中ぐり加工 – 中ぐりの工程と中ぐり盤・ボーリングバーを解説
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/05/18 ) 著者: 甲斐 智
中ぐり(なかぐり)加工は、ドリルなどであけた下穴を、さらにくり抜いて広げる「除去加工」のひとつ。
ボーリング加工ともよばれ、ドリルの直径よりも大きな「穴あけ加工」や、鋳造・鍛造であけられた荒い穴の「仕上げ加工」など、 精度の高い穴あけ加工 で使われます。
この記事では、中ぐり加工で使われるボーリングバーや、「NC中ぐり盤」について、かんたんに紹介します。
中ぐり加工ってどんな加工?
中ぐり(なかぐり)加工は、ドリルなどであけた下穴をさらにくり抜いて広げる加工方法です。
中ぐり加工では「ボーリングバー」とよばれる中ぐりバイトを使い、穴の内面を削ります。
中ぐりとは:引用元:多様な技術を駆使し穴を開け所定の寸法に調整|厚生労働省
中ぐりとは、中ぐり盤という専用の機械を使って、さまざまな金属に穴を開け、その穴を所定の大きさにくり広げることをいいます。中ぐり加工をすることによって、穴の寸法精度や位置精度が高くなります。
穴の直径や精度によって、ボーリングバーを交換しながら、徐々に仕上げていきます。
加工中は、穴の内部に切粉がたまりやすいため、切粉の確実な排出がかかせません。
深穴の中ぐりや薄肉の中ぐりでは、工具が振動によってびびり(共振)やすいため、加工の難易度があがります。
中ぐり加工には、専用の「NC中ぐり盤」や、さまざまなNC工作機械が使われます。
中ぐり加工で使われるNC中ぐり盤について
NC中ぐり盤は、「中ぐり加工」で使われるNC工作機械です。
主軸に取り付けたボーリングバーを回転させながら、穴の内面を削ります。
「クイル」とよばれる、NC中ぐり盤独自の繰出し主軸を搭載し、ボーリングバーを長く突き出しながら削ることで、深い穴の中ぐりができます。
工具を交換することで、フライス加工・穴あけ加工・リーマ・タップ加工もできます。
英語では、〔CNC Boring Machine〕と表記されます。
NC中ぐり盤の種類
横中ぐり盤
引用元:Shibaura Machine CO., LTD
NC中ぐり盤は、主軸の構造や、加工の目的によって分けられます。
NC中ぐり盤の多くは、汎用性の高い「横形マシニングセンタ」に置き換わっていますが、ミクロン代の精度を必要とする専用加工の分野では、「精密中ぐり盤」や「ジグ中ぐり盤」などの高精度機械が活躍しています。
NC横中ぐり盤
NC横中ぐり盤は、主軸(刃物の回転軸)が横に向いたNC中ぐり盤です。
NC中ぐり盤を代表する機種です。
立形にくらべ切粉を外に排出しやすいため、大きな穴や深い穴の加工が実現。
小物~中物の加工に向いています。
フライス加工と兼用で使われる機械は、「NC横中ぐりフライス盤」ともよばれています。
NC立中ぐり盤
NC立中ぐり盤は、主軸(刃物の回転軸)が縦に向いたNC中ぐり盤です。
門形の大型機械が多く加工テーブルが広いため、大きな金属の加工に向いています。
ユニバーサルヘッド(交換式の旋回工具)による5面加工もできます。
NC精密中ぐり盤
NC精密中ぐり盤は、穴の内面の鏡面仕上げに使われるNC中ぐり盤です。
超硬やダイヤモンドバイトを使い、ミクロン代の精度で高速切削。
エンジン部品や軸受けなど、高い精度が必要とされる内径の仕上げに使われています。
主軸の向きによって「横形」「立形」があり、大きな金属の加工では、加工ワークが安定してツールがたわみにくい「立形」がよく使われます。
NCジグ中ぐり盤(ジグボーラー)
NCジグ中ぐり盤は、ミクロン代の精密加工で使われる、高精度NC中ぐり盤です。
金型や機械部品の「精密中ぐり加工」で使われます。
もともとは、高い精度がもとめられるジグ(治具)の穴あけ専用機として開発されましたが、NCの進化により汎用的に使われるようになりました。
そのため「ジグボーラー」ともよばれます。
光学センサによる精密位置決で、芯だしや主軸の位置決めをミクロン代の精度で行います。
(室温や発熱による熱変位、機械設置時の平衡出しに注意が必要です)
また振動による精度低下を避けるために、通常の機械加工場とは別のスペースに設置されます。
主軸の向きによって、「横形」「立形」があります。
中ぐり加工で使われる、そのほかの工作機械
一般的なNC工作機械でも、中ぐり加工用のツールを使うことで、簡易的な中ぐり加工ができます。
(チャックでつかめないワークや、重たいワークには向いていません)
中ぐり加工と中ぐり盤とは?まとめ
この記事では、中ぐり加工で使われるツールや、「NC中ぐり盤」を通して、中ぐり加工について解説しました。
中ぐり加工は、エンジン部品の穴加工に広く使われていて、車の高い燃費性能を発揮するためには、精密な中ぐり加工がかかせません。
本記事が、中ぐり加工を知る「はじめのいっぽ」となればうれしいです。