NCフライス盤とは?フライス盤の種類とマシニングセンタの比較
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/05/17 ) 著者: 甲斐 智
NCフライス盤は、金属加工で使われる「NC工作機械」のひとつです。
フライスやエンドミルとよばれるツールを回転させ、テーブルに固定した加工ワークを前後左右に動かしながら、金属を切削。
機械部品や金型など、複雑なカタチの部品加工
に使われます。
この記事では、切削加工の現場でよく見かける「NCフライス盤」について、マシニングセンタとの違いから機械の種類まで、かんたんに解説しています。
NCフライス盤ってどんな機械?
NC制御による自動加工で、
作業者による品質のバラつきがなくなり、安定した加工
が実現。
汎用フライス盤のハンドル操作ではむずかしい複雑なカタチも、高い精度で加工することができます。
英語では、〔CNC Milling Machine〕と表記されます。
NCフライス盤とマシニングセンタの違い
NCフライス盤には、マシニングセンタに欠かせない「ATC(自動工具交換装置)」がついていません。※
そのためツールを交換しながら加工する多工程には、マシニングセンタが適しています。
NCフライス盤はマシニングセンタよりコストが低く、主軸に剛性があるため重切削に向いています。
加工内容や予算にあわせた使い分けが重要です。
※一部の機種には、ATCを搭載した「ATC付 NCフライス盤」もあります
NCフライス盤でできる加工
NCフライス盤では、フライスやエンドミルを手動で交換しながら加工を行います。
NCで 3軸(X/Y/Z)を制御することで、側面や溝の加工もできます。
フライス加工だけでなく、穴あけ加工・中ぐり加工・リーマ・タップ加工にも使われます。
「フライス加工」について解説
「穴あけ、リーマ、タップ加工」について解説
「中ぐり加工」について解説
NCフライス盤の種類
NCフライス盤は、機械の構造や加工の目的によって分けられます。
ここでは、切削加工の現場で使われている代表的なNCフライス盤を紹介※します。
※ここで紹介する以外にも、キー溝やスプライン軸の専用加工で使われる「キー溝フライス盤」「スプラインフライス盤」や、自動車部品の加工で使われる「カムフライス盤」「クランク軸フライス盤」など、専用フライス盤も数多くあります。
NC立てフライス盤
NC立てフライス盤は、主軸(刃物の回転軸)が縦向きになった、NCフライス盤です。
加工ワーク(切削される金属)の上からツールをあて、切削加工します。
金属の表面や、四角い金属の加工に向いています。
テーブルの移動方式によって、ふたつの種類があります。
- ベッド形 NC立てフライス盤
-
主軸が上下(Z)に動き、テーブルが前後左右(X/Y)に移動します。
大きな部品の加工や、プラスチック金型などの重切削に向きます。
- ニー形 NC立てフライス盤
-
テーブルが前後左右上下(X/Y/Z)に移動します。
構造がシンプルなため、小型の部品加工に向いています。ひざ形ともよばれ、汎用フライス盤でも多く採用されている方式です。
NC横フライス盤
NC横フライス盤は、主軸(刃物の回転軸)が横向きになった、NCフライス盤です。
加工ワーク(切削される金属)の側面からツールをあて、切削加工します。
溝加工では「側フライス」を使い、ワークの上からツールをあてます。
フライスは、アーバ(支え棒)と オーバアーム(支柱)によって支えられています。
テーブルの移動方式によって、ふたつの種類があります。
- ベッド形 NC横フライス盤
-
主軸が上下(Z)に動き、テーブルが前後左右(X/Y)に移動します。
大きな部品の加工や、プラスチック金型などの重切削に向きます。
- ニー形 NC横フライス盤
-
テーブルが前後左右上下(X/Y/Z)に移動します。
構造がシンプルなため、小型の部品加工に向いています。ひざ形ともよばれ、汎用フライス盤でも多く採用されている方式です。
NC万能フライス盤
NC万能フライス盤は、ユニバーサルヘッドとよばれる「交換式の旋回工具」を搭載した、NCフライス盤です。
ツールを自由に旋回することができるため、円や自由曲線などの複雑な加工ができます。
「5面加工機」としても使われています。
NCプラノミラー
NCプラノミラーは、長いテーブルを搭載した、大型のNCフライス盤です。
主軸が上下左右(Z/Y)に動き、テーブルが前後(X)に移動します。
マシニングセンタではできないディーゼルエンジンなどの大物部品加工や、長い金属の加工に適しています。
ユニバーサルヘッド(交換式の旋回工具)を取り付けることで、さまざまな加工にも対応。
「5面加工機」としても使われています。
主軸を支える構造によって、ふたつの種類があります。
- NC門形プラノミラー
-
主軸を支える構造が「門」のカタチになっています。
- NC片持ち形プラノミラー
-
主軸を支える構造が「片手持ち」になっています。
門形にくらべて不安定になりますが、横幅の大きなワークの加工ができます。
ATC付NCフライス盤
ATC付NCフライス盤は、ATC(自動工具交換装置)を搭載した、NCフライス盤です。
NCフライス盤の操作性と、マシニングセンタの自動運転を活かした中間的な機種で、マシニングセンタとほぼおなじ構成です。
マシニングセンタにくらべ、低いコストで高い剛性が得られるのが魅力です。
NC多軸フライス盤(マルチスピンドルフライス盤)
NC多軸フライス盤は、ツールの主軸を多数備えたフライス盤です。
1サイクルで複数のワークを同時加工することができ、生産性が飛躍的に上がります。
スマートフォン部品などの小型ワークの加工ラインで活躍しています。
小型フライス盤
NC彫刻機
NC彫刻機は、マーキングや模様の彫刻などに使われる、小型のNCフライス盤です。
レーザー加工による彫刻とくらべ、低いコストで導入できますが、大量生産には向いていません。
卓上CNCフライス盤
卓上CNCフライス盤は、小物の加工で使われる、小型のNCフライス盤です。
小さな部品の試作や、3Dプリンタで出力した樹脂の追加工など、試作・開発・研究用途で使われています。
NC倣いフライス盤
NC倣い(ならい)フライス盤は、「倣い加工」専用のNCフライス盤です。
木型・石膏模型や実物を、「スタイラス」でトレースしNCデータを生成、そのデータをもとに加工をします。
精度の高いNCの普及によって活躍の場は減っていますが、簡易金型などで使われることがあります。
NCフライス盤で使われる治具について
NCフライス盤のワークの固定には、治具(ジグ)が使われます。
「治具」は、加工中のワークが動かないように、テーブルにしっかりと固定するための取り付け工具です。
治具:引用元: 愛知県中小企業団体中央会「治具・ゲージ」
治具は英語のjigの当て字です。
工作物を固定し、作業を効率的に行うための装置の事を指します。
溶接、機械加工、メッキなどあらゆる作業の際に使われる固定装置はすべて冶具と呼ばれます。
加工に適した治具を使うことで、ワークの精密な位置決めや平行出しが実現。
作業者による段取り(ワーク交換)時のバラツキがなくなり、作業効率もあがります。
NCフライス盤では、マシンバイス・クランプ・イケールなど、さまざまな「治具」が使われています。
NCフライス盤の代表的なメーカー
さまざまな機械メーカーが、NCフライス盤を製造。
NCフライス盤はマシニングセンタにくらべ剛性が高く導入コストも低いため、さまざまな工場で活躍しています。
メーカー | NCフライス盤の種類 |
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大鳥機工(株) | 立形高能率フライス盤 |
倉敷機械(株) | CNC複合フライス盤 |
(株)静岡鐵工所 | 手動フライス盤 |
(株)武田機械 | 万能形NCフライス盤 |
(株)ニイガタマシンテクノ | 強力NCフライス盤 |
(株)山崎技研 | 汎用フライス盤 |
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NCフライス盤とは?まとめ
この記事では、金属加工の現場でよく見かける「NCフライス盤」について、マシニングセンタとの違いや機械の種類を解説しました。
NCフライス盤は、マシニングセンタにくらべて自動化に弱く需要が減っていますが、 最近ではATC(工具自動交換装置)を搭載した「マシニングセンタ風のフライス盤」や、周辺機器と組み合わせた「自動化ライン用のフライス盤」など、さまざまな工夫がされた機種も登場しています。
本記事が、NCフライス盤を知る「はじめのいっぽ」となればうれしいです。