HOME > 工作機械がわかる > A5052とは?アルミ合金A5052の特徴と用途、A5056との違い
A5052とは?アルミ合金A5052の特徴と用途、A5056との違い

A5052とは?アルミ合金A5052の特徴と用途、A5056との違い

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
関連タグ:
塑性加工金属材料除去加工
     

軽くて汎用性の高いアルミ合金は、さまざまな用途で使われています。そのなかでも代表的なアルミ合金がA5052です。

この記事では、A5052の特徴や用途、成分の近いA5056との違いと、A5056を加工する際のポイントについて解説します。

アルミ合金A5052について| A5052は高い耐食性とバランスの取れた強度から、建築材や圧力容器、ヒートシンクなど幅広い用途に採用されています
A5052は高い耐食性とバランスの取れた強度から、建築材や圧力容器、ヒートシンクなど幅広い用途に採用されています!その加工性の高さから、自動車向けの量産部品にも向いています

A5052とは

A5052は、アルミにマグネシウムを添加した「5000系」に分類されるアルミ合金です。5000系のなかでも、マグネシウムの含有割合が2.2%~2.8%にあるものを、A5052とよびます。

Al-Mg系合金(5000系アルミニウム合金):
この合金系は耐食性や溶接性が良いことから比較的種類が多く、広い用途があります。
5052合金のように中程度のMg添加量のものは強度も中程度であり、添加量の多いものは缶蓋材や船舶、車両、化学プラントなどの構造用材として多用されています。
引用元:アルミニウム合金のいろいろ|一般社団法人 日本アルミニウム協会

A5052は代表的なアルミ合金で、バランスのよい特性と市場での入手のしやすさから、さまざまな製品に採用されています。

A5052の特性

アルミ合金A5052について|A5052の特性

マグネシウムが添加された5000系は、アルミをベースに「強度」「耐食性」「溶接性」が向上しています。

A5052の強度

A5052は、低温での静的強度と疲労強度に優れており、温度が低いほど引張り強度が高くなる特性があります。一方で、温度が上がると引張り強度が低下するため、高温環境下で使う場合は注意が必要です。

A5052は、冷間加工した状態で長時間室温で放置すると、経年変化を起こすことが知られています。そのため安定化のための熱処理をして、経年変化の影響を抑えてから使われるのが一般的です。

A5052の耐食性

A5052は、表面に酸化被膜を形成するため、表面処理をしなくても耐食性に優れています。
(さらに高い耐食性が必要とされる屋外などの環境下では、アルマイト処理をして使われるのが一般的です)

A5052の溶接性

アルミ合金は熱伝導率が高く溶接がむずかしい材料です。そのなかでもA5052は、マグネシウムを含有しているため、アルミ合金のなかでは、比較的溶接がしやすい材料として知られています。
(他の金属材料とくらべると溶接性は低いため、溶接の際には注意が必要です)

A5052とA5056の違い

アルミ合金A5052について|A5052とA5056の違い

5000系のアルミ合金には、A5052とよく似た「A5056」があります。どちらもアルミ合金にマグネシウムを添加しているため、アルミ合金のなかでも近い特性を持ちます。

A5056は、含有しているマグネシウムの割合が大きく4.5%~5.6%程度です。A5052よりも切削性が向上しており、さらにアルマイト処理の仕上がりも良好です。一方で、溶接性はA5052の方が優れています。
製品の用途よりは、切削や溶接などの加工法の違いによって使い分けられることが多いです。

アルミ合金A5052について|A5052は、圧延で得られたアルミ合金から切り出されたブロックやプレートが用いられることが多いですが、A5056は丸棒から加工するのが一般的です。
A5052は、圧延で得られたアルミ合金から切り出されたブロックやプレートが用いられることが多いですが、A5056は丸棒から加工するのが一般的です。

A5052の表面処理

アルミ合金A5052について|A5052の表面処理

A5052は表面処理性がよく、さまざまな処理に対応しています。

アルマイト処理

アルミ合金は、耐食性向上のためアルマイト処理が行われることがあります。アルマイトには、通常の白アルマイトに加えて、「硬質アルマイト」や「カラーアルマイト」といった種類があり、目的によって使い分けられます。

A5052はほとんどのアルマイト処理に対応しており、マグネシウムの影響もありアルミ合金のなかでもトップクラスの耐食性を持ちます。アルマイト処理を行わなくても酸化被膜を生じますが、アルミはもともと傷がつきやすく、傷から腐食が進行してしまうおそれがあるため、外観が重視される製品や傷が多くつきそうな場面では、表面処理を行う必要があります。

めっき

A5052の表面処理はアルマイト処理が一般的ですが、用途によっては「無電解ニッケルメッキ」が使われます。めっき膜の厚みを均一に調整しつつ、ある程度の硬度を確保できる表面処理です。

塗装

A5052は、焼き付き塗装に対応しており、密着性が高いことでも知られています。
(アルミ合金本来の光沢を活かすには、塗装よりもカラーアルマイト処理がおすすめです)

A5052の切削加工のポイント

アルミ合金A5052について|A5052の切削加工のポイント

A5052はアルミ合金のなかでも特に切削性に優れています。
アルミ合金に共通する切削時の課題には、溶着などによる仕上げ精度の悪化や、バリの発生などがあげられます。これらを解決するためには、工具選定や加工方法に注意が必要です。
A5052を切削加工する際のポイントについて紹介します。

アルミ合金A5052について|ここで紹介しているポイントは、A5052の特性を踏まえた一般的な事例です
ここで紹介しているポイントは、A5052の特性を踏まえた一般的な事例です。
実際の加工では、加工方法や切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。

A5052切削時の工具選定ポイント

A5052を切削加工する際は、できるだけ切削抵抗が小さくなるような工具の選定が重要です。
切削抵抗を低く抑えることで、切削時の温度上昇を抑制し、溶着による加工精度の悪化を避けることができます。

A5052切削条件の選定ポイント

切削加工時の温度上昇を抑制するためには、切削条件の設定も重要です。
A5052を含むアルミ合金の場合には、クーラントによる冷却を行いながら高速切削することで、すくい面に作用する摩擦抵抗が低下し、良好な仕上げ面が実現します。

塑性加工 金属材料 除去加工

この記事の監修者

アルミ合金A5052 とあわせて読みたい技術コラム