トランスファーマシンとは?自動車ラインのNC専用機・FTL/FMS
- 更新日:
- 2022/08/31 (公開日: 2020/05/04 ) 著者: 甲斐 智
トランスファーマシンは、さまざまな「NC専用機」や「NC工作機械」を工程順にならべた大規模な加工システムです。
自動車のエンジン部品の穴を効率よくあける ためにつくられたシステムで、自動車部品をはじめ、モーターやカメラ部品などの量産品の機械加工に広く使われています。
この記事では、トランスファーマシンと「NC専用機」の種類や、近年増えているFTL/FMSについて、かんたんに解説します。
トランスファーマシンってどんな機械?
トランスファーマシンは、さまざまな「NC専用機」を工程順にならべた大規模な加工システムです。
それぞれのNC専用機は、トランスファー装置(ワーク自動送り装置)によって、連結されています。
加工ワークの着脱から搬送までを自動でおこなう
ことで、連続加工ができます。
引用元:岩田工機株式会社大口工場|大口町
数十台の「NC専用機」を直線にならべたものや、100台以上による大型システムまで、さまざまな規模のトランスファーマシンがあります。
トランスファーマシンでできる加工
NC専用機は「ユニット」とよばれる構成要素の組み合わせによって、さまざまな加工ができます。
- フライス加工
- 穴あけ、リーマ、タップ加工
- 中ぐり加工
「フライス加工」について解説
「穴あけ、リーマ、タップ加工」について解説
「中ぐり加工」について解説
トランスファーマシンで使われる「NC専用機(専用工作機械)」について
NC専用機(専用工作機械)は、ひとつの加工に特化した「NC工作機械」です。
マシニングセンタにくらべシンプルな構造のため、加工精度が高いのが特徴です。
特定の機能だけを搭載した専用設計で、大量生産に適しています。
加工は、ワーク供給装置やワーク着脱装置によって、すべて自動化されています。
NC専用機の種類
NC専用機は、加工ステーション(加工をおこなう場所)の数によって、大きく2種類に分けられます。
シングルステーション専用機
ひとつの加工ステーションでひとつの加工をする、単機能のNC専用機です。
マルチステーション専用機
複数の加工ステーションでさまざまな加工をする、複合機能のNC専用機です。
10基以上のステーションをもった大規模ラインが、トランスファーマシンとよばれます。
加工ステーションのならべかたによって、「直線形」「ロータリー形」などがあります。
- 直線形
-
ワークを直線状にならべて、加工ステーションを一列に配置します。
- ロータリー形
-
ワークを回転テーブルに乗せて、そのまわりに加工ステーションを配置します。
NC専用機のユニットの種類
NC専用機は、「ユニット」とよばれる機械装置で構成されています。
さまざまな機能のユニットを組み合わせることで、生産ラインを短時間で立ち上げることができます。
タレットヘッドユニット
タレット(旋回式の工具交換装置)を搭載した、ヘッドユニットです。
自動工具交換により、いくつもの加工に対応できます。
フライスユニット
フライス加工を行うユニットです。
重切削にも対応できるよう、高い剛性をもっています。
ドリリングユニット
穴あけ加工・リーマ加工を行うユニットです。量産の多くを占める「穴あけ」を、効率的に行います。
NC多軸ボール盤とおなじ機能をもった、多軸ヘッドのドリリングユニットもあります。
スピンドルユニット
加工用の主軸ユニットです。
回転主軸にドリルやフライスなどの工具を取り付けて使われます。
ボーリングユニット
中ぐり加工を行うユニットです。
ドリルユニットであけた下穴をくり広げたり、精密な穴加工で使われます。
精密ベアリングの搭載によって、高速・高精度加工ができます。
フィードユニット
加工用の送りユニットです。
スピンドルユニットと組み合わせ、工具を送るために使われます。
油圧シリンダによる「油圧駆動式」や、サーボモータによる「メカ駆動式」があります。
インデックステーブルユニット
ワークを回転させるための、テーブルユニットです。
精密カップリング(伝導部品)の噛み合わせで、テーブルを駆動させます。
FTL/FMS フレキシブルラインについて
トランスファーマシンに替わり、近年よく採用されているのが「FTL」や「FMS」といったフレキシブル生産システムです。
FTL:フレキシブル・トランスファー・ライン(Flexible Ttransfer Line)
FMS:フレキシブル・マシン・システム(Flexible Machine System)
従来のトランスファーマシンで使われる「NC専用機」は、専用設計のため多品種少量生産には向いていません。
FTL/FMSではNC専用機の替わりに、汎用性の高い「ライン対応型マシニングセンタ」や複数の工作機械を組み合わせることで、加工内容によって生産ラインを柔軟に変えることができます。
FTL/FMSの関連メーカー
大手工作機械メーカーをはじめ、専用機メーカーや生産設備メーカーを中心に「モジュール」に対応したさまざまな工作機械が開発されています。
自動車部品加工などの製造現場で多く使われている「FTL/FMS」のメーカーを、一部ご紹介します。
メーカー | FTL/FMSの種類 |
---|---|
FNS(株) | モジュール式マシニングセンタ |
エンシュウ(株) | システム対応立形マシニングセンタ |
キタムラ機械(株) | 同時5軸制御横形FMS |
(株)キラ・コーポレーション | ライン対応型加工ユニット |
(株)スギノマシン | システム用マシニングユニット |
(株)FUJl | モジュール型生産設備 |
豊和工業(株) | ミッションケース加工/FTLシリンダヘッド加工FMS |
(株)メクトロン | マルチセル横形マシニングセンタ |
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トランスファーマシンとは?まとめ
この記事では、トランスファーマシンと「NC専用機」の種類について、かんたんに解説しました。
自動車部品の加工ラインでは今、「ターンキー」とよばれるシステムの導入が増えています。
ターンキーは、素材をセットし機械を起動(鍵をまわす)だけで、完成品ができあがる完全自動のシステムです。
この「ターンキー」も、さまざまなNC専用機や周辺機器を組み合わせたトランスファーマシンのひとつです。
本記事が、トランスファーマシンを知るきっかけとなればうれしいです。