
今すぐはじめる工作機械IoT – 工作機械×IoTの課題と効果事例
- 更新日:
- 2025/02/07 (公開日: 2022/04/13 ) 著者: 甲斐 智
あらゆるモノがインターネットでつながるIoT。自動運転からウェアラブルデバイスまで、今や日々の暮らしにはなくてはならない通信技術です。
近年ではセンサやネットワークの進化にともない、製造業でもIoTの活用が急速に進んでいます。それはものづくりを支えるマザーマシン「工作機械」も例外ではありません。
この記事では、産業機械に欠かせないリニアモーションガイドで高い世界シェアを誇るTHK株式会社に、工作機械におけるIoTの事例と、かんたんにIoTが導入できる同社の「OMNIedge(オムニエッジ)」についてお聞きしました。

広がる工作機械のIoTと見える化

工作機械業界では、多品種少量生産への対応や人手不足もあいまって、効率のよい加工体制への転換が急務。しかしこれまでの現場改善だけでは、生産性向上に限界がありました。
そこであらためて注目されているのが、工場に大きな変革をもたらす「IoT」です。

工作機械の生産性を上げるためには、工場全体を見渡し、機械の状態をリアルタイムで把握する必要があります。そこで期待されているのが、IoTによる「見える化」です。
IoTによるデータ収集・蓄積・分析を活用することで、機械の「稼働状況」「異常」「加工不良」を見える化し、止まらない工場を実現します。

工作機械の見える化は、機械どうしをネットワークでつなげるだけでなく、ロボットや工具、主軸・サーボモータ・リニアモーションガイドなどの構成部品からも情報を取得し、データを活用することが重要です。
特にワークに応じて複雑な切削条件が求められる金属加工では、あらゆるデータを収集し活用する工作機械のIoT化が、生産性向上の大きなカギとなっているのです。
引用元:OMNIedge 製造業向けIoTサービス|THK株式会社
IoTは〈Internet of Thing〉の略。モノのインターネットと訳され、自動車や家電などさまざまなモノをインターネットでつなげる通信技術です。 最終製品のライフサイクルが短くなるなか、製造業ではIoTを活用することで正確な生産計画とリードタイムの短縮が可能になります。

AI(人工知能)の組み合わせ、機械とヒトとの連携を最適化することで、工場の効率を最大化するスマートファクトリーも実現します。
工作機械業界の課題 〜IoTの動向〜

工作機械業界でIoT導入が急がれる大きな理由に、少子高齢化があります。
深刻化する日本の労働人口の現象ですが、今後もゆるやかな下降が進むと見込まれています。
労働力人口(15 歳以上人口のうち,就業者と完全失業者を合わせた人口)は,2021 年平均 で 6860 万人と,前年に比べ8万人の減少(2年連続の減少)となった引用元: 労働力人口(PDF)|総務省統計局
金属加工業界では、熟練作業者のリタイアで人手不足が深刻になっており、これまで自動化が難しかった「研磨」や「検査」などの最終工程にも、急速な自動化が進んでいます。
しかし自動化が進んだ工場では、オペレーターひとりで複数の工作機械を受け持つことも多く、メンテナンスや作業者の負担も軽減が問題となっていました。


一方エンドユーザーでは、新旧入り混じる複数メーカーの工作機械から「いかにデータを収集していくか」が課題に。メーカーの垣根を超えたプラットフォームの統一や、協業も求められています。
IoT × 工作機械の事例

工作機械におけるIoTの活用は、どのように進めればいいの?工作機械の種類や生産体制によって、IoTの活用方もさまざまです。
金属加工の現場で実際に採用されている、「工作機械のIoT」の事例を紹介いたします。
〈IoTの事例〉
IoTによる主軸の故障診断〈事例〉

工作機械の命とも言える主軸。主軸の異常気づかないまま加工を続けると機械破損の原因に。主軸交換には膨大なコストと時間がかかりますが、IoTによって異常を検知しトラブルを未然に防ぐ試みがはじまっています。
〈IoT × 主軸の事例〉
- 主軸にかかる負荷のモニタリング
- 振動の経時変化による劣化診断
- 電流値などの異常検知
- 保守メンテナンスとの連動や遠隔診断

IoTによる加工ワークの管理〈事例〉

加工ワークにRFIDタグ(無線通信のICタグ)を付けたり、2次元コードをマーキングし加工工程ごとに読み取ることで、加工ワークを通した生産工程の見える化が実現します。
〈IoT × 加工ワークの事例〉
- 加工部材の遠隔在庫管理
- 加工不良と歩留まりの見える化
- 工場の稼働状況のモニタリング
- 加工データに基づく切削条件の最適化

IoTによる切削工具の管理〈事例〉

24時間稼働のCNC工作機械では、切削工具の摩耗やチッピング(欠け)が生産性に大きく影響します。
IoTを活用し、ICチップやセンサなどで工具の振動をモニタリングすることで、加工中の刃物の微細なチッピングを検知することができます。
〈IoT × 切削工具の事例〉
- インサートのチッピング検知
- ドリルの摩耗検知
- エンドミルの工具異常検知
- 工場全体のツーリングの寿命管理

IoTによるクーラントのモニタリング〈事例〉

切削加工の冷却・潤滑に欠かせないクーラント。高圧で吐出されるクーラント関連部品は、切粉の混入も多く摩耗が激しい部品のひとつです。
クーラントの状態が不適切なまま加工を続けてしまうと、加工精度の低下や工具の破損・機械ストップの原因となるため、モニタリングによる状態監視が重要です。
〈IoT × クーラントの事例〉
- クーラントポンプのモニタリング
- クーラント吐出のモニタリング
- クーラント流量の管理
- クーラントのコンタミ(異物)検知

IoTによる機械要素部品の予兆検知〈事例〉

工作機械はリニアモーションガイドやベアリング・ボールねじなど、さまざまな機械要素部品で構成されています。そのため機械要素部品の故障は、工作機械の急停止や一日がかりの大きなラインストップにつながることも。
定期的な診断データをもとに故障の予兆(前触れ)を検知し、部品が故障する前にメンテナンスすることで、ダウンタイムを減らすことが重要です。

特に摺動部の多い工作機械は、リニアモーションガイドやボールねじなどの直動部品の使用箇所も多く、IoTによる予兆検知を組み合わせることで高い効果を発揮します。
〈IoT × 機械要素部品の事例〉
- リニアモーションガイドの予兆検知
- ボールねじの予兆検知
- ロボット搬送ラインの定期故障診断
- 保守部品の在庫管理

IoTのなかでも費用対効果が高くおすすめです!
リニアモーションガイド・ボールねじのIoTで、工場を見える化!

工作機械を構成する機械要素部品。なかでも工程間のロボット搬送ラインや工作機械の駆動を担う「リニアモーションガイド」「ボールねじ」などの直動部品は、ひとたび壊れれば大きなライン停止につながる重要な要素部品のひとつです。

直動部品の故障によるライン停止を防ぐためには、定期的なメンテナンスと保守部品の在庫管理がカギ。しかし人手不足もあいまって、メンテナンスに手が回らない… そんな現場の課題を解決するのが、THKの予兆検知IoT「OMNIedge(オムニエッジ)」です。
OMNIedgeは、既存のリニアモーションガイド・ボールねじに後付けができるIoTパッケージ。
データ解析に欠かせない解析アンプもセットになっており、すぐに直動部品の⾒える化・予兆検知が実現します。

部品の交換タイミングを最適化することで、これまで状態に関わらず使用期間に応じて一律で交換していた部品コストも削減することができます
OMNIedgeの特徴

OMNIedgeは、ワンタッチのかんたん後付け。既存設備にすぐに導入することができます。
専用アタッチメントを使い分けることで、さまざまな種類の「リニアモーションガイド」「ボールねじ」に対応することが可能です。
OMNIedge(オムニエッジ)の特徴
アタッチメントでかんたん後付け

独自の解析技術で、センサを付けるだけですぐにデータが見える化できます。

リーズナブルな価格設定
OMNIedgeの仕組み

センサが読み取った情報は、安全な通信網を介して、定期的にデータベース化と解析が行われます。(常時モニタリングではなく必要なデータのみを安全に送信)

診断データが、”設定したしきい値を超える”など部品劣化の兆候を検知したタイミングで、保守部品の在庫確認やメンテナンス計画を立てることができます。


工作機械のIoTとは?まとめ
この記事では、THK株式会社(東京都港区)に、工作機械におけるIoTの事例と、かんたんにIoTが導入できる同社の「OMNIedge(オムニエッジ)」についてお聞きしました。
日本のものづくりの競争力低下が叫ばれるなか、工作機械業界ではIoTの活用がますます重要に。中小企業や小さな工場こそ、少ない初期投資ではじめられるIoTセンサを積極的に活用していくことが生産性向上のカギとなっています。
THK株式会社について

会社名 | THK株式会社 |
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本社 | 東京都港区芝浦2-12-10 |
事業内容 | LMガイド、ボールスプライン、ボールねじ、LMガイドアクチュエータ等の機械要素部品の開発・製造・販売 |
公式サイト | https://www.thk.com/ |