
ラップ加工 – ラップ盤とラッピングに使われるラップ剤を解説
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2020/05/14 ) 著者: 甲斐 智
ラップ加工は、「ラップ」とよばれる定盤(水平の台)の上に加工ワークをおき、圧力をかけながらワークをこすり合わせることで、精密に研磨する「除去加工」のひとつ。
ベアリング部品やブロックゲージなどの 精密部品の最終仕上げ や、半導体ウエハーなどの 難加工材の表面処理 に使われています。
この記事では、ラップ加工の特徴からラップ剤の種類、「湿式」と「乾式」の違いまで、ラップ加工についてはば広く解説しています。

ラップ加工ってどんな加工?
公式サイト:株式会社諏訪機械製作所
ラップ加工は、「ラップ」とよばれる定盤(水平の台)の上に加工ワークをおき、圧力をかけながらワークをこすり合わせることで、精密に研磨する加工方法です。
「ラップ処理」ともよばれ、特に鏡面仕上げを目的としておこなう場合は「ラップ仕上げ」とよばれます。
半導体製造装置のステッパに使用されるようなボールねじ軸は,最終仕上げ加工としてラップ仕上げが行われる.引用元: 精密工学会「精密ボールねじ軸の自動ラップ盤の開発」
砥粒を含んだ「ラップ剤」を加えることで、加工ワークの表面をなめらかに研磨。
平面研削にくらべ精度が高く、
0.1ミクロンの表面粗さの鏡面仕上げ
ができます。
ラップ加工には、「ラップ盤」が使われます。
ラップ加工で使われる、ラップとラップ剤について

ラップについて
ラップは、加工ワークを置くための円形の定盤(水平の台)です。
主に鋳鉄(いてつ)が使われますが、ワークの素材にあわせて、銅合金や鉛などのやわらかい金属が使われることもあります。
ラップ剤について
ラップ剤は、砥粒(とりゅう)に、少量の潤滑油をまぜたものです。
砥粒には、用途にあわせてさまざまな素材が使われます。
ラップ剤の素材
- アルミナ
-
硬度や耐熱性が安定した砥粒です。
鉄鋼のワークに使われます。
- 炭化ケイ素
-
アルミニウム合金や銅合金など、非鉄金属のワークに使われる砥粒です。
- ダイヤモンドスラリー
-
人造ダイヤモンドを使った砥粒です。
超硬合金やセラミックスなどのワークに使われます。
「湿式ラッピング」と「乾式ラッピング」

ラップ加工は、仕上げの目的によって、「湿式」と「乾式」に分けられます。
ラップ剤にまぜる工作液の量によって、仕上がりが変わります。
湿式ラッピング
ラップ剤に工作液(石油や機械油など)を加え、低圧でラップ加工。
砥粒が転がることで、ワークが削られます。
加工量が大きいため、粗仕上げや中間仕上げの工程で使われ、表面はナシ地の無光沢に仕上がります。
乾式ラッピング
ラップの微小な凹凸にラップ剤をすり込み、高圧でラップ加工。
砥粒の上をワークが滑ることで、削られます。
加工量が少ないため、精密仕上げ工程で使われ、表面は光沢のある鏡面に仕上がります。
ラップ盤の種類

ラップ盤は、「ラップ加工」で使われるNC工作機械です。
ラップと加工ワークをそれぞれ回転させ、圧力をかけながらこすり合わせることで、表面を滑らかに研磨します。
ラップにV溝をつくることで、球状のワークのラップ加工もできます。
英語では、〔CNC Lapping Machine〕と表記されます。
ラップの数によって、「片面」「両面」などのタイプがあります。
両面ラップ盤は作業効率が高く、量産に最適です。
片面ラップ盤
ひとつのラップを使い、片面のみをラップ加工します
リングのなかに加工ワークを入れ、ウェイトで荷重をかけます
両面ラップ盤
2台のラップを使い、両面をラップ加工します
キャリアのなかに加工ワークを入れて、上下をラップで挟みます
心なしラップ盤
「心なし研削盤」とおなじ要領でラップ加工を行う機械です。
円筒状ワークの精密仕上げで使われます。
ラップ加工以外の研磨加工

研磨加工には、ラップ加工以外にも、さまざまな種類があります。
砥石や砥粒を使った研磨加工を紹介します。
「ホーニング加工」について解説
「超仕上げ」について解説
「テープ研磨」について解説
「バレル加工」について解説
ラップ加工とは?まとめ
この記事では、ラップ加工の特徴からラップ剤の種類、「湿式」と「乾式」の違いを解説しました。
ラップ加工は、宝石を磨く加工方法として古くから活用されており、精密加工に欠かせない基礎技術として知られています。
本記事が、日ごろの機械加工のヒントになればうれしいです。