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金属加工とは?自動車部品でみる加工例と金属加工の種類まとめ

金属加工とは?自動車部品でみる加工例と金属加工の種類まとめ

更新日:
2022/08/31 (公開日: 2020/05/29 ) 著者: 甲斐 智
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プレス機械まとめ記事付加加工冶金塑性加工工作機械鋳造除去加工
     

「金属加工」は、金属を「原料」から「製品」に加工する一連の技術です。

自動車部品をはじめ家電や電子機器など、 身の回りの身近な金属製品 にはすべて金属加工が施されています。

近年では工業製品の進化によって、もとめられる金属製品もますます小さく高精度に。
新興国に負けない低価格・短納期に応えるために、さまざまな金属加工技術が開発されています。

この記事では、鉄鉱石などの金属のかたまりが工業製品になるまでのながれを通して、「金属加工」の種類や自動車業界での加工事例を紹介します。

金属加工について|金属加工の現場では、さまざまな加工機械が使われています!
金属加工の現場では、さまざまな加工機械が使われています!

金属加工の分類

金属加工について|金属加工の分類

金属加工法は、大きく「1.除去加工」「2.非除去加工」「3.付加加工」に分けることができます。
加工材料の材質や目的の精度、生産量によってさまざまな方法が使い分けられます。

〈金属加工の分類〉
1.除去加工 刃物や電気エネルギーなどで、金属を削り取ります
2.非除去加工 鋳造(ちゅうぞう):金属を溶かして堅めます
冶金(やきん):金属を圧縮して堅めます
塑性加工(そせい):金属に力を加えて変形させます
3.付加加工 3D金属プリンターを使い、金属を付け加えます

◎工作機械を使った加工は、単に「機械加工」ともよばれます

金属加工の種類!金属から製品ができるまで

① 金属の「原料」から、金属素材をつくる

金属加工について|金属の「原料」から、金属素材をつくる
写真は、アルミニウムの鋳塊(インゴット)

鉄鉱石やアルミなどの金属原料を高温で溶かし、鋳塊(ちゅうかい)とよばれる金属素材を鋳造(ちゅうぞう)します。
鋳塊は「インゴット」ともよばれ、あらゆる金属製品のもとになる金属のかたまりです。

鋳造法によっては、精度の高い鋳物(いもの)が得られ、そのまま最終製品として使われます。

小さな機械部品などは、粉末冶金(ふんまつやきん)でつくられるものもあります。

鋳造とは

金属加工について|鋳造とは

鋳造(ちゅうぞう)は、製錬された金属原料を熱で溶かし「鋳型(いがた)」に流し入れ冷やし固める金属加工法です。

紀元前4000年ごろから行われている最古の技法で、複雑なカタチの部品を一体成型することができます。

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粉末冶金とは

金属加工について|粉末冶金とは

粉末冶金(ふんまつやきん)は、原料の金属粉を金型に入れ「プレス機械」で圧縮して焼き堅める金属加工法です。

粉末冶金でつくられた金属は強度が高く、最終製品や切削工具の材料としても使われます。

タングステンやモリブデンなどの高融点材料を使った機械部品や、セラミック製品などの加工に広く取り入れられています。

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② 金属の「素材」から、金属材料をつくる

金属加工について|金属の「素材」から、金属材料をつくる
工場に積まれたビレット

金属素材から、鋼片(こうへん)とよばれる金属材料をつくります。

鋼片は鋳造工程で圧延され、カタチによって「棒材用のビレット」「形鋼用のブルーム」「板材用のスラブ」に分けられます。

ビレットはさらに「塑性加工」をへて、棒材・線材・板材・形材・管材とよばれる半製品に加工され、自動車部品や機械部品の材料になります。

塑性加工とは

金属加工について|塑性加工とは

塑性加工(そせいかこう)は、プレス機械を使って金属に大きな力を加えて変形させる金属加工法です。

金属の塑性(ある力以上で変形させると、もとに戻らない性質)を利用して金属を加工します。

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③ 金属の「材料」から、完成品をつくる

金属加工について|金属の「材料」から、完成品をつくる

金属材料は「加工ワーク」とよばれ、さまざまな機械によって加工され製品が完成します。
主に塑性加工除去加工付加加工などの金属加工や、焼入れなどの熱処理が行われます。

除去加工とは

金属加工について|除去加工とは

除去加工は、金属の不要な部分を工作機械で取り除く金属加工法です。
機械加工やバリ取り工程を経て、最終製品が完成します。

フライス・旋削(せんさく)・研削・研磨などさまざまな加工方法があり、精度の高い複雑な加工が可能です。

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付加加工とは

金属加工について|付加加工とは

付加加工は、AM技術(Additive Manufacturing)とよばれる加工技術です。
代表的な技術に「金属3Dプリンター」を使った、積層造形があります。

金属3Dプリンターは、金属粉をレーザで焼き固めて造形し、切削加工で所定のカタチに仕上げる工作機械

破損した金属部品の修理や、切削加工では再現できな3D構造の加工にも応用でき、新しい金属加工のカタチとして、注目されています。

熱処理とは

金属加工について|熱処理とは

熱処理とは、 金属を加熱し冷却することで素材の特性を変化 させ、硬さや粘りを持たせる処理方法です。

金属加工の現場では、加工の目的に応じて「焼入れ」や「焼き戻し」などのさまざまな熱処理が行われています。

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金属加工の歴史

金属加工について|金属加工の歴史

金属加工の歴史は、鉱石から不純物を取り除く「精錬技術」の発見からはじまるといわれています。

紀元前4,000年の古代エジプト文明では、金属をハンマーでたたいて加工する「鍛造(たんぞう)」が装飾具に施され、やがて金属を溶かして金型に流し固める「鋳造(ちゅうぞう)」へ発展。

そして18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命にともない、プレス加工など大量生産による近代化が急速に進みました。

金属加工について|
QSMM 3204sc©CC BY 3.0
この画像は、クリエイティブ・コモンズ(CC)のもと再編集されています

日本では古墳時代に朝鮮半島より鍛治(かじ)技術が入ると、農具や刀剣、鉄砲などの武器などがつくられるように。
平安時代には日本独自の刀鍛冶技術が生まれ、現在の精密鍛造につながっています。

金属加工でみる!自動車部品の加工事例

金属加工について|金属加工でみる!自動車業界の加工事例

自動車は「金属加工」のかたまりです。

自動車の運動性能や燃費・耐環境性能をあげるためには、精度の高い金属加工がかかせません。
自動車にはおよそ2万点の部品が使われており、ミクロン単位の加工精度がもとめられます。

品質の高いメイドインジャパンの自動車部品は、世界でも高いシェアを誇っています。

大量生産のイメージが強い自動車部品の加工ですが、近年ではエンジンのEV化で多品種少量生産の部品加工が増加。いかに生産性と歩留まりを上げるかが課題となっています。

歩留まりとは?
金属加工について|歩留まりとは?
歩留まりは、材料や生産数に対する良品の割合です。
加工不良が多いと生産数に対する良品の割合が減ってしまい、歩留まりが悪くなります。
製造業では加工不良をゼロにすることはほぼ不可能です。不良品は必ず発生するものとした上で、歩留まりを高くする仕組みづくりが生産性向上のカギとなります。
歩留まりあるいは歩止まり(ぶどまり)とは、製造など生産全般において、「原料(素材)の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品生産数(量)比率」のことである。
引用元:歩留まり|ウィキペディア(Wikipedia)

金属加工の事例:エンジン、ミッション部品

金属加工について|金属加工の事例:エンジン、ミッション部品

エンジンのシリンダーやピストン、変速機やステアリングなど。
塑性加工除去加工を経て、精度の高い部品がつくられています。

金属加工の事例:シャフト部品

金属加工について|金属加工の事例:シャフト

動力を効率よく伝えるためのシャフト部品などの加工には、精度の高い研削加工技術がもとめられます。

金属加工の事例:タイヤ

金属加工について|金属加工の事例:タイヤ

ゴム素材を金型に流し込み、成形します。
タイヤ金型の製作には、精度の高い切削加工技術がもとめられます。

金属加工の事例:ブレーキ部品

金属加工について|金属加工の事例:ブレーキ部品

ブレーキキャリパーやABS部品など、溶解金属を金型に流し込み鋳造します。
強度の高い部品をつくるため、高い技術がもとめられます。

金属加工の事例:ボディー外装

金属加工について|金属加工の事例:ボディー外装

ボディシェルとよばれるボディー外装の金属は、ロール状の鋼板を伸ばし、プレス機械で切断し成形されます。

素材には、ボディの肉薄化や表面強化のためハイテン材とよばれる素材が使われます。
ハイテン材(高張力鋼)は、強度を保ちながら軽量化を図れる特殊な鋼です。

金属加工の事例:EV(電気自動車)

金属加工について|金属加工の事例:EV(電気自動車)

EV技術・電気自動車の普及にともない、「部品の軽量化」もあらためて注目されています。

自動車の軽量化は、運動性能だけでなく燃費の向上につながることから、一部の部品には軽量なアルミ部品も採用され、素材の改良や加工技術の開発も進んでいます。

金属加工でつくられる、身の回りの身近な金属製品

金属加工について|金属加工でつくられる、身の回りの身近な金属製品

私たちの身の回りの身近な製品には、すべて金属加工が施されています。

自動車や電子機器・家電・スマホ・建材・装飾品・文具・家具など、金属加工が関わらない製品はありません。

プラスチックやペッドボトルなどの樹脂製品でも、その成形に使われる金型加工には高い技術がもとめられます。

身の回りの金属加工例(電子機器の身近な金属製品)

金属加工について|身の回りの金属加工例(電子機器の身近な金属製品)

スマートフォンやパソコンをはじめとしたIT機器は、軽量・コンパクト・高性能化など日々進化。

5G(第5世代移動通信システム)やIoTの拡大によって、半導体・センサ・カメラなどの「電子部品」の高精度化も進んでいます。

これらの部品の高度化ニーズを背景に、NC工作機械などの金属加工機械も進化しています。

〈金属加工例〉

  • スマートフォン本体の切削加工
  • ハードディスクケースの切削加工
  • 電子部品の金型加工
  • 液晶ディスプレイの金型加工
  • 超小型レンズの微細加工
  • マイクロチップの微細加工

こうした金属加工技術は、内視鏡などの「医療分野」や「宇宙開発」などの先端技術にも応用されています。

身の回りの金属加工例(家電・住宅の身近な金属製品)

金属加工について|身の回りの金属加工例(家電・住宅の身近な金属製品)

家電などの「身のまわり」の生活必需品にも、金属加工が施されています。

これらの部品の多くは、耐久性や耐食性に優れたステンレス・亜鉛めっきや、デザイン性が高く軽くて加工しやすいアルミニウムなどの素材が使われています。

〈金属加工例〉

  • 冷蔵庫本体のプレス加工
  • 電子レンジ本体の板金加工
  • エアコン本体の金型加工
  • ステンレスシンクの成形および金型加工
  • バスタブの成形および金型加工
  • 建材部品の金型加工

家電製品の金属加工技術では「大量生産」だけでなく「リサイクル」のしやすさなど、地球環境の保護を考慮した新たなニーズも高まりつつあります。

金属加工機械の種類

金属加工の現場では、約200~300種類もの金属加工機械が使われています。
それぞれの工程に応じて、さまざまな機械を組み合わせながら金属加工を行います。

工作機械の種類:
総務省の「日本標準商品分類」によると、「金属加工機械の種類」は、中分類、小分類及び細分類まで分類されており、細分類ではその用途によって約300種類と非常に多くの種類に分けられています。
引用元: 日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」

NC工作機械とは(金属加工)

金属加工について|NC工作機械とは

NC工作機械は、除去加工のための加工機械です。
金属の不要な部分を取り除き、目的のカタチに仕上げます。
工作機械を使った加工を、機械加工とよぶこともあります)

自動車や航空機の部品をはじめ、金型や電子部品の加工など、あらゆるものづくり産業の基盤となっています。

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プレス機械とは(金属加工)

金属加工について|プレス機械とは

プレス機械は、プレス加工のための加工機械です。

金属の板材(ブランク)を「金型」に挟み、強い力をかけることで製品を成形。
加工速度が速く、おなじ部品の大量生産に向いています。

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金属加工のお役立ち展示会

金属加工について|金属加工の展示会

金属加工・工作機械の業界では、毎年さまざまな展示会が開催。

展示会では「NC工作機械」はもちろん、プレス機械ツーリング切削工具・センサなど、金属加工のあらゆる最新技術が日本中から集まります。

金属加工とは?まとめ

この記事では、金属のかたまりが金属製品になるまでのながれをもとに「金属加工」の種類や、自動車業界での加工事例について紹介しました。

近年では金属加工技術の向上だけでなく、作業者の負担を減らした製造工程やリサイクルしやすい素材・技術開発など、地球環境の保全を目指す「サステナブルな社会づくり」への対応も進んでいます。

今後、金属加工も時代のニーズに合わせた進化や技術革新が期待されています。

〈金属加工の関連キーワード〉

プレス機械 まとめ記事 付加加工 冶金 塑性加工 工作機械 鋳造 除去加工

この記事の監修者

甲斐 智(KAI Satoshi)
甲斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
15年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる
文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」参加企業

2020年に「はじめの工作機械」を立ち上げ(はじめの工作機械とは

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