どうする切削加工の全数検査|量産加工に最適な全数検査の方法
- 更新日:
- 2023/05/17 (公開日: 2023/05/02 ) 著者: 甲斐 智
切削加工では、自動車のEVシフト(電動化)や、5G・AIの拡大による半導体設備需要の増加で、量産加工にもこれまでにない高精度化が求められています。これらの精密部品は、最新の工作機械を使っても、かならずしも不良品ゼロで削れるわけではありません。そこで求められているのが「全数検査」です。
この記事では、付加価値の高いセンシング技術で、製造現場の課題を解決する株式会社キーエンスに、切削加工における全数検査の課題と、正確で高速なインライン検査を実現する同社の「インライン投影画像測定器」についてお聞きしました。
今まさに全数検査を必要とされている、生産技術・工場責任者の方、必見です!
切削加工における全数検査のニーズ
従来全数検査は、一品モノや金型などの少量の加工で行われることが多く、数量の多い量産加工では、抜き取り検査が一般的でした。
しかし加工の現場では、装置メーカーやユーザーからの精度要求がますます厳しくなるなか、量産加工においても、これまでの「抜き取り検査」から「全数検査」に移行するケースが増えています。
また半導体製造装置では、これまでにない難削材の精密加工が増えており、全数検査のニーズにいかに応えていくかがトレンドとなっています。
そもそも検査とは ~全数検査と抜き取り検査~
検査とは、製品が品質基準を満たしているかを判別(良品・不良品)すること。切削加工では材料の受入検査から、加工中の中間検査、加工後の最終検査に至るまで、さまざまな段階で、「加工ワークが図面の仕様(指示公差や一般公差など)を満たしているか」が検査されます。
後工程や市場への不良品の流出を防ぐためには、各段階での確実な検査が欠かせません。検査には、すべての加工ワークを検査する「全数検査」と、ロットから一部の加工ワークを抜き取って検査する「抜き取り検査」があります。
全数検査 | その名の通り「ロット内のすべてのワーク」を検査する方法 検査のなかでも最もきびしく、すべての加工ワークの品質を保証し、不良品を防止することができる |
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抜き取り検査 | ロット内から決められた数のワークをランダムに抜き取り、検査する方法 精密加工の場合、ロット内で不良品が見つかると、そのロットすべてを不良品として破棄することが多い サンプル数の決め方は、JIS(JIS Z 9015)の抜き取り検査表AQL(Acceptable quality level)にもとづいて行われるのが一般的 |
検査のおおまかな流れ〈切削加工の場合〉
① 受入検査 | 加工材料の受け入れ時に、品質や規格を検査します。 半製品の場合は、別の現場から供給されたワークの品質を検査します。 |
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② 中間検査・工程間検査 | 加工ワークが工程間を移動(例:旋盤からマシニングへ)するときに、寸法が公差内に収まっているかなどを検査し、次工程へ進めます。 |
③ 最終検査・出荷検査 | すべての加工が完了すると、最終検査が行われます。 製品によっては、そのまま組み立て・出荷に移ったり、表面処理やメッキ処理へと出されます。 その後の後工程でも、各種検査が行われ、最終製品によっては、出荷検査も行われます。 |
量産部品の全数検査はコストがネック?
加工不良を確実に排除する全数検査ですが、導入には「コスト」がネックとされています。
コストがかかる要因には、検査員の配置から、設備費用までさまざまですが、「全数検査」と「抜き取り検査」のメリット・デメリットを把握した上で、トータルコストを比較していくことが重要です。
「全数検査」と「抜き取り検査」の比較
全数検査のメリット | ○ すべての不良品を排除することができる |
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○ 不良品発生時のワーク廃棄が最低限で済む | |
全数検査のデメリット | × コストがかかる(人件費・設備投資) |
× 検査に時間がかかる |
抜き取り検査のメリット | ○ コストが抑えられる(人件費・設備投資) |
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○ 検査の時間がかからない | |
抜き取り検査のデメリット | × 不良品を見逃してしまう恐れがある |
× 不良品発生時は、ロットごと廃棄することも… |
加工不良が許されない精密加工では、不良品発生時のワーク廃棄のムダや納期遅れ、信用低下を考えると、コストと時間をかけて全数検査をしても、十分な費用対効果が見込めます。
また全数検査は、長期的な不良データを収集することで、加工工程の改善につなげることもできます。
全数検査を取り入れ、不良品の流出と発生の防止に役立てていきましょう。
作業者のコストを抑えながら効率よく全数検査を行うためには、インラインで検査を行うことがポイントです。
次項で全数検査で使われる測定器の種類と、オフライン検査・インライン検査について解説します。
全数検査で使われる測定器の種類 ~オフライン検査とインライン検査~
全数検査では、主にハンドツールや三次元測定機、検査装置などの測定器が使われます。
切削加工では、マイクロメータや専用ゲージを使った全数検査が行われることが多いですが、オフライン(生産ラインとは別の場所)で検査を行う場合、検査が追いつかず、生産ラインが止まってしまうことも… そこでおすすめなのが、インライン(生産ライン上)での検査です。
量産加工では、搬送ラインや工程間で検査を行うことで、全数検査のコスト・時間の課題を解決することができます。
〈全数検査で使われる測定器〉
オフライン検査 | オフライン検査では、主に作業者によって生産ラインとは別の場所で検査が行われます |
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インライン検査 | インライン検査では、生産ラインに組み込まれた検査システムを使い、自動で検査が行われます |
オフラインノギス・マイクロメータ・ゲージによる全数検査
ノギスやマイクロメータ、ハイトゲージなどのハンドツールによる全数検査です。
手軽に検査できる反面、作業者の熟練によって検査結果にばらつきが出たり、ワークを傷つけてしまう恐れもあります。穴位置や幾何公差は、検査することができません。
〈ノギス・マイクロメータの課題〉
- 作業者によって検査結果がばらつく
- 検査に時間がかかる
- 接触による傷の恐れ
検査ジグによって検査を効率化することもできますが、図面上の検査項目が多いと、検査表への入力も煩雑になり、ヒューマンエラーが起きやすくなります
オフライン三次元測定機・コントレーサーによる全数検査
三次元測定機やコントレーサー(輪郭形状測定機)は、ワークの精密測定に使われる接触式の測定機です。
ノギスやマイクロメータで測ることのできない穴位置・幾何公差や、複雑な検査ができます。
温度の影響を受けないよう、20℃に管理された測定室での検査が必須で、測定室への移動や温度ならしに時間がかかります。
〈三次元測定機の課題〉
- 操作できる作業者が限られる
- 検査に時間がかかる
- 台数が限られる
量産加工の場合、測定待ちが発生してしまい、測定室に検査待ちのワークが並んでしまうことも…
オフライン投影機・測定顕微鏡による全数検査
投影機・測定顕微鏡は、形状測定に使われる非接触式の精密測定機です。
三次元測定機とくらべ小型で、加工現場に持ち込むこともできますが、XYステージの位置決めや細かなピント調整など、作業者の熟練を必要とします。
〈三次元投影機・測定顕微鏡の課題測定機の課題〉
- 操作できる作業者が限られる
- 検査に時間がかかる
- 操作がむずかしい
インライン画像検査装置による全数検査
画像検査装置は、主に画像処理システムを利用した検査装置です。
カメラで撮像した画像データを処理し、ワークの寸法を図面データと照合し、良品・不良品を判別します。
検査はインラインで自動で行うため、作業者の人件費を削減でき、検査も一瞬で完了します。検査中にラインが止まることもありません。人手不足が深刻化するなか、現場の省人化にも効果的です。
〈画像検査装置の課題〉
- 精度の高い検査がむずかしい
- 外乱光の影響で誤検知の恐れ
- 設置が大変で、ワークごとに調整が必要
FA(ファクトリーオートメーション)では定番の画像検査ですが、近年では、画像処理の進化によって、精密な寸法判別が瞬時にできるようになっています。
画像検査装置の課題は、「精度」「外乱光」「設置」の3つですが、 そんなお悩みをまとめて解決するのが、キーエンスのインライン投影画像測定器です。
インライン投影画像測定器で、全数検査のお悩みを一気に解決
全数検査のニーズが増えるなか、精度の高いインライン検査を実現するこれまでにない検査手法として注目されているのが、インライン投影画像測定器〈TM-X5000〉です。
インライン投影画像測定器は、搬送ラインや工程間にカメラを設置しワークを通過させるだけで、あらゆる図面指示項目を一瞬で測定し、合否を判別することができます。
どんなワークでも、シルエットさえ映れば測定可能。今あるラインにかんたんに設置でき、量産ラインの高速搬送ワークでも、ラインを止めずにミクロンオーダーの寸法測定が実現します。
従来の画像検査(バックライト式)との比較
従来の寸法検査に使われる「画像検査装置」は、バックライト式が一般的です。バックライト式は、光の照射で照らされたワークをカメラで撮像し、画像処理を加えて良品・不良品を判別する方式ですが、光の当て方や角度調整がむずかしく、外乱光(外部からの光の干渉)の影響を受けやすい欠点がありました。
またワークの位置がすこしでもズレてしまうと、正確な測定ができません。
従来画像検査装置(バックライト式)
ご提案インライン投影画像測定器〈TM-X5000〉
(バックライト式) |
〈TM-X5000〉 |
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測定精度 | ワークの距離が変わると、 測定精度が落ちる |
ワークのズレや傾きがあっても、 正確に測定できる |
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外乱光の影響 | × |
外乱光に弱く、誤検知が発生 | 外乱光に強く、工場の環境を問わない | |
設置しやすさ | 光の当て方やワーク姿勢の調整が大変 | ラインに取り付けるだけで設置完了 | ||
キャリブレーション | ワーク材質や形状ごとに、 キャリブレーションが必要 |
ワークが変わっても、 キャリブレーションが不要 |
インライン投影画像測定器による、全数検査事例
インライン投影画像測定器〈TM-X5000〉による、現場の全数検査事例をご紹介します。
シャフト部品の全数検査
シャフトを回転させながら測定することで、全周の検査を行うことができます。
直線や円だけでなく、波打つ面などの複雑な測定もできるため、現場での全数検査が効率化します。
精密部品の異物検査
ワークのエッジから輪郭を抜き出し、輪郭線から差が大きい凹凸部分を抽出することで、目視で行なっていたバリ・欠け・異物の外観検査を、一瞬で行うことができます。
ギア部品の全数検査
ギア部品の外径・内径検査をはじめ、専用の測定器を使うことが多い、歯車のOBD検査(歯厚の検査)をインラインで行うことができます。
ネジ部品の全数検査
ねじ専用ツールを搭載しており、従来ねじゲージを使用するネジ検査(有効径・外径・谷径・ピッチ・山の角度)も、かんたんに行うことができます。
インライン投影画像測定器による、さらなる効率化のポイント
インライン投影画像測定器〈TM-X5000〉は、ワークの位置ズレや傾きを自動で補正することができるため、作業者の手持ちによる検査も可能です。
また工作機械の工程間をつなぐ「搬送ロボット」や「協働ロボット」と組み合わせることで、搬送と同時に全数検査を行うことができます。
複数のワークのパターンが登録できるため、受入検査や抜き取り検査での活用もでき、アイデア次第で、現場での測定効率がぐんと上がります。
量産加工に最適な全数検査の方法とは?まとめ
この記事では、株式会社キーエンス(大阪府大阪市)に、切削加工における全数検査の課題と、正確で高速なインライン検査を実現する同社の「インライン投影画像測定器」についてお聞きしました。
今後ますます高くなる精度要求に、いかに応えていくか。効率的な全数検査を取り入れ、他社との差別化を図ることが、事業継続のカギとなってくるでしょう。
切削加工の全数検査の導入は、ぜひ一度キーエンスまでお問い合わせください。
株式会社キーエンスについて
会社名 | 株式会社キーエンス |
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本社 | 大阪市東淀川区東中島1-3-14 |
公式サイト | https://www.keyence.co.jp/ |