
銅合金とは?銅合金の種類と特徴、銅合金の切削加工のポイント
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
銅合金は、銅を主体にさまざまな金属を添加してつくられた金属材料です。
銅合金の特性は、添加される金属の種類や比率によって異なり、その用途はさまざまです。最終製品のスペックにあった銅合金を選ばないと、精度のばらつきや、不良品などのクレームにつながることも…
この記事では、金属加工で使われるさまざまな銅合金について、その種類と切削加工のポイントを解説します。

銅合金とは
金銅は、人類が最初に使いはじめた金属といわれており、「加工性」「導電性」「熱伝導性」に優れています。その特性を活かし、古くから工業製品を中心にものづくりのさまざまなシーンで使われてきました。
銅を主な原料として、他の金属を添加したものを銅合金とよびます。
銅は主に銅鉱床(どうこうしょう)とよばれる地殻から採掘されますが、その時点では「黄銅鉱」「斑銅鉱(はんどうこう)」「銅藍(どうらん)」の状態です。これらは、銅に鉄や硫黄などを含んでおり、純粋な銅ではありません。

銅鉱床から採掘された原料に、酸素を吹き込みながら加熱をすることで、硫化銅が生成されます。そして、さらに酸素を吹き込みながら加熱を続けると粗銅の状態になります。
粗銅は「Cu」で示されますが、まだまだ多くの不純物が含まれており、電気分解することで純粋な銅を生成することができます。
銅合金の種類と特徴

銅合金は、純銅に添加される元素の種類によって、黄銅(真鍮)、白銅、青銅、高銅合金などに分けられます。
〈銅合金の種類〉
純銅とは
純度が99.90%以上の銅は「純銅」に分類され、酸素がどの程度含まれているかによって、さらに細かく分けられます。
純銅は高い熱伝導性と電気伝導性から、エアコン・冷蔵庫の伝熱管や、航空宇宙分野で使われるヒートパイプなどに採用されています。また非磁性体のため、磁気の観測にも使われる重要な材料です。
さびやすいため、機械部品に使う場合は、メッキなどの表面処理を施すことが一般的です。
無酸素銅 | もっとも酸素の割合が小さく純度が高い |
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フピッチ銅 | 純度が高く熱伝導率や電気伝導率に優れる |
脱酸銅 | タフピッチ銅の弱点である水素脆性をなくしたもの |
黄銅(真鍮)とは

純銅に亜鉛を添加したものが「黄銅(おうどう)」です。真鍮(しんちゅう)ともよばれます。
黄銅にもさまざまな種類がありますが、すべての黄銅に共通する特徴は、「展延性」「熱間鍛造性」「切削加工性」に優れる点です。
黄銅:引用元:海上技術安全研究所|機械加工の基礎知識
黄銅(真鍮)は銅と亜鉛を主成分とした合金である。黄銅は鉄鋼やステンレス鋼と比べて切削性がよく,ハンダや銀ロウとの相性がよいという特徴がある。適度な重量あることから,重量が必要な部品(例えば,模型エンジンのフライホイールやバランサなど)に利用できる。
黄銅は、少量の「添加剤」を加えることによってさらに種類が分かれます。
それぞれの特徴を活かし、電気部品や金管楽器など幅広い分野で活用されています。
快削黄銅 | 黄銅に数%の鉛と微量の鉄や錫を加えたもの 被削性(削りやすさ)に優れる |
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鍛造用黄銅 | 熱間鍛造性に優れる |
アドミラルティ黄銅 | 耐食性と耐海水性に優れる |
高力黄銅 | 強度を高めた黄銅 |
白銅とは
純銅にニッケルを10~30%程度含んだものが「白銅」です。身近な白銅には100円硬貨があげられます。(100円硬貨の白銅には、ニッケルが25%含まれています)
白銅の特徴には「耐食性が高いこと」や、ニッケルの含有量が多くなると「銀に似た輝きを持つこと」があげられます。また展性に優れていることも特徴のひとつです。これらの特徴から、海水処理装置や船舶の部品などに使われています。
その他にも、白銅に亜鉛を加えた洋白(洋銀)があります。洋白は美しい銀白色のため、装飾品に使われたり、優れた「ばね特性」から、ばねにも採用されています。
青銅とは
銅に錫(すず)を加えた合金が「青銅」です。青銅は大気中で少しづつ酸化し、表面に緑青(ろくしょう)が発生することから、青銅とよばれています。
青銅は、錫と混合することで純銅よりも硬くなります。さらに融点が低く原始的な炉で鋳造できることから、古くは斧や剣などに用いられていました。
現代では工業製品をはじめ、貨幣や美術品、銅像、日用品などさまざまな製品で使われています。

青銅は、その名前から「青い…?」ように思われがちですが、実際には錫の含有量によって「赤銅色」「黄金色」「白銀色」など、さまざまな色合いになります。
高銅合金とは
高銅合金は、銅の比率が96%以上で、白銅や青銅などに属さない銅合金の総称です。(ジルコニウムやベリリウム、チタンを含有した銅合金など)
高銅合金は「機械的性質」や「耐熱性」に優れており、銅本来の加工性の高さや導電率が失われにくいのが大きな特徴です。
例えば、特殊鋼に匹敵する強度やばね特性を持つ「ベリリウム銅合金」は、自動車や電子機器などの導電ばね材料として使われています。また「チタン銅合金」は、ベリリウム銅合金ほどの性能が必要ない場合に、コストを抑えて採用することができます。
切削加工における銅合金の特性

純銅をはじめとした銅合金は、破断しにくくさらに柔軟に変形するため、削りやすい材料といえます。
しかしその柔軟さが加工不良の原因となることもあるため、特性にあわせた加工が必要です。
銅合金は粘り気が強くバリが出やすい
銅合金は粘性が高く、切削中に破断しにくいのが特徴です。一方で粘り気が強いことで、バリが出やすいデメリットもあります。
バリは組み付け不良や異物の混入、作業者のけがの原因にもなるため、後工程で除去する必要があります。
粘性は銅合金の種類によっても変わるため、材料の特性を把握することが重要です。
銅合金は切削時の熱で溶着しやすい
銅合金の切削では、加工熱によって切粉が溶融し、工具の刃先に付着してしまう「溶着」が発生することがあります。刃先に溶着した切粉は「構成刃先」となり、工具よりも先にワークを切削してしまい、加工精度低下の原因となります。
また脱落した構成刃先がワークや刃先を傷つけてしまい、加工不良やチッピングが発生するため、注意が必要です。

銅合金の特性は、銅に添加されている金属の比率によって大きく変化します。
例えば純銅では、他の銅合金にくらべ切削抵抗が大きくなります。切削抵抗が大きいと切削面が荒れ、仕上げ精度の低下につながるため、銅合金の種類に合わせた切削条件の設定が重要です。
銅合金の切削加工のポイント

銅合金を切削加工する際のポイントについて紹介します。

実際の加工では、銅の種類・工作機械・切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。
銅合金の切削では油性クーラントを使う
切削加工で発生する溶着を防ぐには、切削点の温度を下げる必要があります。
刃先の冷却にはクーラントを使いますが、水溶性のクーラントを使うと腐食による変色が発生する可能性があります。銅合金の加工には、防食性に配慮された油性のクーラントを使うと効果的です。
銅合金の切削では切れ味のよい工具を選定する
銅合金の切削では、切削抵抗を減らすため、すくい角が大きく切れ味のよい工具を選定しましょう。K種とよばれる非鉄・アルミ・銅向けの超硬工具や、銅加工の専用工具がおすすめです。
また切れ味の低下を防ぐため、定期的な刃先の確認や工具交換が不可欠です。
銅合金は高速で加工する
溶着による構成刃先の発生を防止するには、切削抵抗を低く抑えることが重要です。
切削速度が遅いと切削抵抗が大きくなってしまうため、できるだけ高速の切削条件を設定することがポイントです。