放電加工 – 放電加工(EDM)とワイヤーカット・型彫り放電を解説
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/06/01 ) 著者: 甲斐 智
放電加工は、電気エネルギーを熱にかえて金属を溶かす「除去加工」のひとつ。
電気を通す金属であれば、どんな金属でも加工ができ、
切削加工ではむずかしかった「難削材」の微細加工
も実現。
高い精度がもとめられる金型加工をはじめ、半導体・自動車などの精密部品の加工で活躍しています。
この記事では、切削にくらべてわかりにくい「放電加工」の特徴から、ワイヤーカット・プラズマ加工・電解加工まで、「電気エネルギー」を使った金属加工について解説しています。
放電加工(EDM)ってどんな加工?
放電加工は、電気エネルギーを熱にかえて、金属を溶かす加工方法です。
加工ワークと工具(電極)の数ミクロンのスキマに放電し、6000℃以上の熱と衝撃で金属をすこしずづ削ります。
絶縁性のある加工液にワークを沈め、1秒間に数万回の火花(アーク放電)をとばすことで、 ワークの表面を1ミクロンの精度で加工 します。
(削りカスは加工液のなかで固まり、洗い流されます)
放電加工:引用元: 技のとびら「放電加工技能士」
放電加工とは、火花放電エネルギーにより電極を用いて被加工物の金属表面を溶融して加工する方法です。
複雑な形状を高精度で材料の硬さに関係なく加工できる特長があり、金型製作などの現場を中心に広く用いられています。
切削加工にくらべ加工時間がかかるため、「NC放電加工機」による無人運転が行われます。
放電加工は、EDM(Electrical Discharge Machining)ともよばれます。
放電加工(EDM)の種類と特徴
放電加工には、「型彫り放電加工」「ワイヤ放電加工」「細穴放電加工」の3つの加工方法があります。
いずれの加工も、絶縁性のある加工液(脱イオン水や石油系の液)にワークを沈め、ワーク側に(+)、電極側に(-)の電流を流します。
(加工液によって、加工精度や生産性・コストが変わります)
ワークと電極の間には数ミクロンのスキマがあり、非接触で加工が行われます。
型として使われる「電極」は、市販の銅やグラファイト(黒鉛)など安価でやわらかい材質でつくられます。
ワークの硬さに制約がなく、ワークよりもやわらかい工具を使い加工できるのも特徴です。
型彫り放電加工
あらかじめ型が彫られた電極を使い、型のカタチを転写します。
加工液のなかのワークに、型(電極)を押し付けるように近づけて、放電します。
電極のNC制御によって、3次元の複雑な立体加工ができます。
加工には、「NC形彫り放電加工機」が使われます。
規格品の電極棒を自由に動かし、さまざまなカタチに成形する「創成放電加工機」や、グラファイト電極を加工するための「グラファイト加工機」などの機械もあります。
ワイヤ放電加工(ワイヤーカット)
細いワイヤ状の電極を使い、糸ノコのように金属を切断します。
加工液のなかのワークに、ワイヤー(電極)を押し付けるように近づけて、放電します。
電極のNC制御によって、2次元の微細な輪郭加工ができます。
ワイヤーとして使われる「電極」は、直径0.1mmほどの銅やタングステンで、ピンと張った状態で巻き取りながら、ワークを切断していきます。
ワイヤ放電加工は、WEDM(Wire Electrical Discharge Machining)ともよばれます。
加工には、「ワイヤーカット(NCワイヤ放電加工機)」が使われます。
細穴放電加工
棒状の電極を使い、金属に穴をあけます。
加工液のなかのワークに、銅や真鍮などの工具(電極)を押し付けるように近づけて、放電します。
従来の穴あけ加工ではできない、φ0.1mm以下の細長い穴をあけることができ、金型のエア抜き穴や精密ノズルなど細穴の加工で活躍します。
(穴あけ加工にくらべ、バリの発生が少ないのも特徴です)
加工には、「NC細穴放電加工機」が使われます。
放電加工(EDM)を応用した「プラズマ加工」について
「プラズマ加工」は放電加工のひとつで、放電によって発生したエネルギー(プラズマジェット)をノズルから噴射し、ワークを切断する加工方法です。
電気の通らない材質でも加工ができるため、鋼板や合金・ステンレスなどの厚板の切断に使われます。
レーザー加工よりもランニングコストが低く切断面の精度もよいため、ガス切断に替わって使われることが多くなっています。
また「タレットパンチプレス」ではむずかしい、25mm以上の厚板の切断もできます。
プラズマ加工には、「プラズマ加工機」が使われます。
放電加工(EDM)と似ている「電解加工(ECM)」とは?
放電加工と似ている加工に「電解加工」があります。
電解加工は、ワークと工具(電極)の数ミクロンのスキマに放電し、アルカリ性の電解液をかけることで、金属を化学的に「溶かす」加工方法です。
放電加工とおなじように、電気を通す金属であればどんな金属も加工ができ、いままでの切削ではむずかしかった「難削材」の微細加工や、バリの除去にも使われます。
「型彫り電解加工」「ワイヤ電解加工」などの加工方法があります。
熱が発生しないため、放電加工にくらべて表面のワレが起こりにくく、加工スピードがはやいのも特徴です。
電解加工は、ECM(Electro Chemical Machining)ともよばれ、加工には「NC電解加工機」が使われます。
放電加工機の代表的なメーカー
さまざまな工作機械メーカーが、放電加工機を製造。
金型の高精度化やEV(電気自動車)のニーズ増加にともない、多種多様な放電加工機の開発が進んでいます。
また、既存の工作機械に後付けができる「放電加工ユニット」もあります。
金型加工や微細加工で多く使われている「放電加工機」のメーカーを、一部ご紹介します。
メーカー | 放電加工機の種類 |
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(株)アステック | 超高速微細穴放電加工機 |
(株)エレニックス | CNC細穴放電加工機 |
西部電機(株) | 超精密ワイヤ放電加工機 |
(株)ソディック | リニアモーター駆動ワイヤ放電加工機 |
ファナック(株) | 高性能ワイヤカット放電加工機 |
(株)牧野フライス製作所 | 高精度ワイヤ放電加工機 |
三菱電機(株) | ワイヤ放電加工機 |
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放電加工(EDM)とは?まとめ
この記事では「放電加工」の特徴から、プラズマ加工・電解加工まで、「電気エネルギー」を使った金属加工について解説しました。
切削にくらべてすこしわかりにくい加工ですが、金型や板金の加工現場では、さまざまな放電加工機が活躍しています。
本記事が、はじめて放電加工を知るかたの、きっかけになればうれしいです。