
研削盤とは?研削加工の種類とさまざまな研削盤・砥石を解説
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/05/28 ) 著者: 甲斐 智
研削加工は、高速で回転する砥石(といし)をすこしずつ加工ワークに押しあて、表面を削る「除去加工」のひとつ。
自動車のクランクシャフトやベアリングなど、 精密部品の仕上げ に広く使われている、金属加工を代表する加工方法です。
この記事では「研削盤」の種類を中心に、研削加工で使われる砥石や周辺機器、研削加工のトレンドなどを解説しています。

研削加工ってどんな加工?
研削加工は、高速で回転する砥石(といし)をすこしずつ加工ワークに押しあて、表面を削る加工方法です。
フライスや旋削とくらべて加工時間は長くなりますが、 1ミクロン(1/1000mm)の精度 で金属の表面を加工することができます。
研削:引用元: 公益社団法人 精密工学会「研削」
研削 (grinding) とは,高速度で回転する研削砥石を工作物に干渉させ,両者の相対運動をさせることによって,工作物を切りくずとして除去し,所定の形状寸法に仕上げる機械加工法の一つである.
また超硬合金などの難削材や、半導体ウエハー・セラミックスなどの特殊素材も、硬い砥石で難なく加工することができます。
精密研削では、0.1ミクロンの精度で金属の表面を鏡面仕上げをすることもできます。
研削加工に欠かせない「研削盤」

CNC研削盤は、研削加工で使われる工作機械です。
回転砥石による加工ワークの研削はもちろん、難削材の切断から鍛造品のバリ取りまで、幅広く使われています。
一般的な工作機械にくらべて精度が高く、加工内容にあわせて30以上もの機種があります。
最近では、自動サイクル運転・砥石交換システムを搭載したものや、マシニングセンタとの複合機など、さまざまな機種が開発され自動化が急速に進んでいます。
英語では、〔CNC Grinding Machine〕と表記されます。
NC研削盤の種類
代表的な「CNC研削盤」と研削加工を紹介します。
- CNC平面研削盤と「平面研削」
- CNC円筒研削盤と「円筒研削」
- CNC内面研削盤と「内面研削」
- CNC心なし研削盤と「心なし研削」(センタレス研削)
- CNC成形研削盤
- CNC工具研削盤
- CNCジグ研削盤(ジググラインダー)
- CNCロール研削盤
- CNC万能研削盤
- CNCプロファイル研削盤
- グラインディングセンタ
CNC平面研削盤と「平面研削」

CNC平面研削盤は「平面研削」で使われる研削盤です。
ワークをテーブルに固定し、左右に動かしながら回転砥石を押しあてて、ワークの平面を仕上げます。
(ワークの固定には電磁チャックによるマグネット吸着や、真空チャックが使われます)
平行度が求められる機械部品の研磨や、半導体ウエハーの加工など、さまざまなワークの研削で使われています。
CNC平面研削盤の研削方法
砥石の方向(横・縦)と、テーブルの種類(角・丸)の組み合わせによって、4つに分けられます。
- 横軸角テーブル形
-
横軸の砥石と角テーブルを備えた研削盤です。
テーブルを「左右」に動かしながら、砥石の「外周面」で研削します。もっとも広く使われているタイプです。
- 横軸丸テーブル形
-
横軸の砥石と丸テーブルを備えた研削盤で、「横軸ロータリー」ともよばれます。
テーブルを「回転」させながら、砥石の「外周面」で研削。小さな部品の量産加工に適しています。
- 縦軸角テーブル形
-
縦軸の砥石と角テーブルを備えた研削盤です。
テーブルを「左右」に動かしながら、砥石の「側面」で研削します。
大きな面積を一度に研削できるため、効率がよいのが特徴です。長いワークの平面研削にも適しています。
- 縦軸丸テーブル形
-
縦軸の砥石と丸テーブルを備えた研削盤です。
テーブルを「回転」に動かしながら、砥石の「側面」で研削します。小さな部品を一度に研削できるため、効率がよいのが特徴です。
CNC円筒研削盤と「円筒研削」

CNC円筒研削盤は「円筒研削」で使われる研削盤です。
回転するワークに回転砥石を押しあてて、丸物ワークの外面を仕上げます。
(ワークの固定には両端をセンタで支える方式や、チャックで固定する方式などがあります)

高い精度の求められる自動車シャフトや、さまざまな産業機械の軸部品の仕上げに使われ、専用の超仕上げユニットを使うことで「超仕上げ」にも対応できます。
CNC円筒研削盤の研削方法
砥石とワークの動かし方の違いによって、「トラバース研削」と「プランジ研削」に分けられます。
- トラバース研削
-
薄い砥石を押しあて、砥石もしくはワークを左右に動かしながら研削します。
長いワークの研削に適しています。
- プランジ研削
-
はばの広い砥石を押しあて研削します。
小さいワークを効率的に研削することができます。
CNC内面研削盤と「内面研削」

CNC内面研削盤は「内面研削」で使われる研削盤です。
回転するワークの穴に回転砥石を挿入して、押しあててながら内面を研削。
ベアリングや軸受けなど、精度の高い内径仕上げに使われます。

金型や大きな部品など、ワークを回転させることがむずかしい場合は、砥石を内面の輪郭に沿って回転させる「プラネタリー方式」を使用。
砥石をこまかく揺らしながらあてる「オシレーション機構」を搭載した機種では、内面の精度をより高く仕上げることができます。
CNC心なし研削盤と「心なし研削」(センタレス研削)

心なし研削盤は「心なし研削」で使われる研削盤です。
ワークを〈支持ブレード〉〈調整砥石〉〈研削砥石〉の3点で支えて、丸物ワークの外面を研削。
ワークの固定にセンタを使わないため、「センタレス研削」「芯なし研削」ともよばれ、小さなピンや噴射バルブなど、自動車部品の量産加工で多く使われています。
センタ用の穴加工が不要なため段取りがかんたんで、連続加工や自動化にも対応。
ワークのたわみが少ないため、長いワークでも加工精度が安定します。
CNC心なし研削盤の研削方法
- 通し送り研削(トラバース送り)
-
ワークを研削しながら通過させる方式です。
調整砥石の軸を傾けることで、ワークを研削しながら送ります。ワークを連続供給できるため生産性が高く、細長いワークの研削にも適しています。
- 送り込み研削(プランジ送り)
-
ワークをひとつずつ研削する方式です。
ワークを支持ブレードに乗せて、調整砥石をワーク側に送りながら研削します。段付き部品や小物の加工に適しています。
CNC成形研削盤

CNC成形研削盤は「成形研削」で使われる研削盤です。
歯車やねじなどの「専用部品の研削」を行います。
成形する部品にあわせて、さまざまな種類があります。
CNCねじ研削盤

ねじの角度にあわせて、砥石軸を旋回させ、「ねじ」を研削します。
産業機械で使われるボールネジ(送りねじ)など、精度の高いねじの成形に使われています。
- 成形研削
-
薄い砥石を使い、ねじをひと山ずつ研削します。
- 創成研削
-
ねじ状のはばの広い砥石を使い、ねじ全体をすこしずつ研削します。
効率が良く量産に向いています。
CNC歯車研削盤

ワークと砥石の回転を同期させることで、「歯車」を研削します。
産業機械や自動車の駆動ギアなどの、精度の高い歯車の仕上げ加工に適しています。
「歯車加工」について解説
CNCクランク軸研削盤

非対称で偏心が大きい、自動車エンジン用の「クランクシャフト」を研削します。
(クランクシャフトは、エンジンのピストン運動を回転エネルギーに変換する軸部品です)
CNCカム研削盤

非対称で偏心が大きい、自動車エンジン用の「カムシャフト」を研削します。
(カムシャフトは、エンジンのバルブを開閉する軸部品です)
CNCスプライン軸研削盤
産業機械用の「スプライン軸」を研削します。
(スプライン軸は、縦方向に溝のついた伝導用の軸部品です)
CNC工具研削盤

CNC工具研研削盤は、ドリルなどの加工・研削をする「工具研削」で使われる研削盤です。
砥石の軸を自由に旋回させることができ、フライス・エンドミル・ドリルなどの工具を、1回のチャッキングで研削。
摩耗した工具の再研磨にも使われています。

加工する工具にあわせて、さまざまな専用機械があります
- バイト研削盤
- ドリル研削盤
- フライス研削盤
- ホブ研削盤
- ブローチ研削盤
- エンドミル研削盤
CNCジグ研削盤(ジググラインダー)

CNCジグ研削盤は、穴の内面を 1ミクロン以下の精度で仕上げることができる超精密研削盤です。
砥石の軸を自由に動かし、丸穴だけでなく角穴や異形穴の内面も、精密に仕上げることができます。
ジグ(治具)の内面研削に使われたことから、「ジググラインダー」ともよばれ、似た機械には「ジグボーラー」があります。
CNCロール研削盤

CNCロール研削盤は、大きな円筒ワークを研削するための大型CNC研削盤です。
発電用の大型シャフトやタービンなど、特殊部品の研削で使われます。
CNC万能研削盤

CNC万能研削盤は、砥石の軸とテーブルを自由に旋回させることができる多機能の研削盤です。
円筒研削だけでなく、内面研削やテーパ研削などさまざまな研削ができます。
CNC万能研削盤でできる機能
- マルチホイール研削:複数の砥石による複合研削
- アンギュラスライド研削:円筒面と端面の同時研削
- テーパ研削:大きな角度を付けた研削
グラインディングセンタ(複合研削盤)

グラインディングセンタは「マシニングセンタ」をベースに、「CNC研削盤」の機能を一体化させた複合加工機です。
いままでのマシニングセンタでの切削加工に加え、砥石による研削加工ができます。
ATC(自動工具交換装置)を使いドリルから砥石に交換することで、1回の段取りで加工から仕上げまでこなします。
ワーク旋回機能と5軸制御によって、円筒・内面・テーパー研削から、カム研削などの成形研削まで、幅広い研削加工にも対応できます。
ワーク自動着脱や砥石摩耗計測など、さまざまな自動化装置を搭載しています。
CNC門形平面研削盤

工作機械のベッドやコラムなどの大型ワークの研削に特化した、大型の平面研削盤です。
砥石を支える構造が「門」のカタチになっているのが特徴です。
CNCプロファイル研削盤
CNCプロファイル研削盤は、倣い(ならい)研削で使われる研削盤です。
模型や実物を光学測定で「トレース」しながら研削します。
金型の精密部品や、複雑な微細部品などを精度よく仕上げることができます。
研削盤による鏡面仕上げ「ELID研削」とは

ELID(エリッド)研削は、半導体ウエハーやセラミックスなどの難加工材の鏡面加工で使われる加工方法です。
砥石と砥石受けに電極を付け、パルス電流を流すことで、砥石の結合剤が電気分解されて新しい砥石面がつくられます。
常に新しい砥石面で研削することができるため、より精度が高い鏡面加工ができます。
電極が付けられない環境では、化学薬品にワークを浸し研磨を行う「化学研削」や「化学研磨」も行われます。
研削盤による「研削切断」について

CNC研削盤は、「研削切断」とよばれるワークの高速切断にも使われます。
研削切断では、半導体シリコンや磁気ディスク用ウエハ、クオーツ時計の水晶、LEDに用いられるサファイヤなどの「硬くてもろい材料」を、精度よく切り出すことができます。
これらの切断は、「のこ盤」や「金切り盤」ではむずかしく、電子産業に欠かせない重要な加工方法です。
スライシング
「ブレード」とよばれる、0.1mm以下の薄い超砥粒ホイールを使用。
CNC平面研削盤や超精密スライサを使い、クーラント(研削油)をかけながらワークを切り込み切断します。
半導体のインゴット(切出し前のかたまり)など直径の大きなワークには、ドーナツ状の「内周刃ブレード」や、ダイヤモンド砥粒を電着した「ワイヤ」が使われます。
ダイシング
「ダイシングブレード」とよばれる、数ミクロンの薄い超砥粒ホイールを使います。
半導体シリコンから、ウエハを切り出すときに使われます。
研削盤で使われる「研削砥石」について

砥石(といし)は、「砥粒」を「結合剤」で固めた工具です。
切削加工の「刃物」に相当し、小さな砥粒のひと粒ひと粒が、すこしずつワークを削ります。
砥粒は非常に硬い材質でできているため、難削材の加工ができます。
砥石には「自生作用」があり、ドリルのような研ぎ直しの必要がありません。
そのため長時間の連続加工が可能です。
(自生作用:摩耗した砥粒がこぼれ落ち、次々と新しい砥粒が出てくる現象)
研削砥石の種類と構造

砥石は、「砥粒」「結合剤」「気孔」の3つの要素でできています。
砥石の構成要素
砥粒の種類
砥粒(とりゅう)は、ワークを削るための小さな粒子です。
金属や難削材を削るため、さまざまな硬い材質が使われています。
一般砥粒
一般的な研削砥石として使われる砥粒です。
- ・アルミナ(酸化アルミニウム)
-
硬度や耐熱性が安定した、一般的な砥粒です。
鉄鋼などのワークに使われます。
- ・炭化ケイ素
-
非鉄金属に使われる、一般的な砥粒です。
アルミニウム合金や銅合金などのワークに使われます。
超砥粒ホイール
難削材で使われる、非常に硬い砥粒です。
セラミック・非鉄金属などの難削材や、成形研削の仕上げに使われます。
超砥粒の砥石は、「ホーニング加工」による内面研磨でも使用されています。
- ・ダイヤモンド砥粒
-
ダイヤモンドを用いた超砥粒です。
発熱に弱く鉄と化学反応を起こすため、鉄鋼のワークには向きません。
- ・CBN砥粒(立方晶窒化ホウ素)
-
ダイヤモンド結晶に似せた人工物を用いた超砥粒です。
ダイヤモンドに次ぐ硬度を誇り発熱に強く、鉄鋼のワークにも使用できます。
アルミニウム合金や銅合金などのワークに使われます。
結合剤
結合剤は、砥粒と砥粒を固めるためのボンドの役割をします。
材質によって、セラミックス・樹脂・金属の3つに分けられます。
- ・ビトリファイドボンド 表記:V
-
セラミック系のボンドです。
砥粒同士の結合が強いため、幅広いワークの精密研削に適しています。
- ・レジンボンド(レジノイドボンド) 表記:B
-
樹脂系のボンドです。
砥粒同士の結合がゆるく弾力性があるため、研削から仕上げまで幅広く対応できます。
- ・メタルボンド 表記:M
-
ブロンズなどの金属系のボンドです。
砥粒同士の結合が非常に強いため、粗研削や切断などに適しています。
耐久性が高く、精密研削でも高い精度を発揮します。
気孔
気孔は、砥粒と結合剤のスキマにできる小さな穴です。
切粉(研削スラッジ)の排出を助けることで、目詰まりを未然に防ぎます。
研削中の砥石の発熱を抑える役割もあります。
研削砥石のみかた
粒度
砥粒のサイズは「粒度(番手 #30 #120 など)」で表記。
番手が少ないほど粗く、大きいほど細かくなります。
結合度
砥石の硬さは「結合度(A~Zまで)」で表記。
Aがもっとも軟らかく、Zがもっとも硬くなります。
硬いワークには軟らかい砥石、軟らかいワークには硬い砥石が適してます。
組織
砥粒の密度は、「組織(0~14まで)」で表記。
数字が少ないほど砥粒の密度が高くなり、大きいほど密度が低くなります。
砥粒の密度は、砥石の摩耗しやすさや切粉(研削スラッジ)の排出しやすさに関係しています。
研削砥石の加工不良の原因
砥石の硬さや密度の選定がよくないと、「目こぼれ」「目つぶれ」「目づまり」が発生し、加工不良の原因になります。
目こぼれ

研削中の砥粒が、過剰にはがれ落ちる現象です。
砥石の摩耗がはやくなり、加工精度も低下します。
目つぶれ

研削中の砥粒が、摩耗してもはがれ落ちない現象です。
加工表面が高温になり、研削ヤケ(酸化による変色)が発生します。
目づまり

研削した切粉(研削スラッジ)が、気孔に詰まってしまう現象です。
砥粒が切粉(研削スラッジ)に埋もれてしまうため、加工ができなくなります。
研削砥石の「ツルーイング」と「ドレッシング」

研削盤の高い加工精度を発揮するためには、「ツルーイング」と「ドレッシング」による砥石の管理がかかせません。
研削砥石のツルーイング(形直し)

砥石の「形」を修正するための作業です。
ツルーイングとよばれる特殊な工具で表面を削り、砥石の取り付け時のフレや、長く使われてカタチが崩れた砥石を修正します。
ツルーイング:引用元: 国立研究開発法人 科学技術振興機構「ツルーイング」
砥石車の外周の砥粒と結合剤を除去して、砥石軸に対し同心にし、一定形状に整形すること。
ツルーイング後の砥石は目つぶれしているため、ドレッシングが必要となります。
研削砥石のドレッシング(目立て/目直し)

目つぶれや目づまりで低下した、砥石の「切れ味」を回復させる作業です。
ドレッシング工具で表面を削り、摩耗した砥粒を落とすことで、新しい砥粒を露出させます。
ドレッシング:引用元: 国立研究開発法人 科学技術振興機構「ドレッシング」
目立て、目つぶれを起こした砥石の表面を除去し、切れ味の低下した砥石の表面に新しく鋭い切刃を再生させる作業。
研削砥石の冷却

砥石はドリルなどの切削工具にくらべ、回転速度が非常にはやいため、加工点の温度は1000℃以上と高温になります。
発熱は、研削ヤケ(酸化による変色)や、研削ワレ(ワークの亀裂)の原因となるため、クラーントオイルによる確実な冷却が重要になります。
研削盤の周辺機器について
CNC研削盤はさまざまな周辺機器を利用することで、精度向上や自動化が実現します。
研削盤で使われる自動化装置
自動ドレス装置

自動ドレス装置は、「ツルーイング」と「ドレッシング」を自動で行う装置です。
円錐形のダイヤモンド工具や、ロータリー形のダイヤモンドドレッサを使い、砥石の表面を再生。
CNCによる機内ドレッシングで、加工効率が上がります。
先端Rや、テーパー形状、段付き砥石など、さまざまな砥石のドレスができます。
AWC(自動ワーク交換システム)

AWCは、ワークを自動で交換する一連のシステム(Auto Work Changer)です。
さまざまな工作機械の工程間に、「産業用ロボット」などのハンドリングロボットを配置し、ワークを自動で交換します。
CNC研削盤の高い汎用性を活かしながら、工場の自動化が実現します。
砥石自動交換システム
砥石を工程ごとに自動で交換する装置です。
マシニングセンタのATC(工具自動交換装置)とおなじ働きをします。
CNC工作機械の自動化システムの需要拡大を背景に、砥石交換の自動化ニーズが高まっています。
工程ごとに最適な砥石を使うことができるため、加工効率と精度が向上。
異形状や異なる材質の連続加工ができるようになります。
研削盤で使われるセンサ
タッチプローブ

タッチプローブは、加工後のワークの寸法を計測するためのセンサです。
円筒研削盤のワークの外径計測や加工原点出し、平面研削盤のワークの寸法計測に使われています。
AEセンサ(超音波センサ)

AEセンサは、砥石とワークの接触を高周波で検知し、CNCにフィードバックすることで、砥石の加工原点を検出します。
ドレッシングの管理や、ワークの異常モニタリングなど、さまざまな用途で使われています。
研削盤で使われる環境装置
クーラント(研削油)と周辺装置

クラーントの温度管理には、「クーラントチラー」や「オイルクーラー」などの装置が使われます。
研削盤の切粉(研削スラッジ)は細かく、クラーントに混ざりやすいため、分離装置や吸じん装置などによる確実な除去が必要になります。
研削加工のトレンドは自動化

研削加工の現場では自動化が急務となっています。その背景と自動化トレンドをご紹介します。
研削加工で自動化が急がれる背景

金属加工で自動化が求められる背景には「少子高齢化」「働き方改革」「少量多品種生産」の三つの要因があげられますが、なかでも大きな要因が、少子高齢化による働き手の減少です。
特に研削加工では、熟練者の経験やカンに頼る作業が多く、後継者不足が進むなかで、自動化の必要性が一層高まっています。例えば高度化が進む半導体製造装置や自動車部品、金型、光学デバイス、医療機器部品をミクロン単位で研削するには、熟練者の経験が欠かせません。しかし、こうした高度な作業を人手だけに頼るのは、もはや現実的ではなくなっているのです。
研削加工の注目トレンドをご紹介
研削加工では、これまで熟練者に頼ることの多かった、砥石とワークの測定システムや、さらにAIを活用したソリューションも登場し、無人運転の実現に期待が高まっています。
また近年特に注目されているのが、協働ロボットと研削盤の連携です。
研削盤と協働ロボットとの連携

協働ロボットと研削盤の連携が急速に広がっています。
例えば、協働ロボットを利用しワークの搬入出を自動化することで、熟練者による手作業がなくなり、多品種少量生産にも柔軟に対応することが可能です。またワークだけでなく、砥石の交換に活用することで、荒加工から仕上げまでの一連の作業を自動化することも可能です。
精密部品や半導体向けの難削材の加工においても、高度な夜間の無人運転が実現しつつあります。
デジタルによる研削技術の伝承

熟練者の経験を次世代に伝えるため、技術の見える化が進んでいます。
支援アプリを活用することで、ワークや要求精度にもとづいた最適な加工条件を簡単に設定できるようになってきています。これにより、若手オペレーターでも安定した加工を行うことができ、技術伝承とスキル向上が同時に実現します。
技術のデジタル化は、製造業の未来を支える重要な要素となっています。
研削加工の工程集約

半導体向けの加工において、グラインディングセンタを活用した工程集約が進んでいます。
半導体や半導体製造装置には、その特性上、セラミックスやガラス、SiCといった脆性材が使用されています。このような特殊な材料の加工ニーズに対応するため、軸付き砥石やダイヤモンドホイールを備えたグラインディングセンタの需要が急速に高まっています。
砥石当て込みの自動化

これまで砥石の当て込みは、熟練者の経験に依存する作業でしたが、近年ではセンシング技術の進化によって自動化が実現しています。また、タッチプローブを活用することで、ワークの位置や高さを自動で計測することも可能になっています。
非熟練者でも、安定した精密加工が実現し、オペレータひとりあたりの機械台数も増やすことができます。
若手でも使いやすい研削盤

近年では、直感的に操作できる大型タッチパネルや、自動測定機能を搭載した研削盤が増えており、特に、若手でも簡単に扱える研削盤が増加しています。
また、EV向けモータコア金型や半導体関連の金型需要に応えるため、複数の加工工程を一台でこなせる多機能な研削盤も増えており、生産性が大きく向上しています。
NC研削盤の代表的なメーカー

さまざまな工作機械メーカーが、CNC研削盤を製造。
ワークサイズや生産形態にあわせて、多種多様な機種が開発されています。
研削加工の現場で多く使われている「CNC平面研削盤」「CNC円筒研削盤」と、ワークの複雑化にともない需要が高まっている「グライディングセンタ」のメーカーを一部ご紹介します。
メーカー | 平面研削盤の種類 |
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(株)市川製作所 | ロータリー平面研削盤 |
(株)岡本工作機械製作所 | CNC精密平面研削盤 |
黒田精工(株) | 精密平面研削盤 |
住友重機械ファインテック(株) | 門形平面研削盤 |
長島精工(株) | 超精密成形平面研削盤 |
(株)ナガセインテグレックス | 超精密・高精度成形平面研削盤 |
メーカー | 円筒研削盤の種類 |
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オークマ(株) | CNC円筒研削盤 |
(株)岡本工作機械製作所 | CNC精密複合円筒研削盤 |
コマツNTC(株) | CNC円筒研削盤 |
(株)ジェイテクト | CNC円筒研削盤 |
(株)シギヤ精機製作所 | CNC円筒研削盤 |
(株)ツガミ | CNC精密円筒研削盤 |
長島精工(株) | 超精密高効率複合円筒研削盤 |
ニデックマシンツール(株 | 量産型円筒研削盤 |
牧野フライス精機(株) | 高精密立形円筒研削盤 |
(株)丸栄機械製作所 | 小型自動サイクル円筒研削盤 |
メーカー | グライディングセンタの種類 |
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ニデックオーケーケー(株) | グラインディングセンタ |
(株)太陽工機 | 複合研削盤 |
(株)牧野フライス製作所 | グラインディングセンタ |
◎あいう順・敬称略
\詳しいメーカー情報はこちら/
※メーカーについて | 本サイトの独自調査によりピックアップしています。 特定のメーカーをPRしたり、推奨するものではありません。 掲載希望や掲載に問題がありましたら、こちらよりお知らせください。 |
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研削加工とは?まとめ
この記事では「CNC研削盤」の種類を中心に、研削加工で使われる砥石や周辺機器などを解説しました。
研削加工は、切削加工とならび日本のものづくりを支える「基盤技術」のひとつ。
さらなる精度向上のため、たくさんのメーカーがしのぎを削って開発を進めています。
なかでも砥石の摩耗検出や、1000℃以上にもなる機械の熱変位対策に力を入れているメーカーが増えています。
本記事が、研削加工を知る「はじめのいっぽ」となればうれしいです。