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SUS316とは?ステンレス鋼SUS316の特徴とSUS316L

SUS316とは?ステンレス鋼SUS316の特徴とSUS316L

更新日:
2025/02/07 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
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塑性加工金属材料除去加工
     

ステンレス鋼は、一般的にさびにくく耐食性が高い材料です。しかし、船舶や海風が吹き付けるような環境では、SUS304では腐食することがあり、さらに高い耐食性を持った材料が必要になります。そこで使われるのがSUS316です。

この記事では、耐食性が高いステンレス鋼の中でも特に優れるSUS316について、その特徴やSUS316Lとの違い、切削加工をする際の注意点を解説します。

SUS316とは

SUS316は、SUS304にモリブデン(Mo)を添加し耐食性を向上させた、オーステナイト系のステンレス鋼です。クロム(18%以上)とニッケル(12%以上)、モリブデン(2.5%以上)を含有しています。
海水と触れる船舶部品や沿岸部の建築資材、医療機器など、耐食性が求められる厳しい環境下で使用されています。

SUS316の特徴

ステンレス鋼SUS316について|SUS316の特徴

SUS316は、オーステナイト系ステンレスと共通の特徴と、より高い耐食性を持ち合わせています。

SUS316の耐食性

ステンレス鋼は、表面に不働態皮膜(酸化皮膜)が形成されるため、高い耐食性を発揮します。
SUS316に加えられたモリブデンは、クロムと同様に不働態皮膜を形成する作用があり、その能力はクロムの約3倍といわれています。SUS304で腐食の心配がある海水などの厳しい環境下でも、高い耐食性を持つSUS316であれば採用が可能です。

一方で酸化性酸に対する耐食性は、他のオーステナイト系ステンレス鋼よりも劣る場合があるため、注意が必要です。

SUS316の引張り強さと耐熱性

SUS316の耐熱温度は800℃程度と、SUS304よりも高いですが、引張り強さは温度上昇と共に低下(600℃あたりから急激に低下)していくため、注意が必要です。
高温環境下で使う場合には、耐熱温度だけでなく、温度と強度の関係を確認する必要があります。

ステンレス鋼においても低温割れは生じますか:
SUS304,SUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼では,低温割れは生じない。しかし,マルテンサイト系ステンレス鋼(例えばSUS410)や一部マルテンサイト組織を有するフェライト系ステンレス鋼SUS405,SUS430などでは,溶接により硬化組織を生成し,低温割れが発生する可能性がある。
引用元:接合・溶接技術Q&A|溶接情報センター

SUS316の磁性

一般的にオーステナイト系のステンレス鋼は非磁性ですが、加工をすると組織がマルテンサイト化し、磁性を持つ場合があります。磁性は、溶体化処理を施すことでなくすことが可能です。

SUS316とSUS316L

ステンレス鋼SUS316について|SUS316とSUS316L

SUS316の類似材料に、SUS316Lがあります。Lは「Low carbon」の意味で、炭素の含有率を0.08%以下から、0.03%以下に減らしたものです。
加工方法として溶接が必要な場合、粒界腐食(金属の結晶粒界だけが腐食)の影響を低減するためにSUS316Lが採用されます。炭素量が少ないことから強度はSUS316の方が優れています。

SUS316を切削加工する際のポイント

ステンレス鋼SUS316について|SUS316を切削加工する際のポイント

ステンレスは、熱伝導率が低く粘性が高いこと、さらに加工硬化することから切削加工がむずかしい難削材として知られています。
そのなかでもSUS316は、SUS304にくらべさらに被削性が悪化しています。これは、モリブデンの添加による影響が大きいです。

ステンレス鋼SUS316について|ここで紹介しているポイントは、SUS316の特性を踏まえた一般的な事例です。
ここで紹介しているポイントは、SUS316の特性を踏まえた一般的な事例です。
実際の加工では、加工方法や切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。

SUS316を切削する際の工具選定

すでにSUS304の加工を行っている場合、SUS316も同様の工具で加工ができます。
熱伝導率が低いため摩擦熱が放熱されず、工具摩耗が進みやすい状態となっているので、耐摩耗性の高い工具が必要です。
耐摩耗性を高めるコーティングを施した超高工具を使用することで、摩擦熱の影響を最小限に抑えることができます。

SUS316を切削する際の加工条件設定

すでにSUS304の加工を行っている場合、SUS304の加工条件から「送り量」や「切削速度」を20%程度低くした状態で加工をはじめ、状況を見ながら徐々に上げていくことがいいでしょう。
最初は加工に時間がかかりますが、工具摩耗や加工精度に大きな影響を与えずに、生産性をできるだけ高めることが可能です。
またクーラントは使用した方がよく、発火しないように水溶性のものを選びましょう。

塑性加工 金属材料 除去加工

この記事の著者・監修者

甲斐 智
甲斐 智(Satoshi Kai)

1979年 神戸生まれ、多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーに入社。
2020年に株式会社モノトを設立。長年に渡り工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる。
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