はじめの工作機械 > 工作機械がわかる > はじめての切削油|切削油・クーラントオイルの種類と選び方を解説
はじめての切削油|切削油・クーラントオイルの種類と選び方を解説

はじめての切削油|切削油・クーラントオイルの種類と選び方を解説

公開日:
2020/04/24(2020/08/20 更新)by 甲斐 智
関連キーワード:
| 周辺機器 | 工具 | 除去加工 |

切削油(せっさくゆ)は、NC工作機械で使われる「潤滑油」です。

加工ワークと工具との表面に油の膜をつくり、 〈潤滑〉〈冷却〉〈洗浄〉 の役目をはたします。
わずかな金属のスキマや凹凸にも浸透し、金属どうしの摩擦を軽減する効果があります。

600~1000℃にものぼる切削加工の発熱を抑える効果もあるため、「クーラントオイル」ともよばれます。

この記事では、切削油の種類から給油方法、「セミドライ加工 MQL」などの最新キーワードまで、切削油にまつわる用語を解説しています。

切削油(クーラントオイル)の効果とは?

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油(クーラントオイル)の効果とは?

切削油には、〈潤滑〉〈冷却〉〈洗浄〉の効果があります。
これらの効果は、 高い生産性がもとめられる「NC工作機械」の自動加工 にはかかせません。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|削油(クーラントオイル)の効果とは?

切削油の〈潤滑〉効果

加工ワークと工具とのあいだに切削油が浸透し、潤滑します。
わずかなスキマや凹凸にも浸透し、摩擦が減ることで、さまざまな効果が得られます。

  • 工具の摩耗が少なくなり、工具の寿命が伸びる
  • 切削の抵抗が少なくなり、ちいさな力で加工ができる
  • 構成刃先の発生を防ぎ、加工面の精度が向上

切削油の〈冷却〉効果

600~1000℃ にものぼる切削加工時の発熱を抑えます。
(とくに熱伝導率の低いステンレスなどのワークは、熱が逃げにくく高温になります)

発熱を抑えて冷やすことで、さまざまな効果が得られます。

  • 工具の熱変形が少なくなり、工具寿命が伸びる
  • ワークや工具の熱変異を防いで、加工精度が安定
  • 高速加工が実現

切削油の〈洗浄〉効果

切削中に発生する「切粉」を流し落とし、洗浄(フラッシング)します。
切粉を確実に洗い流すことで、加工中のトラブルを未然に防ぎます。

  • 切粉の付着によるワークのキズを防止
  • 切粉の詰まりや、積もった切粉による加工不良を防止
  • からまった切粉による工具の折れを防止

切削油(クーラントオイル)の種類と選び方

切削油は、「不水溶性」と「水溶性」におおきく分けられます。
数多くの種類が市販されており、加工の内容にあわせて使い分けることが重要になります。

切削油剤の種類:
切削油剤には、そのまま使用する不水溶性切削油剤と水で希釈して使用する水溶性切削油剤があります。
不水溶性切削油剤は潤滑作用に重点をおき、鉱油に種々の潤滑添加剤を加えたものです。
水溶性切削油剤は 水の優れた冷却性と安全性に着目し、潤滑成分を水で希釈できるようにしたものです。
引用元: 全国工作油剤工業組合「切削油剤の種類」

切削油の種類

不水溶性切削油(不水溶性クーラント)

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|不水溶性切削油

不水溶性切削油は、油が主成分の切削油です。
「潤滑」の効果が高く、高い精度がもとめられる切削加工で使われます。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|不水溶性切削油

原液のまま薄めずに使うため、「ストレートオイル」ともよばれ、NC工作機械やワークのサビを防ぐ効果もあります。

水溶性にくらべて劣化しにくいですが、引火などの危険があるため、無人運転には注意が必要です。

不水溶性切削油には、2種類あります

〈活性形〉

難加工材や、歯車加工などの低速加工に使われます。
加工精度の向上に効果を発揮します。

〈不活性形〉

軽切削や、やわらかい金属の加工に使われます。
工具の寿命向上に効果を発揮します。

水溶性切削油(水溶性クーラント)

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|水溶性切削油

水溶性切削油は、水と油を混ぜ合わせた切削油です。
「冷却」の効果が高く、マシニングセンタの高速加工で広く使われています。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|水溶性切削油

水で薄めて使うため引火の危険性がなく、無人の自動運転にも最適ですが、バクテリアによる劣化があるため、頻繁なメンテナンスが必要です。

水溶性切削油剤には、3つの種類があります

〈エマルション〉

水・油・界面活性剤でつくられた、水溶性の切削油です。
油の粒子がおおきく、乳白色の液体です。

汎用性が高いため、マシニングセンタで多く使われています。

〈ソリューブル〉

水・油・界面活性剤・可溶性物質でつくられた、水溶性の切削油です。
油の粒子がちいさく、半透明の液体です。

冷却性と浸透性に優れています。

〈ソリューション〉

水・可溶性物質でつくられた、水溶性の切削油です。
油の粒子がとてもちいさく、緑色の液体が多いです。

冷却性と耐久性に優れています。

切削油の選び方

切削油の一般的な特徴をまとめました。
(性能はそれぞれのメーカーによってことなります)

<分類表>

 
不水溶性切削油
水溶性切削油
エマルション
ソリューブル
ソリューション
潤滑性
(高精度加工に最適)
冷却性
(高速加工に最適)
防錆性
作業性
(安全性や環境性)

切削油(クーラントオイル)の供給方法

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油(クーラントオイル)の供給方法

切削油の効果を最大限に引き出すためには、確実な供給がかかせません。
加工中の工具とワークに切削油をとどけるために、さまざまな工夫がされています。

切削油の「外部給油方式」

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油の「外部給油方式」

「クーラントホース」を使い、切削油を加工点にかける方法です。

もっとも一般的な方法で、フレキシブルなクーラントホースによって、切削油をかける位置を手動調整することができます。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油の「外部給油方式」

テーブル全体に切削油をかけ、切粉を落とす「シャワークーラント方式」もあります。

切削油の給油には、0.5Mpa程の低圧ポンプが使われます。

切削油の「内部給油方式」

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油の「内部給油方式」
工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油の「内部給油方式」

主軸や工具の内部から切削油をかける方法です。

クーラントホースにくらべ高圧で、より正確に切削油を噴射することが可能。
切削油のとどきにくい深穴加工や、切粉を確実に洗い流すために使われます。

専用の主軸とツーリング(オイルホールホルダーなど)が必要なため、コストがかかります。
またATCでは、工具の中に残った切削油を吸い上げる必要があるため、工具の交換時間が長くなります。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|主軸の周辺から切削油を噴射する「サイドスルー」

工具の先端から切削油を噴射する「センタースルー」と、主軸の周辺から切削油を噴射する「サイドスルー」があります。

センタースルー方式

専用の油穴つきドリルエンドミルを使い、切削油を高圧で噴射します。
切削油を、加工点の中心に確実にとどけます。

通常の工具にくらべ芯が中空のため、剛性が落ちるので注意が必要です。

切削油の給油には、1.5Mpa程の中圧ポンプが使われます。

サイドスルー方式

主軸の周辺の穴から、切削油を高圧で噴射します。

切削点から遠くなるため冷却効果は落ちますが、センタースルー方式にくらべ高圧で、切粉を確実に洗い流すことができます。

切削油の給油には、15Mpa程の高圧ポンプが使われます。

切削油を使わない「ドライ加工」「セミドライ加工 MQL」ってなに?

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|切削油を使わない「ドライ加工」「セミドライ加工 MQL」ってなに?

最近では、省エネや環境に配慮した「ドライ加工」や、「セミドライ加工」が増えつつあります。

ドライ加工

切削油をまったく使わない加工を「ドライ加工」とよび、切削油のメンテナンスや廃油の処理が不要で、発熱や切削性に問題がない場合に使われます。

クーラントホースや油穴つきドリルの穴を応用して、冷風を送る方法もあります。

強化プラスチックなどの加工では粉塵が舞い散るため、集塵(しゅうじん)システムがかかせません。

セミドライ加工(MQL)

切削油を霧状(ミスト)にして、少量のクーラントで加工をする方法です。
MQL(Minimal Quantity Lubrication)ともよばれます。

ミスト化した切削油を外部給油や内部給油で噴射することで、少ない切削油を効率よく供給。
クーラントのタンクやポンプが小型になるため、省エネ・省スペースになります。

ミストが人体にはいらないよう、ミストコレクター(吸塵装置)の設置がかかせません。

「切粉」の処理と周辺装置について

切削油で洗い流された切粉は「チップコンベヤー」で機外に搬出されて、「切粉処理装置」で処理されます。
また切粉と分離された切削油は、「ろ過」され再利用されます。

ここではマシニングセンタでの構成をもとに、切削油と切粉の処理について解説します。

チップコンベヤと切粉処理装置

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|チップコンベヤ

「チップコンベヤー」はテーブルの脇に流された切粉を、機外へ搬出するための装置です。
テーブルや機械の隅に積もった切粉は加工不良の原因となるため、すぐに排出する必要があります。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|チップコンベヤと切粉処理装置

切粉のおおきさは加工ワークの材質によってバラバラのため、さまざまな搬出方法があります。

コンベアで搬出された切粉は、破砕機や圧縮機などの「切粉処理装置」で細かく砕かれ圧縮され、回収業者に引き取られます。

圧縮された切粉は、切削油を完全に分離することはできないため重量があり、腐敗などにも注意が必要です。

ヒンジプレート方式
工作機械と切削油(クーラントオイル)について|ヒンジプレート方式

キャタピラ式の、万能型ベルトコンベヤです。
さまざまな切粉に対応ができます。

鋳物研削くずなどの細かな切粉は、ベルトのスキマに入り込んでしまうため向いていません。

スクレーパ方式
工作機械と切削油(クーラントオイル)について|スクレーパ方式

板状のスクレーパで切粉をかき上げながら搬送する、ベルトコンベヤです。
鋳物研削くずなどの細かな切粉に適しています。

スクリュー方式
工作機械と切削油(クーラントオイル)について|スクリュー方式

らせん状のスクリューを回しながら搬送する、直線状のコンベヤです。
切粉を機内から機外に搬出するために使われます。

プッシュバー方式
工作機械と切削油(クーラントオイル)について|プッシュバー方式

左右の突起で切粉を押し出しながら搬送する、直線状のコンベヤです。
切粉を機内から機外に搬出するために使われます。

クーラントタンク

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|クーラントタンク

切削油を貯めておくためのタンクです。
スラッジとよばれる沈殿物が底に溜まるため、フィルタや「磁気分離器」によってろ過されます。

スラッジは切粉のクズや金属片の集まりで、切削油に混じるとワークにキズをつけてしまうため、確実な除去がかかせません。

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|オイルスキマー

またクーラントの腐敗を防ぐため、「オイルスキマー」などによる浮上油(混入した作動油など)の回収もかかせません。

チラー

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|チラー

切削油の温度を管理し、一定の温度に保つための装置です。

マシニングセンタの長時間の稼働には、切削油の温度管理がかかせません。
切削油による機械の熱変異や冷却力の低下を防ぎ、加工精度を安定させます。

ミストコレクター

工作機械と切削油(クーラントオイル)について|ミストコレクター

ミスト(霧)状の切削油を吸引するための装置です。
静電気や吸引フィルターによって、空気中の切削油を吸引して回収します。

ミストを放置してしまうと、健康被害や床のベタつきによるスリップ事故、NC工作機械のトラブルの原因となるため、大変危険です。

切削油(クーラントオイル)とは?まとめ

この記事では、切削油の種類から給油方法、「ドライ加工」「セミドライ加工」のちがいなど、切削油にまつわる用語を解説しました。

NC工作機械の加工精度を発揮するためには、切削油を使いこなすことが重要です。
本記事が、加工精度向上のヒントになればうれしいです。

この記事(切削油(クーラントオイル))の編集者

甲 斐 智(KAI Satoshi)

甲 斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
14年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる

・株式会社モノト 代表
・株式会社アプト Webディレクター
・一般社団法人 日本機械学会 特別員

切削油(クーラントオイル)とあわせて読みたい

切削油(クーラントオイル)の関連キーワード

周辺機器 工具 除去加工