SUS304とは?ステンレス鋼SUS304の特徴とSUS304切削のコツ
- 更新日:
- 2023/02/22 (公開日: 2023/02/22 ) 著者: 甲斐 智
数あるステンレス鋼のなかでも、広く使われているSUS304。SUS304は、身近な日用品から、発電・プラントなどの大規模設備まで、さまざまな用途に用いられています。
この記事では、ステンレス鋼(SUS304)の特徴と切削加工のポイントについて解説します。
SUS304とは
SUS304はステンレス鋼のなかでも代表的な材質で、オーステナイト系が属する300番台に分類されます。クロム(18%以上)とニッケル(8%以上)が含まれており、18-8ステンレスとよばれることもあります。
SUS304の引張り強さは520(N/mm2)以上、融点は1400~1450℃程度です。
SUS304:引用元:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
SUSはγ鉄にクロムや微量のNiなどの合金元素を混ぜたステンレス鋼の呼称で、その代表的なものが18%Cr、8%Niを含むJISで規格化されたSUS304です。SUS304は錆び難く機械的性質も大変優れているため、厨房・家電や自動車・鉄道車両、原子炉のシュラウドなど幅広い用途で実用されています。
SUS304の特徴
SUS304は、オーステナイト系ステンレスと共通の特徴を持ちます。
SUS304の耐食性
SUS304は、表面に形成される不働態皮膜の効果で高い耐食性を誇ります。
環境別にみると、高温酸化には強いものの、海水や孔食(局部的な深い腐食)への耐性はそれほど高くありません。
また酢酸やアルカリに対しては高い耐食性を誇る一方、塩酸には弱く、腐食には注意が必要です。
SUS304の溶接性
SUS304は溶接性に優れた材料ですが、熱がかかる箇所は、粒界腐食(金属の結晶粒界だけが腐食)を起こす可能性があるため、用途によっては注意が必要です。
SUS304の加工性
SUS304は延性が高い材料ですが、冷間加工では加工硬化が発生します。
特に深絞りを行った後は、時間が経過してから絞り方向に立て割れが発生する「時効割れ」が起こることがあります。
加工硬化によって強度は高くなりますが、加工はむずかしくなってしまいます。
SUS304の耐熱性・温度特性
SUS304は、他の鉄鋼材料にくらべて耐熱性が高い材料です。870℃程度までは繰り返し加熱にも耐えることができます。
SUS304を切削加工する際のポイント
ステンレスは、熱伝導率が低く粘性が高いこと、さらに加工硬化することから切削加工がむずかしい難削材として知られています。
SUS304を効果的に切削加工するためには、以下のようなポイントがあげられます。
実際の加工では、加工方法や切削条件によってもポイントが異なるため、参考例としてご覧ください。
SUS304を切削する際の工具選定
通常、切削加工で生じる摩擦熱は、切粉を伝達して放熱されます。しかし、SUS304のような熱伝導率が低い材料の場合、放熱がうまくできず、工具に熱がこもってしまいます。
高温のまま加工を進めると、工具寿命が短くなり、コストも大きくなってしまいます。そのため、耐摩耗性の高い工具を選定することが重要です。例えば、コーティング処理を施した超高工具を使用することで、摩擦熱の影響を最小限に抑えることができます。
SUS304を切削する際の加工条件
生産性を高めるには、切削速度を上げ、切り込み量を大きくすることが必要です。しかし、SUS304のような難削材を加工する場合、切削点の温度が高くなり、悪影響が出ることがあります。
そのためSUS304を加工する場合は、生産性の低下をある程度許容しつつ、切削速度を遅くし、切り込み量を小さくすることが必要です。切削条件は、状況を見ながら徐々に上げていくことがいいでしょう。
クーラントの使用について
SUS304の加工では、潤滑や冷却、洗浄のためにクーラントを使用することが推奨されます。クーラントが浸透することで摩擦抵抗が低減し、温度上昇を抑えることができます。
クーラントは不水溶性と水溶性に分類されますが、ステンレスを切削する場合には、高温環境で発火しないように水溶性のクーラントを使うといいでしょう。