
ブローチ加工 – ブローチ加工の特徴とブローチ盤の種類を解説
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/05/12 ) 著者: 甲斐 智
ブローチ加工は、「ブローチ」とよばれる長い工具を使い、加工ワークの表面や内面を削る「除去加工」のひとつ。
自動車部品の溝加工や、航空機部品の溝加工などで使われています。
この記事では、あまり知られていないブローチ加工の仕組みや、NCブローチ盤の種類について解説しています。

ブローチ加工ってどんな加工?
ブローチ加工は、「ブローチ」とよばれる長い工具を使いで、加工ワークの表面や内面を削る金属加工です。
ブローチ加工:引用元:川口機械工業協同組合「ブローチ加工」
ブローチ盤による加工は、ブローチと呼ばれる総形工具を用いて、断面形状の複雑な穴などを一度に仕上げてしまう加工方法です。
工作物の下穴に挿入されたブローチが下方向に引き抜かれ、ブローチ下方の荒刃から上方の仕上げ刃へと工作物を少しずつ切削しながら、所定寸法に仕上げるというものです。
ブローチには「荒刃」から「仕上げ刃」まで、複数の切れ刃が直線状にならんでおり、それぞれの切れ刃が、ワークを順番に削っていきます。

ブローチを引き抜くように動かすことで、荒加工から仕上げまで、1回の引き抜きで一気に加工することができます。
さまざまなNC工作機械による工程を、1回の加工で済ますことができる
ため効率がよく、精度が高いのが特徴です。
ブローチの工具は、加工の内容にあわせて専用設計されるため、少量生産には向いていません。
ブローチ加工には、「NCブローチ盤」や、さまざまなNC工作機械が使われます。

ブローチ加工で使われるNCブローチ盤について


ブローチ盤は、「ブローチ加工」で使われるNC工作機械です。
複数の切れ刃をもった「ブローチ」の直進運動で、加工ワークの表面や内面を削ります。
長いブローチ(800~2400mm)を直進運動させるため大型の機械が多く、切削にかかる力が大きいため、高い剛性が必要になります。
英語では、〔CNC Broaching Machine〕とよばれます。
NCブローチ盤の種類
横型ブローチ盤 タイプ RAWX
引用元:ITOCHU MACHINE-TECHNOS
NCブローチ盤には、省スペースで安定した「立形」や、ブローチのメンテナンスがかんたんな「横形」など、さまざまな種類があります。
また加工方法によって、ブローチを引き抜きながら加工する「引抜き形」と、押し込みながら削る「押抜き形」があります。
NC内面ブローチ盤
加工ワーク内面のブローチ加工で使われる、NCブローチ盤です。
穴あけ加工された穴の内面を削り、溝や多角形の穴をつくります。

溝は、キー溝・スプラインの軸受・内歯車などのメカ機構として使われます。
NC表面ブローチ盤
加工ワーク表面のブローチ加工で使われる、NCブローチ盤です。
表面を削って溝をつくります。
溝は、スプロケット・スプライン・歯車などのメカ機構として使われます。
フライス加工にくらべ効率がよく、精度が高いのが特徴です。
ブローチ加工で使われる、そのほかの工作機械
一般的なNC工作機械でも、ブローチ加工用の特殊ツールを使うことで、簡易的なブローチ加工ができます。
間違いやすい?ブローチ加工と削り加工の違い
ブローチ加工と似た加工に、削り加工があります。
削り加工は、加工ワークやバイトの往復運動で、ワークをすこしずつ削ります。
(大工のカンナがけに似た加工です)
ブローチ加工とブローチ盤とは?まとめ
この記事では、あまり知られていないブローチ加工の仕組みや、NCブローチ盤について解説しました。
NCブローチ盤は自動化がむずかしくNC工作機械の高機能化が進んだことで、加工現場ではあまりみられなくなりましたが、高い精度がもとめられる自動車部品や歯車加工には欠かせない機械です。
本記事が、はじめてブローチ加工を知るかたの、きっかけになればうれしいです。