
圧延とは?圧延加工でつくられる鋼材と圧延工程・機械の種類
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/06/13 ) 著者: 甲斐 智
圧延(あつえん)は、金属をロールで押しつぶして伸ばす「塑性加工」のひとつ。
大きな製鉄所から小さな町工場まで、さまざまな工場で使われる身近な加工法です。
インゴット(鋳塊)やスラブ(鋼片)などの金属のかたまりから、
加工ワークのもととなる棒・板・形・管状の金属材料を量産
。
圧延された金属の厚さは数百ミリから数ミクロンまで多岐に渡り、さまざまな製品に加工されます。
この記事では「圧延」の基本や圧延機械について、図解とともに解説します。

圧延ってどんな加工?
圧延は、回転するロールの間に金属を通して、圧力で伸ばす塑性加工法です。
金属はロールとの摩擦抵抗によって、回転ロールに引き込まれます。
圧延でつくられる鋼材には、「帯鋼(おびこう)」と「条鋼(じょうこう)」があります。
圧延でつくられる帯鋼(おびこう)

帯鋼とは、スラブ(鋼片)を薄く伸ばした「板状」の圧延品です。
コイル状に巻き取られた帯鋼は「コイル材」とよばれ、プレス加工工場へ出荷されます。
薄いものでは長さおよそ1000mにもなり、自動車のボディーや家電などに使われます。
高い温度で圧延された帯鋼は、表面に黒いスケール(酸化膜)がはるため「黒皮材」ともよばれます。
また常温で圧延された帯鋼は、表面がキレイで光沢があり「みがき帯鋼」や「ミガキ材」ともよばれています。
圧延でつくられる条鋼(じょうこう)

条鋼は、丸棒状の「バー材」や、断面がH形やL形になった「板状ではない」圧延品です。
とくにH形鋼・山形鋼(Lアングル)・溝形鋼(チャンネル)・I形鋼・T形鋼 などは、建築資材や土木資材などで使われます。
カタチが複雑なため、複数の圧延工程が必要となります。
加工温度による圧延の分類
圧延は、加工する温度によって「熱間圧延」「冷間圧延」「温間圧延」に分けられます。

熱間圧延とは

金属を「再結晶温度」以上に加熱して圧延する加工法です。
加熱した金属をロールでつぶすことで、結晶が緻密になりねばり強い金属ができます。
熱間圧延のメリットとデメリット
冷間圧延とは

金属を「再結晶温度」以下の常温で圧延する加工法です。
熱間圧延でつくられた帯鋼をさらに薄くし、板厚さを均一にします。
加工硬化しますが、熱処理をすることで、強度の高い金属に生まれ変わります。
冷間圧延のメリットとデメリット
温間圧延とは
熱間圧延と冷間圧延の「中間温域」で成形する方法です。
熱間と冷間の両方の欠点を補うことができます。
圧延でつくられるアルミ箔

圧延でつくられる身近な製品のひとつに、アルミ箔があります。
圧延機とその種類

圧延には「圧延機」とよばれる専用の機械が使われ、圧延方法やロールの本数によってさまざまな種類に分けられます。
複数の圧延機をならべて、粗加工→成形→仕上げをする「ストリップミル」も主流です。
また1台の圧延機を使い、材料を往復させながら圧延を行う「リバース圧延加工」などもあります。
金属に強い圧力をかけるため、機械自体にも強い剛性がもとめられます。
熱間圧延機:引用元: 一般社団法人 日本鉄鋼連盟「圧延機で鋼材を作る」
薄板(うすいた)では複数の粗圧延機と仕上圧延機を一直線上に並べ、一方向に一回だけ走らせ、板の帯におしのばします。
板の帯は全ての圧延機を通過すると、終点で巨大なトイレットペーパーのようなコイル状(ホットコイル/熱延コイル)に巻き取られます。
これが熱間圧延機(ホット・ストリップミル)です。
〈圧延機のおもな構成要素〉
- ワークロール
材料に接触し圧力をあたえる「作業ロール」です。
冷間圧延では材料の圧力抵抗を受けるため、中央部で大きくたわみます。 - バックアップロール
ワークロールを補助するための「支持ロール」です。
ワークロールのたわみを防ぎ、材料に間接的に圧力をあたえます。
2段圧延機(二重圧延機)

2本のワークロールをもった、基本的なロール圧延機です。
厚板の圧延加工やリバース圧延加工に使われます。
インゴット(鋳塊)からスラブ(鋼片)をつくる分塊圧延機や、ストリップミルの粗圧延機としても使われています。
分塊圧延では、直径1m以上ものワークロールが使用されます。
4段圧延機(四重圧延機)

2本のワークロールと、2本のバックアップロールをもったロール圧延機です。
ワークロールで材料を圧延し、ワークロールのたわみをバックアップロールで支持。
鋼・銅・アルミなどの圧延加工に使われます。
ストリップミルの仕上げ圧延機としても使用されます。
クラスターミル(多段圧延機)

2本のワークロールと、複数のバックアップロールをもったロール圧延機です。
ワークロールのたわみを最大限に抑えることで、高い圧力を発揮。
ワークロールの小径化で、薄板圧延にも対応できます。
段数や方式によって、「ゼンジミア圧延機」「ローン圧延機」などの種類があり、ステンレス鋼板などの硬い金属や、銅箔などの極薄の冷間圧延に使われます。
ストリップミル(タンデムミル)

ストリップミルは、さまざまな圧延機を直線にならべた「連続圧延ライン」の総称です。
製鉄所などの大規模な設備で、帯鋼の大量生産に使われます。
帯鋼の熱間圧延(ホットストリップミル)の例
1000℃に熱したスラブを2段圧延機で伸ばし、4段圧延機で数ミリ厚に仕上げます。
帯鋼はコイル状に巻き取られ、プレス加工工場へ出荷されます。
ステンレス鋼板の冷間圧延(コールドストリップミル)の例
ステンレス鋼を、複数の「クラスターミル」で伸ばし、数ミクロンの厚さに仕上げます。
プラネタリー圧延機

大径バックアップロールの外周に、複数の小径ワークロールを配したロール圧延機です。
バックアップロールを回転させることで、ワークロールが自転します。
複数のロールですこしずつ圧延するため、1回の通過(1パス)で大きく圧延することができます。
穿孔圧延機(せんこう)(マンネスマン鋼管圧延機)

継ぎ目のない「シームレスパイプ」をつくるためのロール圧延機です。
円すい形ロールで材料を圧延しながら「穿孔プラグ」をあて、筒状の鋼管を成形。
シームレスパイプは圧力に強く、石油パイプラインやボイラー、ライフラインなどにはば広く使われています。
条鋼の圧延

条鋼の圧延は、金属を薄くするロール圧延とくらべ、複雑な圧延工程が必要です。
さまざまな圧延機とロールを使いながら、最終形状へと近づけていきます。
ブレークダウン圧延(粗圧延)

溝が彫られた孔型(カリバーロール)を回転させ、材料を圧延します。
棒材を粗圧延し、大まかなカタチに成形します。
ユニバーサル圧延(仕上げ圧延)

水平・垂直の4つのロールを四方から回転させ、材料を圧延します。
大まかなカタチに圧延されたバー棒を仕上げ、条鋼を成形します。
難加工材の圧延

変形抵抗の大きい難加工材のロール圧延には、ことなるスピード・ロール径による圧延が使われます。
- 異周速圧延方法:上下ワークロールの「回転速度」を変える
- 異径圧延方法:上下ワークロールの「直径」を変える
金属のせん断変形によって、圧延にかかる力を減らすことができます。
1回の通過(1パス)で大きく圧延できますが、板のソリなどの対策が必要です。
幅を広くするための圧延

「幅だし圧延(クロス圧延)」では、圧延した板材を90度回転させてふたたび圧延することで、材料の幅を広くすることができます。
縦と横の特性に差がないため、均質な金属を成形。
「線クロス圧延」では、ワイヤーなどの線材から板材を成形することができます。
圧延とは?まとめ
この記事では「圧延」の基本や圧延機械を通して、圧延について解説しました。