S45Cとは?炭素鋼(SC材)S45Cの特徴とS50Cとの違い
- 更新日:
- 2023/02/22 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
SC材(Steel Carbon)は、高い強度と耐久性を備えた炭素鋼です。そのなかでも流通量が多く、汎用性の高さで広く採用されている炭素鋼が「S45C」です。
S45Cは、機械的強度の高さから機械部品として採用されることが多く、自動車のエンジン部品や機械要素部品に使われています。また安価で入手しやすいため、家庭用機器の部品や製造現場の治具、工具などにも採用されています。
この記事では、S45Cの特徴やS45CとS50Cの違い、S45Cの表面処理について解説します。
S45Cとは
SPCCS45Cは、SS材と並んで使用頻度が高いSC材(機械構造用炭素鋼)の一種で、炭素含有量が0.45%の中炭素鋼に分類されます。機械的強度など物性のバランスがよく、流通量やコスト面から入手性が高い材料です。
加工しやすいことから、鉄系の材料を選定する場合には、必ずといっていいほど検討される材料です。
SC材は含有される化学物質に関する規程があるため、金属の強度などに悪影響を与える「リン」や「硫黄」の含有量が限定されています。そのため、品質が担保されています。
S45Cの特徴
S45Cは炭素鋼のなかでも、熱処理のしやすさや流通量の多さが特徴です。
S45Cは熱処理で特性の調整ができる
熱処理の効果を得るためには、ある程度以上の炭素含有量が必要です。
S45Cは、熱処理の効果を十分に得ることができる材料で、「焼き入れ」「焼き戻し」「焼きならし」などの熱処理を行ってから使われることも多いです。熱処理を行うことで、引張り強さや硬度などの機械特性を大きく高めることができます。
一方で、焼入れを行うことで材料が変形してしまう可能性もあるため、特に、薄く長い材料を焼入れする場合には注意が必要です。
熱処理で硬度を高めた状態で研削を行うことで、精度の高い仕上げが実現します。
S45Cは流通量・選択肢が多い
S45Cは流通量が多く、他の金属とくらべて価格が安いため、さまざまなシーンで採用しやすい材料です。
さらに鋼板や丸鋼、角鋼、線材、六角鋼などさまざまなタイプが流通しているため、用途にあわせた形状が選定でき、効率的な加工ができます。
S45Cは溶接はできるが向いていない
S45Cは溶接が可能です。しかし炭素量が多いため、溶接後の冷却時に割れてしまうおそれがあり、注意が必要です。
また溶接の際に溶接部位に熱が入るため、焼きが入ってしまい硬度が変化することがあります。狙い通りの特性を発揮できなくなってしまう可能性があるため、積極的には行われていません。
中炭素鋼S35CおよびS45C鋼について:引用元:接合・溶接技術Q&A|溶接情報センター
機械構造用鋼S35C,S45Cでは,炭素含有量が高く低温割れが発生しやすいため,その防止のため溶接に際して予熱後熱が必要となる。
S45Cは耐食性が低い
S45Cは耐食性が低く、通常の鉄鋼材とおなじくさびやすい材料です。外装部品として使われる場合や、耐食性の確保が必要な場合は、めっきや塗装などの表面処理を行う必要があります。
S45Cの表面処理
S45Cで行われることが多い表面処理は、以下の通りです。
四三酸化鉄皮膜(黒染め) | 塗装下地としてよく使われる |
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パーカーライジング | 黒染めより防錆・耐摩耗性に優れる |
ユニクロ(白色) | 亜鉛めっきの後処理として使われる |
有色クロメート(黄・黒) | 亜鉛めっきの後処理として使われる |
三価クロメート | 六価クロムを含有していない |
無電解ニッケルめっき | 防食性・耐摩耗性・密着性に優れる |
低温黒色クロムめっき | 超薄膜で防錆力・防食性に優れる |
硬質クロムめっき | 耐摩耗性に優れる |
S45CとS50Cの違い
SC材のなかでも、S45Cと同様に使用頻度の高い材料に「S50C」があります。
SC材は炭素含有量の少ない順に、「S15C」「S25C」「S30C」「S35C」「S55C」のように分類されています。(JISでは、さらに細かく規定されています)
S50CはS45Cよりも炭素が0.05%多く含まれますが、硬度の違いはそれほど大きくありません。S50Cは炭素含有量が多い分、焼入れをする際には、S45Cよりももろくなりやすいため、注意が必要です。
S45Cは線材や丸棒などの「丸もの」が多く流通していますが、S50Cは板材や角材なども「角もの」が流通しています。
一般的にS45CとS50Cを使い分ける場合、コストと強度のどちらに重きを置くかが判断基準となります。コストを優先する場合にはS45Cを、強度を優先する場合には、S50Cを採用します。
S45Cを切削加工する際のポイント
S45Cは熱処理を行うことで硬度が高くなるため、切削加工をする際には熱処理前に行うのが一般的です。
熱処理後でも切削はできますが、工具の摩耗が大きくなるため、工具や加工条件の設定には注意が必要です。
実際の加工では、加工方法や切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。
S45Cは超硬工具との親和性が高い
熱処理後のS45Cを切削するためには、硬度の高い工具が必要です。代表的な工具には超硬工具があげられますが、主成分がタングステンである超硬工具は鉄との親和性が高く、ワークと工具が溶着してしまう可能性があります。
熱処理後のS45Cの切削では、溶着が発生しないように、サーメット工具を使うといいでしょう。サーメットはチタンが主成分で、超硬で心配される溶着が発生しにくくなります。
一方サーメット工具は、超硬工具よりもじん性が低いため耐衝撃性が低く、刃先のチッピングが起きやすいことが欠点があります。また熱伝導率が低く、刃先に熱がこもってしまうこともあるため、これらの特徴を考慮した切削条件の設定が必要です。