SS400とは?炭素鋼(SS材)SS400の特徴と黒皮材・ミガキ材
- 更新日:
- 2023/02/22 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
SS400は、SS材(Steel Structure)に分類される炭素鋼のひとつです。炭素鋼のなかでも種類や流通量が多く、大型機械や車両、船などの構造用部品から、ブラケットやプレートなどの鉄製品まで、幅広い製品に採用されています。
この記事ではSS400の特徴や、黒皮材とミガキ材の違い、SS400加工時のポイントについて解説します。
SS400とは
SS材(Steel Structure)は、一般構造用圧延鋼材とよばれます。加工性とコストのバランスが良く、幅広い分野で採用されています。
SS400は汎用的に使われる材料のなかでももっとも一般的な材料で、酸化皮膜に覆われた「黒皮(くろかわ)材」と、酸化皮膜が除去された「ミガキ材」に分類されます。
SSの後の400は、引張り強度(N/mm2)の最小保証値で、SS400の場合は「引張強さ400~510N/mm2」の範囲であることを示しています。
(以前は、単位がkgf/mm2だったため、SS400のことをSS41と表していました)
SS400の特徴
SS400は、炭素鋼のなかでも流通量・種類が多く入手しやすいことが特徴です。
鉄鋼:引用元:機械加工の基礎知識|海上技術安全研究所
S45CやSS400に代表される鉄鋼は,安価であること,溶接性に優れていること,様々な熱処理ができることなどの特徴がある。
SS400は流通量・種類が多く入手しやすい
SS材は流通量が多く、鋼材の種類も豊富です。さまざまな厚さ・長さの板材や棒材だけでなく、H型鋼やT型鋼、さらに耐荷重性が高いI型鋼や山形鋼、溝形鋼など、用途に合わせて多種多様な種類があります。
SS400は他の材料にくらべ低コストで、入手しやすい材料です。
SS400は熱処理ができない
SS400の炭素含有量について規定はありませんが、引張り強度から逆算すると「0.15%~0.2%」のものが多いです。
熱処理の効果を得られるのは、炭素含有量が0.3%程度からとされているため、SS400の場合には熱処理をしてもその効果を得ることができません。
SS400は表面処理を施して使われる場合が多い
SS400はさびやすい材料です。そのため、耐食性が必要とされるシーンでは、ニッケルめっきやクロムめっきを行ってから使われる場合がほとんどです。
日常的に使われる製品の場合、ほとんどがめっき後に塗装され使われています。
SS400の「黒皮材」と「ミガキ材」
熱間圧延されたSS400は、ミルスケール(黒皮)とよばれる酸化皮膜が表面を覆っています。
ミルスケールが覆っているものを「黒皮(くろかわ)材」とよび、ミルスケールを落とした材料を「ミガキ材」とよびます。
黒皮材は見た目があまりよくないため、製品内部や製造現場など、外観が求められない箇所で多く使われています。一方で、ミガキ材はさびやすいため、めっきや塗装などの表面処理を行ってから使われます。
SS400の加工ポイント
SS400は炭素鋼のなかでも炭素含有量が少なく、切削加工がしやすい材料です。
また切削だけでなく、溶接や板金加工、レーザーカットなど、幅広い加工に対応可能です。
実際の加工では、加工方法や切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。
SS400の化学成分には要注意
SS400を構成する化学成分は、材料強度に悪影響を与える「リン」や「硫黄」の上限値が規定されているだけです。(SS540は、リンと硫黄に加えて、炭素とマンガンの上限値も規定されています)
そのため材料によっては、含有成分が異なり、切削時の「硬度」や「粘り気」が変わることがあります。
おなじSS400であっても、過去とおなじ切削条件で加工を行うと、思い通りの結果が得られないことがあり、加工ごとに調整が必要になる場合があります。
SS400は溶接性の保証がない
SS400は、基本的に溶接しやすい材料です。しかし含有成分の規定がないため、溶接性に関する保証はされていません。
薄い板材で、負荷・圧力がそれほど強くかからない場合は、問題なく溶接ができますが、厚さが50mm以上になる場合は、溶接に関する成分が規定されたSM材(溶接構造用圧延材)を使う方がいいでしょう。