
産業用ロボットとは?産業用ロボットの種類と工作機械での事例
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/04/08 ) 著者: 甲斐 智
AIを搭載したサービスロボットや、家庭用のお掃除ロボットなど、ロボットにはさまざまな種類があります。
そのなかでも、
ものづくりの製造現場で活躍しているロボット
が「産業用ロボット」です。
産業用ロボットは、「組立」「搬送」「溶接」「検査」「洗浄」など、いろいろな用途で活用されていますが、NC工作機械との連携にも注目が集まっています。
この記事では、産業用ロボットの種類や、NC工作機械での使用事例など、金属加工の現場で活躍するロボットを紹介します。

NC工作機械で使われる産業用ロボットって?
ものづくりの製造ラインで使われている産業用ロボットは、JIS規格で以下のように定義されています。
自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能を持ち、各種の作業をプログラムにより実行でき、産業に使用される機械引用元:日本工業規格 JIS B 0134-1998
マニピュレーション機能とは、「モノをつかむ」ための機能です。
プログラムによって、
自由にモノをつかんだり運んだりすることのできる機械
のことを「産業用ロボット」とよんでいます。
産業用ロボットの構成

産業用ロボットは、「マニピュレーター」「ティーチペンダント」「コントローラー」の3つの要素で構成されています。

マニピュレーター(産業用ロボット)
人間の「ゆび」「手」「腕」「関節」に相当する部分です。
多軸の関節とサーボモーターによって駆動し、モノをつかんだり運んだりすることができます。
ティーチペンダント(産業用ロボット)
ロボットに動きを憶えさせる(ティーチング)ための操作盤です。
ティーチングには、ティーチングマンとよばれる経験豊富な専門のオペレーターがかかせません。
NC工作機械用の産業用ロボットのなかには、NCでコントロールできるものもあります。
コントローラー(産業用ロボット)
マニピュレーターをコントロールするための制御装置です。
ティーチングの内容にあわせて、サーボモーターや減速機などの動きを制御します。
産業用ロボットの種類

産業用ロボットは、アームの動きや用途によっていくつかの種類に分けられます。
ロボットアーム(垂直多関節ロボット)

ロボットアームは、ものづくりの工場でよくみかける、代表的な産業用ロボットです。
垂直多関節ロボットともよばれます。
4軸・5軸・6軸などさまざまなタイプがあり、軸の数が増えるほどさまざまな動きが可能。
人間の腕の動きに近い、7軸のロボットも登場しています。

汎用性が高く、先端のパーツを交換することで「ネジしめ」「塗装」「溶接」などのさまざまな作業ができます。
スカラロボット(水平多関節ロボット)

スカラロボットは、部品のピックアップや組立で使われる産業用ロボットです。
スカラ(SCARA)は「Selective Compliance Aassembly Robot Arm」の頭文字をとったもので、水平多関節ロボットともよばれます。

ロボットアームにくらべて汎用性は落ちますが、水平方向の高速移動が得意で、機械の剛性が高く部品の押し込みや圧入作業にも向いています。
直交ロボット

直行ロボットは、直線的なスライド機構を組み合わせた産業用ロボットです。
スライド機構を交差させることで、2軸・3軸などのシンプルなロボットをつくります。

汎用性が高く設計しやすいため、工場の自動化ラインなどに採用されています。
パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットは、小さな部品のピックアップや、精密部品の組み立てで使われる産業用ロボットです。
複数のアームで一点を支えているため、位置精度が高く高速で稼働させることができます。
引用元:パラレルリンクロボット搭載 高速ピッキングシステム|JRC ロボットSIer〈アルフィス〉
出力(機械のパワー)が大きいため、かんたんな金属加工やプレス加工にも利用することができます。
卓上ロボット

卓上ロボットは、据え置きタイプの小型の産業用ロボットです。

門型の機械で、小型電子部品の「自動ハンダ装置」や、「液体塗布装置」などの専用機として使われます。
協働ロボット

協働ロボットは、「人」と協同して働くことができる省スペースな産業用ロボットです。
かんたんな組み立てや工程間の搬送など、作業者の補助として使われます。
NC工作機械では、ワーク着脱やツール交換などにも利用が広がっています。
またビジョンセンサなどを搭載し、加工後のワーク計測・不良品判別に用いられることもあります。

これまで80W以上の出力の産業用ロボットは、安全柵で囲い「人」から隔離する必要がありました。
しかし2013年の「80W規制の撤廃」によって規制が緩和。
現在、「人」と協同して働くことができる協働ロボットが急速に普及しています。
製品の低価格化や小型化、動作プログラム作成の簡略化などが進展し、コ・ロボット市場は今後、年平均成長率50%超で発展するとみられる。引用元: JETRO「シカゴで自動化展示会、協働ロボットと自律移動ロボットに注目」
中小・中堅企業を中心に需要が増えていく見込みだ。
産業用ロボット ~NC工作機械での使用例~
産業用ロボットは、金属加工の現場でもはば広く活用されています。
NC工作機械の
「省人化・省力化・自動化」
で活躍している、産業用ロボットの使用事例をご紹介します。

産業用ロボットによる、NC工作機械のワーク・工具の着脱

「マシニングセンタ」や「ターニングセンタ」などの正面ドアの前にロボットを設置。
加工ワークの取り付け(ロード)や、取り外し(アンロード)の自動化ができます。
ロボット用の移動レールを設けて、NC工作機械の工程間を自動で搬送することもできます。

またATC(工具自動交換システム)の代わりとして、ロボットによる工具交換もできます。
ロボットを使うことで、ATCに収まらない特殊工具の交換や、「治具」や「砥石」などの交換もできるようになります。
産業用ロボットによる、NC工作機械の機内での活用

防塵・防水タイプのロボットを使うことで、クーラントや切粉が飛び散るNC工作機械の機内への設置も可能に。
機内設置をすることで、いままでできなかった加工中の「ワークの洗浄」や「切粉の清掃」ができるようになります。
CNC旋盤のワークの補助など、新しいロボットの使いかたも生み出されています。
産業用ロボットによる、NC工作機械のワーク加工補助

ロボットの先端に工具を装着し、NC工作機械の工程間のかんたんな加工を引き受けます。
バリとりや穴あけなどの加工をすることで、作業者の負担を減らすことができます。
産業用ロボットによる、金型不要のプレス加工
「ダイレスフォーミング」とよばれる、3次元の成形技術を応用することで、金型不要のプレス加工が可能に。
ロボットアームに押し棒をもたせ、両側から圧力をかけながら成形します。
試作品の成形や、多品種小ロットの加工に使われはじめています。
産業用ロボット導入に欠かせないロボットSIerとは

ロボットSIer(システムインテグレータ)は「産業用ロボットの導入をサポートする専門企業」です。
工場の自動化によるファクトリーオートメーション(FA)の流れから、大手電機メーカーから独立した関連会社や、専用機メーカーが立ち上げた会社など、さまざまなSIerがあります。
SIerはますます進む工場の自動化にともない、注目が高まっています。
NC工作機械で使われる産業用ロボットまとめ
この記事では、「産業用ロボット」の種類や、NC工作機械での使用例など、金属加工の現場で活躍するロボットを紹介しました。
いままで自動車や半導体などの工場でしか使われていなかった「産業用ロボット」ですが、人手不足や労働環境の改善が課題になるなか、小さな工場にも急速にひろがっています。
なかでも協働ロボットをつかった製造ラインは、さまざまな現場で見かけるようになりました。
本記事が、産業用ロボット導入のヒントになればうれしいです。