鍛造機械とは?鍛造機械と鍛造ハンマー・鍛造プレスを解説
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/06/12 ) 著者: 甲斐 智
鍛造機械は、「鍛造(たんぞう)」で使われる機械のひとつです。
鍛造機械は金属をプレスする「プレス機械」のなかまですが、ビレット(厚い金属材料)を加圧するため、より高い機械強度がもとめられます。
この記事では、自社の工場だけでは知ることのできない「鍛造機械」の種類を、図解とともに解説します。
鍛造機械ってどんな機械?
鍛造機械は「鍛造」で使われる機械です。
プレス機械とあわせて「鍛圧機械」に分類されます。
駆動方法や加圧の仕組みによって、大きな部品の熱間自由鍛造には「鍛造ハンマー」、小さな部品の冷間型鍛造には「鍛造プレス」、生産性をもとめた「フォーマー」など、さまざまな種類に分けられます。
鍛圧機械とは:引用元: 一般社団法人日本鍛圧機械工業会「鍛圧機械とは?」
「鍛圧」とはなんでしょう。一般にはなじみのない言葉ですね。「たんあつ」と読みます。
1939年商工省が業界の組織化を図ったとき、鍛造機(ハンマー等)や圧造機(プレス機械・プレスブレーキ等)などを総称する言葉として一字づつとり、「鍛圧機械」という造語をしたようです。
サーボ駆動によって、安定成形と生産性を両立した「サーボプレス」もあります。
鍛造機械の種類
鍛造ハンマーの種類
鍛造ハンマーは、主に「熱間鍛造」で使われる鍛造機械です。
エアドロップハンマーをはじめ、さまざまな機械があります。
エアドロップハンマー
エアドロップハンマーは「ラム」とよばれる機械部品を落下させ、ワークを打撃する鍛造機械です。
ラムは圧縮エアで加速され、大きな打撃エネルギーが生まれます。
エアドロップハンマーのメリット
エアドロップハンマーのデメリット
カウンターブローハンマー
「ラム」の落下と同時に、加工ワークを治具ごと引き上げて打撃する機械です。
上下からワークを打撃することで、圧力を増加させ振動を少なくすることができます。
スプリングハンマー
鍛冶(かじ)で使われる、小型の汎用ハンマーです。
人手による金槌とくらべ生産性が高く、つち目(たたき跡)にバラツキがありません。
ペダル操作で打撃圧力や回数を調整するため、作業者の熟練が必要です。
鍛造プレスの種類
鍛造プレスは「ラム(駆動部)」を、さまざまな動力でスライドさせる鍛造機械です。
鍛造ハンマーにくらべ、振動・騒音が少なく、「ラム」が制御しやすいため精度の高い鍛造ができます。
鍛造では「金型」を押し付ける時間が長いほど、成形が安定します。(この効果を形状凍結とよびます)
そのため下死点(スライドの最下点)での加圧時間が長くなるよう、さまざまな工夫がされてます。
エアドロップハンマーをはじめ、さまざまな機械があります。
スライドの動力によって、4種類に分けられます。
ここでは「鍛造」で使われる鍛造プレスについてまとめています。
一般的なプレス加工で使われる機械は、「プレス機械」をご覧ください。
機械鍛造プレス
機械鍛造プレスは、フライホイールの回転運動を「ラム」のスライド運動に換えて、圧力をかける鍛造プレスです。
1回ごとの圧力量が決まっているため、任意の位置でスライドを止めることはできません。
加工スピードが速いため生産性が高く、自動化ラインにも組み入れられています。
大量生産の冷間型鍛造に多く使われます。
液圧鍛造プレス
液圧鍛造プレスは、油圧や水圧で「ラム」をスライドさせ圧力をかける鍛造プレスです。
小ロットの大きな製品から大量生産の小さな製品まで、多岐にわたり利用されています。
油圧による「油圧鍛造プレス」が主流ですが、大きな製品の熱間鍛造では、メンテナンス性と安全面から「水圧鍛造プレス」も使われます。
油圧鍛造プレス
油圧で「ラム」をスライドさせ、圧力をかける鍛造プレスです。
機械鍛造プレスとくらべ、任意の位置でスライドを止めることができるため、試作や材料の変形試験にも使うことができます。
加圧速度は遅く(1~10mm/s)、放熱しやすい小さな部品の熱間鍛造には不向きです。
水圧鍛造プレス
水圧で「ラム」をスライドさせ、圧力をかける鍛造プレスです。
油圧鍛造プレスとくらべメンテナンスが容易でコストも低いため、大きな機械が多いです。
熱間鍛造時の過熱による火災・事故などの心配がありません。
火力発電のタービンや、発電機ローターなどの大きな製品の熱間鍛造で使われています。
鍛造サーボプレス
鍛造サーボプレスは、サーボモータで「ラム」を直接スライドさせる鍛造プレスです。
サーボモータでスライドを駆動するため、加圧力や加圧量の精密な制御ができます。
いままでむずかしかったマグネシウムなどの難加工材や、複雑なカタチの鍛造もできるようになります。
加圧速度の制御による「生産性向上」と、加圧量の制御による「歩留まり低下」を両立。
少量多品種に対応した、「NC制御」の鍛造サーボプレスも増えています。
横型鍛造機の種類
横型鍛造機は、高速の自動鍛造に対応した「横型クランクプレス」です。
フィーダーで材料を供給しながら、切断・圧縮・成形の工程を自動で行います。
生産性が非常に高く、複数の超硬工具(ダイス・パンチ)を使い、高速加工します。
主にボルト・ねじ・ボールなどの機械要素部品を、冷間~熱間で鍛造。
とくに横型鍛造機による冷間鍛造は、「圧造」ともよばれます。
鍛造ヘッダー
ボルトやねじなどの「ヘッダー加工」で使われる、横型の鍛造機械です。
- シングルヘッダー
1個のダイスに対し、1個のパンチを使うヘッダー - ダブルヘッダー(2度打ちヘッダー)
1個のダイスに対し、2個のパンチを使うヘッダー - ツーダイ・ツーブローヘッダー
2個のダイスに対し、2個のパンチを使うヘッダー - ツーダイ・スリーブローヘッダー(2工程ヘッダー)
2個のダイスに対し、3個のパンチを使うヘッダー - 割ダイスヘッダー
金型を分割することで、成形の制約をなくしたヘッダー
鍛造フォーマー
ヘッダーを4段以上搭載し、多工程に特化した横型鍛造機です。
鍛造アプセッタ
特殊ボルトやフランジ製品の「アプセット加工」で使われる、横型の鍛造機械です。
回転鍛造機の種類
回転鍛造機は、ワークや工具を「回転」させながら成形する鍛造機械です。
回転鍛造の種類にあわせて、さまざまな機械があります。
ねじ転造盤
「ねじ転造」で使われる鍛造機械です。
転造ダイスにワークを回転させながら押し付けることで、ねじ山を成形します。
歯車転造盤
「歯車転造」で使われる鍛造機械です。
転造ダイスにワークを回転させながら押し付けることで、歯型を成形します。
揺動プレス鍛造機
「揺動鍛造」で使われる鍛造機械です。
円すい型の工具を傾けながら回転させ加圧することで、成形します。
ロール鍛造機
「ロール転造」で使われる鍛造機械です。
回転ロールでバー材を伸ばし、ハンマーや鍛造プレスの前工程の荒地を成形をします。
クロスローリングマシン
「クロスローリング加工」で使われる鍛造機械です。
ダイス付きの回転ロールの間にバー材を転がし、部品を成形します。
スエージングマシン
「スエージング加工」で使われる鍛造機械です。
高速で往復運動するダイスにバー材を通しながら圧延することで、外径を絞り成形します。
リングロールミル
「リングローリング」で使われる鍛造機械です。
リング状の金属を圧延しながら伸ばすことで、フランジなどの製品を成形します。
トリミングプレス
トリミングプレスは、鍛造・圧造でできた「バリ」や余肉を除去するための機械です。
鍛造機械とおなじラインにならべて、最終仕上げの工程で使います。
鍛造機械とは?まとめ
この記事では、自社の工場だけではなかなか知ることのできない「鍛造機械」の種類や加圧の仕組みを解説しました。
鍛造プレスの現場ではいま、搬送ロボットや「IoT」による急速な自動化が進む一方で、省エネや環境対策など、さらなる技術革新ももとめられています。
「鍛造機械」を知ることで、ものづくりの最新動向を知るきっかけとなればうれしいです。