レーザー加工 – 加工原理とCO2・YAG・ファイバーレーザを解説
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/06/01 ) 著者: 甲斐 智
レーザー加工は、光のエネルギーをレンズで集め、金属を溶かす「除去加工」のひとつ。
いままでの切削加工ではむずかしかった、 超硬合金などの「難削材」や、セラミックなど「硬脆材」の微細加工 をはじめ、板金の切断加工にも広く使われています。
この記事では、レーザー加工の原理から、よくみかける「CO2」「YAG」「ファイバー」レーザーの違いまで解説しています。
レーザー加工ってどんな加工?
レーザー加工は、光のエネルギーをレンズで集め、金属を溶かす加工方法です。
太陽の光を虫めがねで集め、紙を焦がすのとおなじ原理で、金属を溶解温度まで熱して切断します。
レンズを使い、 光をφ0.1mmほどの小さなスポットに絞ることで、高いエネルギーを出力 することができます。
(光を反射しやすいワークの加工には適していません)
切削やプレス加工にくらべ、フライスや金型などの工具を使わないため、工具の摩耗や交換の必要がありません。
レーザーの軌跡をNCで動かすことで、複雑なカタチの切断や、ムダのない部品取りのプログラムができます。
加工には「NCレーザー加工機」が使われます。
レーザー加工の用途
レーザー加工では切断だけでなく、レーザーの出力や照射時間を調整することで、精密な穴あけやマーキングなどにも使われています。
レーザー加工のおもな用途
レーザー切断
レーザー加工によって、板金などの板材を切断します。
ワークにムリな力がかからないため、薄板の精密切断や、「だれ」「バリ」のないキレイな切断ができます。
「タレットパンチプレス」や「シャーリングマシン」ではむずかしい、10mm以上の厚板の切断もできます。
(鉄鋼では、約12mmの板厚まで切断ができます)
自動車のパネルや精密部品など、さまざまな業界で使われています。
レーザー穴あけ
レーザー加工によって、金属に穴をあけます。
レーザーを一点に集光しドリルのように穴をあける「パーカッション」と、絞ったレーザ光で円状に軌跡を描き切り抜く「トレパニング」があります。
切削とくらべ、工具をワークに押し込む際の反力がないため、医療機器などの微細部品も精度よく加工することができます。
レーザー微細穴加工
レーザー加工によって、金属に微細穴をあけます。
穴あけ加工ではできなかった「φ0.01mm」の微細な穴をあけることができます。
プリント基板の精密実装や、精密部品の加工で使われています。
レーザー溶接
レーザー加工の溶解熱を利用し溶接。
自動車ボディーをはじめ、エンジン部品やルーフなどの溶接で使われています。
溶接にくらべて制御がしやすく、精密な溶接ができます。
レーザーマーキング
レーザー加工の溶解熱を利用し、金属の表面にマーキングをします。
製品のシリアル刻印や、ロゴの彫刻に使われています。
レーザー加工の原理
レーザー(LASER)は、「Light Amplilication by Stimulated Emission of Radiation」の略です。
「誘導放出 による 光増幅」という意味があり、その原理から名づけられています。
代表的な「CO2レーザー」の例をもとに解説します。
1. 誘導放出
レーザー発振器のなかの電子にエネルギーを加え、光エネルギーを放出させます。
(レーザー発振器には、CO2などの炭酸ガスが封入されています)
2. 光増幅
放出した光エネルギーを、レーザー発振器内のミラーで繰返し反射。
光エネルギーにぶつかったほかの電子が、さらに光エネルギーを放出し、次第に大きなエネルギーになります。
3. 放出
レーザー発振器の片側から、増幅した強力な光(レーザー光)を放出。
反射ミラーとレンズを使って加工面に光の焦点を結び、熱エネルギーを集中させます。
XYテーブルをNCで動かすことで、目的のカタチに切断します。
加工時には、アシストガスとよばれる高圧ガスを吹き付け、スパッタ(飛散物)によるレンズの破損や、蒸発ガスによる引火を防ぎます。
レーザー加工の種類と「NCレーザー加工機」
レーザー加工は、使用する媒質(ばいしつ)によって、用途や出力が変わります。
媒質は「レーザを仲介する物質」で、気体や固体のものがあります。
レーザー加工機:引用元:wikipedia
レーザー加工機(レーザーかこうき)は、レーザーによってさまざまな素材に彫刻・切断・穴あけ・マーキング加工を行う工作機械である。
レーザー光を切削や切断加工に利用することで、従来の刃物や切削器具を用いても不可能な機械加工を行う目的で開発された工作機械である。
CO2レーザー加工
媒質(ばいしつ)に、気体の「炭酸ガス」を使ったレーザー加工です。
発振器で発生させたレーザー光を、反射ミラーとレンズを使って加工点まで誘導します。
ランニングコストが低く加工速度が速いため、板金の切断や微細穴あけ用途で広く普及しています。
加工には「CO2レーザー加工機」が使われます。
レーザの波長による失明を防ぐ「黄色いのぞき窓」が特徴です。
YAGレーザー加工(ヤグレーザー加工)
媒質(ばいしつ)に、固体の「人造結晶」を使ったレーザー加工です。
ミラーの代わりに光ファイバを使い、エネルギーを加工点まで誘導。
レーザー溶接など、高出力のレーザー加工で用いられます。
加工には「YAGレーザー加工機」が使われます。
ファイバーレーザー加工
媒質(ばいしつ)に、固体の「光ファイバ」を使ったレーザー加工です。
細長い光ファイバケーブルのなかで、光エネルギーを増幅させることで、高い出力を発揮します。
ミラーやレンズが不要でケーブルの取り回しが良く、エネルギーを加工点まで自由に誘導することができます。
コンパクトで高出力なため、産業用ロボットとの組み合わせによる、3次元溶接や、自動車用の「ハイテン材(高張力鋼板)」の切断に使われます。
加工には「ファイバーレーザー加工機」が使われます。
エキシマレーザー加工
引用元: 東京工科大学|エキシマレーザー微細加工装置
エキシマレーザは「Excited Dimer Laser」の略で、媒質(ばいしつ)に、ハロゲンなどの混合ガスを使った高エネルギーの紫外線レーザーです。
CO2レーザーとくらべレーザ照射周囲に熱が発生しないため、微細加工が可能です。
半導体のパネル製造や、医療手術レーザーメスなどにも使われています。
レーザー加工機の代表的なメーカー
さまざまな工作機械メーカーが、レーザー加工機を製造。
特に板金加工などの町工場では “深刻な人手不足” により、レーザー加工機の需要が拡大しています。
板金加工や微細加工で多く使われている「レーザー加工機」のメーカーを、一部ご紹介します。
メーカー | レーザー加工機の種類 |
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(株)アマダ | ファイバーレーザマシン |
エンシュウ(株) | レーザー加工システム |
DMG森精機(株) | 5軸レーザ加工機 |
トルンプ(TRUMPF)- ドイツ | ディスクレーザ加工機 |
三菱電機(株) | ファイバーレーザ加工機 |
村田機械(株) | ファイバーレーザ加工機 |
ヤマザキマザック(株) | ダイレクトダイオードレーザ加工機 |
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レーザー加工とは?まとめ
この記事では、レーザー加工の原理や、「CO2」「YAG」「ファイバー」レーザーの違いを通して、レーザー加工について解説しました。
「レーザー加工機」は大型のものが多く、イニシャルコストも高額ですが、加工内容によっては大きな費用対効果を生むことができます。
近年では用途を限定した中型の装置や、プラスチック専用の小型の装置も増えています。
本記事が、レーザー加工導入のヒントになればうれしいです。