ウォータジェット加工とは?ウォータジェット切断の仕組み解説
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/04/07 ) 著者: 甲斐 智
ウォータージェット加工は、水の噴射で金属を切断する「除去加工」のひとつ。
自動車のボディーやバンパーなどの切断をはじめ、変形しやすいウレタンやガラスなど、さまざまなワークの精密切断に使われています。
水に研磨剤を混ぜることで、 切削加工ではむずかしいチタンなど難削材の加工や、厚板の切断 も実現。
この記事では、ウォータジェット加工のメリットから、研磨剤を混ぜた「アブレシブウォータジェット」まで、解説しています。
ウォータジェット加工ってどんな加工?
ウォータージェット加工は、水の噴射で金属を切断する加工方法です。
洗車などに使われる「高圧洗浄機」とおなじ原理で水を高圧で噴射し、金属を切断します。
300~600MPaに圧縮した水を、φ0.1mmの小径ノズルから押し出すことで、高い加工エネルギーを生み出すことができます。
水の噴射スピードは 音速の3倍 にも達し、水にぬれても大丈夫なワークであれば、材質を問いません。
加工には「ウォータジェット加工機」が使われ、NC制御による3次元加工や、5軸制御による複雑加工もできます。
水圧を調整することで、バリ取り・研磨・洗浄など、さまざまな加工に応用することができます。
ウォータジェット加工の特徴
ウォータジェット加工は「水」を使うため、ほかの加工方法にはないさまざまなメリットがあります。
1. 熱の影響を受けない
「水」を使うため、切削加工やレーザ加工にくらべ発熱がありません。
そのため加工精度が高く、熱に弱い素材の加工もできます。
2. 加工力が調整できる
「水」を使うため、水圧を調整することで加工にかかる力を調整できます。
そのためゴム・ウレタンなどのやわかい素材や、プリント基板などの加工もできます。
3. コストが低い
「水」を使うため、メンテナンス性が高く、ランニングコストも低くなります。
4. 環境にやさしい
「水」を使うため、加工時に粉塵が発生しません。
また切削加工で大量に使われる「クーラント」が不要です。
ウォータジェット加工の原理
ウォータジェット加工は、水だけを使う「ウォータジェット加工」と、水に研磨剤を混ぜる「アブレシブウォータジェット加工」に分けられます。
ウォータジェット加工
水の高圧噴射だけでワークを切断する加工方法です。
ウレタン・木材・樹脂などの、やわらかい材質の切断に適しています。
環境性が高いため、金属加工の現場だけではなく、食品加工や医療業界などでも広く普及しています。
アブレシブウォータジェット加工
水に研磨剤(アブレシブ)を混ぜて、ワークを切断する加工方法です。
研磨剤(アブレシブ)は高圧水の負圧で吸引されて、ノズルから混合液となって噴射します。
切断能力が高く、金属はもちろん、チタンやセラミックなどの難加工材の切断に適しています。
自動車部品や、航空機向けの新素材の加工にも使われます。
ウォータジェット加工機(ウォータジェットマシン)について
ウォータジェット加工には、「ウォータジェットマシン」や「ウォータジェット切断機」とよばれるNC制御のウォータジェット加工機が使われます。
ウォータジェット加工機の構成
- 超高圧水発生装置
- 加工ノズル
- 研磨材供給装置
超高圧水発生装置
300~600MPaの超高圧を発せさせるポンプです。
加工ノズル
ジェットによる摩耗を防ぐため、超硬合金やダイヤモンドなどの材質でつくられています。
- ウォータジェット加工では、φ0.1~0.3mm程度のノズルを使用
- アブレシブウォータジェット加工では、φ1mm程度のノズルを使用
研磨材供給装置
アブレシブウォータジェット加工で、水に研磨剤を混合するための装置です。
ウォータジェット加工とは?まとめ
この記事では、ウォータジェット加工のメリットや、研磨剤を混ぜたさまざまな工法を解説しました。
ウォータジェット加工は、切削油を使わないため環境に優しく、粉塵が出ないため作業者にも優しい加工方法として注目されています。
また金属加工以外でも、引火のおそれがないため災害時の救助活動に使われるなど、活躍の場が広がっています。
本記事が、ウォータジェット加工導入のヒントになればうれしいです。