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EVと工作機械 – 電気自動車で活用される工作機械の需要と動向

EVと工作機械 – 電気自動車で活用される工作機械の需要と動向

更新日:
2024/10/29 (公開日: 2020/10/19 ) 著者: 甲斐 智
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工作機械日本の展示会
     

工作機械市場の約30%と大きなシェアを占める「自動車業界」。

自動車にはおよそ2~3万点もの部品が使われており、運動性能や燃費の向上には精度の高い金属加工がかかせません。

しかし今、「CASE」とよばれる新しいクルマの概念とともに、 工作機械市場は大きく変化
自動車のものづくりは「電気自動車(EV:Electric Vehicle)」の普及によって、 新たな時代を迎えています。

この記事では、EV技術・電気自動車で活用される工作機械や、EVの開発技術展について紹介します。

EVと工作機械について|自動車のEV化によって、部品点数は40%以上減少するといわれています!
EVでは、動力源が「エンジン」から「モータ」に変わることで、部品点数は40%以上減少するといわれています。
自動車産業が新たな時代を迎える中、加工メーカーにおいては、いち早く加工ニーズを掴み、受注の多角化に向けて動き出す必要があります!
CASEとは?
EVと工作機械について|CASE:
		  Connected(つながる)/Autonomous(自動運転)/Shared・Service(シェア・サービス)/Electric(電動化)
Connected(つながる)/Autonomous・Automated(自動運転)/Shared(シェア)/Electric(電動化)の頭文字をとった造語です。
新しい「クルマ」の概念として、さまざまな業界の指針や戦略として用いられています。

EV技術・電気自動車の動向と工作機械

イギリス・フランスなどの環境先進国では、2040年までにガソリン車の販売を禁止する政策を発表。
日本でも2030年代に「脱ガソリン車」を掲げており、自動車メーカー各社も「次世代のクルマづくり」に向けて新たな舵を切っています。

EVと工作機械について|動力源が「エンジン」から「モーター」へ電動化することで、部品点数は40%以上減少

動力源が「エンジン」から「モーター」へ電動化することで、部品点数は40%以上減少。
自動車向け金属加工は激減するといわれていますが、「EV用モーター」や「新素材」の加工は急増しています。

生産設備の多角化で、工作機械の需要は増加するとの試算もあります。

EV開発の転換点は?
EVと工作機械について|EV開発の転換点は?
EV開発の背景には、世界的なCO2排出の規制強化があります。その転換点となったのが、2015年にCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された、温室効果ガス排出削減の新たな国際枠組み「パリ協定」です。

EV技術・電気自動車で使われる部品と加工トレンド

EVと工作機械について|EV技術・電気自動車で使われる部品と加工トレンド

EV技術・電気自動車では、エンジンや内燃機関(ないねんきかん)などの原動機がなくなり、シャフトやシリンダーヘッドなどエンジンの基幹部品が大幅に減少。
一方で、自動運転で使われる半導体やセンサ・カメラなど、電子部品の搭載が増加しています。

「モーター」や「バッテリー」などの新分野の登場とともに、新たな工作機械のニーズが生まれると期待されます。

EV用モーター

EVと工作機械について|EV用モーター

EV技術・電気自動車で使われるモーターは、一般的なモーターとおなじくコイル・マグネット・コア材から構成されています。

モーター製造では鍛造プレスなど、さまざまな塑性(そせい)加工機械が活躍。
なかでもEV用モーターの心臓部にあたる「コア材」の打ち抜きには、精度の高い「ファインブランキング」が求められています。

EV用バッテリー

EVと工作機械について|EV用バッテリー

EV技術・電気自動車で使われる「リチウムイオン電池」などのバッテリー製造には、プレス機械による金属ケースの加工や、工作機械による金型加工がかかせません。

EVと工作機械について|EV技術・電気自動車で使われる「リチウムイオン電池」などのバッテリー製造

金型加工はより精度の高い微細加工が求められ、「マシニングセンタ」をはじめ「研削盤」や「放電加工機(EDM)」「微細加工機」などの需要増加が期待されています。

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EV用減速機

EVと工作機械について|減速機

EVでは、従来のトランスミッション(変速機)の需要が減少し、代わりに減速機が主流になります。減速機には複雑なギアが使用されており、トランスミッションと同様に騒音や振動を抑えるため精度の高い歯車加工が欠かせません。

歯車加工には、歯車加工機や歯車研削盤、さらにはターニングセンタや5軸加工機などが使われますが、EVモータの高回転化が進む中、ギアノイズの少ない超精密加工が求められており、EV用減速機に特化した加工機の開発も進んでいます。

EVの軽量化:CFRP(炭素繊維強化プラスチック)

EVと工作機械について|EV素材の軽量化:CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
引用元:新価値創造WEBマガジン|企業インタビュー 21世紀型カーボン素材の可能性

EV技術・電気自動車はガソリン車にくらべて航続距離が短く、普及のネックとなってます。
そのため、強さと軽さを兼ね備えた「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」などの新素材を使った軽量化が急務です。

CFRPの成形には、加圧力や加圧時間を精密に制御することができる「サーボプレス」が使われます。
精度の高い成形にはさまざまなノウハウが必要で、高性能のプレス機械の開発が期待されています。

EVの軽量化:アルミ部品

EVと工作機械について|素材の軽量化:アルミ部品

EV技術・電気自動車の軽量化にともない、「アルミ部品」もあらためて注目されています。
アルミは軽くて加工性がよいため、すでに自動車部品として多く使われていますが、今後その比率がさらに増えることが予想されます。

切削加工」や「ダイカスト鋳造」などのアルミ加工法も見直されており、より生産の高い工作機械の開発が期待されています。

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EVと工作機械まとめ

この記事では、EV技術・電気自動車で活用される工作機械や、EVの開発技術展について紹介しました。

EV化が進む自動車業界ですが、日本ではエンジンとモーターを両方搭載した「PHV」などのハイブリッド方式もまだまだ健在。

そのため、従来のガソリン車向け開発を継続しながらも新しい技術革新に対応していく、むずかしい舵取りが求められています。

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この記事の監修者

甲斐 智(KAI Satoshi)
甲斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
15年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる
文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」参加企業

2020年に「はじめの工作機械」を立ち上げ(はじめの工作機械とは

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