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アルミダイカストとは?ダイカストで使われるアルミ種類と用途

アルミダイカストとは?ダイカストで使われるアルミ種類と用途

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
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塑性加工金属材料除去加工
     

軽くて加工しやすいことから、さまざまなシーンで使われているアルミ合金。アルミ合金はやわらかく、被削性が高い(削りやすい)ことで知られていますが、用途や数量によっては、切削以外にもダイカストで製造されることがあります。

この記事では、加工法および製品としてのアルミダイカストについて、アルミ鋳造との違いや材料の種類と特徴について解説します。

アルミダイカストとは

ダイカスト(ダイキャスト)は、鋳造に分類される加工法のひとつです。溶かした金属を高い圧力をかけながら金型に流し込むことで、狙いの形状を成形します。ダイカストで成形された製品も「ダイカスト」とよびます。

鋳物とダイカストの違い:
アルミニウム合金の”一般的な鋳物”と”一般的なダイカスト”の製造法との間には,いくつかの大きな違いがあります.最も大きな違いは,鋳型への溶 湯(溶けた金属)の流し込み方です.鋳物では重力による流動を利用して,静かに流し込むのに対し,ダイカストでは,ダイカストマシンによる力で,高速高圧 で溶湯を流し込みます.
引用元:JISには,なぜアルミ鋳物合金と, ダイカスト専用のダイカスト合金があるのですか? | 公益社団法人 日本鋳造工学会

ダイカストの多くは、材料の充填を0.1秒以内で完了させるため、量産に優れた加工法として知られています。アルミダイカストは、そのなかでもアルミ合金を材料として行う加工法、さらにはダイカストで製造したアルミ製品を指します。

おなじアルミでも強度は切削加工の方が上?
アルミダイカストについて|純粋な銅を生成するには?

おなじアルミを使っておなじ形の製品を製造する場合、完成品の強度はアルミダイカストよりも切削加工の方が高くなります。これはアルミダイカストの場合、鋳造時に製品の内部に応力が残ってしまうためです。
アルミの加工方法を検討する際には、完成品の強度についても考慮する必要があります。

アルミダイカストと亜鉛ダイカストの違い

アルミダイカストについて|アルミダイカストと亜鉛ダイカストの違い

ダイカストの材料として多く使われるのは、「アルミ合金」と「亜鉛合金」です。
アルミダイカストは、亜鉛ダイカストよりも軽量で強度が高く、経年劣化しにくい点が特徴です。また熱伝導性が高いことから、放熱板などの用途にも最適です。

一方で亜鉛ダイカストは、アルミダイカストよりも重く強度も低いですが、加工性が高く複雑な形状の部品に最適です。それぞれ一長一短のため、用途に応じて使い分けられています。

アルミダイカストとアルミ鋳造の違い

アルミダイカストについて|アルミダイカストとアルミ鋳造の違い

溶かした材料を型に充填し成形する加工法には「ダイキャスト」と「鋳造」があります。似た加工法ですが、いくつかの違いがあります。

アルミダイカストの製造法

アルミダイカストは、溶かしたアルミ合金を型に圧入することで成形します。金型を使うため、精度が高く表面のきれいな製品を製造できます。
金型には多額の費用がかかるため、大量生産で設備投資を回収できる場合に用いられます。

アルミ鋳造の製造法

アルミ鋳造は、溶かした金属を砂型に充填し、冷却することで固めます。アルミダイカストにくらべ、精度や表面のきれいさは劣ります。(バリ取りなどの後処理も多い)
少量生産や、それほど精度が必要とされない場合には、アルミ鋳造が向いています。

アルミダイカストで使われるアルミの種類と用途

アルミダイカストについて|アルミダイカストで使われるアルミの種類と用途

アルミダイカストに使われるアルミ合金は、添加されている金属の種類によって分けられます。
材料によって加工性や最終製品の特性が異なるため、形状や用途にあわせた最適な材料選択が重要です。

〈アルミダイカスト向けのアルミ種類〉

アルミの名前の付け方は?

アルミニウムは主に「展伸用合金」と「鋳造法合金」に分けられており、それぞれに名前のルールが決まっています。たとえば展伸用合金は、アルミを表す「A」の後に4桁の数字が付けられており、A2011やA5052、A7075などがあります。

一方、鋳造用合金の場合は、アルファベットと数字が組み合わされた名前が付けられます。鋳造用合金は「AC」、ダイカスト用合金は「ADC」が付けられているため、名前から用途を判別することができます。

ADC1(Al-Si系)

ADC1はアルミとケイ素で構成されており、耐食性に優れているのが大きな特徴です。金型内での流動性が高く、充填した際に湯回り不良などが起きにくいメリットがあります。
耐久性がそれほど高くないことから、自動車部品のなかでも強度がそれほど必要とされないフロントパネルや、住宅の屋根材などに使われています。

ADC3(Al-Si-Mg系)

ADC3はアルミとケイ素に加え、マグネシウムが含まれた材料で、ADC1と同様に耐食性が高く、衝撃に強いことが特徴です。一方で、ADC1にくらべ金型内での流動性が低い点がデメリットといえます。
ADC3は、自動車のホイールや船外のプロペラなどの用途に使われています。

ADC5(Al-Mg系)

ADC5はアルミとマグネシウムで構成された材料で、ADC1やADC3よりも高い耐食性が特徴です。衝撃に強いことが魅力ですが、流動性はADC3と同様にそれほど高くありません。
ADC5は、農業機械の部品や釣具などの用途に使われています。

ADC6(Al-Mg-Mn系)

ADC6は、アルミとマグネシウムにマンガンが添加された合金です。ADC5と同様に高い耐食性を持っています。金型内での流動性は、ADC5よりも優れているもののADC1よりは劣ります。
高い耐食性を活かして、二輪車部品や強度がそれほど必要とされない船外部品などに使われています。

ADC10・ADC12(Al-Si-Cu系)

ADC10・ADC12は、アルミとケイ素に銅が含まれた合金です。鋳造時の流動性と機械的特性に優れているため、さまざまなアルミ製品に採用されています。
電動工具やガス機器、自動車や二輪のアルミ部品など、生活のなかでもよく目にする製品の材料として使われています。

ADC14(Al-Si-Cu-Mg系)

ADC14は、ADC10・ADC12にマグネシウムを添加した合金です。耐摩耗性に優れていますが、伸びや衝撃に弱いため、強度が必要とされないエアコンなどの部品として採用されています。

塑性加工 金属材料 除去加工

この記事の著者・監修者

甲斐 智
甲斐 智(Satoshi Kai)

1979年 神戸生まれ、多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーに入社。
2020年に株式会社モノトを設立。長年に渡り工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる。
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