はじめの工作機械 > 工作機械がわかる > よくわかる圧延|圧延機械の種類と、さまざまな「圧延」をやさしく解説
よくわかる圧延|圧延機械の種類と、さまざまな「圧延」をやさしく解説

よくわかる圧延|圧延機械の種類と、さまざまな「圧延」をやさしく解説

公開日:
2020/06/13(2020/08/20 更新)by 甲斐 智
関連キーワード:
| プレス機械 | 圧延 | 塑性加工 |

圧延(あつえん)は、金属をロールで押しつぶして伸ばす「塑性加工」のひとつ。
おおきな製鉄所からちいさな町工場まで、さまざまな工場で使われる身近な加工法です。

インゴット(鋳塊)やスラブ(鋼片)などの金属のかたまりから、 加工ワークのもととなる棒・板・形・管状の金属材料を量産
圧延された金属の厚さは、数百ミリから数ミクロンまで多岐に渡り、アルミ缶などの日常品から、車のボディー・建材・石油パイプまで、さまざまな製品に加工されます。

この記事では「圧延」の基本や圧延機械について、図解とともに解説します。

圧延ってどんな加工?

圧延は、回転するロールの間に金属を通して、圧力で伸ばす塑性加工法です。
金属はロールとの摩擦抵抗によって、回転ロールに引き込まれます。

圧延でつくられる鋼材には、「帯鋼(おびこう)」と「条鋼(じょうこう)」があります。

帯鋼(おびこう)とは

金属加工と圧延について|帯鋼(おびこう)とは

帯鋼とは、スラブ(鋼片)を薄く伸ばした「板状」の圧延品です。

コイル状に巻き取られた帯鋼は「コイル材」とよばれ、プレス加工工場へ出荷されます。
薄いものでは長さおよそ1000mにもなり、自動車のボディーや家電などに使われます。

高い温度で圧延された帯鋼は、表面に黒いスケール(酸化膜)がはるため「黒皮材」ともよばれます。
また常温で圧延された帯鋼は、表面がキレイで光沢があり「みがき帯鋼」や「ミガキ材」ともよばれています。 

条鋼(じょうこう)とは

金属加工と圧延について|条鋼(じょうこう)とは

条鋼は、丸棒状の「バー材」や、断面がH形やL形になった「板状ではない」圧延品です。

とくにH形鋼・山形鋼(Lアングル)・溝形鋼(チャンネル)・I形鋼・T形鋼 などは、建築資材や土木資材などで使われます。

カタチが複雑なため、複数の圧延工程が必要となります。 

加工温度による圧延の分類

圧延は、加工する温度によって「熱間圧延」「冷間圧延」「温間圧延」に分けられます。

金属加工と圧延について|「加工温度」による分類

熱間圧延とは

金属加工と圧延について|熱間圧延とは

金属を「再結晶温度」以上に加熱して圧延する加工法です。
加熱した金属をロールでつぶすことで、結晶が緻密になりねばり強い金属ができます。

熱間圧延のメリットとデメリット

金属の変形抵抗がちいさいため、加工性がよい
× 寸法精度が落ちる
× 表面にスケール(酸化膜)がはり、肌が悪い
× 加熱のエネルギーが必要
デメリットの解消方法
熱間圧延された鋼材は寸法精度が低く、製品としての使い道が限られるため、冷間による「引抜き加工」が施されます。
引抜き加工された鋼材は、寸法精度が高く表面がキレイため「みがき鋼」とよばれます。

またスケール(酸化膜)をそのままにすると、後工程で不良の原因となるため、高圧洗浄水でスケールを吹き飛ばす「デスケーリング」処理が行われます。

冷間圧延とは

金属加工と圧延について|冷間圧延とは

金属を「再結晶温度」以下の常温で圧延する加工法です。
熱間圧延でつくられた帯鋼をさらに薄くし、板厚さを均一にします。

加工硬化しますが、熱処理をすることで、強度の高い金属に生まれ変わります。

冷間圧延のメリットとデメリット

高温設備が不要で、扱いやすい
寸法精度が高い
表面に光沢がありキレイ
× 金属の変形抵抗がおおきため、加工性が悪い
× 加工硬化するため、加工後に熱処理が必要
× 圧延機にかかる負担がおおきい

温間圧延とは

熱間圧延と冷間圧延の「中間温域」で成形する方法です。
熱間と冷間の両方の欠点を補うことができます。

圧延でつくられるアルミ箔

金属加工と圧延について|圧延でつくられるアルミ箔

圧延でつくられる身近な製品のひとつに、アルミ箔があります。

アルミ箔の製造工程
アルミでできたスラブ(鋼片)を400℃以上(再結晶温度)の温度で熱間圧延し、板状に圧延したアルミを、さらに室温で0.4mm厚まで冷間圧延します。
加工硬化したアルミを「焼きなまし」することで、アルミ箔ができあがります。

圧延機とその種類

金属加工と圧延について|圧延機とその種類

圧延には「圧延機」とよばれる専用の機械が使われ、圧延方法やロールの本数によってさまざまな種類に分けられます。
複数の圧延機をならべて、粗加工→成形→仕上げをする「ストリップミル」も主流です。

また1台の圧延機を使い、材料を往復させながら圧延を行う「リバース圧延加工」などもあります。

金属に強い圧力をかけるため、機械自体にも強い剛性がもとめられます。

熱間圧延機:
薄板(うすいた)では複数の粗圧延機と仕上圧延機を一直線上に並べ、一方向に一回だけ走らせ、板の帯におしのばします。
板の帯は全ての圧延機を通過すると、終点で巨大なトイレットペーパーのようなコイル状(ホットコイル/熱延コイル)に巻き取られます。
これが熱間圧延機(ホット・ストリップミル)です。
引用元: 一般社団法人 日本鉄鋼連盟「圧延機で鋼材を作る」

〈圧延機のおもな構成要素〉

  • ワークロール
    材料に接触し圧力をあたえる「作業ロール」です。
    冷間圧延では材料の圧力抵抗を受けるため、中央部でおおきくたわみます。
  • バックアップロール
    ワークロールを補助するための「支持ロール」です。
    ワークロールのたわみを防ぎ、材料に間接的に圧力をあたえます。

2段圧延機(二重圧延機)

金属加工と圧延について|2段圧延機(二重圧延機)

2本のワークロールをもった、基本的なロール圧延機です。
厚板の圧延加工やリバース圧延加工に使われます。

インゴット(鋳塊)からスラブ(鋼片)をつくる分塊圧延機や、ストリップミルの粗圧延機としても使われています。

分塊圧延では、直径1m以上ものワークロールが使用されます。

4段圧延機(四重圧延機)

金属加工と圧延について|4段圧延機(四重圧延機)

2本のワークロールと、2本のバックアップロールをもったロール圧延機です。
ワークロールで材料を圧延し、ワークロールのたわみをバックアップロールで支持。
鋼・銅・アルミなどの圧延加工に使われます。

ストリップミルの仕上げ圧延機としても使用されます。

クラスターミル(多段圧延機)

金属加工と圧延について|クラスターミル(多段圧延機)(四重圧延機)

2本のワークロールと、複数のバックアップロールをもったロール圧延機です。
ワークロールのたわみを最大限に抑えることで、高い圧力を発揮。
ワークロールの小径化で、薄板圧延にも対応できます。

段数や方式によって、「ゼンジミア圧延機」「ローン圧延機」などの種類があり、ステンレス鋼板などの硬い金属や、銅箔などの極薄の冷間圧延に使われます。

ストリップミル(タンデムミル)

金属加工と圧延について|ストリップミル(タンデムミル)

ストリップミルは、さまざまな圧延機を直線にならべた「連続圧延ライン」の総称です。
製鉄所などの大規模な設備で、帯鋼の大量生産に使われます。

帯鋼の熱間圧延(ホットストリップミル)の例

1000℃に熱したスラブを2段圧延機で伸ばし、4段圧延機で数ミリ厚に仕上げます。
帯鋼はコイル状に巻き取られ、プレス加工工場へ出荷されます。

ステンレス鋼板の冷間圧延(コールドストリップミル)の例

ステンレス鋼を、複数の「クラスターミル」で伸ばし、数ミクロンの厚さに仕上げます。

プラネタリー圧延機

金属加工と圧延について|プラネタリー圧延機

大径バックアップロールの外周に、複数の小径ワークロールを配したロール圧延機です。
バックアップロールを回転させることで、ワークロールが自転します。

複数のロールですこしずつ圧延するため、1回の通過(1パス)でおおきく圧延することができます。

穿孔圧延機(せんこう)(マンネスマン鋼管圧延機)

金属加工と圧延について|穿孔圧延機(せんこう)(マンネスマン鋼管圧延機)

継ぎ目のない「シームレスパイプ」をつくるためのロール圧延機です。

円すい形ロールで材料を圧延しながら「穿孔プラグ」をあて、筒状の鋼管を成形。
シームレスパイプは圧力に強く、石油パイプラインやボイラー、ライフラインなどにはば広く使われています。

条鋼の圧延

金属加工と圧延について|条鋼の圧延

条鋼の圧延は、金属を薄くするロール圧延とくらべ、複雑な圧延工程が必要です。
さまざまな圧延機とロールを使いながら、最終形状へと近づけていきます。

ブレークダウン圧延(粗圧延)

金属加工と圧延について|(粗圧延)ブレークダウン圧延

溝が彫られた孔型(カリバーロール)を回転させ、材料を圧延します。
棒材を粗圧延し、大まかなカタチに成形します。

ユニバーサル圧延(仕上げ圧延)

金属加工と圧延について|(仕上げ圧延)ユニバーサル圧延

水平・垂直の4つのロールを四方から回転させ、材料を圧延します。
大まかなカタチに圧延されたバー棒を仕上げ、条鋼を成形します。

難加工材の圧延

金属加工と圧延について|難加工材の圧延

変形抵抗のおおきい難加工材のロール圧延には、ことなるスピード・ロール径による圧延が使われます。

  • 異周速圧延方法:上下ワークロールの「回転速度」を変える
  • 異径圧延方法:上下ワークロールの「直径」を変える

金属のせん断変形によって、圧延にかかる力を減らすことができます。
1回の通過(1パス)でおおきく圧延できますが、板のソリなどの対策が必要です。

幅を広くするための圧延

金属加工と圧延について|幅を広くするための圧延

「幅だし圧延(クロス圧延)」では、圧延した板材を90度回転させてふたたび圧延することで、材料の幅を広くすることができます。
縦と横の特性に差がないため、均質な金属を成形。

「線クロス圧延」では、ワイヤーなどの線材から板材を成形することができます。

圧延とは?まとめ

この記事では「圧延」の基本や圧延機械を通して、圧延について解説しました。

圧延は金属加工のはじめのいっぽ。
圧延による金属の特性を知ることで、機械設計や切削加工の助けになればうれしいです。

この記事(圧延)の編集者

甲 斐 智(KAI Satoshi)

甲 斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
14年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる

・株式会社モノト 代表
・株式会社アプト Webディレクター
・一般社団法人日本機械学会 特別員
・東京商工会議所

圧延とあわせて読みたい

圧延の関連キーワード

プレス機械 圧延 塑性加工