測定器とは?工作機械の現場で使われる測定器・測定工具の種類
- 更新日:
- 2022/12/26 (公開日: 2020/04/22 ) 著者: 甲斐 智
NC工作機械には、「加工前のワークが正確に取り付けられているか」を確認したり、「加工後のワークが指定のサイズに削れているか」を測るため、さまざまな測定器が使われます。
信頼性の高い寸法測定こそが、日本のものづくりの原点とも言えます。
この記事では、手で測るアナログの「ダイヤルゲージ」をはじめ、センサを搭載した「3次元測定機」など、実際の金属加工の現場で使われている測定器を、かんたんに紹介します。
測定ってなに?
モノのサイズに「絶対的」な数値はありません。
精度が保証された測定器を使ってはじめて、信頼できる数値を知ることができます。
測定(measurement)引用元: 日本電気計器検定所「計測関係用語集」
ある量を、基準として用いる量と比較し数値又は符号を用いて表すこと。
測定器自体も使っているうちに数値のバラツキが大きくなるため、さらに精度の高い測定器を使った定期的な補正がかかせません。
この補正は「校正」や「キャリブレーション」ともよばれます。
定期的な校正のもと、測定器の精度を管理することが重要です。
金属は熱変位の影響を受けやすいため、 精密な測定には徹底した温度管理 が重要です。
JIS規格では、図面で指定された寸法は「20℃の環境下での値」と決められています。
※この記事では、オフライン(加工工程の外)や、検査工程で使われる測定器を紹介しています。
インライン(工作機械の機上計測)で使われるセンサについては、以下で紹介しています。
金属加工の現場で使われる「測定工具」「測定器」の種類
測定工具・測定器は、作業者が「手で持って測る」ための工具です。
エンジニアのポケットに必ず刺さっている「スケール」とよばれるモノサシは、現場の定番工具としておなじみですがですが、その他にもノギスやマイクロメータなど、金属加工の現場ではでさまざまな測定工具が使われています。
測定工具は使い方によって、おなじワークでも作業者によって測定値にバラツキがでたり、ワークをキズ付けてしまったりすることも…
正確に使いこなすためには、日ごろの経験の積み重ねが大切です。
測定工具・測定器の種類
ノギスによる測定
ノギスは金属加工の現場でよく使われる、代表的な測定工具のひとつです。
NC工作機械の「ワーク取付時の測定」や「加工後の測定」だけでなく、機械設計や自動車整備などさまざまな業界で広く使われています。
ワークを「測定ジョー」とよばれる2本の爪にはさみ込むことで、0.05mm単位でかんたんに測定ができ、1本のノギスで外径・内径・深さを測定することができます。
長さは300mmのものが標準ですが、1000mm以上のロングタイプもあります。
数値表示がデジタルになった「デジタルノギス」もあります。
デジタル式は内部のスケールをセンサが読み取ることで、0.01mm単位で測定ができます。
デジタルノギスは初心者でも扱いやすいのが特徴ですが、アナログにくらべ電池が必要なため、現場でも好みがわかれます。
マイクロメーターによる測定
マイクロメーターは金属加工の現場でよく使われる、代表的な測定工具のひとつです。
測定子を回転させながらワークをはさみ込むことで、0.01mm単位でかんたんに測定ができます。
測定時にワークの中心と測定子の中心が重なるため、ノギスにくらべて測定精度が高いのが特徴です。
本体の構造上、測定範囲が25mmと限られてしまうため、ワークの種類によっては複数のマイクロメータを用意する必要があります。
(0~25mm用、25~50mm用、50~75mm用、75~100mm用など)
内径には「内側マイクロメーター」、深さには「デプスマイクロメータ」など、それぞれ専用のマイクロメーターが必要です。
ノギスとおなじように、数値表示がデジタルになった「デジタルマイクロメータ」もあります。
デジタル式は、0.001mm単位で測定をすることができます。
内径測定(穴検)で使われる3点式のマイクロメータは、イミクロともよばれます。
ダイヤルゲージによる測定
マイクロメーターは金属加工の現場で使われる、精度の高い測定工具です。
NC工作機械のテーブルに取り付けたワークの平行出しや、NC旋盤のワークの芯だしなど、サイズの測定ではなく変位量をミクロン単位で測定するのに使われます。
ダイヤルゲージ単体では測定できないため、治具やマグネットスタンドに取り付けて使います。
また先端の測定子をローラーやニードルなど、ワークのカタチにあわせて交換が可能。
てこ式ダイヤルゲージは、「ピックテスター」や「ピックゲージ」ともよばれます。
ピンゲージによる測定
ピンゲージは所定のサイズに精密に仕上げられた、丸棒状の測定工具です。
穴加工後の内径(穴検)の検査でよく使われます。
(ピンゲージが穴を通れば合格、通らなければ不合格など)
取り扱いがむずかしく、温度変化による熱膨張や、サビの発生などに注意が必要です。
セラミックや超硬合金など、耐久性の高い素材でつくられています。
リングゲージによる測定
リングゲージは所定のサイズに精密に仕上げられた、ドーナツ状の測定工具です。
旋削加工後のバー材の検査など、ピンゲージとは逆の用途で使われます。
限界栓ケージによる測定
限界栓ケージは所定のサイズに精密に仕上げられた、丸棒状の測定工具です。
工具の両端にそれぞれ「通り側」「止まり側」のゲージがついています。
はめあい公差の厳しい穴の内径検査(穴検)で使われます。
(穴に工具を差し込み、「通り側」が入り「止まり側」が入らなければ合格です)
ノギスやマイクロメーターにくらべて、作業者による測定のバラツキがでないのが特徴です。
ブロックゲージによる測定
ブロックゲージは所定のサイズに精密に仕上げられた、ブロック状の測定工具です。
測定工具のなかでももっとも精度が高く、測定器の校正にも使われます。
平行度も高いため、積み重ねて使っても正確な寸法が得られます。
取り扱いがむずかしく、温度変化による熱膨張やサビの発生などに注意が必要です。
(測定面は直接素手で触れないようにし、セーム皮やウエスなどで扱います)
セラミックや超硬合金など、耐久性の高い素材でつくられています。
すきまゲージ(シックネスゲージ)による測定
すきまゲージは所定のサイズに仕上げられた、薄い板状の測定工具です。
モノとモノの間にはさみ込むことで、わずかなスキマの寸法を測定します。
厚さ違いの薄板を組み合わせることで、さまざまなサイズのスキマを測定できます。
ハイトゲージによる測定
ハイトゲージは、ワークの高さを測定するための測定工具です。
ハイトゲージとワークを定盤(水平の台)の上に置き、身長測定とおなじ要領で測定します。
測定子の先端は超硬合金になっていて、ケガキ作業(ワークの表面に、基準線や穴位置を書く作業)をすることもできます。
感圧紙による測定
測定工具とは少し異なりますが、わずかなスキマや密着の確認には「感圧紙」とよばれる特殊フィルムが使われることもあります。
感圧紙をはさみ、面と面を密着することでわずかなスキマが発色、その発色をもとに微調整を行います。
NC工作機械の現場で使われる「測定機」の種類
測定機は、センサを内蔵した機械装置です。
複雑なカタチのワークでもかんたんに測定ができ、作業者の違いによる測定値のバラツキもありません。
アナログの「測定工具」とくらべて作業効率が高く、ワークの検査もかんたんにできます。
測定には、「電気」や「空気」など、さまざまな測定原理が使われます。
測定機の種類
3次元測定機(CMM)による測定
3次元測定機は、ワークの立体寸法(幅・奥行き・高さ)を測定するための測定機です。
英語の頭文字(Coordinate Measuring Machine)をとって、CMMともよばれます。
接触式のプローブや非接触のレーザーをワークにあて、X・Y・Z それぞれの座標を検出します。
パレットに取り付けられた加工前のワークの位置確認や、加工途中の精度の検査、加工後の不良検査など、工作機械とあわせて利用されることが多くなっています。
CMM(三次元測定機)の普及に伴い、CMMの設置環境も測定機としては過酷な環境に設置されることが多くなってきている。引用元: 精密工学会「現場環境における三次元測定機の高度化に関する研究」
しかし、過酷な環境においても測定精度への要求は益々高くなってきている。
5軸加工で削った自由曲面や、複雑なカタチのワークなど、アナログ測定ではむずかしい測定がかんたんにできます。
3次元CADとの相性もよく、測定結果をCADにフィードバックすることで、実物のワークから図面を起こすこともできます。
電気マイクロメーターによる測定
電気マイクローメーターは、電気の変位量を利用した測定機です。
検出用のプローブをワークにあて、わずかな電気の変位量をアンプで増幅することで、測定値に変換します。
(アナログのマイクロメーターとはまったく異なる機器です)
検出用のプローブを交換することで、深穴や薄いワークなどさまざまな測定に対応可能。
精度が高く、0.001mm単位で測定値を表示することができます。
空気マイクロメーターによる測定
空気マイクロメーターは、空気の圧力の変化を利用した測定機です。
エアノズルからでる圧縮エアをワークにあて、わずかな空圧の変化量を測定値に変換します。
(アナログのマイクロメーターとはまったく異なる機器です)
測定用のヘッドを交換することで、外形・内径などさまざまな測定に対応可能。
非接触で検出するためゴミや油の影響を受けず、ワークに傷を付ける心配もありません。
画像測定機による測定
画像測定機は、カメラスキャンおよび画像解析を利用した測定機です。
ステージ上に部品を置きスキャンボタンを押すだけで、作業者の習熟度を問わずかんたんに各部の寸法を計測することができます。
部品から図面を起こしたりCADデータとの照合による不良品判別もでき、計測作業を大幅に短縮することができます。
測定ってなに?まとめ
この記事では、「ダイヤルゲージ」や「マイクロメーター」などの測定工具をはじめ、「3次元測定機」など、金属加工の現場で使われているさまざまな測定器を紹介しました。
いくら高価な機械を使っても、「測る」技術がなければ精度の高い加工をすることはできません。
本記事が、奥深い「測定」を知るきっかけとなればうれしいです。