
工作機械の自動化ニーズとは?自動化システム・周辺機器を紹介
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2021/10/07 ) 著者: 甲斐 智
金属加工業界では熟練作業者のリタイアやコストダウン要請によって、工作機械の自動化ニーズが高まっています。
自動化システムの導入には「生産性向上」「品質安定」などさまざまなメリットがありますが、一方で中小製造業にはハードルが高いのも実情です。最新のCNC工作機械の導入だけではなく、『今ある工作機械を使っていかに自動化するか』も大きな課題となっています。
この記事では金属加工の自動化ニーズと、CNC工作機械の自動化に欠かせない自動化システム・周辺機器についてご紹介します。

工作機械の自動化ニーズの背景
DMG森精機の大規模自動化システム
マシニングセンタやNC旋盤などのCNC工作機械は、コンピュータによる自動プログラムとATC(自動工具交換システム)などの周辺機器によって、加工のほとんどが自動化されています。
しかしワークの着脱・搬送や、加工中の監視、加工後の計測などの作業はまだまだオペレーターに依存するところが大きいのが現状。
引用元:作業者による工具長測定作業|ポリテクセンター広島
なかには熟練作業者による属人的な作業も多く、加工の自動化は工場のFA(ファクトリーオートメーション)とくらべても大きな遅れをとっています。
金属加工業界の外部環境から、工作機械の自動化は待ったなしです。
工作機械の知能化と機械加工の自動化引用元:神戸大学大学院工学研究科・システム情報学研究科紀要|CiNii
我が国の製造業では,少子高齢化による作業者の減少と熟練技能者の退職という問題に直面している一方,工業製品の製造においては,生産形態は大量生産から一品生産(カスタマイズ生産)へ,製品寿命はより短く,製品の加工工程や組立工程はより複雑になっている。
〈自動化ニーズの背景〉
少子高齢化による人手不足


これまで自動化が難しかった「研磨」や「検査」など最終工程にも、高度な自動化がもとめられています。
安全面(ワーク搬送などの重作業や廃液処理など)から、自動化による働きやすい職場づくりも課題に。
〈工作機械の自動化ニーズ〉
アフターコロナを見据えた動き


アフターコロナを見据え、少ない人数でも生産が維持できる自動化への関心が高まっています。
〈工作機械の自動化ニーズ〉
自動車のEV化


自動車のEV化によって自動車部品加工の需要が減少していますが、一方EVで使われる電子部品(センサ・カメラ)や半導体の増加により、精密加工・金型加工の分野が活況です。
いち早く新しい仕事を確保できるよう、柔軟な生産体制がもとめられています。
〈工作機械の自動化ニーズ〉
国内回帰の動き


一部サプライチェーンに国内回帰の動きがありますが、人件費の高い国内で海外と同じものを量産するには自動化が必須。
メーカーのきびしいコストダウン要請や短納期に応えるためにも、自動化が急務です。
〈工作機械の自動化ニーズ〉
工作機械の自動化によるメリット

熟練作業や加工前後のオペレーションを自動化することで、さまざまなメリットが生まれます。
生産性の向上 | 工作機械の自動化により、24時間の無人稼働が実現 コスト削減・納期短縮にもつながります |
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品質の安定 | 工作機械の自動化により、作業者によるばらつきを防止 検査工程を自動化することで、加工不良の流出も防ぎます |
安全衛生の確保 | ワーク搬送や廃液処理などの作業を自動化し、オペレータの負担を軽減 事故を未然に防止し、働き方改革にもつながります |
中小製造業における、工作機械自動化の課題

自動化は「工作機械を買えばかんたんに手に入る」わけではありません。
そのため中小製造業では「工作機械のNC化」で止まっていることが多いのが現状です。
作業の標準化が必要 | 工作機械の自動化には「作業の標準化」など、加工工程の最適化がかかせません 作業者の動きを機械に置き換えるのではなく、工程そのものを見直す必要があります |
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加工ノウハウが必要 | 高い加工精度を維持したまま工作機械を自動化するには、3DCADや治具設計など汎用機械にはない高いノウハウが必要となります |
エンジニアリングが必要 | 工作機械の自動化には、工作機械メーカーだけでなく周辺機器・工具メーカーとの連携がかかせません 社内のエンジニアリング部門の存在がカギとなります |
工作機械の自動化システム・周辺機器について

工作機械の自動化は「工作機械単体」だけでなく、ロボットや周辺機器を組み合わせた自動化システムが一般的です。
一般的な工作機械の自動化システムから各メーカー独自の周辺機器まで、幅広くご紹介します。

マシニングセンタ × 自動化

マシニングセンタでは、その高い拡張性からさまざまな自動化システムが開発されています。
メーカーオプションだけでなく、後付けで搭載できる周辺機器が多いことも特徴です。
工場全体の自動化では拡張性の高い機種の選定だけでなく、工場の面積を考慮した省スペース性もポイントです。
NC旋盤 × 自動化

NC旋盤では機内にロボットアームを搭載したものや、複数タレットによる同時加工など、自動化に対応したさまざまな機種が開発されています。
多品種少量生産に対応するためには、チャックや爪の自動交換がポイントです。
ターニングセンタ × 自動化

ターニングセンタなどの複合加工機では、マシニングセンタやNC旋盤でも使われる自動化システムや周辺機器が使われます。
ターニングセンタの工程集約メリットを最大限活かすには、加工前後のオペレーションを自動化することがポイントです。
研削盤 × 自動化

研削盤は、熟練オペレーターによる作業が多い工作機械。そのため自動化については、他の工作機械とくらべても遅れをとっています。
砥石のドレス・ツルーイング・交換など、砥石に関する作業をいかに自動化するかがポイントです。
CNC自動旋盤 × 自動化

CNC自動旋盤は精密部品の量産加工に特化した工作機械です。
チャック背面からバー材(ワーク)を自動供給するバーフィーダーなどの自動化機器を備えています。
穴あけ工程 × 自動化

鋳造やプレス加工、マシニングの後工程で行われることが多い穴あけ。 ものづくりのトレンドが「大量生産」から「多品種少量生産」に変わるなか、生産現場では“多様化する穴あけ”をいかに効率化・最適化するかが課題になっています。
産業用ロボットによる工作機械の自動化

工作機械の自動化には、ロボットアーム・協働ロボットなどの産業用ロボットも活用されています。
ワークのハンドリングや加工補助など、工作機械の工程間に配置することでオペレーターの作業をサポート。高い汎用性が特徴ですが、十分な設置スペースを確保する必要があり、工作機械に専用設計された自動化システムとくらべ一長一短です。
ロボット搬送ラインによる自動化の例

長いロボット搬送ラインによる、工作機械の自動化例。マシニングセンタの中量生産の強みを活かしながら、生産品目の変更にフレキシブルに対応することができます。
協働ロボットによる自動化の例

汎用性の高い協働ロボットと、小型マシニングセンタ(主軸30番)による自動化例。作業者の代わりとしてロボットを配置することで、生産ラインや工場のレイアウトを変えずに自動化に対応することができます。
工作機械の自動化システムまとめ
この記事では高まる工作機械の自動化ニーズの背景と、自動化システム・周辺機器について解説しました。
工作機械の自動化は『今ある工作機械を使っていかに自動化するか』もポイント。ロボットの性能も格段に飛躍しており、大規模な自動化ソリューションだけでなく協働ロボットを使った小規模の自動化セルもあらためて注目されています。
本記事が、工作機械の自動化を知るきっかけとなればうれしいです。