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歯車加工とは?いろいろな歯車の加工方法とホブ盤・歯車加工機

歯車加工とは?いろいろな歯車の加工方法とホブ盤・歯車加工機

更新日:
2023/04/03 (公開日: 2020/06/02 ) 著者: 甲斐 智
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「歯車」は、さまざまな産業で広く使われている、 機械の動力の伝達に欠かせない重要な部品 です。

高い精度が求められる産業用の歯車は、「歯車加工」によってつくられています。

自動車・輸送機器・ロボットなど、産業機械の現場では「小さくて軽い歯車」や「強度が高く騒音の少ない歯車」など、さまざまな歯車が求められています。

この記事では、産業機械で使われる「歯車」の種類やさまざまな加工方法、NCホブ盤などの「NC歯車加工機」を解説しています。

歯車加工について|歯車のニーズ増加にともない、さまざまな歯車機械の開発が進んでいます!
歯車のニーズ増加にともない、さまざまな歯車機械の開発が進んでいます!

歯車加工ってどんな加工?

「歯車」は、さまざまな産業で広く使われている、機械の動力の伝達に欠かせない重要な部品です。
高い精度が求められる産業用の歯車は、「歯車加工」によってつくられています。

歯を削る工程は「歯切り」とよばれ、歯車の精度を左右するたいせつな工程 です。
歯車はカタチや目的によってさまざまな種類があり、そのつくり方も多岐にわたります。

歯車加工について|歯車加工ってどんな加?

歯車加工では、まず旋削加工フライス加工でおおまかなカタチを削り、つぎに歯の部分を切削(歯切り)。

歯切りには、「NC歯車加工機(歯切り盤)」などの、専用のNC工作機械が使われます。

歯車の種類について

産業機械に使われる、歯車のおもな種類について紹介します。

平歯車(スプルーギア)

歯車加工について|平歯車(スプルーギア)

もっとも一般的な、円形の歯車です。
加工がシンプルで、さまざまな産業で広く利用されています。

歯車加工について|平歯車(スプルーギア)

かさ歯車(ベベルギア)

歯車加工について|かさ歯車(ベベルギア)

円すい形の歯車です。
みためが「傘」に似ているため、かさ歯車とよばれています。

縦軸の回転運動を、横軸に変換します。

歯車加工について|かさ歯車(ベベルギア)

かさ歯車は、歯形によってさらに細かく分けられます。

すぐばかさ歯車

歯車加工について|すぐばかさ歯車

まがりばかさ歯車

歯車加工について|まがりばかさ歯車

はすば歯車(ヘリカルギア)

歯車加工について|はすば歯車(ヘリカルギア)

歯形がねじれた、円形の歯車です。平歯車とくらべ、駆動力と静音性が高いのが特徴です。

歯車加工について|はすば歯車(ヘリカルギア)

軸方向に負荷がかかるため、はすば歯車をふたつ組みあわせて負荷を打ち消した「やまば歯車(ダブルヘリカルギヤ)」とよばれる歯車もあります。

はすば歯車(ヘリカルギア)

歯車加工について|はすば歯車(ヘリカルギア)

やまば歯車(ダブルヘリカルギヤ)

歯車加工について|はすば歯車(ヘリカルギア)

ラックアンドピニオン

歯車加工について|ラックアンドピニオン)

棒状のラック歯車と、円形のピニオン歯車を組み合わせた機構です。
ピニオンの回転運動を、直線運動に変換します。

歯車加工について|ラックアンドピニオン

ウォームギア

歯車加工について|ウォームギア

ねじ状のウォームと、円形のウォームホイールを組み合わせた機構です。
ウォームの回転運動を、垂直方向に変換します。

歯車加工について|ウォームギア

他の歯車にくらべ、バックラッシュを小さくできるのも特徴です。

バックラッシュ:
バックラッシュ(Backlash, バックラッシとも呼ぶ)とは、機械に用いられる送りねじ、歯車等の互いにはまり合って運動する機械要素において、運動方向に意図して設けられた隙間の事。
この隙間が無ければ歯同士が干渉し、回す事ができなくなるが、ある方向に回転していたものを反対方向に回転させた時、寸法のずれや衝撃が生じる事がある。
引用元: バックラッシュ「ウィキペディア(Wikipedia)」

内歯車(インターナルギア)

歯車加工について|内歯車(インターナルギア)

内側に歯形をもった、円形の歯車です。
通常の歯車と異なり、回転方向が駆動もとの歯車とおなじになります。

歯車加工について|内歯車(インターナルギア)

静音性が高く、自動車ミッションの遊星歯車(プラネタリーギア)としても使われます。

歯車加工について|内歯車(インターナルギア)

ボールねじ

歯車加工について|ボールねじ

ねじの回転運動を直線運動に変換する、歯車機構です。
工作機械のテーブルなど、さまざまな送り機構に採用されています。

歯車加工について|ボールねじ

歯車の歯形について

歯車加工について|歯車の歯形について

産業機械で使われる歯車の歯形には、大きく「インボリュート曲線」と「サイクロイド曲線」の2つがあります。

インボリュート曲線による「インボリュート歯車」

歯車加工について|インボリュート歯車の例
インボリュート歯車の例

一般的な産業機械で多く使われている歯型です。
噛合い圧力が一定で摩耗が少ないため強度が高く、なめらかな動作が特徴です。

インボリュート歯車とは:
インボリュート歯車は、歯車、特に平歯車および斜歯(はすば)歯車において、歯の軸と直交する断面の形状をインボリュート曲線としたもので、いくつかの良い特性があることから、近年では他の曲線の歯車に比べ機械製品で最も多く使われる。
引用元: インボリュート歯車「ウィキペディア(Wikipedia)」

サイクロイド曲線による「サイクロイド歯車」

歯車加工について|サイクロイド歯車の例
サイクロイド歯車の例

精密歯車として使われている歯型です。
インボリュート曲線の歯車とくらべ回転抵抗が低く、トルクの伝達効率が高いのが特徴です。
加工がむずかしく、小型の精密機器や時計などに使われることが多いです。

歯車の加工方法

歯車加工について|歯車の加工方法

歯切りは、大きく分けて「創成法」と「成形法」の2種類。

機械と工具の進化によって、マシニングセンタターニングセンタを使った「ギアスカイビング」も注目されています。

低コストで量産される歯車には、「鋳造」や「鍛造(歯車転造)」などの加工方法が用いられています。

歯車創成法

歯車加工について|歯車創成法

歯車全体を、すこしずつ切削する方法です。

歯車状の工具をワークに押し付けながら、歯車とおなじ運動をさせることで、歯の溝をすこしずつ削っていきます。
もっとも一般的な加工方法で、精度が高く効率がよいのが特徴です。

歯車創成法に使われるNC工作機械

歯車成形法

歯車加工について|歯車成形法

歯車の歯を、ひと溝ごとに切削する方法です。

歯形に成形された専用のフライスエンドミルを使い、歯車を切削。
「歯車創成法」にくらべて精度は落ちますが、汎用のNC工作機械でも加工ができるため、コストを抑えることができます。

小さな歯車や量産加工に向いています。

歯車成形法に使われるNC工作機械

ギアスカイビング

歯車加工について|ギアスカイビング

ギアスカイビングは、歯車創成法のひとつです。

工具とワークを高速で同期回転させながら、歯の溝をすこしずつ切削。
マシニングセンタターニングセンタを使うため、少ない段取りで工程を集約することができます。

加工速度がはやく、複雑な歯車加工や少量多品種生産にも適しています。

ギアスカイビングに使われるNC工作機械

NC歯車加工機(歯切り盤)の種類

歯車加工について|NC歯車加工機(歯切り盤)の種類

歯車の加工には、もっともポピュラーな「NCホブ盤」をはじめ、歯車の種類や加工方法によって、さまざまな種類の機械が使われています。

NC歯車加工機は、「歯切り盤」ともよばれています。

歯切り盤:
歯切りカッタを用いて歯切りを行う工作機械.
カッタと歯車素材との間に,歯車のかみあい状態を保つような相対運動を行わせて歯切りをする創成法と,歯溝形状のカッタを用いて,1歯ずつ割出しながら歯切りをする成形法とが使われる.
引用元: 一般社団法人 日本機械学会「歯切り盤」

NCホブ盤

歯車加工について|NCホブ盤

NCホブ盤は、歯車加工を代表するNC工作機械です。

ホブとよばれる工具とワークを回転させながら押し付けることで、歯車を切削。
ホブの外周には、多数の切れ刃と溝がらせん状に配置されています。

少量多品種から大量生産まで、精度の高い歯車を効率よく生産でき、自動車の平歯車や、はすば歯車・ウォームギアの加工で使われています。

NCかさ歯車歯切り盤

歯車加工について|NCかさ歯車歯切り盤

かさ歯車歯切り盤は、かさ歯車をつくるための機械です。
円盤状の工具とワークを回転させながら押し付けて、歯を加工します。

歯車の種類によって、さらに細かく分けられます

  • スグバかさ歯車 歯切り盤
  • ハスバかさ歯車 歯切り盤
  • マガリバかさ歯車 歯切り盤

NC歯車形削り盤

歯車加工について|NC歯車形削り盤

NC歯車形削り盤は、歯車加工専用の「形削り盤」です。
ギアシェーパーともよばれ、工具を往復運動させながら、歯を加工します。
加工方法は「形削り」とおなじ要領です。

加工には、ピニオンカッタ(円形の歯形ツール)や、ラックカッタ(直線状の歯形ツール)が使われます。

  • ピニオンカッタ:平歯車・はすば歯車・内歯車の加工
  • ラックカッタ:ラック歯車の加工
歯車加工について|NC歯車形削り盤

産業機械に使われる巨大歯車を削るための、「大型歯車加工機」もあります。

NCホブ盤にくらべ、より精度の高い歯車加工ができます。
ホブ盤では加工がむずかしい「大きな歯車」や「複雑な歯車」の加工にも適しています。

NC歯車研削盤

歯車加工について|NC歯車研削盤

NC歯車研削盤は、歯車加工で使われる専用の「NC研削盤」です。

歯車加工について|NC歯車研削盤

ワークと砥石の回転を同期させることで、歯車の歯を研削。
焼入れされた歯車を高精度に仕上げるために使われます。

砥石の形状によって、「成形研削」と「創成研削」に分けられます。

〈成形研削と創成研削〉

成形研削
歯車加工について|成形研削

薄い砥石を使い、歯車をひと溝ずつ研削します。

創成研削
歯車加工について|創成研削

ねじ状のはばの広い砥石を使い、歯車全体をすこしずつ研削。
効率が良く、量産に向いています。

NC歯車ホーニング盤

NC歯車ホーニング盤は、歯車加工で使われる専用の「ホーニング盤」です。
回転するホーニングの往復運動を利用して、歯車の歯を研磨します。
焼入れされた歯車を、静音性が高い精密な歯車に仕上げます。

研磨方法は、「ホーニング加工」とおなじ要領で行われます。

NC歯車シェービング盤(カッタヘッド)

NC歯車シェービング盤は、歯車加工の仕上げで使われるNC工作機械です。
歯車状の工具に、歯切り済みの歯車をかみあわせて回転させることで、歯の表面を滑らかに仕上げます。

歯のピッチの修正や、噛み合わせの補正にも利用されます。

歯車加工で使われるセンサ

歯車加工について|歯車加工で使われるセンサ

自動車ミッションギヤなどの歯車加工では、ギアの騒音・振動を低減するため、歯合わせや累積ピッチ誤差の測定がかかせません。

歯車加工について|歯車加工で使われるセンサ

測定には、「タッチプローブ」や「近接センサ」などのさまざまな測定センサが使われています。

歯車加工機の代表的なメーカー

歯車加工について|歯車加工機の代表的なメーカー

さまざまな工作機械メーカーが、歯車加工機を開発。
ロボット用精密歯車や、EV(電気自動車)用減速機のニーズ増加にともない、多種多様な歯車機械の開発が進んでいます。

〈歯車加工機の関連メーカー〉
メーカー 歯車加工機の種類
(株)カシフジ CNCホブ盤
(株)唐津プレシジョン ギアスカビングマシン
(株)神崎高級工機製作所 ギアシェーバー
北井産業(株) 高速小形ホブ盤
(株)ジェイテクト ギアスカイビングセンタ
清和鉄工(株) スカイビング盤
(株)ナガセインテグレックス 超精密歯車研削盤
ニデックマシンツール(株) 歯車研削盤
(株)不二越 ギヤシェープセンタ
村田機械(株) ギアスカビングマシン

◎あいう順・敬称略

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歯車加工とは?まとめ

この記事では、産業機械に欠かせない「歯車」の種類や、NC歯車加工機械について広く解説しました。

最近ではいままでの加工方法に加え、5軸加工ターニングセンタなどの「複合加工機」による加工も増えています。
また切削だけでなく、サーボプレスを使った「鍛造」による加工などの新工法も開発されています。

本記事が、さまざまな「歯車加工」を知るきっかけとなればうれしいです。

〈歯車加工の関連キーワード〉

専用加工 工作機械 除去加工

この記事の監修者

甲斐 智(KAI Satoshi)
甲斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
15年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる
文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」参加企業

2020年に「はじめの工作機械」を立ち上げ(はじめの工作機械とは

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