な用途
T6処理によって強度を高めたA6061は、大きな負荷が継続的にかかる自動車部品や、耐食性が必要とされる船舶部品などに多くに使われています。また鍛造性にも優れているため、大量生産にも向いています。
その高い強度を活かして、リベットやボルト用の材料として採用されることもあります。
T6処理済みの丸棒は広く出回っているため、ジュラルミンでは耐食性に懸念がある場合や、コストを抑えたいときに採用しやすい材料です。
A6061の切削加工性
A6061を含むアルミ合金は、熱伝導率が高いことから、切削性の高い材料として知られています。
切削工具に溜まった加工熱が放出されやすいため、工具へのダメージを押さえながら加工を行うことができます。
一方で加工点の摩擦熱によって、溶けた材料が切削工具に付着する「溶着」には注意が必要です。そのまま加工を続けると、溶着によって発生した「構成刃先」の影響で加工精度が大きく低下します。
溶着を防ぐためには、コーティング処理を施した表面摩擦係数の低い工具や、クーラントの使用が効果的です。クーラントを使う際には、アルミ合金の変色に注意しましょう。