
PEEKとは?PEEK(ピーク)の特徴と各種グレードについて解説
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
さまざまな業界で、製品の「軽量化」と「コストダウン」が求められています。それらを実現する手段のひとつに、金属部品からプラスチック部品への置き換えがあります。
プラスチックに求められる性能は、その用途によって異なりますが、特に負荷の高い環境で使われる場合、PEEKをはじめとした機械的強度の高いエンプラ(エンジニアリングプラスチック)が使われます。
この記事ではPEEKについて、その特徴やグレード、具体的な用途と切削加工のポイントを解説します。

その結果、耐熱性が150℃を超えるスーパーエンプラが開発されています!
PEEK(ピーク)とは
PEEK(ピーク)はプラスチックのなかでも特に高い性能を持った「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」に分類される材料で、Poly Ether Ether Ketone(ポリエーテルエーテルケトン)の略称です。
PEEK:引用元:海上技術安全研究所|スーパーエンジニアリングプラスチック「PEEK/SGCNT複合材料」を開発|NEDO
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は溶融成形可能なスーパーエンジニアリングプラスチックとしては最も高い耐熱性を有し、さらに耐疲労性、耐環境性、難燃性および成形性に優れ、金属に比べて軽量であるため、電気・電子分野、自動車分野および航空宇宙分野において広く用いられている樹脂です。
一般的なプラスチックは、「耐熱性」や「機械的特性」が弱く、それらを克服する高機能材料としてエンジニアリングプラスチック(エンプラ)が開発されました。
エンプラの明確な定義はありませんが、耐熱性が100℃以上のプラスチックが「エンプラ」として分類されています。
比重 | 1.3 |
---|---|
引張り強さ | 100MPa 前後 |
引張り弾性率 | 3,000MPa 以上 |
曲げ強さ(破壊、降伏) | 140~170MPa |
融点 | 334℃ |
ガラス転移点 | 143℃ |
PEEKの特徴

PEEKの特徴には、以下のようなものがあげられます。
- 耐熱性
- 難燃性
- 耐放射性
- 機械的強度
- 耐熱水性
- 耐薬品性
上記以外にも、燃焼しにくさ(燃焼時も有毒ガスの発生が少ない)や、放射線による劣化が起きにくい点もPEEKの特徴です。
PEEKの耐熱性
PEEKは高い耐熱性を持っており、260℃程度まで連続使用が可能です。
(短時間であれば、300℃程度まで耐えることもできます)
PEEKの機械的強度
PEEKの引張り強度は100MPa程度で、引張り弾性率3,000MPa以上、伸び率25%と、金属に匹敵する高い機械的強度を持っています。
強化繊維と組み合わせることで、さらに機械的強度を高めることが可能です。
PEEKの耐薬品性
金属の代替となるスーパーエンプラは、酸やアルカリ、有機溶媒などさまざまな薬品が付着する環境下で使われる可能性があります。
PEEKは幅広い薬品に高い耐性があり、変色や溶解を起こしません。(濃硫酸などを除く)
PEEKの各種グレードについて

PEEKは、添加剤を加えることで性能を強化した各種グレードがあります。
ここでは基本グレード以外のものを紹介します。
PEEK強化グレード
通常のPEEKではカバーできない「さらに厳しい環境下」で使われるグレードです。
PEEKに混ぜる材料は、カーボン繊維やガラス繊維などが代表的です。繊維材の影響で「ソリ」が発生しやすくなるため、切削加工はむずかしくなります。
PEEK導電グレード
PEEKにカーボン繊維を混ぜ込むことで「導電性」を持たせたグレードです。
プラスチックは一般的に絶縁性がありますが、用途によっては導電性が求められる場合もあります。繊維材の影響で、PEEK強化グレードと同様に切削加工はむずかしくなります。
PEEK医療グレード
医療機器の軽量化を実現する、生体適合性を考慮したグレードです。
医療用に使われるPEEKは、すべてPEEK医療グレードとして分類されます。医療機器にはさまざまな用途があり、求められる特性も異なります。近年、金属の代替として期待が集まっています。
PEEK摺動グレード
PEEK摺動(しゅうどう)グレードは、潤滑性・耐摩耗性を向上させたグレードです。
炭素繊維やPTFE(四フッ化エチレン)を充填することで耐久性が上がり、機械部品の寿命が向上します。部品交換がむずかしい箇所での使用に最適です。
PEEKを使った製品例

PEEKは、半導体部品や医療機器など、その特性を活かしてさまざまな製品に採用されています。
特に自動車業界では、EVの航続距離向上のため軽量化が急務となっており、小さなギアやベアリングなどの金属部品の一部がPEEKに置き換えられています。
また近年複雑化・多層化する電子部品では、その優れた電気的特性からPEEKが採用されています。
PEEKの切削加工のポイント

PEEKの加工法には射出成形や切削があります。ここでは、PEEKを切削加工する際のポイントを解説します。
PEEKは金属からの置き換えで、コストダウンが期待できる材料です。しかし他のプラスチックと比較すると材料コストが高いため、加工ミスの際の影響も大きくなってしまいます。

実際の加工では、PEEKのグレード・工作機械・切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。
PEEKは快削材で加工しやすい
PEEKは機械的強度も高く、加工しやすい快削材です。すくい角が大きな超硬工具を選ぶことで、精度の高い加工が可能です。
一方、ガラス繊維やカーボン繊維を配合したPEEKは強度が高く、切削しにくくなります。強化グレードや導電グレードのPEEKは、加工の難易度が上がるため注意が必要です。
PEEKは金属にくらべ熱収縮率が高い
PEEKはプラスチックのなかでも耐熱性が高い材料ですが、金属にくらべると収縮率は高めです。そのため切削温度が上がってしまうと、寸法精度の確保がむずかしくなります。
切削時の温度上昇を防ぐために、送り速度や回転数などの切削条件を調整する必要があります。また、PEEKは耐スチーム性が高いことから、クーラントを使うことも可能です。