
シャーリングマシンとは?シャーリングマシの仕組みとシャー角
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/07/07 ) 著者: 甲斐 智
シャーリングマシンは、「せん断加工」で使われる機械のひとつです。
圧力をかけて金属を切断するため、プレス機械に分類されます。
板を
「はさみ」とおなじ要領で切断するシンプルな機械
で、多くのプレス工場で使われています。
この記事では、自社の工場だけでは知ることのできない「シャーリングマシン」の仕組みや、レーザー加工機との違いを、図解をもとに解説します。

シャーリングマシンってどんな機械?
シャーリングマシンは「せん断加工」の切断工程で使われる機械で、「せん断機」ともよばれます。
金属の板を所定のサイズに切断し、プレス加工で使われる「ブランク」を切り出し。
機械の上下には長い刃物がついており、上の刃を金属に押し付け直線状に切断します。
主に、4×8尺(約1.2m×2.4m)、5×10尺(約1.5m×3m)の定尺材をせん断。
鋼板をはじめ、アルミやステンレスなどの材料が切断されます。
シャーリングマシンの仕組み
1.切断前

稼働刃(上の刃)と固定刃(下の刃)の間に板材をセットし、稼働させます。
板材はバックゲージ(突きあて)まで押し込み、位置決めをします。
(大きな板材は、フロントゲージを使って寸法を測ります)
2.切断時

この画像は、クリエイティブ・コモンズ(CC)のもと再編集されています
稼働刃を板材に押しこみ切断。
稼働刃には角度(シャー角)がついており、「はさみ」とおなじ要領で金属を切断します。
切断時の板の「だれ」「ソリ」を防ぐため、サポートを使って板を固定。
サポートには、磁石による「マグネットサポート」や、エア吸着による「エアサポート」があります。
3.切断後

加工後の板材は、コンベアを使い自動で送ります。
NC制御によるシャーリングが主流です。
シャーリングマシンの切断板厚と切断長について

シャーリングマシンの切断板厚には下限と上限があり、板材によって変わります。
厚板(鋼板で6mm程度)の切断は、刃物のチッピングや故障の原因となります。
また下限より薄い板厚を切断すると、バリやソリが発生するため注意が必要です。
切断できる長さは、機種によって1,200~6,000mmまで、定尺材の長さにあわせてさまざま。
刃物の長さに限界があるため、長さ6m以上の切断には向きません。
6m以上の長い板材の切断には「レーザー加工機」などの特殊加工機が使われています。
シャーリングマシンのクリアランス調整について
シャーリングマシンでは、「切り口」のだれやバリの発生をおさえるため、「シャー角」と「クリアランス」の調整がかかせません。
切り口は、製品の品質に大きく影響します。
シャー角の調整

シャー角は、「稼働刃」と「固定刃」の開き角度です。
シャー角を大きくすると、小さな加圧でも切断がでますが、切断中の板材が安定しないため寸法精度が落ち、切り口が荒くなります。
板厚・材質や、刃物の摩耗によって、シャー角の設定が重要になります。
クリアランスの調整

クリアランスは、「稼働刃」と「固定刃」のスキマの量です。
クリアランスが大きいとせん断面が荒くなりバリが増えますが、小さいと刃物のチッピングや加工不良の原因となります。
板厚や材質に応じた「クリアランス量」の微調整が、重要になります。
シャーリングマシンの種類

シャーリングマシンは、駆動方式によって2種類に分けられます。
シャーリングマシン(せん断機):引用元: 日本鍛圧工業会「鍛圧機械とは?-板金機械」
板材を上下一対の長い切刃で切断する機械です。原理的にははさみと同じです。
油圧式が主流ですが機械式もあります。
それぞれ、ラムとよばれる「駆動機構」をスライドさせ、刃物に圧力をかけます。
機械式シャーリングマシン
フライホイールの回転運動で「ラム」を駆動させるシャーリングマシンです。
加工スピードがはやく、薄板の切断に向いています。
機構が簡単なためべメンテナンスがかんたんですが、切断時の衝撃が大きく、振動・騒音が発生します。
油圧式シャーリングマシン
油圧ポンプで「ラム」を駆動させるシャーリングマシンです。
加圧力が一定なためせん断面が安定し、厚板の切断に向いています。
機械式にくらべ作動油のメンテナンスがかかせません。
切断時の衝撃が小さいため振動・騒音が少なく、刃物の寿命も長くなります。
シャーリングマシンの刃物の稼働方式
ギロチン式
稼働刃を上下運動で動かし、板材を切断します。
シャー角(稼働刃の角度)を調整がかんたんです。
スイング式
稼働刃を円運動でスイングさせ、板材を切断します。
クリアランス(上下の刃のスキマ)が一定になるため、せん断面がキレイです。
シャーリングマシンのなかま
シャーリングマシンには、切断方法や材料のカタチにあわせて、さまざまな機種があります。
コーナーシャーリングマシン

板材の角(コーナー)を切断するための機械です。
「切り欠き加工」による、ブランクの補強や工数削減で使われます。
「曲げ加工」と組み合わせることで、箱物のプレス加工にも使用されます。
ビレットシャー

ビレットを切断するための機械です。
(ビレットは「連続鋳造」でつくられたバー材用の素材です)
ロータリーシャー

コイル材を回転させながら連続切断する機械です。
(コイル材は「圧延」した金属をコイル状に巻き取った材料です)
ギャップシャー
ギャップシャーは、板材を送りながら連続で切断する機械です。
フレームに設けられたギャップの範囲内で、板材を送ることができます。
ノッチングプレス
ノッチングプレスは、板材の端の切り欠くためのプレス機械です。
「切り欠き加工」による、ブランクの補強や工数削減で使われます。
その他の切断加工機

板材の切断には、レーザー加工機・放電加工機などの特殊加工機も使われます。
これらの機械は「抜き打ち加工」や「穴あけ加工」にも対応できるため、多くの工場で採用されています。
これらの機械にはCAD/CAM が必要なため、単発加工には「シャーリングマシン」が向いています。
また板金工場では、足踏みで板金を切断する「足踏みシャーリング」などの汎用機械や、構造材・管材を切断する「アングルカッタ」や「パイプカッタ」などの小型機械も多く使われています。
レーザー加工機
レーザーを照射して金属を切断。
複雑形状の切断や、マーキング・彫刻加工もできます。
金属を熱で溶かして切断するため、「せん断面のだれ」や「バリ」が発生しません。
シャーリングマシンよりもコストがかかるため、量産に使われます。
プラズマ加工機
プラズマを放電して金属を切断。
レーザー加工機よりもコストが低いですが、板材は通電するものに限られます。
25mm以上の厚板の切断もできます。
ウォータジェット加工機
超高圧の水を噴射して金属を切断。
チタンなどの難削材から変形しやすいウレタンまで、さまざまな材質に対応できます。
「水」を使うため、切削やレーザ加工・プラズマ加工にくらべ、発熱がありません。
シャーリングマシンとは?まとめ
この記事では、自社の工場だけでは知ることのできない「シャーリングマシン」の仕組みや、レーザー加工機との違いについて解説しました。
シャーリングマシンの仕組みを知ることで、プレス機械の選定の参考になればうれしいです。