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SPHCとは?SPHC(熱間圧延軟鋼板)の特徴とSPCCとの違い

SPHCとは?SPHC(熱間圧延軟鋼板)の特徴とSPCCとの違い

更新日:
2024/07/20 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
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塑性加工金属材料除去加工
     

SPHCは、SPC材(Steel Plate Cold)に分類される炭素鋼のひとつです。その製造方法や炭素含有量から、機械的強度が高くないため用途は限られますが、安価に入手しやすい材料のひとつです。
曲げ加工に適していることから、自動車のボディや電化製品の外装など、比較的大きな部品に用いられます。

この記事ではSPHCの特徴や、酸化皮膜の除去と表面処理、SPHC-Pについて解説します。

SPHC(熱間圧延軟鋼板)とは

SPHCは「熱間圧延軟鋼板」の略で、再結晶温度(鉄系の材料の場合900℃~1,200℃)よりも高い温度で圧延された炭素鋼です。HOT(ホット)とよばれたり、スケールとよばれる黒い酸化皮膜が生じることから、黒皮(クロカワ)ともよばれます。

SPHC鋼板:
Steel Plate Hot Commercialの略。高温で圧延した鋼板。
引用元:生産技術部|鹿児島県工業技術センター

SPHCは、石灰石や鉄鉱石、コークスを原料とするスラブを加熱し、圧延機で圧延することで製造されます。通常は運搬しやすいように、コイル状に巻き取られた状態になっています。

SPHC(熱間圧延軟鋼板)について|名前が似ている「SPCC(Steel Plate Cold Commercial)」は、SPHCを常温で圧延することでつくられてます。その特徴はSPHCとは大きく異なります。
名前が似ている「SPCC(Steel Plate Cold Commercial)」は、SPHCを常温で圧延することでつくられてます。その特徴はSPHCとは大きく異なります。

SPHCの特徴

SPHC(熱間圧延軟鋼板)について|SPHCの特徴

SPHCは炭素鋼のなかでも、加工性や入手性の高さが特徴です。

SPHCは加工性が高い

SPHCは炭素の含有量が少なく、やわらかい金属として知られており、特に曲げ加工に向いています。
通常は黒皮という酸化皮膜がついていますが、これを表面処理などによって除去することで、塗装性や絞り加工性が向上します。
材料の温度変化により、寸法精度は高くありません。

SPHCは入手性が高く安価

SPHCは、材料を高温で圧延するため生産効率が高く、SPCCなどの材料にくらべて工程数が少ないため、特殊な厚さでなければ安価に入手することが可能です。
流通量も多く、SPHCの板厚は1.2~14.0mmと幅広く設定されています。

SPHCは強度が低い

SPHCは炭素含有量が少なく、強度が低い材料です。
他の炭素鋼には引張り強度に関する規定がありますが、SPHCについては「270MPa以上」という下限値の設定のみで、強度の求められる用途には向いていません。

SPHC以外の種類

SPHCは4種類あるSPHのひとつで、SPHC以外には「SPHD」「SPHE」「SPHF」に分類されます。
これらは炭素含有量によって分類されており、SPHCがもっとも炭素含有量が多く、SPHFがもっとも炭素含有量が少ない材料です。

SPHD

SPHDは、鉄以外の含有量がSPHCよりも低く設定されてます。
じん性に優れて加工性が高い半面、引張り強度が弱く、絞り用の材料とされています。

SPHE

SPHEは、SPHCに比べ炭素量が少なく、深絞り用の材料とされています。
加工性や変形性に優れています。

SPHF

SPHFは炭素量0.08%以下で、深絞り用のなかでも絞りや伸びがもっとも優れています。
一方で、強度が弱い材料でもあります。

酸化皮膜の除去と表面処理

SPHC(熱間圧延軟鋼板)について|酸化皮膜の除去と表面処理

SPHCは黒皮(酸化皮膜)に覆われているため耐食性が高く、特に表面処理をしなくても、そのまま使うことが可能です。しかし場合によっては黒皮が剥がれ落ちてしまったり、部分的に穴が空くことがあります。材料全体としては十分な耐食性が確保できるわけではありません。
そのためSPHCを使う場合は、酸化皮膜を除去した後に表面処理を施し、耐食性を確保するのが一般的です。
黒皮を除去することによって、塗装性や絞り加工性も向上しますが、耐食性は著しく悪化するため、さび防止の塗装やめっきなどの表面処理が必要になります。

SPHC-Pについて

酸化皮膜を除去する方法にはいくつかありますが、そのひとつが酸を用いた「酸洗(さんせん)」です。SPHCの黒皮(酸化皮膜)を酸洗で処理したものを、SPHC-Pとよびます。

SPHC(熱間圧延軟鋼板)について|黒皮の除去には、物理的に皮膜を除去する「ショットブラスト」が用いられることもあります。
黒皮の除去には、物理的に皮膜を除去する「ショットブラスト」が用いられることもあります。
ショットブラストは、表面に細かい球状の粒子をぶつけることで、皮膜を除去します。酸化皮膜を除去した後は、表面に凹凸ができるため、塗装性も向上します。

SPHCとSPCCとの違い

SPHC(熱間圧延軟鋼板)について|SPHCとSPCCとの違い

SPHCとSPCCとの違いは、製造時の温度帯です。SPHCは熱間圧延、SPCCはSPHCをさらに冷間圧延したもので、その性質は大きく異なります。
コスト優先の場合は「SPHC」、精度優先の場合は「SPCC」が選択されることが多いです。

コストの比較

SPHC SPHCは熱間圧延(再結晶温度以上の温度)で製造されるため、加工硬化がありません。
製造コストも低く、特殊な厚さでなければ安価に入手することが可能です。
SPCC SPCCはSPHCをさらに冷間圧延(再結晶が起きない温度)して製造されるため、加工硬化が生じています。
SPHCにくらべると加工に大きな力が必要となり、製造工程も多くコストが上がります。

精度の比較

SPHC SPHCは材料の温度変化により、寸法精度は高くありません。
SPCC SPCCは材料の温度変化が小さく、寸法精度が高いことが特徴です。
SPHCよりも薄板の製造が可能です。

SPHCの切削加工ポイント

SPHC(熱間圧延軟鋼板)について|SPHCの切削加工ポイント

SPHCは板材での流通となるため、切断・曲げ・溶接が多く、切削加工のシーンは限られますが、穴あけやねじ立てでは、一部で切削加工が必要になることもあります。
SPHCは炭素含有量が少ないため、硬度もそれほど高くなくやわらかい材料です。一般的な炭素鋼の加工ポイントに配慮することが重要です。

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塑性加工 金属材料 除去加工

この記事の監修者

甲斐 智(KAI Satoshi)
甲斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
15年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる
文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」参加企業

2020年に「はじめの工作機械」を立ち上げ(はじめの工作機械とは

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