削り加工とは?平削り・形削り・立削りの違いと削り盤を解説
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/05/12 ) 著者: 甲斐 智
削り加工は、加工ワークやバイトの往復運動で、金属の表面や内面を削る「除去加工」のひとつ。
大工のカンナがけ
のように、ワークの表面を削っていきます。
この記事では、あまり知られていない平削り・形削り・立て削りの違いや、プレーナー・シェーパー・スロッターとよばれる「削り盤」について、わかりやすく解説しています。
削り加工ってどんな加工?
削り加工は、加工ワークやバイトの往復運動で、金属の表面や内面を削る金属加工です。
大工のカンナがけのように、ワークの表面を削っていきます。
削り加工は、加工ワークやバイトの動かし方によって、平削り・形削り・立て削りに分けられます。
加工には「削り盤」が使われますが、往復運動の戻りの行程では加工ができないため効率が低く、大量生産の現場で見かけることは少なくなってきました。
しかし
加工時の発熱が少なく精度が高い
ため、アルミや薄物の切削で高い効果を発揮します。
間違いやすい?削り加工とブローチ加工の違い
削り加工と似た加工に、ブローチ加工があります。
ブローチ加工では、専用工具(ブローチ)を使い、1回の動作で一気に加工を済ませます。
平削りと、平削り盤について
平削りは、加工ワークを往復運動させながら、固定したバイトをあてて削る加工方法。
工作機械のベッドや大型車両など、大きなワークの平面加工や溝加工で使われています。
フライスによる平面加工にくらべ加工精度がよく、仕上げがキレイです。
バイトには「腰折れバイト」とよばれる曲がったバイトが使われます。
腰折れのくびれ部分で切削の振動を吸収し、たわみによるバイトの折れを防ぎます。
平削り盤「プレーナー」
平削りには、「プレーナー」とよばれる平削り盤が使われます。
加工効率が低いため、量産ラインでは「5面加工機」や「NCプラノミラー」によるフライス加工が一般的です。
形削りと、形削り盤について
形削りは、バイトを往復運動させながら、固定した加工ワークにあてて削る加工方法。
ワークとバイトの動きが、平削りと逆になります。
ピニオンカッタ(歯形ツール)による歯車加工や、小さな部品の溝加工で使われます。
形削り盤「シェーパー」
形削りには、「シェーパー」とよばれる、形削り盤が使われます。
加工効率が低いため、量産ラインでは、「マシニングセンタ」や「NCフライス盤」によるフライス加工が一般的です。
立削りと、立削り盤について
立削りは、バイトを上下に動かしながら、固定した加工ワークにあてて削る加工方法。
形削りを「縦」にした方式です。
穴の内面のキー溝加工や歯車加工、スプラインなどの溝加工で使われます。
(スプラインは、縦方向に溝のついた伝導用の軸部品です)
立削り盤「スロッター」
立削りには、「スロッター」とよばれる、立削り盤が使われます。
NC旋盤やNCフライス盤、マシニングセンタではむずかしい角穴の加工ができます。
構造的には「NC内面ブローチ盤」とおなじです。
スキンミラーについて
スキンミラーは平削り・立削りで使われる、削り加工に特化したフライス盤の一種です。
鋳造でつくられた鋳塊(インゴット)や、圧延でつくられた鋼片(板状のスラブ)の表面を削る機械は「スラブミラー」ともよばれます。
削り加工とは?まとめ
この記事では、あまり知られていない平削り・形削り・立て削りの違いや、プレーナー・シェーパー・スロッターとよばれる「削り盤」について解説しました。
削り盤は加工効率が低く、高い生産性がもとめられる加工現場ではあまりみられなくなりましたが、高い平行度がもとめられる工作機械ベッドの加工や、歯車加工にはかかせません。
本記事が、はじめて削り加工を知るかたの、きっかけになればうれしいです。